水と言霊と

みぃうめ

文字の大きさ
上 下
304 / 337

第304話    魔石

しおりを挟む



「ハンス、聞きたいことがある。
 入ってきてくれ。」
「失礼いたします。
 聞きたいこととは何でしょうか?」
「今日塀の上にある灯りを見てきた。
 それが地面から魔力を得て動いていると聞いてな、腑に落ちないから説明してくれ。」
「はい。
 地面から直接ではなく、魔力を通す管が地面に埋め込まれているのです。」

 有線。
 これはいよいよ魔力じゃない可能性が出てきた。

「その管を通しているのは魔力とは別の何かなのか?そもそも魔力以外に何か動力源はあるのか?」
「通っているのは間違いなく魔力です。
 また、魔力以外の動力源はございません。」
「ねぇ、おかしくない?
 あの灯りってあんなに明るいのにそんなにも魔力を消費しないの?
 それに、肝心の魔力自体はどうやって得ているの?」
「消費量に関してはそれなりに、という程度です。
 平民達の家にすら管が通っており、誰でも灯りを使用することが可能となっております。
 ですが使用時間に応じて支払いが増減しますので、平民達は早めに就寝することが多いです。
 それに伴う魔力は屑魔石を集めて使用しております。」
「だからそれおかしくない?
 屑魔石って言うってことはいくらかき集めたって魔力の内包量なんて高が知れてるでしょ?
 平民でもお金さえ払えば使えるのに、使用量と供給量が合わないじゃない。」
「これは極秘情報ですが、城の内部に魔法陣があるようです。
 それを使い屑魔石から得る魔力の増幅が可能であるようです。」
「それ益々おかしいでしょ!
 じゃあ屑じゃない魔石も増幅すりゃーいいってことでしょ?
 あ、もしかして既にしてるの?」
「いえ、しておりません。
 魔法陣の中に置いた屑魔石の中の魔力を抽出する時のみ効果があるようで、魔法陣から離してしまえば効果は出ないようです。
 そして等級の高い魔石からは、どういう仕組みか不明ですがそもそも魔力の抽出が不可能なようです。」
「そもそも魔石はどこで手に入れてる?」
「新たな魔石は今は手に入っておりません。」
「今は?」
「はい。
 かなり昔に魔石が採掘されていた場所では魔石が枯渇し、人が入らなくなって暫くし崩落したようです。
 現在は森にも安易に入れないため、新たな洞窟の発見には至っておりません。」
「だったら魔石は足りないだろう?
 どうしてるんだ?」
「魔石はどんな屑でも非常に硬く、壊れることはありません。ですので人の手によって充填して使用しております。」
「それ、貴族しか出来ないでしょ?
 人が魔石に魔力を充填するのは非効率って本に書いてあったと思うんだけど。」
「非効率ではあります。
 ですが、魔石が取れない以上そうする他ありません。
 魔石への魔力の充填は貴族の義務でもありますし、魔石の等級による増減はありますが収入も発生しますので皆せっせと魔力充填しております。」
「騎士達にそんなに魔力に余裕があるの?」
「騎士達は魔力に余力があれば就寝前にする者もおります。
 ですが基本的に魔石に魔力を充填するのは貴族女子です。
 お茶会と称し、そこで情報収集をしながら魔力を充填しています。」
「そんなに片手間で出来ちゃうもんなの?」
「慣れてしまえば簡単です。」
「しーちゃん、やっぱり電気じゃないよ。」
「そうだね。
 それより気になったのはお城にその魔法陣があること。
 増幅した魔力をどうやって辺境まで送ってるの?」
「城から国全体に地下深く管が通っているらしいです。」
「そんなわけねーだろ?
 一体どれほどの距離があると思ってんだ?」
「昔はそのような技術があったらしいです。」
「運べたとして、どうやってそれを平民にまで行き渡らせてるの?」
「各地に魔力口と呼ばれる魔力が送られてくる箇所が点在してありますので、そこから管を引っ張るのは其々の辺境が行っております。
 実際に魔力口は存在しておりますので魔法陣の件に関しましては嘘ではないと思います。」
「魔力の使用量はどうやって計ってるの?」
「使用した時間が計測できる道具がありますので、それを取り付けるだけです。」
「量じゃなくて時間なの?」
「魔力量は測れないのです。
 推測の元、仮説を立ててある程度の目星をつけるに留まっております。
 集合住宅は部屋数も少ないので計測が時間でも特に問題にはなりません。」
「管は?何で作られている?」
「基本的に金属を鋳造ちゅうぞうして作っております。
 金属にも限りがありますので建物を解体する際は回収して再度利用するか、溶かして鋳蔵し直します。」
「だから武器が少ないのか?
 騎士達が持つ剣だったりも金属だろ?」
「川端様の仰る通りです。
 騎士も半数以上は剣を持ちません。
 圧倒的に数が足りないからです。
 殆ど使用しない騎士に持たせるよりも屠畜場とちくじょうなどに回します。
 金属が貴重ですので、金属を使用した物が広まることもありません。」
「じゃあスプーンやフォークは?」
「平民は基本手掴みです。」

 じゃあ子供達と食べてる朝ご飯にカトラリーの類いが一切ないのは洗い物少なくするためじゃなく元からないってこと!?

