地図にない島の秘密

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海の国2日目

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「あ…?ここはどこだ…」

目を開けて見慣れない天井を見て一瞬どこだここ…と動揺するも昨日は何故か姫を助けてしまい更に嵐でしばらくこの国に滞在する事になった事を思い出して起き上がり首を鳴らす.

「もう朝か…眠いな…」

「違います.昼です.」

「っ、背後に立つな!」

自分一人しかいないと思っていたが気づけば背後にこの国の騎士隊長のレイが立っていて咄嗟に近くの刀を喉元に当たらない様に突く.
しかし、普通の奴なら驚いたりするはずなのに奴はピクリとも動かず喉元に有る刀を手で退けて平然と自分を見下ろす.

「…お前、何で驚かねぇ…」

「刀抜く暇など無かったですし当たっても痛くもありませんよ.抜いてても当たる気は更々ないですがね.」

余裕そうな表情で笑顔でそう言ったレイは近くの窓から外を見て笑顔が無表情に変わり窓を触って無表情な顔に少し悲しげな雰囲気を含めばこちらを向いて

「朝になってご飯を食べに来ないでも放っておきましたが昼も来ないのでまさかと思ってきたら本当に寝ているとは…流石に起きて着替えなさい.」

と言えば部屋にあった箪笥から白いブラウスと薄い青のズボンを取り出し自分に渡した.そういえば自分の服がねぇ…机に置いてあったのにあったのは刀と自分の荷物だけ.

「おい、俺の服は…」

「洗濯に出しました.きっとメイドが今洗ってますよ.」

「なぁ?!俺はアレが良いんだ!」

「うるせ……我儘言ったら駄目ですよ.あんな汚い服では城が汚れるでしょう?」

「………」

こいつ今うるせぇって言おうとしたぞ.しかも、あんなを強調しやがった…
しょうがないので渡された服を着て刀を腰に下げれば奴に続いて食堂に向かえば通路を渡る途中で兵士達に出会いビシッと綺麗な敬礼をされ挨拶を交じわせながら通り過ぎると兵士達の会話が聞こえ毎度聞こえるのは

「隊長今日も綺麗だよな…」

「それな…でも、かっこいいし強いし凛としててつい目を奪われるよ…」

と彼を褒め憧れるという会話ばかり.
こういうのは普通だったら嫌われたり妬まれるのでは…と思っていたのだがそうでは無いみたいだな.
暫くして食堂に着くとたくさんの兵士達が和気あいあいと食事をしていて彼が中に入るとピタッと止まり彼に視線が集まる.
…何か怖がられてるんじゃねぇのか?と思う俺の気持ちを気にせず彼は料理人に俺の分も注文し終えると兵士達の方を向き

「何を話していたんだ?俺にも教えてくれるか?あ、後で相撲でもとろうか.今日は誰が俺に勝てるかな?」

と優しく明るい声音で皆に彼の声が響き渡れば兵士達はそれぞれ彼を囲みそれぞれが話していた話題を彼に教え始めて相撲を取りたい!と手をあげて彼に挑戦を挑み始めて和気あいあいとした空気に戻り寧ろさっきよりも明るく楽しそうな空気になっていた.
何でこんな空気になっているのだろう、普通なら隊長が来て怖いだとかあまり話をしなくなりヒソヒソで話すのでは?と思っていたのに今の空気はまるで想像とは真逆の空気になっていて驚く.

「あはは、今日も連勝だな?さぁて、俺も食事にするかなぁ.」

料理人から料理を貰いに行って俺の元に来ると俺の分を渡して空いてる席に座って兵士達と楽しそうに談笑.
俺はそんな所に行ける訳もなく離れた所の席に座ってご飯を食べる.
黙々と食べていると何人かの兵士が自分の方に近寄り

「あの、姫様を助けたんですよね?」

「あー…まぁな.偶然見つけただけだ.」

もうそんな事が広まっているのか…とため息を吐き兵士を見ればバッと礼をされた.

