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疾走~ダンジョンを駆け抜けろ~
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階層のボスである二体の巨大なオークキングが、その巨体に似合わぬ巧みな連係プレイでレリスを攻め立てていく。
対するレリスもそれに負けじと風の魔法で縦横無尽に駆け回りながら対応する。
一匹のオークキングが振り下ろした棘突きメイスを躱し斬りかかろうとしたものの、横から現れたもう一匹のオークキングに阻まれて、たまらずレリスが後退していく。
さっきからこの繰り返しだ……俺も可能な限りフォローしているが、攻めるにも守るにもレリスはいつもの動きをさせてもらえずにいる。
一体だけならそこまで苦戦せずに倒せるんだけどなぁ……ならば各個撃破すればいいじゃないかと思われるだろうが、実はこいつら二体同時にとどめを差さないと倒せないのだ。
一体目を倒して10秒もしないうちに何事もなかったかのように起き上がって来た時は、さすがのレリスも驚きを隠せないようだった。
そういう事情もあって、何とか二体同時に倒すべく敵の動きをコントロールしながら戦っているため、段々とレリスの表情に疲労の色が浮かび上がっていく。
無理もない、この二体との戦いが始まってからもう1時間は経過している。
「レリス後ろだ!!」
「えっ!?」
一瞬の隙を突いてレリスの後ろに回り込んだオークキングの一体がメイスを横薙ぎにしたものの、対するレリスはバックステップでかわすが、二体目のオークキングが着地の硬直で動けないレリスにショルダータックルをしてくる。
「プロテクション!!」
とっさに作り出した魔法壁にオークキングが肩からぶつかり、その衝撃で魔法壁が粉々に砕け散るもその隙にレリスはその場から逃げ距離を取っていた。
レリスの動きに精細さが欠いてきたな……そろそろ危ないかもしれない。
だがあの二体の動きにも法則性みたいなものがあるのを、俺はこの一時間で学習していた。
二体同時の連携攻撃をしてきた後は、必ず二体が同じ場所に固まる習性があるのだ。
その法則を利用させてもらう!
「フル・プロテクション!!」
ありったけの魔力を練り上げて、二体のオークキングを包むようにドーム状の魔法壁を張った。
普段は自分たちを守るための魔法壁だが、こういう使い方も出来る。
オークキングたちが魔法壁を破壊しようとメイスをぶつけるが、俺も自身の魔力を全て注ぎ込んで作り出した壁だ……そう簡単に壊されるわけにはいかない。
「レリス、今だ!!」
「はい……!」
レリスが魔法で作り出した風を手にした剣に収束させていく。
パッと見ただけでかなりの魔力が集まっているのがわかる……レリスもこれで確実に決めるようだった。
オークキングたちの攻撃で魔法壁もそろそろ限界だ……!
「シューイチ様!準備完了ですわ!!」
「よしきた!!」
あとはタイミングを合わせるだけだ。
この三日間、共に戦い続けたおかげでレリスと呼吸を合わせるのも慣れたものだ。
「ストームスティンガー!!」
レリスが勢いよく突き出した剣から風の魔法を射出され、オークキングたちを囲った魔法壁に飛んでいく。
ぶつかる瞬間に魔法を解いて壁を消すことで、レリスの放った魔法は何物にも邪魔されずオークキングたちに真っすぐ飛んでいき、重なりあるように並んでいた二体の心臓を揃って貫いた。
「「グオオォォォ……!」」
絞り出すような悲鳴を上げて、二体のオークキングがその場に崩れ落ちる。
しばらく警戒しながら様子を見ていたが、起き上がってくる様子はない……どうやら無事に倒すことが出来たようだな。
「た……倒した?」
「そのよう……ですわね」
俺たちはそろってその場にへたり込んだ。
まさか一時間も戦う羽目になるとは……二体同時に倒さないといけないという条件さえなければ、とっくに戦いは終わっていたんだけどな。
この戦いで回復アイテムはすべて使い切ってしまった。
もう立ちあがる気力さえ残っていない。
それはレリスも同じようで……って!
「大丈夫かレリス!?」
倒れたまま微動だにしないレリスに向けて、俺は思わず叫んでいた。
重い体を無理やり立たせて、レリスの元に走り寄る。
「しっかりしろレリス!!」
「シューイチ様……」
そっとあお向けにして、肩に手を回し上半身を起こして顔を覗き込むと、レリスの顔はすっかり青ざめてしまっていた。
こんな状態になるまで力を使い切ったのか?さっきの一撃で勝負がつかなかったら危なかったんじゃないかこれ!?
