13 / 55
13.痛いの痛いのとんでいけ
静かに涙をこぼすコーネリアスの頭を撫でながら、アメリアはそっと小さな魔法を唱える。
治癒魔法の原型ともなった、痛み払いのおまじないだ。
おまじないだけあって、効力はとても弱く軽く痛みを和らげるものだが、今のコーネリアスにはこのおまじないが一番相応しいとアメリアは思ったのだ。
「痛みよ、痛みよ、空に飛べ――」
アメリアの手の平から魔力が伝い、コーネリアスをふわりと包む。魔法の効きづらいコーネリアスには慰めくらいにしかならないと思っていたアメリアだったのだが。
「……?」
コーネリアスが不思議そうに顔を上げる。そして泣き濡れた目を拭ってぽかんとした様子でアメリアを見つめた。
「コーネリアス様?」
「その……今、魔法をかけただろうか」
「はい、古いおまじないを少しだけ」
アメリアはコーネリアスの状態がよくわからないままに答える。するとコーネリアスは不思議そうに自分の腕をさすった。
「痛みが、引いたのだが……」
コーネリアスの言葉にアメリアは目を丸くする。魔法が効きにくいコーネリアスならば、こんなおまじないなどで痛みが取れるはずがない。
だというのに、コーネリアスが自分から痛みが和らいだというのだ。
「本当、でしょうか?」
驚くアメリアに、コーネリアスはこくこくと首肯する。
「魔法が、効いた……!」
アメリアの言葉に嬉しそうにコーネリアスも笑みを浮かべた。
「そなたの親身な態度に心を打たれていたら、自然と痛みが引いていたのだ」
「きっと、コーネリアス様が心をお許しになったからですよ。治癒魔法は術者に心を許すことで本来の効能を発揮するのですから」
アメリアが言えば、コーネリアスは照れくさそうに目をそらす。それから少し困ったように視線を上に上げた。
「その、アメリア嬢」
「アメリアで結構ですよ」
自分もいつの間にかコーネリアスに心を許していたアメリアは、穏やかな声で言った。
「いや、頭……なのだが」
コーネリアスが頭を撫でるがままのアメリアの手を指す。そこでようやくアメリアはずっとコーネリアスの頭を撫でていたことに気づき、はっとして手を離そうとした。
「っ、申し訳ありません!」
「いや、いい。できれば……もう少し撫でてもらっても、いいだろうか?」
そのどこか不器用な甘え方に、アメリアはぎゅっと胸をわしづかみにされる。
(ちょ、ちょっと待って……これはいくらなんでもかわいすぎる……!)
元から世話焼きでもあったアメリアはコーネリアスが控えめに訴えてくる瞳に抗えず、またコーネリアスの頭をなで始める。
「甘えん坊、なのですね」
「それはどうかわからないが……こうして甘えるのは、初めて、なのだ……」
緊張しながらもアメリアが頭をなでていれば、コーネリアスはそんなことを口にする。
どうやら、堅物と言うよりは不器用なだけのようだ。一人でしっかりしなければと思う反面、誰かに目いっぱい甘えたことがないのだろう。
アメリアは今までになくドキドキしながらコーネリアスを見やる。
頭を撫でられ、くすぐったそうにしながらも表情は笑うように緩んでいる。時折人懐っこそうに自分から頭をすり付けてくる。まるで犬や猫がじゃれてくるようにも思えてますますアメリアはコーネリアスのことがかわいく思えてしまった。
なんだかもっと甘やかしてめちゃくちゃにかわいがったらどうなってしまうのだろう。考えただけでアメリアはちょっとゾクゾクしてしまう。
「か、かわいい……」
「アメリアにだけだ……」
思わず漏らしてしまった言葉にしまったと思う暇もなく、コーネリアスに意外な言葉を返されてしまう。
(うっ、これは、ちょっと……)
ここまでかわいらしい様を見せつけられ、甘えてくるのだ。
「癖に、なるかも……」
コーネリアスにしっかり心臓を握られ、アメリアは観念したように呟いた。
治癒魔法の原型ともなった、痛み払いのおまじないだ。
おまじないだけあって、効力はとても弱く軽く痛みを和らげるものだが、今のコーネリアスにはこのおまじないが一番相応しいとアメリアは思ったのだ。
「痛みよ、痛みよ、空に飛べ――」
アメリアの手の平から魔力が伝い、コーネリアスをふわりと包む。魔法の効きづらいコーネリアスには慰めくらいにしかならないと思っていたアメリアだったのだが。
「……?」
コーネリアスが不思議そうに顔を上げる。そして泣き濡れた目を拭ってぽかんとした様子でアメリアを見つめた。
「コーネリアス様?」
「その……今、魔法をかけただろうか」
「はい、古いおまじないを少しだけ」
アメリアはコーネリアスの状態がよくわからないままに答える。するとコーネリアスは不思議そうに自分の腕をさすった。
「痛みが、引いたのだが……」
コーネリアスの言葉にアメリアは目を丸くする。魔法が効きにくいコーネリアスならば、こんなおまじないなどで痛みが取れるはずがない。
だというのに、コーネリアスが自分から痛みが和らいだというのだ。
「本当、でしょうか?」
驚くアメリアに、コーネリアスはこくこくと首肯する。
「魔法が、効いた……!」
