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序章(プロローグ)
第37話 領主邸に殴り込みにゃ!
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風刃を飛ばし、モイラーの手足を斬り飛ばした。(防御用の障壁を張っていたようだが、風刃が当たるとガラスのように簡単に割れてしまった。)
そして最後に恐怖の形相を浮かべるモイラーの首を刎ね、それを亜空間に収納した俺は、踵を返し街へ戻った。
俺を見た門番の兵士がギョッとした顔をしていた。先に逃げ帰ってきた衛兵から話を聞いていたのだろう。俺が生きて現れたと言うことはつまり、貴族の騎士達は死んだと理解したのかも知れない。
俺は門番のチェックを無視し、入場待ちの列の横をスタスタと素通りして街に入る。
門番が焦って声を掛けてきたが、魔力を少し込めて睨みつけたら黙った。
魔力を乗せて殺気を放つとそれは【威圧】という魔法効果を発揮する。まぁ乗せた魔力は極々少量だが。本気でやればドラゴンの上級種と【威圧】で勝負して勝てる。そんなものをちっぽけな人間にぶつけたら心臓が止まってしまうだろう。
前に、門で入城手続き(魔導具の水晶に触れる)をせずこっそり街に侵入するとバレると商業ギルドのグランドマスター・ロデスに注意された。
城門の魔導具は犯罪歴などの確認と表向き言われているが、通過した人間を記録しているが、それとは別に、領主邸には城壁内の人口を観測・記録している魔導具があるのだそうだ。それらの記録を照らし合わせれば、城門でチェックを受けずに城壁内に侵入した者が居るか確認できるのだ。(とは言えチェックされるのは有事の時だけ、毎日というわけではないようだが。)
商業ギルドがVIPパスを発行し根回しもきちんとしてくれたため、門の出入りもスムーズにはなったのだが、今回はもはやその必要もないと判断し、わざと門番を無視して堂々と通過してやったのだ。
なぜなら、俺の今回の目的地は領主邸だからである。
先程俺を襲った軍はこの街の領主、ワッツローヴ伯爵の命令だと言っていた。つまり、そのワッツローヴ伯爵とやらが俺を殺そうとした主犯なわけだ。
+ + + +
■ワッツローヴ伯爵
執務室で仕事を片付けていると、息子が部屋に入ってきた。
息子「父上、なんだか屋敷の様子が変ですね?」
「ガスト、部屋に入る時はノックくらいせんか」
息子は通っている王都の学園が休暇の時期に入ったため、昨日屋敷に戻ってきたばかりであった。
「変とはなんだ?」
ガスト「騎士達の姿が見えません」
「騎士達が居ない? 屋敷の護衛もか?」
ガスト「門番は居ます」
「執事を呼―」
執事を呼んで来いと言おうしたら、扉がノックされ、扉の向こうから入室の許可を求める執事の声がした。何やら緊急の要件があると言う。
「入れ!」
執事「失礼致します。伯爵、衛兵から城門のチェックを受けずに街の中に侵入した者が居ると通報が来ておりますが、いかがされますか?」
「そんなもの、何故わざわざ俺のところにもってくる? いつもは黒鷲(の騎士達)が対応しているだろう?」
執事「騎士は…誰も居りません」
「居ない? なぜ…」
執事「最近街を騒がせている獣人の討伐に向かいましたので…伯爵のご命令で」
そこで『あ!』という顔をする伯爵。
「全員行ったのか? 誰も残さずに…?」
執事「全力で潰せ! 全員で行け! …と伯爵様が指示されましたので」
「そ、そういうのは臨機応変にだなぁ…」
ガスト「あの…どういう事ですか? 獣人討伐って?」
「ああ、街で貴族を殺した獣人が居るらしくてな。衛兵も何人かやられた。黒鷲の団長も負けたらしい」
ガスト「獣人に負けたのですか? あのキムリが?」
「ああ。だが獣人ごときに舐められてはいかんからな、全力で討伐して見せしめにしてやるよう命じたのだ…」
執事「それで、侵入者の件ですが…」
「その侵入者は、衛兵では対処できんのか?」
執事「衛兵も全員駆り出されたようでして。残っているのは城門の当番係だけのようです。門番が門を離れるわけにはいかないですから、侵入者を追うわけにも行かないと連絡が…」
執事「それと…侵入者とは、その討伐対象となっている猫獣人らしいのです」
「なんだと?! 討伐に向かった騎士達はどうしたんだ? 逃げられたのか? そうか! 軍に恐れをなした獣人が街に逃げ込んできたという事だな?」
執事「いえ、おそらく討伐に失敗して全滅した可能性もあるかと…」
「騎士が誰も居なくなるほど全員で向かったのだろう? 失敗などありえんだろうが?」
執事「それが、確認したのですが、平民から雇った衛兵達は逃げ帰って来たのですが、その他の騎士や兵士は誰一人戻っていないと…」
「戦いを放棄して逃げ出して来たというのか? これだから平民は……全員捕まえて罰を与えてやる必要があるな」
執事「その前に……衛兵からの報告では、侵入者の猫獣人はどうやら領主邸の方向に向かったとの事です」
伯爵「…ここに? まさか…」
その時、領主の執務室の扉が勢いよく開いた。
