6 / 55
6.不器用クソ真面目王子
しおりを挟む
リムネアにある御用邸は王族のための屋敷である。静養のために設えられた設計は居心地の良さを第一に作られている。クラシカルな内装は華美ではないがその分一つ一つの装飾や壁紙、ドアに至るまでとことん質にこだわっており、ドアノブ一つで職人が一年は豊かに暮らせるほどの額が動いている。上品で上質な雰囲気の邸内は暖かな色の照明で照らされている。ロウソクの火でもないこの小雨名は魔法を応用したライトで、国内でもとりわけマナが豊富なリムネアだからこそできるものだ。
もちろん、屋敷の中に医務室もある。その近くにある客室がアメリアにあてがわれた寝室だ。
御用邸に着いてからというものの、コーネリアスの振る舞いがおかしい。自分の寝室に向かうより先にアメリアに彼女の寝室と御用邸の中を案内し、遅れて着いたオリバーからアメリアの荷物をひったくるとケガをしているというのにアメリアの部屋まで運んで行く。オリバーや使用人からやめるよう言われても、「これから世話になるのだから」といって聞かなかった。
それだってケガ人が無理をして歩き回るのはアメリアの目にも余る。
「お心遣いは感謝しますが怪我人は安静が第一。ご自身のお部屋でお休みしてください」
ぴしゃりとアメリアに言われたコーネリアスがとぼとぼと自室に戻る様を眺めていたオリバーはしかたなさそうに肩を竦める。
「あんなに生き生きしてるのは初めて見たな……」
幼少期、共に遊んだ頃以来かもしれない。一体コーネリアスに何があったかとオリバーは考える。
「やっぱりアメリア嬢に惚れたかな……」
すぐ色恋に持っていくのは本人の悪癖ではあるのだが。
一方、コーネリアスは自室に備え付けられたソファに腰を下ろし、頭を抱えていた。先ほど馬車で言われたことが、まだ頭の中に残っている。
王族用の部屋だけあって華美ではない内装であっても上品な雰囲気が毛足の揃えられたカーペットからも感じられる。
(王子である前に一人の患者、か)
アメリアに言われたことをコーネリアスは反芻する。
今まで王子や騎士として接されてきたことなど数え切れない程ある。だが、顔を合わせてそう時間の経っていない相手から一人の人間扱いされたのは、初めてだった。
オリバーだってコーネリアスとの関係を王子と侍従として線を引いているところがあるというのに、アメリアはそんな線すらも軽々と越えてコーネリアスの目の前に立った。あまつさえ対等な立場としてコーネリアスを意識している。
それが何よりコーネリアスは嬉しかった。
兄どころか父ですらコーネリアスを王子、守護騎士、と踏まえた上で接してくる。コーネリアスはどこか自分を見られていないような心地がして居づらかった。
そんなときにアメリアに叱咤され、コーネリアスはハッとしたのだ。
本当はコーネリアスは自分を見てくれる人がほしかったのだと。それをアメリアに教えられたからこそ、コーネリアスはアメリアに報いたくて仕方がない。
怪我人なのに荷物を運んだり御用邸を案内したり、そんな不器用な謝意の表し方でもって示したのだ。
それもアメリアはお気に召さなかったようで、どう報いるべきかとコーネリアスは思案する。
アメリアはコーネリアスを患者として見ていた。ならば患者として喜ばしい振る舞いをすればよい。つまり。
「全力で傷の治癒に臨めばよいのか……!」
ならば、やることは決まった。明日からの治療、とにかくアメリアに協力的にならねば。それだけでコーネリアスのやる気はぐんぐんと上がり、ケガをしているというのに剣の素振りを始めてしまいそうなほどだった。
もちろん、屋敷の中に医務室もある。その近くにある客室がアメリアにあてがわれた寝室だ。
御用邸に着いてからというものの、コーネリアスの振る舞いがおかしい。自分の寝室に向かうより先にアメリアに彼女の寝室と御用邸の中を案内し、遅れて着いたオリバーからアメリアの荷物をひったくるとケガをしているというのにアメリアの部屋まで運んで行く。オリバーや使用人からやめるよう言われても、「これから世話になるのだから」といって聞かなかった。
それだってケガ人が無理をして歩き回るのはアメリアの目にも余る。
「お心遣いは感謝しますが怪我人は安静が第一。ご自身のお部屋でお休みしてください」
ぴしゃりとアメリアに言われたコーネリアスがとぼとぼと自室に戻る様を眺めていたオリバーはしかたなさそうに肩を竦める。
「あんなに生き生きしてるのは初めて見たな……」
幼少期、共に遊んだ頃以来かもしれない。一体コーネリアスに何があったかとオリバーは考える。
「やっぱりアメリア嬢に惚れたかな……」
すぐ色恋に持っていくのは本人の悪癖ではあるのだが。
一方、コーネリアスは自室に備え付けられたソファに腰を下ろし、頭を抱えていた。先ほど馬車で言われたことが、まだ頭の中に残っている。
王族用の部屋だけあって華美ではない内装であっても上品な雰囲気が毛足の揃えられたカーペットからも感じられる。
(王子である前に一人の患者、か)
アメリアに言われたことをコーネリアスは反芻する。
今まで王子や騎士として接されてきたことなど数え切れない程ある。だが、顔を合わせてそう時間の経っていない相手から一人の人間扱いされたのは、初めてだった。
