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序章(プロローグ)
第25話 出入りは門からシテ下さい
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ところで…俺はたまにワッツローヴの街に行くようになったわけだが、結局、出入りは列にならんで大人しく門でチェックを受けるようにしている。
前回、商業ギルドのグランドマスター、ロデスに言われたのだ……
.
―
――
――――
――――――――
ロデス「あ、ところで、もしかして、街に来た時、門を通らずに塀を乗り越えたりしませんでしたか?」
「……」
ロデス「…したんですね?」
「ごめんにゃ、ちょっと面倒くさくにゃって。結界を壊してしまったようだにゃ」
ロデス「ははは、たしかに、いちいち入城退城で門番の尋問を受けるのは気分が良いものではありませんよね、分かります」
ロデス「分かりますが…ただ、結界が壊された事で、かなり大事になっておりまして。結界を張る魔導具が故障してしまったとかで。未だ、街の上空を守るはずの結界が張られていないのです」
「そうだったのか、それは悪い事をしたにゃ。代わりに俺が結界を張ってやるにゃ」
ロデス「ああいや、それはおやめ下さい。そんな事をすると、カイト様の存在が貴族に知られる事となってしまいます。そうなると、面倒な事に巻き込まれるかも知れませんから」
「あ~にゃるほど…」
「でも、こっそり張っておけば分からないのでは?」
ロデス「それは……そうかも知れませんが…。でも、大丈夫でしょう、もう結界は復旧する頃ですから。余計な事をしてどこでバレるか分かりませんから。私もカイト様が結界崩壊に関わっている事は一切口外しませんので。信用して頂いて大丈夫ですよ」
「……黙ってる代わりに口座を作れとか…?」
ロデス「そんな事は言いませんて。恩に着る必要もありません」
「まぁそんな事で恩に着たりはしないけどにゃ」
ロデス「それに、そんな交換条件を出すような相手を、カイト様だって信用しないでしょう? 私達は、本当の意味で、カイト様に信用して頂ける存在になりたいのです」
「そ、そうにゃ? …まぁ頑張れにゃ」
ロデス「はい。ただ…、カイト様も今後はちゃんと門を通って入ったほうがよろしいかと。ちなみに今日はどうやって…?」
「……」
ロデス「門を通らずに入ったのですね? 空から? え、違うルートで……ちなみにどこから?」
「それは秘密にゃ」
ロデス「なるほど、秘密ならば仕方ありませんね…」
ロデス「ただ、今後はそれもやめたほうがよろしいかと。実は、街の人口を検知する魔導具を領主が設置しているという噂があるのです」
「にゃんと。どこの街にもそれはあるにゃ?」
ロデス「いえ、普通の街には無いと思います。ただ、元々この街は獣人を外に出さない法律がありまして。獣人が街から脱走していないかチェックするために設置されたようです。人数が減ることを警戒しているのだと思いますが…」
「噂って言ってるが、その言い方だと、確信があるみたいだにゃ」
ロデス「まぁ、商業ギルドの裏情報網から…ほぼ確定かと。まぁ、人数が増える分には警戒はされていないのではないかと思いますが、検知はされている可能性があります」
「にゃぁ…」
ロデス「別に、カイト様はお尋ね者というわけでもないのですから―――ないですよね?―――こっそり入る必要も無いと思いますよ」
ロデス「この街では獣人はトラブルに巻き込まれやすいですが、それは貴族が関わった場合で。平民はみな獣人にも優しいですから」
ロデス「先日お渡しした商業ギルドのカスタマーカードがあれば、門番に止められる事はありませんから」
ロデス「ええ分かっています、一度止められた事があるんですよね? その後、衛兵にはキッチリ根回しをし直しておきましたから。今後は止められると言う事はないはずです」
ロデス「でも、もし領主にカイト様の真の実力が知られたら、きっと面倒な事に巻き込まれるでしょう。領主のワッツローヴ伯爵が、カイト様を自分の配下に加えようとちょっかいをだしてくる可能性がありますから」
「…まぁ別に、ちょっかい出してきたら逃げるだけだけどにゃ。逃げられないなら潰すにゃ」
ロデス「え…」
ロデス「ま、まぁ、そうなるのも面倒でしょうから、ならないように、実力を隠しておいたほうがよいでしょう」
「だにゃ」
――――――――
――――
――
―
.