「大丈夫ですわ……少し休めばこのくらい……」
「どう見ても大丈夫じゃないだろ!」
もう呼吸すら整わないようで、見てるだけで苦しくなるほど息も絶え絶えだった。
……どうやら限界だな。
「レリス、もういい!あとは俺に任せろ!」
「でも……わたくしはまだ……」
「レリス」
なるべく声を荒げず優しく名前を呼ぶと、レリスは悔しそうな表情で顔を伏せた。
この三日間常に俺の前に立って戦い続けていたのだ、そんな顔しないでほしい。
「俺さ、レリスのこと凄いって思うよ……正直な話、尊敬する」
「そんな……わたくしなど……」
「俺はこの三日間ずっとレリスの足を引っ張ってたからな……後は俺が絶対になんとかするからもうレリスは休んでてくれ」
「でもシューイチ様も先ほどの戦いで消耗しているのでは……」
俺自身もさきほどのフル・プロテクションで魔力を使い切っていて、倦怠感が半端ないが全裸になってしまえば即座に回復するからなんの問題もない。
「いいから俺に任せなって」
そう言って俺はレリスを優しく地面に寝かせて立ち上がり、おもむろに服を脱ぎ始める。
傍から見たら、誤解を招きそうな光景だがそんなつもりは一切ないのでご安心を。
ほどなくして全裸になると、失っていた体力と魔力が即座に回復したのがわかる。
相変わらず無茶苦茶な能力だな……自分自身のことながら思わず呆れかえる。
「シューイチ様……大丈夫なのですか?」
「信じられないかもしれないけど、全裸になったら回復するんだよ?笑っちゃうだろ?」
全裸状態の俺を直視できないのか、レリスが顔を赤らめて顔を逸らした。
「とりあえずどうするかな……レリスを背負いながら行くかな?」
そうなると荷物はどうしようか?結構かさばるんだよな……あっそうだ!
俺はレリスの持っていたあの四次元ボックスを……正確にはあの箱に掛かっているという「簡易収納魔法」を思い出した。
脳内であの青いネコ型ロボットの使う四次元なポケットをイメージしていく。
魔法名は……まあ妥当な感じでいいか。
「ストレージ!」
魔力を練り上げて手を突き出すと、黒い小さなゲートのようなものが作り出された。
上手くいったか?
試しにその辺に転がっていた石ころをそのゲートに放り込むと、わずかに俺の魔力が減ったのがわかる。
次に俺はおもむろにゲートに手を突っ込み、先ほどの石を取り出そうと試みる。
すると何かを掴む感触がしたのでゲートから手を引き抜くと、先程放り込んだ石が握られていた。
どうやら上手くいったようだ。
「あのシューイチ様……それは?」
「ああ、収納魔法を試したんだけど、上手くいったよ!これで折角の戦利品を置いて行かずに済む」
「……えっと……?」
「まあ今はそういうもんだと思っててくれ」
言いながら俺たちの荷物をぽいぽいとゲートに放り込んでいく。
その度に俺の魔力が減っていくが、無敵状態なので即座に回復していく。
ほんと便利な能力だよ。
一瞬レリスもゲートの中に避難させておこうかと思ったものの、人間を入れた場合どうなるかちょっとわからないのでやめておいた。
「こんなもんかな?そんじゃ、今からレリスを背負ったままダンジョンを駆け抜けていこうと思うんだけどいいかな?」
「わたくしを背負いながら……ですか?」
「おんぶが嫌ならお姫様抱っこでもいいけど?」
「おっおんぶでいいですわ……!」
了承を得られたので、そっとレリスを背負い静かに立ち上がる。
そして下の階層へ続く階段に足を踏み入れた。
「これから何もかも無視しながら駆け抜ける予定だから、レリスはしっかり俺につかまっていてくれよ」
「だっ大丈夫なのですか?」
「全然平気だと思うよ?」
「そっそうなのですか……?」
「ああそうだ!なるべく早く突っ切りたいからレリスがいつも使ってるあの風の魔法の使い方教えてほしいんだけど?」
階段を降り、レリスを背負った俺は裸足のままダンジョンの地面を踏みしめる。
ざっと見まわしたところ、この階層は鉱山の採掘場みたいな雰囲気だった。
こんな雰囲気の場所を探索するゲームをやったことがあったなぁ……難しくてクリアできなかったけども。
「そんじゃ行きますかねー」
「本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫行ける行ける!」
そう軽く言い放ち、俺は体内の魔力を練り上げて風をイメージしていく。
すると周囲に風が巻き起こったので、その風を魔力を持って指向性を持たせていき、俺の周囲に纏わせていく。
この後はどうするんだっけ?確かレリスの話だと自分の進みたい方向に風の流れを調整し、それに身体を預ける……だったかな?
