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しおりを挟む「放課後の図書館で、先生に頼まれて現代文の課題で使う小説を探してたんだよ。うちの図書館無駄に広いでしょ?だからどこになにがあるのかわからないし途方にくれててさ、ぐるぐるひとりで歩き回ってたら同じようにひたすら歩いてる子見つけて。」
全く覚えていない凪都の話に志津希は思わず目を見開いた。確かに1年の頃、まだ幽霊部屋に慣れてなくて放課後あてもなく学園を歩き回ることもあった。そのルートに図書館があってもおかしくない。
「声かけたんだよ。もしかしたら同じ小説探してるのかなって。でも、」
凪都は我慢できない様子で吹き出した。思い出し笑いをする凪都を志津希は不思議そうに見つめる。
「志津希、眉間にふっかい皺つくって迷惑そうになんですか?って冷たく返されてさ。しかも一気に2メートルぐらい距離取られた」
「僕最悪じゃん…」
志津希は頭を抱えたくなった。確かに記憶はないけれど凪都の口から出てくる人物は志津希で間違いない。家族や春から離れた不安や心細い1人部屋、さらにその幽霊部屋のせいでクラスメイトには変人扱い。もともと壁が分厚い志津希は他人との関わりをより遠ざけていた。自分に話しかけてくる人なんて揶揄いか面倒な頼み事を押し付けられるぐらいだった。
「最悪じゃなかったよ。俺にとっては。」
ふふっと柔らかく笑う凪都を柔らかい太陽の光が照らす。遮る木々がなくなりバスがやっと山を抜けたらしい事がわかった。
「学園に俺を知らない人はいないし、稲瀬以外俺を〝普通〟に扱ってくれる人なんかいなかったから。確かにいきなり知らない奴に小説探してる?とか言われたら誰でも警戒するよね。なんかもう反応が新鮮すぎて俺が普通だったらこうなるのかってちょっと感動したというか…」
生まれる環境は自分で選べない。家族に認められない環境でそれでも黙って教育を受けてきた凪都はどんなに辛かっただろうか。
「しかも志津希ちゃんと小説の場所教えてくれたよ。」
「え?ほんとに?」
「うん。警戒はされてたけどわざわざ棚まで案内されて、あぁすごい優しくていい子なんだなぁって思った。」
なんで凪都を案内したかとかその時自分がなにを考えていたのかとか本当にわからない。無視して逃げそうな気もするが志津希はそうしなかったらしい。優しく笑う凪都はぽんぽんと志津希の頭を撫でた。
「校章は青だったから同じ学年って分かってたし志津希のクラス探して声かけようかと思ったけど、志津希授業終わったらさっさといなくなってて。志津希と友達って人はクラスにはいないし…」
凪都はわざと大袈裟にため息を吐いた。志津希もわざと訝しげな顔を作って凪都を睨む。
「だって…人と関わりたくなかったんだもん、」
「ま、今はそれで良かったって思ってるよ。志津希取られずに済んだしね。志津希が他の男と同室なんてあり得ない。」
「馬鹿なの?、」
「馬鹿だよー」
凪都は志津希の頭を引き寄せてちゅっと唇を落とした。誰も見てないとわかっているけど恥ずかしい。少し身を捩って抵抗をしてみるが凪都の力が強くなって無駄な努力に終わる。
「志津希と仲良くなるために努力は惜しまないぐらい馬鹿だよ俺は。苦労したんだよー…志津希と同室にするの。」
「は!?」
にやりと凪都は悪戯っ子のように笑う。声も出せずに驚く志津希を見ながら凪都は満足気に頷いている。あり得ない…本当にあり得ない。志津希は心の中で呟いた。凪都の執着は志津希が思っているよりも深くて強いものらしい。凪都に捕まえられた志津希はもう逃げられないところまで来ていて凪都に捕まえられるまでのシナリオさえ存在しているようだ。凪都に捕まった…。直感的に志津希はそう思った。
「どうやって…」
「秘密。世の中知らない方が幸せなことだってあるよね、志津希。」
「ははは、…そうだね…」
知らない方が幸せだろう。知りたくない、本当に。若干の目眩に志津希は脱力しもう一度凪都の肩に頭を預けた。この数時間の間に摂取していい情報量ではない。くすくす笑う凪都が憎たらしい。志津希は軽く凪都のつま先を蹴る。これくらいしても許されるはずである。
「志津希。」
「んー?なぁに。」
「好きだよ。」
「僕も、好きだよ。凪都。」
繋いだ手から凪都の動揺が伝わった。志津希は本来心を開けばとてつもなく素直なのだ。凪都の心を掻き乱せている自分に少し優越感を感じる。志津希はふふっと笑った。バスの外の世界が少しずつ街の建物に変わっていく。ふたりだけの時間ももう少しだ。
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