大聖女セレスティアは腹黒教団から逃げて自由を手に入れたい!!(目の前で素朴な青年のフリをしているのはこの国の死神皇帝です)

風野うた

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本編

17 大聖女は混乱してしまいます

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――――トントントン!!

「セレスティア様!!セレスティア様!!」

 私室へ転移したセレスティアを待っていたのは、激しくドアをノックする聖女たちだった。

(私が留守の間に何かあったのかしら?それにしても三大神官の次は聖女たち・・・デジャヴ?)

 セレスティアが急いでドアを開くと・・・。

「た、大変なことになりました!!」

「私、驚きました!」

「三大神官も不在なので・・・」

「教団の悪事がとうとう世間に」

「ロドニー伯爵さまがお見えになられて・・・」

 五人の聖女たちはセレスティアを丸く囲んで口々に言う。

(教団の悪事、ロドニー翁、三大神官が居ない、何それ???一気に言われたら分からないー!!)

「ごめんなさい。一度に言われると聞き取れないから、一人ずつお話してくれないかしら?」

「失礼いたしました!!みんな一旦、落ち着きましょう!!」

 セレスティアと同い年で一番しっかり者のルーチェは、他の四人の肩をポンポンと軽く叩いて落ちつかせた。そして、セレスティアへ向かって口を開く。

「まず、来客のお知らせをお伝えします。四半刻前、大聖堂へロドニー伯爵と第四騎士団の方々がお越しになられました。セレスティア様への面会を希望されています」

「分かりました。すぐに向かいます。他には?」

 ルーチェに返答し、セレスティアは彼女の隣にいたマリアンナへ視線を送る。

「今朝、我が教団の幹部が逮捕されました。容疑は虚偽申告と脱税です。三大神官も参考人として皇宮へ連れて行かれました」

「えっ?」

(ベリル教団の幹部が逮捕された?虚偽申告と脱税!?え、どういうこと・・・?裏帳簿を誰かが見つけたということ?)

「未明に悪事は全て暴かれたとロドニー伯爵が言われていました。セレスティアさまが暴かれたのですよね?あの箱に証拠となるものが・・・」

 曇りなき眼で最年少のリナがセレスティアに尋ねた。しかし、セレスティアは身に覚えがないので、首を左右に振る。

「いいえ、私ではありません。リナさんの言う通り、私は事務室から裏帳簿を盗み出すつもりでした。ところが、あの箱を開けてみると全く関係のないものが入っていて、何の役にも立たなかったのです」

「――――そうなのですね」

 リナの代わりに答えたのはサーシャだった。

(聖女たちは私の婚約については何も知らないのかしら。――――もしかして、あの婚約は教団幹部を油断させるためのカモフラージュだったとか?あまりに唐突過ぎたからその可能性は十分にあるわよね。うん、きちんと確認してから話そう)

「大聖女さま、ご婚約おめでとうございます!!皇帝陛下と密かに愛を育まれていたのですね!!素敵です!!」

 アリシアは胸の前で手を組み、恋する乙女のようにうっとりとしている。

(あーっ、カモフラージュ説は無し。既に伝わっていたのね。というか、愛を育んだって、何?何処からそんな話が・・・)

 まさか!?と思いつつ、マリアンナの方を向く。彼女は親指を立ててニヤニヤしていた。

(マリアンナさん~!ああ、もう、あなたって人は・・・。どうする?言い訳をした方がいい?だけど、何処まで話す?――――「実は別の人が好きなの」とか?――――この雰囲気で絶対言えない!!)

 セレスティアは肯定も否定もせず、笑み(営業スマイル)を浮かべて誤魔化すことにした。何より純真無垢なアリシアに、『大聖女は教皇から脅迫染みた説得を受け、面識もない皇帝と婚約することになりました』という真実を話したら絶対、泣かれてしまう。

「ええっと、ロドニー伯爵がお待ちなのよね?」

「はい、大聖堂にいらっしゃいます。私たちも一緒に参ります」

 ルーチェの言葉に合わせて、聖女たちは一斉に頷いた。

――――

 大聖堂ではロドニー伯爵と第四騎士団長、副団長が大聖女を待っていた。騎士団員は全員大聖堂の前で待機している。

「お待たせいたしました」

 セレスティアはまず、お詫びを口にした。ふと見ると赤い騎士服を着た銀髪の女性二人が礼の姿勢を取っている。

(第四騎士団のお二人って女性なの!?うわぁー、女騎士の方々を見るのは初めてだわ。背筋がシャキッと伸びていて、カッコいい!!)

「大聖女様、お久しぶりでございます」

「ロドニー伯爵さま、お久しぶりですね。お元気でしたか?」

「はい、爺は元気にしておりますよ。この度はご婚約おめでとうございます!」

(ああ、ロドニー翁も既にご存じなのね)

「はい、ありがとうございます」

 セレスティアはニッコリと微笑んだ。いつものようにロドニー伯爵も微笑み返す。――――二人の間に和やかな空気が流れた。

「大聖女様、爺はお約束通り頑張りましたぞ。今朝方、この教団で金銭の不正をしていた幹部たちを逮捕しました。教皇も当分の間、参考人として皇宮へ置いておき、最後に責任を取らせます」

(不正をしていた者を全員逮捕!?私に代わってロドニー翁が教団の不正を全て調べ上げたってこと!?)

