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風船葛の実る頃
5 蒼汰の病気のこと
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蒼太には病気があった。でも、誰も知らなかった。
蒼太自身も気づいてはいなかった。判るのは、もっとずっと起ってからだ。蒼汰はどちらかというと感情がすぐ表にでるタイプだった。それは、母親も気づいていた。それが中学になり、野球を辞めてからはあからさまになった。母親にすぐに当たるようになったからだ。今までも、例えば小さな頃だが外に行くために靴を履かせようと早苗が靴紐を結んで挙げているとする。靴紐が結び終わり蒼汰がぽんと足をあげ早苗の顔にあたり、早苗があっと避けたりした瞬間に蒼太の方がすかさず
「痛ってぇなぁ。」
とこういう具合だ。早苗が言うならともかく蒼汰の方が痛いと口に出す、それどころか早苗にあたり「お前が早く退かないからや」とこうだ。又、
早苗が焼そばを蒼汰のために作ったときも、焼そばに添える紅しょうがを早苗が真ん中に添えてしまったものだから紅しょうがが焼そばに付き真ん中が赤く染まってしまった。それを見た蒼汰が、
「なんだこれ、こんなん食わへん」
とこうだ。
真ん中に添えた早苗も早苗だが、早苗にしてみれば飾り気のない焼そばをせっかく飾るんたがらというほんの出来心からしただけだが真ん中の赤い焼そばはやっぱり、見た目の酷いものだったから食の見た目にこだわる蒼汰にとっては許されないものだった。しかし、まだこの頃は病気とはいえない不通のわがままに過ぎなかった。
蒼汰の病気がわかるようになったのは、蒼汰が高校を退学し、翔たちと共に危ない世界に入ってしまった後だった。俗にいう任侠の世界、ヤクザ家業だ。蒼汰は、その世界でひとり罪をかぶり刑を受け、務所(少年院)生活を経験する。そこでも、正義感というか、自身の信じる男気を出すことになる。なぜか、「自分もコイツら(少年院の皆)もここから出なければならない、そのためには俺が骨を折らなければ」と思うようになり脱走計画を立てた。立てただけでなくノートに記した。それを看守に見つかってしまったのだ。
蒼汰は、懲罰房に入ることになるが、懲罰房に入っている間イロイロ調べられた。その後医療刑務所行きになった。蒼汰は精神を病んでいるとされた。しかしその頃の蒼汰は自分には精神の病気があるということを別に何とも思ってはいなかった。自身の病気について蒼汰が本当に考えるようになったのはもっとずっと後になった。
茂次さんは、黒野病院に通っていた、京子の叔父にあたる。茂次さんは、中学を卒業すると塗装工のおやじさんのところへ弟子入りし、一人で暮らしてきた。京子の父の弟にあたり、京子とは、顔見知りだった。京子の父の弟にあたるとは言ったが青山の家のものではなかった。京子の祖父が、他の女性に生ませた子であった。茂次さんの家は西野町にあった。母の名を房子といった。房子さんは茂次さんが中学のときには、別の男の人とつきあって茂次さんとは別で暮らすことになった。茂次さんは、成人した頃名前をかえている。「茂次なんて古くさい。先代が自分の名前栄次郎の中から次の字を入れただけだ。先代さんは、代次の意味があり、次の字を入れた名前を使っているが自分は次ぐ代なんてない。茂でいい。」
こうして茂次さんは只の茂として生きていく決意を固めた。
蒼太自身も気づいてはいなかった。判るのは、もっとずっと起ってからだ。蒼汰はどちらかというと感情がすぐ表にでるタイプだった。それは、母親も気づいていた。それが中学になり、野球を辞めてからはあからさまになった。母親にすぐに当たるようになったからだ。今までも、例えば小さな頃だが外に行くために靴を履かせようと早苗が靴紐を結んで挙げているとする。靴紐が結び終わり蒼汰がぽんと足をあげ早苗の顔にあたり、早苗があっと避けたりした瞬間に蒼太の方がすかさず
「痛ってぇなぁ。」
とこういう具合だ。早苗が言うならともかく蒼汰の方が痛いと口に出す、それどころか早苗にあたり「お前が早く退かないからや」とこうだ。又、
早苗が焼そばを蒼汰のために作ったときも、焼そばに添える紅しょうがを早苗が真ん中に添えてしまったものだから紅しょうがが焼そばに付き真ん中が赤く染まってしまった。それを見た蒼汰が、
「なんだこれ、こんなん食わへん」
とこうだ。
真ん中に添えた早苗も早苗だが、早苗にしてみれば飾り気のない焼そばをせっかく飾るんたがらというほんの出来心からしただけだが真ん中の赤い焼そばはやっぱり、見た目の酷いものだったから食の見た目にこだわる蒼汰にとっては許されないものだった。しかし、まだこの頃は病気とはいえない不通のわがままに過ぎなかった。
蒼汰の病気がわかるようになったのは、蒼汰が高校を退学し、翔たちと共に危ない世界に入ってしまった後だった。俗にいう任侠の世界、ヤクザ家業だ。蒼汰は、その世界でひとり罪をかぶり刑を受け、務所(少年院)生活を経験する。そこでも、正義感というか、自身の信じる男気を出すことになる。なぜか、「自分もコイツら(少年院の皆)もここから出なければならない、そのためには俺が骨を折らなければ」と思うようになり脱走計画を立てた。立てただけでなくノートに記した。それを看守に見つかってしまったのだ。
蒼汰は、懲罰房に入ることになるが、懲罰房に入っている間イロイロ調べられた。その後医療刑務所行きになった。蒼汰は精神を病んでいるとされた。しかしその頃の蒼汰は自分には精神の病気があるということを別に何とも思ってはいなかった。自身の病気について蒼汰が本当に考えるようになったのはもっとずっと後になった。
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こうして茂次さんは只の茂として生きていく決意を固めた。
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