そこに居たのは子供ほどの背丈の小柄な猫獣人であった。
猫獣人は室内に居る俺と息子と執事を順に見ると、俺のほうに向かって言った。
猫人「お前が領主か?」
そして最後に恐怖の形相を浮かべるモイラーの首を刎ね、それを亜空間に収納した俺は、踵を返し街へ戻った。
俺を見た門番の兵士がギョッとした顔をしていた。先に逃げ帰ってきた衛兵から話を聞いていたのだろう。俺が生きて現れたと言うことはつまり、貴族の騎士達は死んだと理解したのかも知れない。
俺は門番のチェックを無視し、入場待ちの列の横をスタスタと素通りして街に入る。
門番が焦って声を掛けてきたが、魔力を少し込めて睨みつけたら黙った。
魔力を乗せて殺気を放つとそれは【威圧】という魔法効果を発揮する。まぁ乗せた魔力は極々少量だが。本気でやればドラゴンの上級種と【威圧】で勝負して勝てる。そんなものをちっぽけな人間にぶつけたら心臓が止まってしまうだろう。
前に、門で入城手続き(魔導具の水晶に触れる)をせずこっそり街に侵入するとバレると商業ギルドのグランドマスター・ロデスに注意された。
城門の魔導具は犯罪歴などの確認と表向き言われているが、通過した人間を記録しているが、それとは別に、領主邸には城壁内の人口を観測・記録している魔導具があるのだそうだ。それらの記録を照らし合わせれば、城門でチェックを受けずに城壁内に侵入した者が居るか確認できるのだ。(とは言えチェックされるのは有事の時だけ、毎日というわけではないようだが。)
商業ギルドがVIPパスを発行し根回しもきちんとしてくれたため、門の出入りもスムーズにはなったのだが、今回はもはやその必要もないと判断し、わざと門番を無視して堂々と通過してやったのだ。
なぜなら、俺の今回の目的地は領主邸だからである。
先程俺を襲った軍はこの街の領主、ワッツローヴ伯爵の命令だと言っていた。つまり、そのワッツローヴ伯爵とやらが俺を殺そうとした主犯なわけだ。
+ + + +
■ワッツローヴ伯爵
執務室で仕事を片付けていると、息子が部屋に入ってきた。
息子「父上、なんだか屋敷の様子が変ですね?」
「ガスト、部屋に入る時はノックくらいせんか」
息子は通っている王都の学園が休暇の時期に入ったため、昨日屋敷に戻ってきたばかりであった。
「変とはなんだ?」
ガスト「騎士達の姿が見えません」
「騎士達が居ない? 屋敷の護衛もか?」
ガスト「門番は居ます」
「執事を呼―」
執事を呼んで来いと言おうしたら、扉がノックされ、扉の向こうから入室の許可を求める執事の声がした。何やら緊急の要件があると言う。
「入れ!」
執事「失礼致します。伯爵、衛兵から城門のチェックを受けずに街の中に侵入した者が居ると通報が来ておりますが、いかがされますか?」
「そんなもの、何故わざわざ俺のところにもってくる? いつもは黒鷲(の騎士達)が対応しているだろう?」
執事「騎士は…誰も居りません」
「居ない? なぜ…」
執事「最近街を騒がせている獣人の討伐に向かいましたので…伯爵のご命令で」
そこで『あ!』という顔をする伯爵。
「全員行ったのか? 誰も残さずに…?」
執事「全力で潰せ! 全員で行け! …と伯爵様が指示されましたので」
「そ、そういうのは臨機応変にだなぁ…」
ガスト「あの…どういう事ですか? 獣人討伐って?」
「ああ、街で貴族を殺した獣人が居るらしくてな。衛兵も何人かやられた。黒鷲の団長も負けたらしい」
ガスト「獣人に負けたのですか? あのキムリが?」
「ああ。だが獣人ごときに舐められてはいかんからな、全力で討伐して見せしめにしてやるよう命じたのだ…」
執事「それで、侵入者の件ですが…」
「その侵入者は、衛兵では対処できんのか?」
執事「衛兵も全員駆り出されたようでして。残っているのは城門の当番係だけのようです。門番が門を離れるわけにはいかないですから、侵入者を追うわけにも行かないと連絡が…」
執事「それと…侵入者とは、その討伐対象となっている猫獣人らしいのです」
「なんだと?! 討伐に向かった騎士達はどうしたんだ? 逃げられたのか? そうか! 軍に恐れをなした獣人が街に逃げ込んできたという事だな?」
執事「いえ、おそらく討伐に失敗して全滅した可能性もあるかと…」
「騎士が誰も居なくなるほど全員で向かったのだろう? 失敗などありえんだろうが?」
執事「それが、確認したのですが、平民から雇った衛兵達は逃げ帰って来たのですが、その他の騎士や兵士は誰一人戻っていないと…」
「戦いを放棄して逃げ出して来たというのか? これだから平民は……全員捕まえて罰を与えてやる必要があるな」
執事「その前に……衛兵からの報告では、侵入者の猫獣人はどうやら領主邸の方向に向かったとの事です」
伯爵「…ここに? まさか…」
その時、領主の執務室の扉が勢いよく開いた。
そこに居たのは子供ほどの背丈の小柄な猫獣人であった。
猫獣人は室内に居る俺と息子と執事を順に見ると、俺のほうに向かって言った。
猫人「お前が領主か?」
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