オリバーだってコーネリアスとの関係を王子と侍従として線を引いているところがあるというのに、アメリアはそんな線すらも軽々と越えてコーネリアスの目の前に立った。あまつさえ対等な立場としてコーネリアスを意識している。
それが何よりコーネリアスは嬉しかった。
兄どころか父ですらコーネリアスを王子、守護騎士、と踏まえた上で接してくる。コーネリアスはどこか自分を見られていないような心地がして居づらかった。
そんなときにアメリアに叱咤され、コーネリアスはハッとしたのだ。
本当はコーネリアスは自分を見てくれる人がほしかったのだと。それをアメリアに教えられたからこそ、コーネリアスはアメリアに報いたくて仕方がない。
怪我人なのに荷物を運んだり御用邸を案内したり、そんな不器用な謝意の表し方でもって示したのだ。
それもアメリアはお気に召さなかったようで、どう報いるべきかとコーネリアスは思案する。
アメリアはコーネリアスを患者として見ていた。ならば患者として喜ばしい振る舞いをすればよい。つまり。
「全力で傷の治癒に臨めばよいのか……!」
ならば、やることは決まった。明日からの治療、とにかくアメリアに協力的にならねば。それだけでコーネリアスのやる気はぐんぐんと上がり、ケガをしているというのに剣の素振りを始めてしまいそうなほどだった。
0
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です
山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」
ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。
まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
死亡予定の脇役令嬢に転生したら、断罪前に裏ルートで皇帝陛下に溺愛されました!?
六角
恋愛
「え、私が…断罪?処刑?――冗談じゃないわよっ!」
前世の記憶が蘇った瞬間、私、公爵令嬢スカーレットは理解した。
ここが乙女ゲームの世界で、自分がヒロインをいじめる典型的な悪役令嬢であり、婚約者のアルフォンス王太子に断罪される未来しかないことを!
その元凶であるアルフォンス王太子と聖女セレスティアは、今日も今日とて私の目の前で愛の劇場を繰り広げている。
「まあアルフォンス様! スカーレット様も本当は心優しい方のはずですわ。わたくしたちの真実の愛の力で彼女を正しい道に導いて差し上げましょう…!」
「ああセレスティア!君はなんて清らかなんだ!よし、我々の愛でスカーレットを更生させよう!」
(…………はぁ。茶番は他所でやってくれる?)
自分たちの恋路に酔いしれ、私を「救済すべき悪」と見なすめでたい頭の二人組。
あなたたちの自己満足のために私の首が飛んでたまるものですか!
絶望の淵でゲームの知識を総動員して見つけ出した唯一の活路。
それは血も涙もない「漆黒の皇帝」と万人に恐れられる若き皇帝ゼノン陛下に接触するという、あまりに危険な【裏ルート】だった。
「命惜しさにこの私に魂でも売りに来たか。愚かで滑稽で…そして実に唆る女だ、スカーレット」
氷の視線に射抜かれ覚悟を決めたその時。
冷酷非情なはずの皇帝陛下はなぜか私の悪あがきを心底面白そうに眺め、その美しい唇を歪めた。
「良いだろう。お前を私の『籠の中の真紅の鳥』として、この手ずから愛でてやろう」
その日から私の運命は激変!
「他の男にその瞳を向けるな。お前のすべては私のものだ」
皇帝陛下からの凄まじい独占欲と息もできないほどの甘い溺愛に、スカーレットの心臓は鳴りっぱなし!?
その頃、王宮では――。
「今頃スカーレットも一人寂しく己の罪を反省しているだろう」
「ええアルフォンス様。わたくしたちが彼女を温かく迎え入れてあげましょうね」
などと最高にズレた会話が繰り広げられていることを、彼らはまだ知らない。
悪役(笑)たちが壮大な勘違いをしている間に、最強の庇護者(皇帝陛下)からの溺愛ルート、確定です!
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
男爵令嬢なのにくじ引きで王子のいる生徒会の役員になりました!
らな
恋愛
男爵令嬢のリアはアルノー王国の貴族の子女が通う王立学院の1年生だ。
高位貴族しか入れない生徒会に、なぜかくじ引きで役員になることになってしまい、慌てふためいた。今年の生徒会にはアルノーの第2王子クリスだけではなく、大国リンドブルムの第2王子ジークフェルドまで在籍しているのだ。
冷徹な公爵令息のルーファスと、リアと同じくくじ引きで選ばれた優しい子爵令息のヘンドリックの5人の生徒会メンバーで繰り広げる学園ラブコメ開演!
リアには本人の知らない大きな秘密があります。
リアを取り巻く男性陣のやり取りや友情も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ひみつの姫君からタイトルを変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる