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第一部 転生編

第21話 クレイ 「躱された、だと…?」

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魔導銃の威力を見せつければ模擬戦は諦めるだろうと思ったのだが、ギルマス・サイモンはやっぱり(模擬戦を)やれと言う。しかも、魔導銃を使うなと言い出した。

ただ、(近接戦闘の)模擬戦はやりたくないと言っていたクレイも、少し考えを改めていた。

前衛を任せられる仲間をみつけてパーティを組むというのが後衛職のあり方だが、確かに言われてみれば、何らかのアクシデントで接近戦を強いられる事がないとは言い切れない。

もちろんクレイは銃だけを開発して通用すると思っていたわけではない。その他の武器や防具も開発し、身を固めてきたのだ。魔物との戦闘で試すつもりではあったが、その前に人間相手に通用するかどうかを試しておくのも悪くない。

クレイ 「長銃ライフルは使用禁止と言われたが、コレなら使ってもいいだろう? 接近戦はこれで戦う予定なんだ」

そう言いながらクレイはマジックポーチから回転式拳銃リボルバーを取り出した。

サイモン 「それも、“銃” ってやつなのか? どれくらいの威力なんだ?」

クレイ 「これは初期の頃に開発した玩具に毛が生えたようなもので、大した威力はないよ。実際、これを体で受けとめた人間は倒れもしなかったしな。弾丸も、ほら、こんな感じで柔らかいんだ」

弾丸の弾頭部分を取り外してサイモンに渡した。それは薬莢にセットされている時は細長かったが、取り外してみると十字に広がった。手で握ってみると確かに柔らかい。

サイモン 「まぁこれならいいか…。じゃぁピカキン、用意しろ!」

ピカキン 「用意はできてるぜぇ!」

言うやいなや、ピカキンがいきなり木剣で打ちかかってきた。

弾を全部取り出して柔らかい弾頭の弾に入れ替える作業をしていたクレイは、不利な体勢のまま攻撃を受ける事になる。

クレイ 「ちっ卑怯だなぁおい?」

かろうじて転がりながら攻撃を躱したクレイ。それを見てピカキンが爆笑していた。

クレイ 「騎士道精神に悖る行為じゃないのか?」

ピカキン 「騎士道精神??? 俺は平民だぜ? なにそれ美味しいの? ってなもんだ。だいたい魔物に襲われた時に卑怯だって言ったって聞いては貰えないぜ?」

クレイ 「フ、試しに言ってみただけだ」

騎士道を重んじる(例えばジャクリン)ならこう言えば止まる可能性があるので、つい試してみたくなって言ってみたのだ。

クレイ 「卑怯上等、後悔するなよ?」

そう言いながらクレイは全身に身につけていた魔導具を一斉に起動させた。全身の筋肉を強化する魔導具を両腕両足そして胴体に装着しているのだ。さらに、攻撃を受けた際に魔法障壁が自動発動する魔導具、そして、額に装着している鉢金には動体視力と思考速度を加速する魔法陣が組み込まれている。

そして、その気の無いフリをしながらゆっくり立ち上がると見せかけ、クレイはいきなり銃をピカキンに向け発砲する。

パンと音が鳴る。

だが、同時にバシンと弾が壁に当たった音がしていた。

弾は外れてしまったのだ。

クレイ 「くそ、レールガンに慣れすぎてた」

反動が少ないレールガンと違い、旧タイプの爆発力によって弾を射出する銃であったため反動が大きく、しっかりホールドして撃ったわけではないので射線がズレてしまったのだ。(レールガンも短い砲身で高速で弾を打ち出そうとすると反動は大きくなるが、クレイのレールガンは非常に長いレールを使って弾を加速しているのでそれほど反動はないのである。)

銃口が逸れた方向と、ちょうど反対方向にピカキンが移動していたのもあった。つまり半分マグレで躱せたようなものなのだが、ニヤリと笑って自力で躱してみせたような顔をするピカキン。

まぁ、半分はピカキンの作戦が当たったともいえるが。先程壁を破壊してしまった魔導銃ライフルの破壊力を見ていたピカキンも銃を非常に警戒し、銃口から身を躱すように動き回る作戦だったのだ。

止まらず高速で動きまわる作戦は間違っていない、クレイとしても高速で動き回られると狙いが定めづらくなる。

サイモン 「ふむ、なるほど。“銃” がどれほど強力でも、当たらなければ意味がない」

ピカキン 「そういうこった!」

だが、さすがはDランクの冒険者、チャンスを逃しはしない。即座にクレイの銃を叩き落とそうと剣を振ってきた。

クレイは慌てて銃を打たれないように手を引っ込め、距離をとるために下がらざるを得なくなる。

魔導具で強化されているクレイもそこそこの動きができている。だが、ピカキンの動きもかなり速い。

近づけば銃は外れにくくなるが、相手の剣が銃を(腕を)狙ってくる。距離が離れれば(反動が強い)銃は当たりにくくなる。(ましてや標的が高速移動していれば難易度は跳ね上がる。)

落ち着いてしっかりホールドして撃つ必要がある。だが、離れて銃を構えればピカキンに横に回り込むように高速移動されてしまう。それを追う銃口がなかなか定まらず、一周回る頃には距離を詰められ木剣が銃を叩き落としにくるのだ。

先程、弾を込めている最中に攻撃されたため、弾倉には二発しか弾を込められていなかった。既に一発外してしまったので残り一発。無駄弾を撃つわけにはいかないのだ。(弾が空になったからといって込め直す時間を与えてはくれないだろう。)

さらに、クレイの動きを補助している魔導具の活動限界時間も迫ってくる。

魔導具を動かすにも魔力が居る。強い効果がある魔導具ほど魔力の消費量も多くなる。だが、それを駆動するだけの魔力はクレイにはない。そこで、魔導具を動かす動力源として魔導具にはすべて魔石がセットされているのだが、全開で作動させると魔石の魔力はあっという間に減ってしまうのだ。

魔導具を全力で起動しておける時間、それは約三分ほどであった。

クレイ 「動きを止める必要があるか…」

このままではジリ貧である。クレイは意を決し、わざと一瞬隙を作って見せる。

誘い込まれるようにピカキンが打ち込んで来る。

意外とチョロいと思いながら、クレイが得意技を発動した。


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