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第二部 ダンジョン攻略編

第107話 秘密を知られたからには消えてもらおう

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ラルク 「うぐっ……っ!!! ばかな!!! 信じられん……まるで、剣聖カイゼンのような速度だった」

クレイ 「まぁ、技もへったくれもない、力押しでただ打ちまくっただけだがな。手加減の度合いの練習にはなった」

ラルク 「技術を凌駕する圧倒的な力攻め……それは、身体強化の効果なのか? それほどのレベルの身体強化、どれだけの魔力を持ってるんだ?」

クレイ 「その辺は秘密だ、手の内を晒す気はない。それより…」

そう言うとクレイは木剣をマジックバッグに収納し、魔導銃を取り出し、ラルクに見せた。

ラルク 「それはなんだ? ああ、治癒系の魔導具か、折れてしまった腕を治療してくれるのか……

…え? 違う? 攻撃用の武器? そう言えば、本職は後方支援タイプだと言ってたな、それがお前のメインの武器か?」

クレイ 「そうだ。ちなみに、どれくらいの威力があるかというと……」

そう言うとクレイは少し遠くにあった岩山に向かって魔導銃を撃った。(※ルルとリリが向かった方向とは反対の方向である。)すると、着弾の轟音とともに高さ数十メートルはある大岩の崖が、粉々に砕けて消滅してしまった。

あんぐり口を開けるラルク……

そもそも、ダンジョン内の岩はただの岩ではない。洞窟型ダンジョンの壁はほぼ破壊不可能と言われているが、それと同じく破壊は不可能なはずの代物なのだ。

クレイが使ったのは、リルディオンの魔法陣技術を学んでから改良した魔導銃の中でも高威力のタイプである。

クレイの魔導銃は、物体をわずかに浮かせてわずかに移動させる魔法陣を並べてレールガン方式で弾丸を射出するわけだが、魔法陣が最適化され、効率が十倍になっている。さらに注いだ魔力に応じて加速する力が強くなる仕様に変更されているのだ。

そこにリルディオンの発魔所から供給される膨大な魔力を供給する事で、打ち出される弾丸の速度は、推定だが音速の数十倍にもなる計算である。

魔法による防御障壁が存在する世界であるが、これほどの速度なら、単純に物理的な弾丸をぶつけるだけだが、魔力障壁も貫通してしまう事が可能であろう。

ちなみに岩が粉々になったのは、貫通力よりストッピングパワーを重視し、散弾タイプになっているためである。もちろん弾丸に回転も与えていない。

ルル 「なんにゃ?」
リリ 「何の音にゃ?」

ルルとリリも轟音に驚き慌てて戻ってきた。

クレイ 「魔導銃のデモンストレーションをしただけだ。木剣は見つかったのか?」

ルル 「見つかったにゃ!」
リリ 「ついでに何匹かオークも狩ってきたにゃ」

クレイ 「早いな、偉いぞ」

順番にポンポンとルル・リリの頭を撫でてやると、クレイは魔導銃をラルクに向けた。

ラルク 「その、とんでもない武器を、俺に向けてどうするつもりなんだ?」

クレイ 「いや、よく考えたら、お前は気づいてしまったよな? 俺が転移魔法を使える事を…。

ギルドの訓練場では目眩ましを使ったから何が起きたか誰も気づいてないと思うが…」

ラルク 「おお、ダンジョンに飛ばされたのは、やはりお前の仕業だったんだな! というか、転移魔法なんて伝説だけで実際に使える人間が居るなんて思わなかったぞ。本当に世界は広いな!」

クレイ 「…まぁ、ずっと隠し切れはしないとは思っていたんだが…とは言え、ちょっと早すぎる。解るだろう? 伝説の魔法を実際に使える人間が居ると知られると、色々と面倒な事になると思わないか?」

ラルク 「なるほど、まぁそうだな。貴族とか、お前を手に入れようとする奴が出るかもな、便利そうな能力だもんなぁ」

クレイ 「…まぁそういう事だ。他にも身体強化とか色々知られてしまったしなぁ」

ラルク 「いや、それはお前が勝手にバラしたんだろが…」

クレイ 「秘密を吹聴するような者なら、最悪、消えてもらう必要があるかも知れん。

幸いここはダンジョン、殺しても証拠は残らない。転移で街から直接移動してきたから、俺達が―――お前も、ダンジョンに来ている事は誰も知らないはずだし?

あ、言っとくが、身体強化はさっきのがマックスじゃないからな? その気になったら、お前が反応できない速度域まで加速できる」

ラルク 「…やっぱり、さっきのはうっかり余所見した瞬間てわけじゃなかったわけだ」

クレイ 「まぁ、消すというのは冗談だがな、お前が、余計な事をほかで喋らないって約束してくるなら、な? だが、もし約束が守れないようなら、冗談ではなくなるかも知れん…」

ラルク 「ああ…ああ、分かった! 誰にも喋らん! 約束する」

クレイ 「そうか、それは良かった。俺は、秘密を守らせるために、仲間は全員奴隷にする予定だからな。…それとも、お前も奴隷(なかま)になるか? そうしたら約束が破られる心配もなくなるしな」

ラルク 「…奴隷?」

なぜか自慢気に首輪を見せつけるルルとリリ。

ラルク 「なるほど…」

クレイ 「まぁ、それも冗談だ、誰かを脅して無理やり奴隷にするのは重罪だからな。ダンジョン内で誰かが消えても証拠は残らんが、奴隷にしたら証拠(奴隷)を連れ歩く事になるからな」

ラルク 「…だったら、奴隷じゃなく、契約魔法で縛ればいいんじゃないのか?」

クレイ 「…へ?」


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