元魔女ヒーラーの治療録~私にだけ甘えてくるんですがこのクソ真面目王子~

ことのはじめ

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21.マナの淀み

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 散策道をアメリアとコーネリアスは並んで歩く。普段の散策と変わらない様にアメリアはちょっとくすぐったくなりながらコーネリアスに話しかける。


「いい眺めですね、コーネリアス様」

「ああ。御用邸の庭もよかったが、こちらはまた違った趣があるな」


 清々しい風を感じながら言うコーネリアスに、アメリアもふっと表情を和らげる。
 日差しに照らされたコーネリアスの姿をぼんやり眺めながら歩いていれば、ふとこの穏やかな場にそぐわない感覚をアメリアは覚えた。


「ん……?」

「どうした、何かあったか?」


 立ち止まるアメリアにコーネリアスが声をかける。


「すみません、ちょっと静かに」


 アメリアはそう言って目を閉じると、大気中のマナを感じるべく目を閉じた。神経を集中させ、違和感の正体を探る。

 マナを感じていけば、ここからそう離れていない場所に濁ったマナの感覚をアメリアは捉えた。

 ぱちりと目を開いたアメリアは、まっすぐ濁った感覚のした方へと向かう。

 散策道を少し外れた場所に目に見えて暗く淀んだくぼみがあった。誰かが掘り返したのだろうか、そこに生えていたであろう草花が根こそぎ持ち去られている。


「これね」

「アメリア、どうしたのだ。急に道を外れたりして」

「マナの淀みを見つけたんです。早めに淀みを癒さないと大きくなって魔物が生まれてしまう」

「魔物だと」


 コーネリアスの表情が険しくなる。アメリアは淀みの溜まったくぼみを指し、コーネリアスに説明する。


「自然発生的なものもありますが、マナの淀みの多くは人が無理に自然を壊すことで発生するものなんです。必要以上に自然を傷付けることで、マナの流れが壊されて淀んでしまうと、そこから負のマナが生まれて魔物が発生する。そういう仕組みなんです」

「そうなのか。私にはただその草原が荒らされているようにしか見えないが、そういった事情があるのだな」


 納得するコーネリアスに頷きながら、アメリアは荒らされた草原の側に膝をついた。


「薬草を摘むくらいでしたら、マナの流れを壊さないように加減はできるのですが、こんな風に根こそぎ持っていったらマナの流れが乱れないわけないです。今から淀みを癒すので、少々お待ちください」


 そう言ってアメリアは荒らされてくぼんだ草原に両手をかざす。千切れてしまった流れを再び結ぶように治癒魔法を唱えれば、淀んでいたマナが徐々に本来の流れを取り戻し大地に巡っていく。


「……よし、これで一応は応急処置ができました」

「さすがアメリアだ。だが、このまま掘り返されているままなのも忍びないな」

「もちろんこのままにはしませんよ。掘り返された場所を元に戻して置くと、自浄作用も働くんです」


 アメリアはなんのためらいもなく掘り返されていた土掴むとくぼみに入れて穴を埋め始めた。

 コーネリアスは最初こそ驚いたが、すぐにアメリアの真似をして土を掴んで一緒に穴を埋め始める。


「コーネリアス様、あなたまでやらなくても私がやりますのに」

「いや、一緒にやらせてくれ。今まで魔物は斬るべきものだとばかり思っていたのだが、少し見方が変わったのだ。こうして防げるのであれば、戦いで傷つく兵が減るのかとも思うのだ」


 アメリアと一緒に草原の穴を埋めながらコーネリアスは続ける。


「戦って魔物を倒すだけではなく、魔物が生まれる根源を癒す……そんなことができたのなら、戦う機会も減るのかもしれない。民も兵も危険にさらされずに済むのなら、きっとそうした方がいい気がするのだ。騎士としては、力を示す機会が減ってしまうが」


 苦笑するコーネリアスに、アメリアは土を穴にかけながらかぶりを振る。


「コーネリアス様はお優しいのですね。以前でしたらむしろ騎士として力を示すために魔物を退治することを仰っていたと思います」

「そう、だろうか……?」

「お変わりになったということですよ」


 穴を埋め終えて、手で優しく地面を固めるアメリアに、コーネリアスはいたたまれない様子で視線を泳がせた。
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