呪法師のススメ 〜呪に偏見を抱くのは勝手だが、俺をそこらの素人と一緒にされては困る〜

春風駘蕩

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第四章:謝罪編

038:心配

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 やれやれ……面倒臭い敵を作っちまったもんだな。
 あの後あの女に何があったのかは知らんが、ていうか知りたくもないが、逆恨みでここまでされるとは思わなんだ。

 女の怨讐は蛇の千倍とか聞くが、流石に理不尽と思わざるを得ねぇな。


「ーーーちょっとあんた! 何のんびりしてんのよ!? だ、大丈夫なの!?」
「あん?」


 あぁ……こいつまだ混乱してんのか。
 まぁ、刺された奴が苦しみもせずにぴんぴんしてたらそりゃ驚くわな。さて、どう説明するか。


「か、神様……!? て、手当ては……」
「別にいいよ。もうこれ塞がってるし、服だけ縫っときゃ大体元通りになんだろ」


 お気に入りの服だったんだが、まぁ仕方ない。形あるものはいつかは壊れるもんだ。
 ……俺に関しては、いつまで続くのか見当もつかねぇけど。


「そんなの……そんなのありえないでしょ! 刺されて平気なわけないでしょ! あたし達に気なんて遣わないでよ! 早く傷見せて……!!」
「おっとと……」


 いや、だから平気だってのに。
 ていうか公衆の面前で脱がすのやめてくれんか、様子を伺ってた野次馬達がどよめいてるから。

 しかしアリアの奴、相当慌ててるのか俺のいう事なんか全く聞きやしなかった。

 ……俺、一応お前らの主人だよね?


「早く……早く手当てしなきゃーーーって、何、これ」


 服の前を開き、俺の腹を露わにさせたアリアは、刺された痕どころか血の跡もない事に困惑し、ぴしりと固まる。

 正確には、ほんの少しだが穴があって血も付着しているんだが、周りの肉が勝手に盛り上がって穴を塞いで、血も勝手に消え去っていく。
 アリア達が凝視する前で、傷跡は今度こそ綺麗さっぱり消えて無くなったのだ。

 だから言っただろうが……大丈夫だって。


「そう騒ぐんじゃねぇよ。さっきも言ったが、あの短刀は俺が作ったもんで、ついでに【呪い】も掛けようとして失敗した出来損ないなんだよ。そうでなくても、俺が作ったもんで俺が死ぬ道理なんざねぇ、落ち着け」
「……え? え、え?」
「つーかそれ以前に……俺が刺された程度で死ぬなら、この三百年苦労はしてねぇんだよ。むしろ殺せるならやって見せて欲しいもんだ」


 呆けて立ち尽くすアリアに、俺はやれやれと肩を竦めて告げる。
 こいつらにとっちゃ初めての衝撃的な出来事だったかもしれんが……俺にとってはもう日常茶飯事なんだよ。

 今時になって刺してくる奴がいるとは思わなんだ……昔散々国とか権力者とかに狙われてたが、俺がどうやっても死なねぇってわかったら途端に懐柔する方向に変えてきたからな。
 王とか大臣とかが謙ってくる姿は、最初は割と気分が良かったが……今はもう鬱陶しいとしか思わんからな。

 もうここ数年は色んな事に飽きてきたから、狙われた時にゃちょっと期待してたのに……がっかりだよ、元新人ちゃん。


「おいアリア、もう前を締めていいか? 寒いんだよ、人前でいつまで腹見せにゃならないんだ?」


 アリアにそう言うと、そっと静かに釦を締める。なんか知らんけど俯いたままだが。

 さて、こんな穴が空いたままじゃ落ち着かねぇし、さっさと宿に戻って穴塞ぐか……と、思ってたら。
 それまで黙り込んでいたアリアとシェスカ、そんでルルが俺の服の裾を引っ張って引き止めてきた。

 ……え? 何?


「……説明」
「あ?」
「説明しなさいって言ってんのよ、この馬鹿!!」


 きっ!と物凄い形相になったアリアが、俺の襟首を掴んで自分の方に引っ張って、怒鳴りつけてくる。

 えぇ……説明しなかった事、そんなに怒ってんの?


「……取り敢えず、一回宿に戻っていいか。目立って仕方がねぇんだが」


 俺はほほを引き攣らせながら、決して逃すものかとばかりに睨みつけてくるアリア……だけじゃなく困惑の視線を向けてくるシェスカに告げ、襟首からどうにか手を離させる。


 まったく……逆恨みで命を狙ってくる女の相手より、荒れ狂う餓鬼を宥める方が大変だよ、畜生め。
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