「姫を助けて下さってありがとうございました!」

「は…?いや、だから、偶然だっての.」

「でも、助けてくださったんでしょう?」

「え、いや…まぁ、おう.」

「なら、お礼を言うのは当たり前です!」

「…まぁ、好きにしろ.」

「はい!」

「……なぁ、姫って前にも助けられた事あんのか?2回目って聞いたんだが…」

「え、あぁ…前にレイ隊長に助けて貰ったんです.」

「…?あいつが助けるのは当たり前だろ?」

「いえいえ、レイ隊長は元々は能力者、賞金首を殺す、凄腕の殺し屋だったんです.」

「は…?あいつが?」

「はい.今はもう貼り紙はこの国にはありませんけど前は色んな所に……いたただ!!」

目の前にいた部下の背後にレイが立っていて明らか様に怒った笑顔で部下の頭にゲンコツを食らわしていた.
すると綺麗な礼をして

「…すみません、お食事中に私の部下が邪魔をしてしまって…」

と言って部下を別の所に行きなさいと命令し自分の前に座った.

「別に構いやしなかったけどな.そもそも、俺が聞いたんだ.あいつらは悪くねぇよ.」

「…私が気にするんです.もうあの頃の自分はあってはならない.」

「…教えてくれよ.お前前はどんな奴だったん…」

「失礼します、部下達と訓練をしなければ.」

俺が質問を言い切る前に無理矢理話を断つかのようにそう言うと立ち上がり去って行った.

「…なんだよ.そんなに触れられたくない程の過去なのか?」

ご飯を食べ終わり食器を返却し食堂から出ると途端に暇になってしまい部屋までの通路をそのまま引き返していると途中で訓練場かなにかから声が聞こえそちらに行ってみると兵士達が一心不乱に剣術の訓練をしていた.
もちろんそこにはレイの姿も.

「そこ、気を抜かない.相手の隙を狙い続けろ.」

「っ…はい!」

「相手の隙を狙えば必ず勝機は来る!そして、自分に隙が出来れば相手の勝機が来る.」

どの兵士も殆どが互角でそこらの盗人よりも断然強いと見てすぐに分かった.
互いに互いの隙を狙い続け見つけたら突き相手も作ったらすぐに体制を整え相手の隙を突き合っている.

「凄いな…」

感心して入口でその様子を見ていると後ろから人の気配を感じてそちらを見ると燕尾服を着た少し歳をとっているがそれが相手を更に引き立てていて大人カッコイイ雰囲気の男性が優しそうな笑顔を浮かべて中の様子を見れば

「こんにちは.凄いでしょう?」

「あぁ…凄いな.」

「…ここの兵が皆戦いの経験がない者だとは思えないでしょう?」

「え、無いのか?」

中で訓練をしている兵達は皆体格も良くそこらの変に強がっている雑魚よりも強い、戦いの経験が無いとはとても思えない.俺が驚いた表情で相手を見れば誇らしげな表情をこちらに向けて

「レイ隊長のおかげです.彼が居なければ彼らはヒョロヒョロしたモヤシだったでしょう.」

「そんなにか…?」

「えぇ…私も多少は嗜んでいて前の隊長の代わりに教えていましたがそれほど成長は見えず…レイ隊長が殆ど初心者の彼らをここまで鍛えあげたのです.」

そういう彼は声を出し細かく教えているレイ隊長を見つめ少し憧れの視線を向けていた.暫く二人で観覧していると執事は何か思い出したのかこちらを向いて

「姫がお呼びでした.さっそく向かってください.」

「え…俺が?まぁ…分かった.」

突然の事に少し驚くもまぁ別に悪い事はしてないし…今の所は.
執事に部屋の場所を教えてもらいその場所へ向かう.執事は来ないのかと聞くとここの訓練場の観察をしてから庭の水やりをするのが日課なんですと笑顔で言われたので1人で行く事に.
少し廊下を進むと他の部屋よりも高級そうな雰囲気のドアが見えノックをすると彼女の声が聞こえ中に入る.

「いらっしゃい.暇してたの.」

「…なんで俺を?」

彼女は桃色のフリルのスカートに白いブラウスを着て椅子の背もたれに足を乗せて頭を空に落としていた.姫がそんな格好をして大丈夫なのか…いや、ダメだろ.

