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6.不器用クソ真面目王子
リムネアにある御用邸は王族のための屋敷である。静養のために設えられた設計は居心地の良さを第一に作られている。クラシカルな内装は華美ではないがその分一つ一つの装飾や壁紙、ドアに至るまでとことん質にこだわっており、ドアノブ一つで職人が一年は豊かに暮らせるほどの額が動いている。上品で上質な雰囲気の邸内は暖かな色の照明で照らされている。ロウソクの火でもないこの小雨名は魔法を応用したライトで、国内でもとりわけマナが豊富なリムネアだからこそできるものだ。
もちろん、屋敷の中に医務室もある。その近くにある客室がアメリアにあてがわれた寝室だ。
御用邸に着いてからというものの、コーネリアスの振る舞いがおかしい。自分の寝室に向かうより先にアメリアに彼女の寝室と御用邸の中を案内し、遅れて着いたオリバーからアメリアの荷物をひったくるとケガをしているというのにアメリアの部屋まで運んで行く。オリバーや使用人からやめるよう言われても、「これから世話になるのだから」といって聞かなかった。
それだってケガ人が無理をして歩き回るのはアメリアの目にも余る。
「お心遣いは感謝しますが怪我人は安静が第一。ご自身のお部屋でお休みしてください」
ぴしゃりとアメリアに言われたコーネリアスがとぼとぼと自室に戻る様を眺めていたオリバーはしかたなさそうに肩を竦める。
「あんなに生き生きしてるのは初めて見たな……」
幼少期、共に遊んだ頃以来かもしれない。一体コーネリアスに何があったかとオリバーは考える。
「やっぱりアメリア嬢に惚れたかな……」
すぐ色恋に持っていくのは本人の悪癖ではあるのだが。
一方、コーネリアスは自室に備え付けられたソファに腰を下ろし、頭を抱えていた。先ほど馬車で言われたことが、まだ頭の中に残っている。
王族用の部屋だけあって華美ではない内装であっても上品な雰囲気が毛足の揃えられたカーペットからも感じられる。
(王子である前に一人の患者、か)
アメリアに言われたことをコーネリアスは反芻する。
今まで王子や騎士として接されてきたことなど数え切れない程ある。だが、顔を合わせてそう時間の経っていない相手から一人の人間扱いされたのは、初めてだった。
オリバーだってコーネリアスとの関係を王子と侍従として線を引いているところがあるというのに、アメリアはそんな線すらも軽々と越えてコーネリアスの目の前に立った。あまつさえ対等な立場としてコーネリアスを意識している。
それが何よりコーネリアスは嬉しかった。
兄どころか父ですらコーネリアスを王子、守護騎士、と踏まえた上で接してくる。コーネリアスはどこか自分を見られていないような心地がして居づらかった。
そんなときにアメリアに叱咤され、コーネリアスはハッとしたのだ。
本当はコーネリアスは自分を見てくれる人がほしかったのだと。それをアメリアに教えられたからこそ、コーネリアスはアメリアに報いたくて仕方がない。
怪我人なのに荷物を運んだり御用邸を案内したり、そんな不器用な謝意の表し方でもって示したのだ。
それもアメリアはお気に召さなかったようで、どう報いるべきかとコーネリアスは思案する。
アメリアはコーネリアスを患者として見ていた。ならば患者として喜ばしい振る舞いをすればよい。つまり。
「全力で傷の治癒に臨めばよいのか……!」
ならば、やることは決まった。明日からの治療、とにかくアメリアに協力的にならねば。それだけでコーネリアスのやる気はぐんぐんと上がり、ケガをしているというのに剣の素振りを始めてしまいそうなほどだった。
もちろん、屋敷の中に医務室もある。その近くにある客室がアメリアにあてがわれた寝室だ。
御用邸に着いてからというものの、コーネリアスの振る舞いがおかしい。自分の寝室に向かうより先にアメリアに彼女の寝室と御用邸の中を案内し、遅れて着いたオリバーからアメリアの荷物をひったくるとケガをしているというのにアメリアの部屋まで運んで行く。オリバーや使用人からやめるよう言われても、「これから世話になるのだから」といって聞かなかった。
それだってケガ人が無理をして歩き回るのはアメリアの目にも余る。
「お心遣いは感謝しますが怪我人は安静が第一。ご自身のお部屋でお休みしてください」
ぴしゃりとアメリアに言われたコーネリアスがとぼとぼと自室に戻る様を眺めていたオリバーはしかたなさそうに肩を竦める。
「あんなに生き生きしてるのは初めて見たな……」
幼少期、共に遊んだ頃以来かもしれない。一体コーネリアスに何があったかとオリバーは考える。
「やっぱりアメリア嬢に惚れたかな……」
すぐ色恋に持っていくのは本人の悪癖ではあるのだが。
一方、コーネリアスは自室に備え付けられたソファに腰を下ろし、頭を抱えていた。先ほど馬車で言われたことが、まだ頭の中に残っている。
王族用の部屋だけあって華美ではない内装であっても上品な雰囲気が毛足の揃えられたカーペットからも感じられる。
(王子である前に一人の患者、か)
アメリアに言われたことをコーネリアスは反芻する。
今まで王子や騎士として接されてきたことなど数え切れない程ある。だが、顔を合わせてそう時間の経っていない相手から一人の人間扱いされたのは、初めてだった。
オリバーだってコーネリアスとの関係を王子と侍従として線を引いているところがあるというのに、アメリアはそんな線すらも軽々と越えてコーネリアスの目の前に立った。あまつさえ対等な立場としてコーネリアスを意識している。
それが何よりコーネリアスは嬉しかった。
兄どころか父ですらコーネリアスを王子、守護騎士、と踏まえた上で接してくる。コーネリアスはどこか自分を見られていないような心地がして居づらかった。
そんなときにアメリアに叱咤され、コーネリアスはハッとしたのだ。
本当はコーネリアスは自分を見てくれる人がほしかったのだと。それをアメリアに教えられたからこそ、コーネリアスはアメリアに報いたくて仕方がない。
怪我人なのに荷物を運んだり御用邸を案内したり、そんな不器用な謝意の表し方でもって示したのだ。
それもアメリアはお気に召さなかったようで、どう報いるべきかとコーネリアスは思案する。
アメリアはコーネリアスを患者として見ていた。ならば患者として喜ばしい振る舞いをすればよい。つまり。
「全力で傷の治癒に臨めばよいのか……!」
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