地図にない島の秘密

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海の国3日目

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「ふぁあ….」

目を覚まして聞こえてくるのは規則正しく秒を刻む時計の音とザァー…と止んでいない雨の音.
姫であるハンナが今日のどこかに連れて行くと言っていたが行けるのか?この天気で.
まだ寝起きで働かない頭を左右に揺らしてバチンッと頬を叩き目を無理やり開かせる.
ベットから降りて近くのテーブルにここに来た時に着ていた服が綺麗に畳まれて置かれていた.それを手に取って服を脱いだ所でコンコンとドアをノックする音が聞こえ返事をする前に開かれる.
今日も相変わらず周りをキラキラさせて現れたレイは少しわざとらしく驚いた表情を浮かべて

「おや…遅くまで起きていたのによく1人で起きれましたね.」

「 その顔うぜぇ…」

「酷いですね.まぁ、起きてなかったら蹴り落とそうかと思ってたんですから起きれて良かったですね.」

「……お前の方が酷でぇと思うんだが…」

こんな綺麗な顔をしときながら口から放たれる言葉は刺々しい.なのに何ともなさそうな顔をしていられるのだからある意味凄い奴だ.
はぁ…と俺がため息をつきながら服を着るとノックもなしに姫であるハンナが現れこいつも

「あら!ザロ起きれたのね!」

と本気で驚き喜んでいてこれは素だから何とも言えない、わざとならまだなにか言えるのに…俺はなんだと思われてるんだよ…と顔を顰めると突然部屋の電話がリリリリンと鳴り始めた.
レイが近寄りすぐさま取ると小声で何か返答しこちらを向いては

「申し訳ございません.今日の姫の向かう場所には私は行けなくなりました.なのでザロ様、姫のこと頼みましたよ.」

と言っては深く頭を下げては急いで部屋を出て行ってしまった.
え、頼みましたよって俺が護衛すんのかよ!?そんなの出来るわけないだろ!?と思い姫を見れば満面の笑顔を浮かべて自分を見て

「ザロ、今日は宜しくお願いね!あ、そうだわ!私の愛馬を見せてあげる!」

と突然言いだしては自分の腕を掴んでズンズンと先に進んで行く.
いや、まぁ雑魚なら余裕だが姫を狙う奴なんて雑魚じゃねぇだろ.なんて思いつつされるがままに姫様の愛馬がいるらしい馬小屋へと連れて行かれる.馬なんて滅多に使わない為馬小屋は初めての場所、少し興味深くキョロキョロと中を確認して馬を観察する.やはり王宮の馬らしく皮もツヤツヤで高そうなオーラがあった.

「レナード!おはようですわ!」

姫様の声が聞こえたと思えば1番奥の馬に抱き着いてキャッキャッと楽しそうに話しかけていた.レナードという名前の馬は、白い綺麗な肌にサラサラのたてがみを輝かせながら嬉しそうに彼女に擦り寄っていた.

「綺麗な子でしょう!私の愛馬のレナードですの!あ、ザロはどうしましょう…」

「俺は歩きで…歩きで行ける場所か?」

「…多分無理ですわね.」

「だよな…」

「まぁ、大丈夫ですわ!レイの馬を借りたら良いです!」

「…勝手に良いのか?」

勝手に馬を借りてそれをアイツに知られてシメられる、なんて嫌だぞ…
そんな俺の心配なんて全く知らないであろう姫様は全く何でもなさそうに

「私が言ったらきっと許してくれますわよ.レイの馬はレナードの隣ですの.この子よ.」

レナードの隣の馬を見ればこちらもこちらで奴らしいオーラを感じた.白い馬ではなく黒の馬で黒い肌は艶がとてもわかり易く馬は大人しく凛として立っていた.