「竹でもスプーンやフォークは作れるし、私達の国で使われてたのは箸っていうカトラリーだよ。
 使うのは少し難しいかもしれないけど、箸なら簡単に作れるよ。
 この国の人達は菌を知らないのに素手で食べるのは危険だと思う。
 みんな食事前に手を綺麗に洗ってるの?
 洗ってないでしょ?」
「ハシというのはどの様な物でしょうか?」
「一言で言うなら、ただの二本の棒。」
「棒ですか?刺して食べるのですか?」
「違う。私の部屋にまだ竹残ってるから今すぐ作って使って見せるよ。」
「俺が作るよ。ナイフの扱いは慣れてるし、俺も箸欲しいから。」
「分かった。じゃあ部屋から竹とナイフ持ってくるね。」
「お供いたします。」

 あっくんに部屋から取ってきた竹とナイフを渡す。竹トンボの残りだから節もない。
 竹は縦に簡単に割れるから、あっくんは薪割りの要領でどんどん細く割っていく。
 余りにも細く割ってしまうと反ってしまうため、箸よりは少し太め。
 そこからの削りも繊維に沿って削いでいくから早い早い。
 あっくんのナイフ捌きも圧巻だった。
 面取りまでして渡してくれた。
「あっくんありがとう!
 凄い!箸だ!久しぶり!」
「喜んでくれて良かったよ。
 俺の分も今から作るね。」
「うん!
 じゃあハンスは使う所見ててね!」
「はい。」

 私は箸を持ち、ハンスが握ったオニギリを箸で一口分取り分け口に運ぶ。

「どう?使えそう?」
「これならば作るのも大した労力は必要ではないですし、竹もあります。
 随分と簡単に使ってらっしゃいますが、本来ならば使用は難しいのですよね?」
「私達は子供の頃に使い方を徹底的に教えられるからねぇ。
 ハンスも一回使ってみて!」
 私は持っていた箸を差し出す。
「いえ、それは紫愛様の物ですから。」
「ハンス!これ使え!
 しーちゃんはご飯食べててね。」
 あっくんはたった今完成させた一膳の箸をハンスに差し出した。
「これは川端様の物では?」
「また作りゃいいだけだろ?
 やるよ。それはもうハンスの箸だ。」
「ありがたく頂戴いたします。
 では…………………紫愛様、ハシはどのように持つのが正解でしょうか?」

 だよねぇ!分かんないよねぇ!!

「まずは一本、ペンを持つように持って。
 そうそう!
 で、もう一本はこの間に入れて…
 この形が正解。
 箸を動かすのは上だけ。下は固定。」
「これは……難しくないでしょうか。」
「まぁ、慣れだよ。
 頑張って!」

 ハンスは意外と不器用だからなぁ。
 使えるようになるまで時間がかかりそう。

「しーちゃん、俺のも出来た!
 本当、久しぶりだね!」
「川端様もお上手ですねぇ。」
「箸は便利だぞ?
 使えて損はない。
 どうしても難しければ刺して食べるのも有りだしな。」
「そうですね。
 手で食べるのが問題ならばこれも広めるのは有りですね。」
「使えるようになったら教えてね。」
「はい。」
「喋りながらだから時間かかっちゃったね。
 ご馳走様!
 じゃあお休みね!」
「うん、お休み。また明日。」
「また明日!」
「では私も失礼いたします。」
「ハンスも明日休みなんだから今日はいっぱい寝るんだよ!」
「はい。」

 そしてお風呂に行った時に怪我を見て、完全に塞がっているのを確認し、包帯はもう必要ないと判断して巻くのをやめて寝た。
















しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ストレージ――格納スキル持ち騎士が裏社会の帝王になるまで

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

ジャクタ様と四十九人の生贄

ホラー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:2

花嫁ゲーム

ホラー / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:6

怪物どもが蠢く島

ホラー / 完結 24h.ポイント:170pt お気に入り:1

処理中です...