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第三章 アルテミルの街とその領主

第34話 ここは俺に任せて早く行け1

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一台の馬車がリザードマンの集団に襲われていた。かなり高級そうな馬車で、護衛と思われる騎士が二騎ついている。

騎士たちは後方から迫るリザードマンを食い止め、馬車を逃がそうとしていた。

しかし、待ち伏せしていたのであろう、馬車の前方にもリザードマンが現れ、馬車は急停車せざるをえなくなった。

リザードマンはトカゲに似た容姿の人形の魔物である。三叉の槍を持っている事が多いが、剣や槍も使う、おそらく死んだ冒険者から奪って使っているのだろう。人間と会話が成立する程ではないが、それなりに知能が高く、複数で連携しながら攻撃してきたりする。

危険度はDにランクされており、ベテランパーティなら十分倒せる相手ではあるが、初心者の冒険者の場合は意外と危険な相手である。

騎士は馬車が止まったことに気付き、一騎が前方に向かった。

騎士はなかなか腕が立つようで、一人でも何匹もリザードマンを仕留めており、このままなら騎士が勝つかに見えたが、リザードマンの隊列の後ろから数匹のアルマジリザードが出てきた事で情勢が変わった。

アルマジリザードはトカゲ型の魔獣で、リザードマンとは違い四足歩行で知能は高くない。ただ、背中側に鎧のような外皮を持っており、それは剣や槍では貫く事ができないほど硬く頑丈である。

アルマジリザードは、体を丸めて球状になることで、全身が鎧に覆われた球体形状となる。そして、その形態で転がりながら体当たりしてくるのだ。

騎士が馬上から槍で突くが、転がって体当たりしてくるアルマジリザードの外皮を貫くことができず、穂先は折れてしまった。直径1mを超える球体が馬に激突し、騎士は落馬した。

騎士はすぐに立ち上がり剣を抜いて斬りかかるが、球形態のアルマジリザードの鎧に剣が弾かれる。騎士はそのまま体当たりをうけて弾き飛ばされてしまった。

馬車前方に回った騎士も善戦していた。御者も矢を放っている。さらに、馬車から一人の男が降りてきて戦いに参戦していた。こちらにはアルマジリザードがいないので、なんとかなりそうな気配である。

ただ、後方の騎士の劣勢はすこしまずそうな状況である。アルマジリザードの体当たりは、衝撃は大きいが致命傷になるほどではない。しかし、当たればふっとばされてしまう。アルマジリザードの体当たり避けながら、他のリザードマンと交戦しているが、時々避けきれずにふっとばされている。



コジローはマロに戻るように指示、森の中から様子を伺っていた。先日、馬車を救った際に、どちらが悪者か間違えてしまったので、少し慎重になっていたのである。

しかし、やはり、魔物に襲われている人間を助けないわけにも行かない。ただ、ミルを巻き込むわけにもいかない。コジローはミルの護衛なのである。混戦に巻き込んでしまえばミルも危険になる。そこで、コジローはマロにミルを先に街に届けてくれるよう頼んだ。

コジローを置いていく事を嫌がったマロだったが、

「大丈夫だよ、マジックシールドをもらったろ?」

とコジローはマロを撫でながら言う。

「ミルを街に届けたらすぐに戻ってきてくれるだろ?」

『コジロ、戻るまで、待て。』

マロの声が心の中に聞こえてきた、久々にマロが人間の言葉を伝えてくるのを聞いた気がする。

「分かったよ、なるべく早く頼むよ」

それを聞いて、マロはミルを載せ、全力で駆け出していったのだった。



マロが戻るまでコジローは待つつもりだったのだが、コジローの存在に気づいたリザードマンが居た。

後方のリザードマン達に援軍か、さらに四匹のリザードマンが来ていた。弓を持っている、リザードマンアーチャーである。そのうちの一匹がコジローを発見したのである。

矢を射かけられるコジロー。

矢はやっかいだ、戦っている騎士も危険だ。

コジローは次元剣を抜き、リザードマンアーチャーの背後に転移し、弓を持つリザードマンを斬り捨てた。



ふと見れば、アルマジリザードの体当たりを受けて倒れた騎士に、リザードマンが切りつけようとしている。コジローはそのリザードマンの背後に転移し斬り倒す。

「大丈夫か?!」

倒れていた騎士に手を貸そうとしたところ、騎士が叫んだ

「危ない!」

背後からアルマジリザードが体当たりをかけてきていた。


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