呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

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第四章:謝罪編

033:再会

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「……どちら様でしたっけ」


 俺の名を呼びながらこっちにやってきた……なんかちょっと汚れた格好の女達を前にして、俺は眉間にしわを寄せて尋ねる。

 全体的にでかい赤い髪の〈重戦士〉の女と、小柄で気難しそうな〈僧侶〉の女、あと長身で無表情な森人の〈弓士〉の三人組。

 誰だっけ、知り合いにいたかこいつら。


「お……おい、そりゃないだろ。確かにお前には悪い事をしたと思うけど、そんな冗談言うなよ。本当に悪かったと思ってるんだ」
「……」


 俺に声をかけてきた、赤髪のでかい女が焦った様子で頭を下げてくる。
 本気で謝っている風なこいつはともかく、後ろの二人が不満げに俺を睨んできているのが気になるな。俺、何かしたっけ。

 あー、ちょ、ちょっと待ってろ。
 今思い出すから……あー、うん。知ってる奴だ、多分。


 ……いや、駄目だ。本気で思い出せん。


「……悪いんだけど、名乗ってくれるか。どうやっても名前も記憶も思い出せんわ」
「嘘だろ……!? ど、どこかで頭を怪我でもしたのか!? それとも何かの病気か!?」


 うっわ、何かすげぇ心配してくるぞこの女。

 ……いや、ちょっと待て。朧げながらちょっと記憶に引っかかるような気がしてきたぞ。
 あー、確か森で……顔が出て来んが男と何かあったはず。


「……ああ、そうそう。お前らに班を追い出されたんだったか。役立たずだのただ飯ぐらいだの色々言われたっけ……相変わらず名前は出て来ねぇけど、なんかそんな事があったのは思い出したわ」
「……!」


 あー、そうだったそうだった。
 ちょっと前まで冒険者組合に登録してて、そこで何人かと班を組んでたんだった。昔の馴染みがしつこく一緒の班になってくれって煩ぇから。

 ……どうした三人娘。
 急にそんな険しい顔になって、俺の元いた班の連中を睨んだりして。


「くっ……そう言われても仕方がないな。恨まれるような事をしたのはあたしらの方だ」
「……わたくしは間違ってなど」
「……悪くない」
「おい! やめろお前ら!」


 一人は滅茶苦茶悔やんでるっぽいが、他二人は全然そんな風に見えんな。謝るこいつと一緒にされたくないって雰囲気をびしびし感じる。

 ……いや、別に恨んでねぇんだけど。


 とか思ってたら、急にやってきた連中に訝しげな視線を向けるアリアが、俺の耳元に口を寄せてきた。


「……ねぇ、こいつら誰よ」
「昔の同僚。色々あって別れた」
「ふーん……」


 シェスカもルルも困惑気味に……いや、若干警戒気味に連中を見ている。
 慣れたかと思っていたんだが、俺以外の奴にはまだ身構えちまうんだろうか。シェスカでさえ、出会ったことと似たような不安げな視線を向けてやがる。

 別にそんな怯える必要ねぇぞ。他二人はともかく真ん中の赤髪はまともだし……多分。


「悪い……あの後、色々あってな。その所為でこいつら、気持ちがささくれ立つようになっちまって……」
「ふーん」


 聞いてねぇ事をいろいろと喋ってくる……あー、レッカだっけ、レンカだっけ。
 案の定、俺が抜けた後の班では問題が起こったらしい。いろいろ世話を焼いてやっていたつもりだったんだが、こいつら誰も気づいてなかったみたいだしな。

 だがこいつらのこの様子、俺がいなくなったってだけでここまでなるか?


「……多分だけどさ、お前が影で助けてくれてたんだろ? お前がいた頃から、ちょっと普通じゃないことが結構あったって気付いてさ」
「うん、まぁちょっとした事ばっかりだったけどな」
「……やっぱりそうか。あたしらみんな、知らない間にお前に甘えてたのかもしれないな」


 赤髪は申し訳なさそうに顔をしかめ、俯いている。
 あぁ、あれか。俺が陰で支えてたのを当たり前のように感じて、その分努力を怠っちまってたのかね。……そりゃちょっと悪い事したな。


 だが正直、こいつなら俺がいる間に気づいてもよかったんじゃないかってぐらいの人格者だと思ってたんだが……見込み違いだったかね。

 まぁ、森人と僧侶に比べりゃましだし、あの班で一番問題があったのはあの阿呆だが。


「そういやぁ、あの阿呆はどこだ? さっきから姿が見えんのだが」


 名前も忘れちまった昔馴染み……碌に鍛錬もしねぇ貧弱の〈剣士〉の男がいたはず。
 ていうか、俺を追い出した張本人で、今頃女だらけの班でよろしくやっているもんだと思ってたんだが?


「あの方は器ではありませんでしたから。私達の落胆に気づくと、勝手に狂ったように笑い出して何処かへ行ってしまいましたわ」
「……気持ち悪かった」


 俺の質問に、僧侶と森人はぷいっと視線を逸らし、吐き捨てるように答える。

 あぁ、やっぱりあいつの駄目さ加減が露出したか。
 狂ったように笑いながらってのがよくわからんが、自分の能力の低さを自覚して、班にいられなくなった感じだろうか……下らね。


「あいつ、昔っから口ばっかでな。でかい口叩いて厄介事に首突っ込むくせに、自分で手に負えなくなったらすぐ他人に押し付けやがる。そんで終わったらそれを自分の手柄みてぇに言いふらしやがって……苦労しただろ、俺が舵取りしなくなってから」
「……あぁ」


 赤髪はがっくり項垂れちまって、吐き出す溜息も随分重い。相当不満を溜め込んでいたようだな。

 他二人も、俺に対する謝罪とかには拒否感を示したままだけど、赤髪の倦怠感については心底道場の視線を送っている。
 そういや、全員若干顔色が悪いな。相当溜め込んでいるらしい。


「私が悪かった……すまん」
「別にいいよ。丁度、俺も辞める時機を探してたし、いいきっかけになったと思うよ」


 元々、性に合わなかったんだよな。
 自由に働ける、とかなんとか言っていたが、冒険者の資格を維持するには毎月一定数の納金が必要だったし、緊急時には必ず出向かなきゃならなかったし、あと単純に貰える金が少なすぎたし。

 今の暮らしが一番……いや、同行者がいなかった昔の方が気楽だったな。

 ……ん? 待てよ?
 なんか一個、重要な事を忘れてた気がするんだが……あ。


「あぁ、そうだそうだ。―――お前ら、あいつの所為で獣が寄ってきて、大変だっただろ。うっかりしてたわ」
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