「貴方暇そうだもの.そうでしょう?」

「……言い返せないのが悔しいな.」

「あはは.まぁ、許してちょうだい.」

笑いながら彼女は起き上がるとちゃんと椅子に座って足を揺らして自分を見上げて視線で座ってと促す.自分が座ると少し真剣な表情を浮かべて

「貴方はレイについてどれだけ知ってる?」

「……元々凄腕の殺し屋だった所まで.」

彼女が今から何を話すのかはあまり分からないが正直に言うと彼女はため息をついて

「まぁ、そうよね.」

1人でそう呟いてまたため息をつく.
俺はどうしたらいいのか分からない為黙っていると彼女は自分を見て

「レイについて教えてあげるわ.」

「は…?別に知りたくもな…」

「良いから、明日また来てちょうだい.」

拒否をしようにも有無を言わせぬ所はレイに似ている気がする…
俺が頷くと彼女は俺の後ろのドアを見て

「レイ、居るんでしょ.早く入って.」

そう言うとムスッとした表情を浮かべて待つ.
ドアはスッと開き入って来たのは彼女が言う通りレイだった.
彼の手には紅茶とお菓子が有り自分達に近寄ると間のテーブルに置いては距離をとる.

「何の話をしてたんです?」

「知ってるんでしょ.どうせ.」

はぁ…とまたため息をつき相手を恨めしそうに見るのは前にもドアの外にいるのを知らずに何かを話していたのだろう.地獄耳だな…

「さぁ、どうでしょう?」

完璧な笑顔を浮かべて首を傾げるのはもう聞いていましたと言っているようなものだろ…
ふぁあ…と欠伸を零すと俺を見て二人は呆れた様にため息をついた.

「「まだ寝足りないの(ですか)?」」

ほぼ同時に言った.

「うるせぇ.普段こんなにゆっくり寝れねぇんだ.寝れる時に寝ねぇと.」

そう呟くと姫は旅をしてる方だものね!と尊敬の眼差しでレイはこちらを見向きもせず

「ザロ様もお疲れのようですし今日はお開きに致しましょう.姫も後ほどピアノの先生がきますので練習を.」

それだけ言って出て行った.

「あらあら…レイが誰かに対してあんな態度とるのは珍しいわね.貴方嫌われてるみたいね!」

「……喜ぶなよ.」

はぁ…と俺がため息をつくと姫は楽しそうに笑っては俺の所に近寄って真剣な顔をすると

「明日も来てね.連れて行きたい所があるの.」

と言ってはまた笑顔を浮かべて俺の側から離れピアノの方へ駆けていく.
連れて行きたい所って何処だ…?
まぁ、明日も雨で暇だし来よう.

ドアから出てブラブラとしながら部屋に戻ってからふと窓を見て外の景色を観察するとまだ酷い雨が降り続け何故だか嫌な予感を何となく感じさせそれを消すようにベットに横になり眠りについた.


「……喉乾いた.」

深い眠りのはずが喉の乾きで目を覚ましノソリノソリと起きては部屋を出て食堂の方へ歩き出す.
欠伸を零しながら歩く廊下はとても静かでちょうど嵐がやんで月と空が綺麗に見えた.

そして、歩いているとどこからか綺麗な歌声が聞こえた.澄んでいて空気と混ざって溶けていくような落ち着く声.
食堂に近づくにつれ声は近くなり少し開いていたドアからこっそり入り込むと1人だけ立って窓を見ながら歌っていた.
金の透けるような髪に碧い瞳.
振り返る時の姿はきっと他の奴が見れば見とれるほどの美しさだろう.

「…覗き見ですか?」

夜遅くだからか食堂が暗いせいか彼の声は昼よりも小さく表情が柔らかく幼く見えた.
喉が渇いたから、と言うと変わりに水を持ってきて渡してくれた.
昼は纏めていた髪を降ろしただけで雰囲気がガラリと変わっていて二人しか居ないせいか奴の容姿を観察する.

「…お前って綺麗だな.」

観察してみて思った事を正直に言うとレイは突然の事に意味が分からないと言いたげな表情を浮かべてこちらを見てプフフフッ…と笑っては首を振って

「突然どうしたんですか?」

とこちらの真意を聞いて首を傾げる.その姿も月に照らされて綺麗で現実味がない.

「なんでも…思った事を言っただけだ.」

思った事を正直に伝え貰った水を飲み干し空になったグラスを相手に渡しそのまま食堂を出た.

なんだか昔に懐かれた子供の面影が奴に重なって動揺した.
奴はきっと…俺を許しはしないから.
部屋に戻ってベットに倒れ込むと呑まれるようにまた眠りに落ちた.
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