風船葛の実る頃

風船葛の実る頃

3 翔のこと

　　　

　蒼汰は翔のことがあり、早苗とはあまり話をしなくなった。そして益々不良になった。高校は岐阜市の北に位置する岐陽高校に行くことになった。登校の初日、蒼汰は新しいボンタンと竜虎の刺繍のついた長襴を着ていたのですぐに眼をつけらたらしく、放課後になると、上級生六人に囲まれることになった。いくらいつも、哲也と鍛えていたとはいえ、一対六では歯が立たなかった。ボコボコにされたのである。蒼汰は思った『一対一なら負けはしない自信がある。そこで自分をやった上級生を調べ、独りづつやってやろうと』。そこで蒼汰は六人を独りづつ待ち伏せしてはボコボコにした。それが学校側にバレ、早苗は早速呼び出されてしまった。中学のときも、呼び出されない日はなかったほど毎日いろんなことをした蒼汰だったが、こんなに早く高校に呼び出されるとは早苗も思ってはいなかった。二人で帰る道すがら早苗は蒼汰に聞いた。
「学校が嫌いなんやない？」
「なんでや、関係ない」
「だって、喧嘩ばっかりやから」
早苗は黙った。それ以上口にすることはできなかった。蒼汰がすごい形相で睨み付けたからである。
息子だからと言って止められないくらい成長していく蒼汰についていけなくなってきたのに早苗は気づいていた。
　
「蒼汰、翔が大変やぞ。お前の代わりになり、城西のやつと喧嘩したらしい。」
蒼汰はクラスメイトからそんな話しを聞いた。蒼汰は早速、翔のクラスに急いだ。翔や哲也も岐陽高校だった。翔は蒼汰を見ると
「蒼汰も調子にのっていると分からないからな」
と言っただけだった。後で哲也から事情を聞くと六月の終わりに電話がかかってきたという。
「お前が宮川蒼汰か？」
「ああ」
「俺らの仲間が世話になったらしいな、ちょっと用がある顔を貸してくれないか」
　翔は菊田翔だし、電話番号を判ってて間違えたらしい電話だった。翔は蒼汰に告げることなく独りで相手と会うことにしたらしい。相手というのは蒼汰がボコボコにした上級生の仲間らしかった。ところが返り討ちに合ったのはその不良の方だった。とにかく翔は強かったのである。
　蒼汰は翔が格好いいと思った。誰のせいにもしないで、解決してしまう翔がとても格好いいと思った。そして翔を尊敬するようになったし、そんな翔と友達だという自分が誇らしかった。