アメリアの言葉に嬉しそうにコーネリアスも笑みを浮かべた。
「そなたの親身な態度に心を打たれていたら、自然と痛みが引いていたのだ」
「きっと、コーネリアス様が心をお許しになったからですよ。治癒魔法は術者に心を許すことで本来の効能を発揮するのですから」
アメリアが言えば、コーネリアスは照れくさそうに目をそらす。それから少し困ったように視線を上に上げた。
「その、アメリア嬢」
「アメリアで結構ですよ」
自分もいつの間にかコーネリアスに心を許していたアメリアは、穏やかな声で言った。
「いや、頭……なのだが」
コーネリアスが頭を撫でるがままのアメリアの手を指す。そこでようやくアメリアはずっとコーネリアスの頭を撫でていたことに気づき、はっとして手を離そうとした。
「っ、申し訳ありません!」
「いや、いい。できれば……もう少し撫でてもらっても、いいだろうか?」
そのどこか不器用な甘え方に、アメリアはぎゅっと胸をわしづかみにされる。
(ちょ、ちょっと待って……これはいくらなんでもかわいすぎる……!)
元から世話焼きでもあったアメリアはコーネリアスが控えめに訴えてくる瞳に抗えず、またコーネリアスの頭をなで始める。
「甘えん坊、なのですね」
「それはどうかわからないが……こうして甘えるのは、初めて、なのだ……」
緊張しながらもアメリアが頭をなでていれば、コーネリアスはそんなことを口にする。
どうやら、堅物と言うよりは不器用なだけのようだ。一人でしっかりしなければと思う反面、誰かに目いっぱい甘えたことがないのだろう。
アメリアは今までになくドキドキしながらコーネリアスを見やる。
頭を撫でられ、くすぐったそうにしながらも表情は笑うように緩んでいる。時折人懐っこそうに自分から頭をすり付けてくる。まるで犬や猫がじゃれてくるようにも思えてますますアメリアはコーネリアスのことがかわいく思えてしまった。
なんだかもっと甘やかしてめちゃくちゃにかわいがったらどうなってしまうのだろう。考えただけでアメリアはちょっとゾクゾクしてしまう。
「か、かわいい……」
「アメリアにだけだ……」
思わず漏らしてしまった言葉にしまったと思う暇もなく、コーネリアスに意外な言葉を返されてしまう。
(うっ、これは、ちょっと……)
ここまでかわいらしい様を見せつけられ、甘えてくるのだ。
「癖に、なるかも……」
コーネリアスにしっかり心臓を握られ、アメリアは観念したように呟いた。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
乙女ゲームは見守るだけで良かったのに
冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。
ゲームにはほとんど出ないモブ。
でもモブだから、純粋に楽しめる。
リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。
———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?!
全三話。
「小説家になろう」にも投稿しています。
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
帰ってきた兄の結婚、そして私、の話
鳴哉
恋愛
侯爵家の養女である妹 と
侯爵家の跡継ぎの兄 の話
短いのでサクッと読んでいただけると思います。
読みやすいように、5話に分けました。
毎日2回、予約投稿します。
2025.12.24
誤字修正いたしました。
ご指摘いただき、ありがとうございました。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない
ラム猫
恋愛
幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。
その後、十年以上彼と再会することはなかった。
三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。
しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。
それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。
「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」
「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」
※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。
※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
私たちの離婚幸福論
桔梗
恋愛
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。