水と言霊と

みぃうめ

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第85話    シーケンと魔力制御

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 私達は急いで食事を済ませ、まず私はカオリンと麗。あっくんは優汰と金谷さんで三人ずつ手を繋ぎ輪になり、目をつぶって集中してもらってからシーケンを行う。
 カオリンには、あっくんと私で毎日交代でシーケンを施していた。

 そして、気がついたことがある。
 
 それは、この世界の魔力と地球での気。私達はこの二つを混ぜ合わせて使っているのではないかということ。

 気とは自らのエネルギー。
 それに対し魔力は外部のエネルギー。

 元々地球人は、何もしなくても魔力量が多い。それは魔力を取り込む器官が大きいから。他の六人を見ても魔力量には個体差があることはわかる。あっくんと私は元々の魔力量の多さに加え、+αとなる気を無意識に混ぜ合わせ使っているのではないか。だから魔力量の底上げがされ、更に強くなっている。
 気は元々あっくんと私は地球で使っていた技術だ。
 そして、気と魔力はとても似ている。
 だからこそこんなに早く制御も操作も出来てしまったのでは?
 だからこそ他人へ魔力を流すことも出来るのでは?

 長い年月魔法を使っている人種だ。
 やろうとしたことがないわけがない。
 カオリンは最初、人に魔力を流しながら魔力制御を会得する方法などこの世界では存在しないと言っていた。

 それを疑問に思いカオリンにもう一度調べてもらったところ、他人に魔力を流すことなど出来ないことがわかった。

 他人と自分の魔力は似て非なるモノらしく、他人に魔力を流そうとしても流れていかず霧散してしまうらしい。
 その事実をカオリンから教えられ、そうではないかとあやふやだったモノに確信が生まれた。
 気を媒介にしている。と。


 それぞれ2人ずつ、魔力を流した人達に目を開けてもらい、シューさんと美青年を見てもらう。
「ねぇ!あの周りが歪んで見えてるのが魔力なの!?」
「うぉっ!すげぇほんとに見える!」
「確かに見える。」
 興奮しながら口々に感想を述べる。
 金谷さんですら驚いていた。
「そう、これが魔力だよ。みんなの魔力もシューさんくらいに見える。美青年君はかなり弱いよね。なんでかわからないけど目に魔力が集中してるようにも見える。」 
「ねぇしーちゃん。美青年君てあの言葉通じない人?」
「そうだよ?他に誰がいるっての?名前わかんないんだもん、そう呼ぶしかなくない?」
「だからって美青年って…」
「え?あっくんにはあの人美青年に見えないの?私だけ?ねぇ麗とカオリンはどう?」
「綺麗な人。」
「紫愛ちゃんがそう言いたくなっちゃうのは仕方ないくらい綺麗な人だと私も思うわ。」
「でしょ!?あっくんもしかして美的感覚ズレてる?」
「いや!俺も思ってるよ!ただ表現が直接的すぎるから驚いただけでさ…」
「だったらいいでしょ?変にあだ名つけたら、もし本当の名前知れてもあだ名のまま修正きかないと思うし。」
「それはその通りだと思うわ。慣れって怖いもの。」
「そうだね、はは。」
 遠い目して乾いた笑いをするあっくん。
 他に候補があるなら言ってくれたらいいのに。

「それはそうと、私ね、自分の中で魔力を感じる気がするんだけれど。」
「カオリンほんとに!!??」
「ええ。ただ、かなり集中して微かにっていう程度なんだけど。」
「凄いよ!毎日やってたからかな?
 感じられたらこっちのものだよ!
 これから特訓しよう!」
「ちょっと待ちなさいよ!毎日やってたってどういうこと!?」
「あ、そうだった、言ってなかった。
 まだ確信が持てない時にね、魔力について柔軟な考えを持てる人でないと話しても信じてもらえないよねってあっくんと話してて、カオリンだったら信じてくれそうだからって、カオリンに協力してもらってたの。」
「なによそれ!私だって「麗と優汰は頑固なところあるからな。馬鹿にされて終わると思ったんだ。俺がしーちゃんにそう言った。」
「そうね、あの状況で二人に話していても信じてもらえなかったと私も思うわ。あの時紫愛ちゃんと川端君は信じてもらえなければ出来ないと思っていたはずだから、話せなくても仕方なかったのよ、わかってあげて。」
「香織さんが、そう言うなら、まぁ。」
「これから俺らにもやってくれよ!
 俺魔法使ってみたい!」
「おまえなぁ、自衛の為だってわかってんのか?」
「まぁまぁ。目的があると習得も早いんじゃないかしら?ヤル気があることは良いことよ。」
「あっくん、次はシューさんにやってあげて。」
「うん。シューさんこっちに来てください。」

 そしてシューさんにもシーケンを行う。
 周りの人達の魔力を視認してもらう。
 が、
「これが魔力ですか?確かに見えますね。でも私には必要なさそうですね。」
「え?どうして?」
「香織さん、魔法の種類の記述に時間や空間を操る類の物を目にしたことはありますか?」
「いいえ、ないわ。」
「そう、ないんです。
 僕も探しましたが、そんなものはなかった。
 物理的にも自然系の力では無理です。
 それより僕は調べたいことができたので元の部屋に戻りたいんですがね?」
「元の部屋って…あの白い箱の中に?」
「ええそうです。早く戻らせてもらえないですかね?迎えはいつ頃来るんでしょうか?」
 あれだけ部屋から出たがっていた私達は一体なんなんだと思ってしまうくらいに、早く部屋に戻りたいとイラついているジジィ。
 最早意味不明だ。異世界人なんか非じゃない。
「シューさんは異世界人達が迎えに来たらそれを言えばいい。何でも叶えてくれるって言ってたからな、拒否なんてしねぇだろう。」
 あっくんも投げやりな言い方だ。
「そうですよね!
 では今は欲しい資料のリストアップをしておきます!」
 ワクワクしだすジジィ。
「キモッ!あれはない!」
 麗は小声で呟きながらカオリンの陰に隠れた。
 私だって隠れたいよ!不気味過ぎる!
「シューさんはもう放っておこう。
 ヤル気のない者にまで指導する気はないし、あの感じだとこっちの奴らにも変人扱いされそうだ。あまり関わろうとしないんじゃないか?」
 それはちょっと言えてるかも…
 ヤル気がなきゃ魔力制御は出来るようにならないし、白い箱にいるならそもそも必要ないのかもしれない。
 それに、人の生き方にどうこう言うのは違う気がする。選択肢を与えて魔法の道を選ばなかっただけのこと。私達に被害があるわけでもない。
 好きにさせておこう。






















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