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      文  学

『若きドン・ジュアンの冒険』(性愛)

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           アポリネール作/須賀 慣訳
      グーテンベルク21 出版

 思春期を迎えたロジェは、父が購入した田舎の地所で性に目覚める。
 
 母と若い叔母、2人の姉、そして、女中達に囲まれて、ロジェの性には鎮まる時がない。

 姉達とは近親相姦し、女中達には片っ端から手をつけていく。叔母とは激しい情交におよび、それらの様子は、まるでハーレムのようであった・・・。

 スカトロや獣姦、そして、近親相姦など、アブノーマルな描写が目につくが、『ファニー・ヒル』(ジョン・クレランド作/伴 吉彦訳、グーテンベルク21)のように、官能小説にしては明るい雰囲気で、人目をはばかる暗さがない。

 "明るいアブノーマル"と、かなりな倒錯ぶりだが、アブノーマルに付き物の暴力的陰惨さは、影も形も見られない。

 倒錯した性ではあっても、その性は基本的に肯定されているので、開けっ広げで風通しが良い。

 狂気な性も、こうも普通にやってのけると、異常さが感じられないから不思議だ。実際は、反吐が出るほど醜悪なはずなのだが・・・。
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