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第一部 転生編
第8話 自立しないとね
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(1)この世界には電化製品のような便利なものはない。
(2)代わりに魔法という便利なものがある。生活はほぼそれに頼って成立している。
(3)クレイには魔力がまったくなく、その魔法が使えない。
(4)だが、この世界には魔道具というものがあり、どうやらクレイもそれを使えば生きて行けそうである。
ただ……
(5)この世界において、魔力がまったくない者は、社会的に酷い扱いを受ける。
ヴァレット家の中にで特に差別される事もなく養育されていたので最初は分からなかったが、成長していくうちに、自分のような “魔なし” が外の社会でどのような扱いを受けるのか、クレイも徐々に知る事になる。
単に生活が不便であると言うだけならば工夫次第でどうにかなる部分も多いだろう。そもそも地球では魔力などなくても普通に生活できていたのだから。(一人のためにインフラを整えるというのは難しいだろうが魔道具があるならなんとかなりそうな気はする。)
ただ、差別問題は頭が痛い。差別はやめろとクレイ一人が叫んだところでどうにもならないだろう。
人というのは、集まれば必ず差別したがる者が出てくる。本能的に自分達と異なる者を排除しようという保守的な意識も働くのだろうが、それだけではなく、人と同じでは満足できない、という者が必ず出てくるからである。人には社会的欲求(承認欲求)というものがあるからだ。衣食住が満たされれば、次はそれを満たしたがる者が出てくるのである。そのために、マウンティングに命をかけてしまうような者まで出てくるのが人間なのだから。
ましてや、この世界では、魔力の量が生活の質に直結していて、その結果、階級社会ができあがっているのだ。それを覆すというのは簡単ではないだろう。
クレイを捨てずに普通に育ててくれる両親には感謝だが、どうやら貴族社会においては自分の存在がヴァレット家の災となってしまう可能性がある事が分かった。
自分のせいで父が侮られ、ヴァレット子爵としての仕事に支障が出るようになったり、兄と姉が結婚できなくなったり、という事が起きるかも知れないのだ。
だから、叔母のジャクリンも自分を放逐しろと強く言ってくるのだ。自分の存在が、ジャクリンにも悪影響を及ぼす可能性があるのだろう。
そんなわけで、クレイも、できるだけ早急にヴァレット家と縁を切りらなければならないと考えるようになった。
家に迷惑が掛かるという事はともかくとして、両親だっていずれ死ぬ。一生両親に寄生して生きていけるわけではない。どうにか自立する方法を考える必要がある。
幸いにも、今すぐ放逐されると言う事はないのだから、両親に感謝し甘えさせてもらいながら、なんとか自立のための準備をする事にした。
何か仕事になるような、知識や技能を身につけておく、日本風に言うなら「手に職をつける」ために、クレイはまだ幼いうちから勉強を始めたのであった。
幸い家は裕福で、勉強の機会は平民より多かった。
だが、何をするか。魔力がない自分にはできない事が多い。何か、魔法がなくてもできることで、社会に需要がある事を見つけなければならない。
そこで目をつけたのが魔道具であった。自身が長い付き合いになりそうな魔道具である。それを仕事にできたら色々と捗るだろう。
今は魔道具は、必要な魔力の割に効果が芳しく無く、あまり評価されていない。この効率をもっと上げられないか。あるいは何か、ヒット商品となるような便利な道具が作り出せれば…。
クレイがそんな思考に至ったのには、もう一つ理由があった。それは、先々代のヴァレット子爵(つまりクレイの曽祖父)が遺した資料を発見した事である。
クレイは早急な自立に向けて勉強したいと両親に訴えた。両親もすぐに同意してくれた。(両親も、クレイを放逐せずに育てると決めたものの、クレイを将来どうしたら良いのかは悩むところがあったのだ。)本人が自分から自立したいと言い出してくれたのなら、それを叶えてやりたい。
まずは両親と、家の使用人達に、この世界の言葉や文字、常識を学んだ。そして読み書きができるようになると、家の書庫の資料を自由に見て良いと言う事になった。
書庫に籠もり、読書をするようになったクレイ。だが、書庫を漁っているうち、その奥に埋もれていた、ホコリを被った箱を見つけたのである。それは、曽祖父の遺した資料や魔道具であったのだ。(機を見て捨てられる予定でまとめてあったのだが、そのまま忘れ去られてしまったらしい。)