「…へぇ、かっこいい馬だな.」

「レイは毎日朝早くから世話をなさってるのよ.というか、ここの者は自分の馬を自ら世話をなさってるから愛着も信頼関係もきっと他一倍にある筈よ.」

「え、自分からやってんのか?」

「えぇ、ここ島の移動手段は自分の足、馬、馬車…馬と馬車の違いなんて大差ないですから足か馬の2つしか無いわ.」

「じ、自転車とかねぇのか?人力車とか車とか.」

「ジテンシャ?ジンリキシャ?なんですの?それは.」

「他の国、島では有るんだよ.……それが無いならそこまで馬の世話をするのも理解できるな…」

「だから、大事にしてあげてね.レイの馬はとても大事にされてるの.」

そりゃ、流石に幾ら気に食わねぇ奴だからってこんなに大事に育てましたよって分かる馬を粗雑に扱う事自体難しい、まずそんな大事に育てられた馬が自分を粗雑に扱う野郎を乗せるわけがない.
恐る恐るレイの馬の首に手を添えれば馬は何の用だ?と言いたげな顔でこちらを見ていた.一応嫌われてはなさそうだ.

「あ、馬の名前はね.ダユよ.」

「ダユか…ダユ、今日は乗せてくれよ?」

と言ってみるとしょうがない…とでも言いたげな素振りで鼻を鳴らし身震いをしてこちらを見つめた.
何か飼い犬は飼い主が似るってどの動物にも適応するんじゃねぇか…?
なんて思いながらもお姫様と共に馬を小屋から連れ出すと久々に乗る馬からか少し落ちかけるも馬が嫌がり落ちる事はなく乗れた.
姫はどこからか箱を持ってきて馬に跨いで乗っていた.

「女は横で座るんじゃねぇのか?怒られねぇのか?」

「今更だもの.毎回怒られなれちゃったわ.」

「…慣れちゃダメだろ.」

「もうレイみたいな事言わないでよ!もう行くわよ、時間がもったいないわ!」

…レイも彼女が男らしい姫で大変だな
とどこかで一生懸命に動いているであろう彼に同情を思う.
小屋から出ると先程の雨はまるで降ってなかったかのような晴天に変わっていた.そして、よく通っているのか姫が馬を操り迷わずにまっすぐ走り出すのを後から追いかける.別に慣れてない訳では無いが馬が上等すぎた.自分が操作せずとももうどこに行くのか分かっている、と前に走る馬を追い掛けてグングンとスピードを上げていく.
小屋の近くに森に少し道らしき所を入りまっすぐ進んで行けば森は天気は晴天で太陽の光が入るはずが木の枝や葉に邪魔されて暗く鬱蒼としている.こんな所を何ともなさそうに進んで行く姫を見て此処は誰に教えられたんだろうか、と思った.ここの道の入口も殆ど塞がってる様に見えてもおかしくないし.この道も誰かが作ったのだろうし…なんて思いながら道の出口を出てみると先ほどと同じ晴天でそこら一面中に広がる色とりどりの花畑.さすがの自分もここまで大きな花畑は初めてで驚きを隠せず圧巻していると姫が馬から降りて自慢げにお母さんが作ったのだと教えてくれた.

「お母さんが私の為に作ってくれた花畑らしいの.綺麗でしょ?」

「あぁ…こんなに広い花畑は初めてだ.」

「私もここ以外を知らないけれどとっても綺麗な花畑だって自信はあるわ!」

「だろうな……忘れてたが、何を教えてくれるんだ?」

彼女に教えてもらえるから付いて来たのだし目的を忘れては大変だ、覚えてるうちに聞かなければと思って聞いてみるとストンと地面に座り自分も座るように促される.

「…そうね、まぁどうせレイは貴方と一緒にこの国を出て行ってしまうわ.」

「え、そうなのか?お前を置いて?」

「えぇ、私を置いてね.彼が探している人を探す旅に.だから、彼と出会った経緯を一応教えとかないとって思ったの.…聞くかしら?」

「…お前が話してくれるなら聞く.」

「じゃあ、暫くお聞きくださいな.私と彼の出会いとその後の彼の少しの呪い.」
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