「奴らは大聖女様に銀貨一枚しか与えず、私腹を肥やしておりましたが故・・・」

「銀貨一枚って何!?」

 背後からルーチェの声がしたような気がするが、ここは聞き流しておく。

(聖女たちには後程、説明しなければ・・・)

「――――貴女様の内部告発により、捜査は一気に進みました。貴族の中には大聖女様に恩義を感じている者が多数おります。今回のことで、ベリル教団の膿を出し切りましょう。そして今後どのような活動をしていくのかは、あなた様が中心となってお決めになるとよろしいでしょう。きっと、そこの聖女たちも喜んで手伝ってくれますよ。フォッ、フォッフォッ」

 ロドニー伯爵はセレスティアの後ろに並んでいる聖女たちに視線を流す。

「はい、セレスティアさまのお力に成れるよう聖女一同、頑張ります!!」

 マリアンナが宣言すると、彼女らは大きく頷いた。

(私が教団の今後を決める?そんなことが・・・)

 いきなり大きな課題を抱えてしまい、セレスティアは言葉に詰まる。教団から逃げることばかりを考えていた。そんな自分が教団を率いていく?本当に出来るのだろうか・・・。

「大丈夫ですよ。爺も手助けは惜しみませぬ。何より大聖女様の伴侶はこの国の皇帝陛下ですから。遠慮なく頼りになさったら宜しい」

 穏やかな口調で優しく語り掛けてくれるが、セレスティアは死神皇帝がどのような人かも知らない。

(皇帝陛下を頼れって言われても、その前に斬られて終わるのでは??)

「おお、心配そうになさっているが、皇帝陛下は困っている者を見捨てる男ではありません。ご心配は無用ですぞ、フォッ、フォッフォッ」

 セレスティアはにこやかに笑うロドニー伯爵を複雑な思いで見ていた。

(死神皇帝が困っている人を見捨てないなんて話、今初めて聞いたのだけど・・・。もしかして、噂とは違う人物なの???少しは希望を持ってもいい?)

 脳裏にフレドが思い浮かぶ。死神皇帝が案外いい人だとしても、彼のことを諦めないといけないのは変わらない。胸がジクジクと痛む。

「大聖女様、前置きが長くなりましたが、彼女たちを紹介しましょう」

 ロドニー伯爵は一歩後ろに下がり、横に控えていた騎士たちの紹介を始める。

「彼女は第四騎士団・団長ダリア・ハーツ、その隣が副団長ラヴィアン・シュトライザーです。さあ、卿たちもご挨拶をしなさい」

 己の名を紹介されると彼女らは一礼した。続けて、団長ハーツが口を開く。

「ご紹介に預かりました第四騎士団・団長ダリア・ハーツと申します。セレスティア様、どうぞハーツと気軽にお呼びください。私ども第四騎士団は皇帝陛下の命により本日からセレスティア様の身辺警護の任に付きます。どうぞよろしくお願いいたします」

(――――皇帝陛下の命?)

「あのう、私は大聖堂から出ませんので、身辺警護をする必要はないと思うのですが・・・」

 セレスティアは疑問に感じたことをつい口にしてしまった。

「いいえ、大聖堂の警備は幹部が逮捕され、手薄になっております。皇帝陛下はあなた様の身の安全を第一に考えておられます。わたくしの命に代えてもお守りさせていただきます」

(命に代えてもですって!?そんな大層なことを・・・)

「私はこう見えても結構強いので、そんなにご心配いただかなくても大丈夫ですよ?ハーツ卿、命に代えてもというのは止めて下さい。いざとなったら、自分の身を守ってくださいね」

「―――――ああ、本当にお優しい方なのですね」

 団長ハーツはロドニー伯爵へ向かって言う。

「そうじゃ。心の美しい大聖女様はこの国の宝。皆で守らなくては」

 セレスティアの気持ちは無視して、その場の全員が納得したような雰囲気になっている。

(私が試行錯誤しながら、教団の不正を暴こうとしているうちにロドニー翁が解決してしまうなんて・・・。あの時、銀貨一枚の話をしたからだよね?たった数か月でどんな手を使ったら、あの厄介な幹部たちを追い詰めることが出来るの。ロドニー翁は商売だけの人では無かったのね。――――その上、皇帝陛下が私の身を案じて第四騎士団を送ってくれた!?この状況は一体、どういうこと?顔も見たことが無い婚約者に死神皇帝がそこまでしてくれるの?まだ理解が追い付かないわ・・・。でも、教皇様が不在のこの教団を動かしていかないといけないのは、彼に次いでトップの私で・・・。今更だけど、責任のある地位にいるのに逃げたいだなんて甘いことを言っていた自分が恥ずかしいわ)

「――――突然のことで色々と戸惑っていますが、どうぞ皆様の力をお貸し下さい・・・」

 セレスティアは謙虚に今の気持ちを紡いでいく。

「――――まず、聖女たちと話し合って、教団の今後の方針を決めます。寄付金などのお金関係は・・・。ロドニー伯爵、どなたか信頼出来る方をご紹介して下さい。そして、第四騎士団のハーツ卿、シュトライザー卿、護衛の件、どうぞよろしくお願いいたします」

「財務管理関係は私の方から陛下へ話を通し、早急に人員を揃えましょう。他に何かお困りのことが在れば、ハーツ団長へお伝えください。直ぐに参上いたします」

「はい、ロドニー伯爵。どうぞよろしくお願いいたします」

「それから、第四騎士団の団員は全員女性ですので、ご安心ください」

 ハーツ卿が付け加える。

「そうなのですね。それならば付属寮への出入りも許可いたします。『ご配慮ありがとうございます』と皇帝陛下へお伝え下さい」

――――その時、大聖堂の外が騒がしくなった。

「おや、何か揉めているようですね。私が見て参ります」

 シュトライザー卿は素早く入口へと向かった。
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