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     サイエンス

   種の起源 上・下 (生物)

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    チャールズ・ダーウィン 著
        光文社古典新訳文庫

 生物が自然淘汰を通して、始原生物から様々な生物へと分岐していった、という生物進化の概念を世界中に広げた有名な書。
 
 「自然淘汰」も「進化」と言う言葉も、元々は社会学分野での用語であったが、ダーウィンが採り入れて使用したことで、恐らく本家以上に有名になったかもしれない。

 今では順序が逆転して、生物学分野の用語を社会学が応用した、と思われているのではないだろうか。実際、私も本書を読むまではそう思っていた。

 本書が出版されてから150年経った現在は、メンデルの"遺伝の法則"やDNA の存在など様々な知見を得たが、生物の多様性が自然淘汰にあるという学識は、当時から何も変わっていない。

 遺伝によって漸進的に変化しようと突然変異しようと、他と明確に区別される1つの種が認識されるのは、最終的には、常に自然淘汰の選別を受けて整理されてからである、という絶対的に変わらない過程を、ダーウィンはこの種の起源で確立している。

 種というのは単独では存在せず、許容される誤差を含む多数から構成されているので、種は1つの生物世界を形作っている。ヒトという種も独自の世界を作りあげている以上、人間の社会にも、自然淘汰の選別は明確に働いている。

 言葉の出所は社会学方面でも、実質的な概念を規定し機能を作り上げたのは生物学の分野である。

 人文科学と総括りにされる分野でも、種の起源に始まる、ヒトを含めた生物世界の法則を知らないと、人間社会を客観的に観察したり研究したりはできないのではないだろうか。

 でないと、根拠もなく人間を特別視したりする盲目に陥るのではないか。他の生物に働く原理を知ることで、人間は宇宙における自身の有り様とその位置を理解することができる。

 それは、根拠のない自信に足元を掬われて、人間の理想が、1生物であるに過ぎないという現実に敗れた時、人間が立っている足元の真の姿とその由来を理解していれば、人間は自己を見失って茫然自失したり右往左往したりして破滅的自棄に陥らずに、現実に踏みとどまることができるのではないだろうか。

 種の起源は、宇宙が人間に与えている原理を知るために必要な一冊である。当たり前のように迎えている毎日が、本当に当たり前であるために、人は種の起源を読んでおく必要がある。

 

 

 

 
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