中々難しそうだけど何とかやってみよう。
「なんで口で説明しただけでできるんですか?」
「これ結構無理やり使ってるからレリスほど精度は高くないと思うけどね」
「そっそうですか……」
「それじゃあ、せーの……!」
風の流れに身を任せ……って何か歌の歌詞みたいだな。
そんなことを思いながら走り出すと、自分の想像していたよりもスピードが出てしまい、目の前の壁にぶつかってしまった。
「シューイチ様!?大丈夫ですか!?」
「調整が難しいな……レリスはいつもこんな難しい魔法を使いながら戦ってたんだな」
「……本当に平気なのですね……」
「でも今ので少し感覚を掴めた……あっごめんレリス大丈夫だった?」
「はい……」
なにやらレリスが呆れていた。
「それじゃあ今度こそ……それ!!」
先ほどよりも風の流れを抑え気味にすることで上手く調整し、今度は壁にぶつかることなくダンジョン内を駆け抜けていく。
最初は慣れなかったけど、上手く使えれば身体強化よりも素早く動けるなこれ。
ちなみにコントロールすれば風の抵抗を魔力の風で逸らすことができるから、目にも優しい。
なんだか楽しくなってきたぞ!!
「シューイチ様!前!」
レリスが叫びながら指を指した先には、剣と盾を装備したリザードマンが目視できるだけで4匹はいた。
そのまま勢いで跳ね飛ばしてもいいが、せっかくだから風の魔法の練習台になってもらおう。
俺は魔法の風に指向性を持たせて、リザードマンの群れに向けて放った。
「「「「―――!!!!」」」」
俺の放った風は暴風となりリザードマンたちを無茶苦茶に吹き飛ばした。
一匹は横の壁に激突し、もう一匹は天井にぶつかり、もう二匹ははるか彼方へとすっ飛んで行った。
倒れて動かなくなっている二匹を無視しそのまま駆け抜けていくと、彼方へすっ飛ばした残りの二匹が突き出した岩に突き刺さって絶命していた。
「うぬう……コントロールが難しいな」
「……もう何が起きても驚きませんわ……」
ため息を吐いたレリスを背負いながら俺はダンジョンを道なりに駆け抜けていく。
結果だけ言うとこの階層を踏破するのに30分もかからなかった。
対するレリスもそれに負けじと風の魔法で縦横無尽に駆け回りながら対応する。
一匹のオークキングが振り下ろした棘突きメイスを躱し斬りかかろうとしたものの、横から現れたもう一匹のオークキングに阻まれて、たまらずレリスが後退していく。
さっきからこの繰り返しだ……俺も可能な限りフォローしているが、攻めるにも守るにもレリスはいつもの動きをさせてもらえずにいる。
一体だけならそこまで苦戦せずに倒せるんだけどなぁ……ならば各個撃破すればいいじゃないかと思われるだろうが、実はこいつら二体同時にとどめを差さないと倒せないのだ。
一体目を倒して10秒もしないうちに何事もなかったかのように起き上がって来た時は、さすがのレリスも驚きを隠せないようだった。
そういう事情もあって、何とか二体同時に倒すべく敵の動きをコントロールしながら戦っているため、段々とレリスの表情に疲労の色が浮かび上がっていく。
無理もない、この二体との戦いが始まってからもう1時間は経過している。
「レリス後ろだ!!」
「えっ!?」
一瞬の隙を突いてレリスの後ろに回り込んだオークキングの一体がメイスを横薙ぎにしたものの、対するレリスはバックステップでかわすが、二体目のオークキングが着地の硬直で動けないレリスにショルダータックルをしてくる。
「プロテクション!!」
とっさに作り出した魔法壁にオークキングが肩からぶつかり、その衝撃で魔法壁が粉々に砕け散るもその隙にレリスはその場から逃げ距離を取っていた。
レリスの動きに精細さが欠いてきたな……そろそろ危ないかもしれない。
だがあの二体の動きにも法則性みたいなものがあるのを、俺はこの一時間で学習していた。
二体同時の連携攻撃をしてきた後は、必ず二体が同じ場所に固まる習性があるのだ。
その法則を利用させてもらう!