というわけで、以降はちゃんと門から、門番のチェックを受けて入城している。
ただ、商業ギルドが裏で根回ししてくれたのが奏効してか、カードを見せるだけで何も訊かれず、ほとんど顔パス状態となった。
ロデスは貴族用の門でも通用すると言っていたが、貴族と鉢合わせすると面倒な事になりそうなので庶民用の門を使うように言われている。
金を使えと言われている事もあり、最近は、街へ通う頻度は以前より増えた。
そして金を使えば、今度は商品を受け取りに来たりしなければならないなど、また街に来なければならない理由が増えていく。
今日は、服を取りに来た。大金を使わなければならないので、古着はやめて、新品の服を買う事にしたのだ。すべてオーダーメイドである。納期はとっくに過ぎているので、いい加減受け取りに行かないとまずいだろう。
なんとか受け取りの必要のない方法で大金を使う方法を考えたいのだが、食べたり飲んだりで金を使うのには限界がある。
料理や食材を大量に発注して亜空間に貯蔵しておく事もしたが、それも結局準備や調理に時間が掛かるので待たされる事には変わりなかった。
街で一番高い買い物は、土地家屋だそうだが、そんなモノ買ったら領主に見つかってしまう。
(まぁ、見つかって困るというのは実は商業ギルドのロデスの都合であって、俺の都合ではないんだが。俺的には、見つかったからなんだという話な気も少ししている。何か貴族が言ってきてもスッパリ断ればいい話じゃないか?)
事業に投資もロデスに提案されたが、投資すれば結局最終的には金が増えてもどってきてしまうので意味がない。それに、事業を行うとなったら人間社会とどんどん深く関わっていく事になる。
日本ではずっと使われる側だったので、社長になって人を使う立場になってみたいという気もなくはなかったが、経営者になればそれはそれで色々と面倒な事も多くなるのだろう。それはそれで、また別の意味で人間の嫌な面を発見する事になりそうなのでやめた。
だが、ある日、俺は金を大量に使う方法を見つけた。
前回、商業ギルドのグランドマスター、ロデスに言われたのだ……
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ロデス「あ、ところで、もしかして、街に来た時、門を通らずに塀を乗り越えたりしませんでしたか?」
「……」
ロデス「…したんですね?」
「ごめんにゃ、ちょっと面倒くさくにゃって。結界を壊してしまったようだにゃ」
ロデス「ははは、たしかに、いちいち入城退城で門番の尋問を受けるのは気分が良いものではありませんよね、分かります」
ロデス「分かりますが…ただ、結界が壊された事で、かなり大事になっておりまして。結界を張る魔導具が故障してしまったとかで。未だ、街の上空を守るはずの結界が張られていないのです」
「そうだったのか、それは悪い事をしたにゃ。代わりに俺が結界を張ってやるにゃ」
ロデス「ああいや、それはおやめ下さい。そんな事をすると、カイト様の存在が貴族に知られる事となってしまいます。そうなると、面倒な事に巻き込まれるかも知れませんから」
「あ~にゃるほど…」
「でも、こっそり張っておけば分からないのでは?」
ロデス「それは……そうかも知れませんが…。でも、大丈夫でしょう、もう結界は復旧する頃ですから。余計な事をしてどこでバレるか分かりませんから。私もカイト様が結界崩壊に関わっている事は一切口外しませんので。信用して頂いて大丈夫ですよ」
「……黙ってる代わりに口座を作れとか…?」
ロデス「そんな事は言いませんて。恩に着る必要もありません」
「まぁそんな事で恩に着たりはしないけどにゃ」
ロデス「それに、そんな交換条件を出すような相手を、カイト様だって信用しないでしょう? 私達は、本当の意味で、カイト様に信用して頂ける存在になりたいのです」
「そ、そうにゃ? …まぁ頑張れにゃ」
ロデス「はい。ただ…、カイト様も今後はちゃんと門を通って入ったほうがよろしいかと。ちなみに今日はどうやって…?」
「……」
ロデス「門を通らずに入ったのですね? 空から? え、違うルートで……ちなみにどこから?」
「それは秘密にゃ」
ロデス「なるほど、秘密ならば仕方ありませんね…」