クレイの曽祖父は、趣味で魔道具の研究をしていたのだそうだ。
(2)代わりに魔法という便利なものがある。生活はほぼそれに頼って成立している。
(3)クレイには魔力がまったくなく、その魔法が使えない。
(4)だが、この世界には魔道具というものがあり、どうやらクレイもそれを使えば生きて行けそうである。
ただ……
(5)この世界において、魔力がまったくない者は、社会的に酷い扱いを受ける。
ヴァレット家の中にで特に差別される事もなく養育されていたので最初は分からなかったが、成長していくうちに、自分のような “魔なし” が外の社会でどのような扱いを受けるのか、クレイも徐々に知る事になる。
単に生活が不便であると言うだけならば工夫次第でどうにかなる部分も多いだろう。そもそも地球では魔力などなくても普通に生活できていたのだから。(一人のためにインフラを整えるというのは難しいだろうが魔道具があるならなんとかなりそうな気はする。)
ただ、差別問題は頭が痛い。差別はやめろとクレイ一人が叫んだところでどうにもならないだろう。
人というのは、集まれば必ず差別したがる者が出てくる。本能的に自分達と異なる者を排除しようという保守的な意識も働くのだろうが、それだけではなく、人と同じでは満足できない、という者が必ず出てくるからである。人には社会的欲求(承認欲求)というものがあるからだ。衣食住が満たされれば、次はそれを満たしたがる者が出てくるのである。そのために、マウンティングに命をかけてしまうような者まで出てくるのが人間なのだから。
ましてや、この世界では、魔力の量が生活の質に直結していて、その結果、階級社会ができあがっているのだ。それを覆すというのは簡単ではないだろう。
クレイを捨てずに普通に育ててくれる両親には感謝だが、どうやら貴族社会においては自分の存在がヴァレット家の災となってしまう可能性がある事が分かった。
自分のせいで父が侮られ、ヴァレット子爵としての仕事に支障が出るようになったり、兄と姉が結婚できなくなったり、という事が起きるかも知れないのだ。
だから、叔母のジャクリンも自分を放逐しろと強く言ってくるのだ。自分の存在が、ジャクリンにも悪影響を及ぼす可能性があるのだろう。
そんなわけで、クレイも、できるだけ早急にヴァレット家と縁を切りらなければならないと考えるようになった。
家に迷惑が掛かるという事はともかくとして、両親だっていずれ死ぬ。一生両親に寄生して生きていけるわけではない。どうにか自立する方法を考える必要がある。
幸いにも、今すぐ放逐されると言う事はないのだから、両親に感謝し甘えさせてもらいながら、なんとか自立のための準備をする事にした。
何か仕事になるような、知識や技能を身につけておく、日本風に言うなら「手に職をつける」ために、クレイはまだ幼いうちから勉強を始めたのであった。
幸い家は裕福で、勉強の機会は平民より多かった。
だが、何をするか。魔力がない自分にはできない事が多い。何か、魔法がなくてもできることで、社会に需要がある事を見つけなければならない。
そこで目をつけたのが魔道具であった。自身が長い付き合いになりそうな魔道具である。それを仕事にできたら色々と捗るだろう。
今は魔道具は、必要な魔力の割に効果が芳しく無く、あまり評価されていない。この効率をもっと上げられないか。あるいは何か、ヒット商品となるような便利な道具が作り出せれば…。
クレイがそんな思考に至ったのには、もう一つ理由があった。それは、先々代のヴァレット子爵(つまりクレイの曽祖父)が遺した資料を発見した事である。
クレイは早急な自立に向けて勉強したいと両親に訴えた。両親もすぐに同意してくれた。(両親も、クレイを放逐せずに育てると決めたものの、クレイを将来どうしたら良いのかは悩むところがあったのだ。)本人が自分から自立したいと言い出してくれたのなら、それを叶えてやりたい。
まずは両親と、家の使用人達に、この世界の言葉や文字、常識を学んだ。そして読み書きができるようになると、家の書庫の資料を自由に見て良いと言う事になった。
書庫に籠もり、読書をするようになったクレイ。だが、書庫を漁っているうち、その奥に埋もれていた、ホコリを被った箱を見つけたのである。それは、曽祖父の遺した資料や魔道具であったのだ。(機を見て捨てられる予定でまとめてあったのだが、そのまま忘れ去られてしまったらしい。)
クレイの曽祖父は、趣味で魔道具の研究をしていたのだそうだ。
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