「フル・プロテクション!!」
ありったけの魔力を練り上げて、二体のオークキングを包むようにドーム状の魔法壁を張った。
普段は自分たちを守るための魔法壁だが、こういう使い方も出来る。
オークキングたちが魔法壁を破壊しようとメイスをぶつけるが、俺も自身の魔力を全て注ぎ込んで作り出した壁だ……そう簡単に壊されるわけにはいかない。
「レリス、今だ!!」
「はい……!」
レリスが魔法で作り出した風を手にした剣に収束させていく。
パッと見ただけでかなりの魔力が集まっているのがわかる……レリスもこれで確実に決めるようだった。
オークキングたちの攻撃で魔法壁もそろそろ限界だ……!
「シューイチ様!準備完了ですわ!!」
「よしきた!!」
あとはタイミングを合わせるだけだ。
この三日間、共に戦い続けたおかげでレリスと呼吸を合わせるのも慣れたものだ。
「ストームスティンガー!!」
レリスが勢いよく突き出した剣から風の魔法を射出され、オークキングたちを囲った魔法壁に飛んでいく。
ぶつかる瞬間に魔法を解いて壁を消すことで、レリスの放った魔法は何物にも邪魔されずオークキングたちに真っすぐ飛んでいき、重なりあるように並んでいた二体の心臓を揃って貫いた。
「「グオオォォォ……!」」
絞り出すような悲鳴を上げて、二体のオークキングがその場に崩れ落ちる。
しばらく警戒しながら様子を見ていたが、起き上がってくる様子はない……どうやら無事に倒すことが出来たようだな。
「た……倒した?」
「そのよう……ですわね」
俺たちはそろってその場にへたり込んだ。
まさか一時間も戦う羽目になるとは……二体同時に倒さないといけないという条件さえなければ、とっくに戦いは終わっていたんだけどな。
この戦いで回復アイテムはすべて使い切ってしまった。
もう立ちあがる気力さえ残っていない。
それはレリスも同じようで……って!
「大丈夫かレリス!?」
倒れたまま微動だにしないレリスに向けて、俺は思わず叫んでいた。
重い体を無理やり立たせて、レリスの元に走り寄る。
「しっかりしろレリス!!」
「シューイチ様……」
そっとあお向けにして、肩に手を回し上半身を起こして顔を覗き込むと、レリスの顔はすっかり青ざめてしまっていた。
こんな状態になるまで力を使い切ったのか?さっきの一撃で勝負がつかなかったら危なかったんじゃないかこれ!?
「大丈夫ですわ……少し休めばこのくらい……」
「どう見ても大丈夫じゃないだろ!」
もう呼吸すら整わないようで、見てるだけで苦しくなるほど息も絶え絶えだった。
……どうやら限界だな。
「レリス、もういい!あとは俺に任せろ!」
「でも……わたくしはまだ……」
「レリス」
なるべく声を荒げず優しく名前を呼ぶと、レリスは悔しそうな表情で顔を伏せた。
この三日間常に俺の前に立って戦い続けていたのだ、そんな顔しないでほしい。
「俺さ、レリスのこと凄いって思うよ……正直な話、尊敬する」
「そんな……わたくしなど……」
「俺はこの三日間ずっとレリスの足を引っ張ってたからな……後は俺が絶対になんとかするからもうレリスは休んでてくれ」
「でもシューイチ様も先ほどの戦いで消耗しているのでは……」
俺自身もさきほどのフル・プロテクションで魔力を使い切っていて、倦怠感が半端ないが全裸になってしまえば即座に回復するからなんの問題もない。
「いいから俺に任せなって」
そう言って俺はレリスを優しく地面に寝かせて立ち上がり、おもむろに服を脱ぎ始める。
傍から見たら、誤解を招きそうな光景だがそんなつもりは一切ないのでご安心を。
ほどなくして全裸になると、失っていた体力と魔力が即座に回復したのがわかる。
相変わらず無茶苦茶な能力だな……自分自身のことながら思わず呆れかえる。
「シューイチ様……大丈夫なのですか?」
「信じられないかもしれないけど、全裸になったら回復するんだよ?笑っちゃうだろ?」
全裸状態の俺を直視できないのか、レリスが顔を赤らめて顔を逸らした。
「とりあえずどうするかな……レリスを背負いながら行くかな?」
そうなると荷物はどうしようか?結構かさばるんだよな……あっそうだ!
俺はレリスの持っていたあの四次元ボックスを……正確にはあの箱に掛かっているという「簡易収納魔法」を思い出した。
脳内であの青いネコ型ロボットの使う四次元なポケットをイメージしていく。
魔法名は……まあ妥当な感じでいいか。
「ストレージ!」
魔力を練り上げて手を突き出すと、黒い小さなゲートのようなものが作り出された。
上手くいったか?