ロデス「ただ、今後はそれもやめたほうがよろしいかと。実は、街の人口を検知する魔導具を領主が設置しているという噂があるのです」
「にゃんと。どこの街にもそれはあるにゃ?」
ロデス「いえ、普通の街には無いと思います。ただ、元々この街は獣人を外に出さない法律がありまして。獣人が街から脱走していないかチェックするために設置されたようです。人数が減ることを警戒しているのだと思いますが…」
「噂って言ってるが、その言い方だと、確信があるみたいだにゃ」
ロデス「まぁ、商業ギルドの裏情報網から…ほぼ確定かと。まぁ、人数が増える分には警戒はされていないのではないかと思いますが、検知はされている可能性があります」
「にゃぁ…」
ロデス「別に、カイト様はお尋ね者というわけでもないのですから―――ないですよね?―――こっそり入る必要も無いと思いますよ」
ロデス「この街では獣人はトラブルに巻き込まれやすいですが、それは貴族が関わった場合で。平民はみな獣人にも優しいですから」
ロデス「先日お渡しした商業ギルドのカスタマーカードがあれば、門番に止められる事はありませんから」
ロデス「ええ分かっています、一度止められた事があるんですよね? その後、衛兵にはキッチリ根回しをし直しておきましたから。今後は止められると言う事はないはずです」
ロデス「でも、もし領主にカイト様の真の実力が知られたら、きっと面倒な事に巻き込まれるでしょう。領主のワッツローヴ伯爵が、カイト様を自分の配下に加えようとちょっかいをだしてくる可能性がありますから」
「…まぁ別に、ちょっかい出してきたら逃げるだけだけどにゃ。逃げられないなら潰すにゃ」
ロデス「え…」
ロデス「ま、まぁ、そうなるのも面倒でしょうから、ならないように、実力を隠しておいたほうがよいでしょう」
「だにゃ」
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というわけで、以降はちゃんと門から、門番のチェックを受けて入城している。
ただ、商業ギルドが裏で根回ししてくれたのが奏効してか、カードを見せるだけで何も訊かれず、ほとんど顔パス状態となった。
ロデスは貴族用の門でも通用すると言っていたが、貴族と鉢合わせすると面倒な事になりそうなので庶民用の門を使うように言われている。
金を使えと言われている事もあり、最近は、街へ通う頻度は以前より増えた。
そして金を使えば、今度は商品を受け取りに来たりしなければならないなど、また街に来なければならない理由が増えていく。
今日は、服を取りに来た。大金を使わなければならないので、古着はやめて、新品の服を買う事にしたのだ。すべてオーダーメイドである。納期はとっくに過ぎているので、いい加減受け取りに行かないとまずいだろう。
なんとか受け取りの必要のない方法で大金を使う方法を考えたいのだが、食べたり飲んだりで金を使うのには限界がある。
料理や食材を大量に発注して亜空間に貯蔵しておく事もしたが、それも結局準備や調理に時間が掛かるので待たされる事には変わりなかった。
街で一番高い買い物は、土地家屋だそうだが、そんなモノ買ったら領主に見つかってしまう。
(まぁ、見つかって困るというのは実は商業ギルドのロデスの都合であって、俺の都合ではないんだが。俺的には、見つかったからなんだという話な気も少ししている。何か貴族が言ってきてもスッパリ断ればいい話じゃないか?)
事業に投資もロデスに提案されたが、投資すれば結局最終的には金が増えてもどってきてしまうので意味がない。それに、事業を行うとなったら人間社会とどんどん深く関わっていく事になる。
日本ではずっと使われる側だったので、社長になって人を使う立場になってみたいという気もなくはなかったが、経営者になればそれはそれで色々と面倒な事も多くなるのだろう。それはそれで、また別の意味で人間の嫌な面を発見する事になりそうなのでやめた。
だが、ある日、俺は金を大量に使う方法を見つけた。
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【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
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