試しにその辺に転がっていた石ころをそのゲートに放り込むと、わずかに俺の魔力が減ったのがわかる。
次に俺はおもむろにゲートに手を突っ込み、先ほどの石を取り出そうと試みる。
すると何かを掴む感触がしたのでゲートから手を引き抜くと、先程放り込んだ石が握られていた。
どうやら上手くいったようだ。
「あのシューイチ様……それは?」
「ああ、収納魔法を試したんだけど、上手くいったよ!これで折角の戦利品を置いて行かずに済む」
「……えっと……?」
「まあ今はそういうもんだと思っててくれ」
言いながら俺たちの荷物をぽいぽいとゲートに放り込んでいく。
その度に俺の魔力が減っていくが、無敵状態なので即座に回復していく。
ほんと便利な能力だよ。
一瞬レリスもゲートの中に避難させておこうかと思ったものの、人間を入れた場合どうなるかちょっとわからないのでやめておいた。
「こんなもんかな?そんじゃ、今からレリスを背負ったままダンジョンを駆け抜けていこうと思うんだけどいいかな?」
「わたくしを背負いながら……ですか?」
「おんぶが嫌ならお姫様抱っこでもいいけど?」
「おっおんぶでいいですわ……!」
了承を得られたので、そっとレリスを背負い静かに立ち上がる。
そして下の階層へ続く階段に足を踏み入れた。
「これから何もかも無視しながら駆け抜ける予定だから、レリスはしっかり俺につかまっていてくれよ」
「だっ大丈夫なのですか?」
「全然平気だと思うよ?」
「そっそうなのですか……?」
「ああそうだ!なるべく早く突っ切りたいからレリスがいつも使ってるあの風の魔法の使い方教えてほしいんだけど?」
階段を降り、レリスを背負った俺は裸足のままダンジョンの地面を踏みしめる。
ざっと見まわしたところ、この階層は鉱山の採掘場みたいな雰囲気だった。
こんな雰囲気の場所を探索するゲームをやったことがあったなぁ……難しくてクリアできなかったけども。
「そんじゃ行きますかねー」
「本当に大丈夫なのですか?」
「大丈夫行ける行ける!」
そう軽く言い放ち、俺は体内の魔力を練り上げて風をイメージしていく。
すると周囲に風が巻き起こったので、その風を魔力を持って指向性を持たせていき、俺の周囲に纏わせていく。
この後はどうするんだっけ?確かレリスの話だと自分の進みたい方向に風の流れを調整し、それに身体を預ける……だったかな?
中々難しそうだけど何とかやってみよう。
「なんで口で説明しただけでできるんですか?」
「これ結構無理やり使ってるからレリスほど精度は高くないと思うけどね」
「そっそうですか……」
「それじゃあ、せーの……!」
風の流れに身を任せ……って何か歌の歌詞みたいだな。
そんなことを思いながら走り出すと、自分の想像していたよりもスピードが出てしまい、目の前の壁にぶつかってしまった。
「シューイチ様!?大丈夫ですか!?」
「調整が難しいな……レリスはいつもこんな難しい魔法を使いながら戦ってたんだな」
「……本当に平気なのですね……」
「でも今ので少し感覚を掴めた……あっごめんレリス大丈夫だった?」
「はい……」
なにやらレリスが呆れていた。
「それじゃあ今度こそ……それ!!」
先ほどよりも風の流れを抑え気味にすることで上手く調整し、今度は壁にぶつかることなくダンジョン内を駆け抜けていく。
最初は慣れなかったけど、上手く使えれば身体強化よりも素早く動けるなこれ。
ちなみにコントロールすれば風の抵抗を魔力の風で逸らすことができるから、目にも優しい。
なんだか楽しくなってきたぞ!!
「シューイチ様!前!」
レリスが叫びながら指を指した先には、剣と盾を装備したリザードマンが目視できるだけで4匹はいた。
そのまま勢いで跳ね飛ばしてもいいが、せっかくだから風の魔法の練習台になってもらおう。
俺は魔法の風に指向性を持たせて、リザードマンの群れに向けて放った。
「「「「―――!!!!」」」」
俺の放った風は暴風となりリザードマンたちを無茶苦茶に吹き飛ばした。
一匹は横の壁に激突し、もう一匹は天井にぶつかり、もう二匹ははるか彼方へとすっ飛んで行った。
倒れて動かなくなっている二匹を無視しそのまま駆け抜けていくと、彼方へすっ飛ばした残りの二匹が突き出した岩に突き刺さって絶命していた。
「うぬう……コントロールが難しいな」
「……もう何が起きても驚きませんわ……」
ため息を吐いたレリスを背負いながら俺はダンジョンを道なりに駆け抜けていく。
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