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転移~一転攻勢~
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黒い炎の心配をしなくてもよくなった分、これでレリスが攻撃に専念できるはずだ。
しかしこの炎、熱くはないんだけど鬱陶しいことこの上ないな。
朱雀が向かってくるレリスを近づけまいと、無数の氷の弾丸を打ち出す。
その全てをレリスはかわし、時に剣で叩き落しながら、ようやく朱雀の懐に潜り込んだ。
「せいっ!!」
レリスの振り下ろした剣が、朱雀の腹を切り裂いた。
「クエエェェェ!!??」
朱雀から苦悶の鳴き声が響き渡るも、そんなものお構いなしにとレリスの剣が二度三度と朱雀の腹に傷をつけていく。
倒すには至らないが、十分なダメージは与えられているみたいだ。
恐らく玄武ほどの防御力はないのかもしれないな。
たまらずに朱雀がレリスを引き離そうと高く飛翔するも、足元に風のフィールドを生成したレリスがそれを蹴ることで同じように高く飛翔することで朱雀の後をぴったりとついていく。
「あら?逃げられると思って?」
「ク……クエエェェェ―――!!!」
朱雀がひと際大きく鳴いた途端魔力が膨れ上がり、朱雀を中心に突風が発生した。
先ほど俺が黒炎を防ぐために使ったエア・バーストの強化版みたいな感じだ。
さすがに突然のことでそれを防ぐことが出来ず、レリスが吹き飛ばされていく。
さらに朱雀は吹き飛んでいくレリスに狙いを定めて口を大きく開くと、なにやら口の中に光が収束していく……あれヤバいんじゃないのか!?
「レリス!何かやってくるぞ!!」
「わかっておりますわ!」
その瞬間、朱雀の口からレリスに向けて炎を一点集中させた熱線が放たれた。
かっけえ!ビームかよ!?
……って感動してる場合じゃない!!
「いつっ!!?」
身体を捻りかわそうとしたレリスの左足を熱線が掠ったらしく、レリスの表情が苦痛にゆがむ。
何とか地面に着地し追撃を警戒してレリスが朱雀を見上げるが、肝心の朱雀は口元から煙を吐き出しつつ宙に浮かんだままレリスを見降ろしたままだ。
どうやら連射はできないみたいだな……さながら朱雀の必殺攻撃と言ったところか?
「レリス大丈夫か!?」
「左足に掠りましたが、何とか動けますわ」
そう言ったレリスの額に脂汗が滲んでいるのを見るに、掠っただけでも相当なダメージだったのが伺える。
これがもし直撃してたら……考えたくもないな。
しかしあんな隠し玉を持っていたとは……やはり神獣は一筋縄ではいかない相手だ。
そんなことを思っていると再び朱雀の口に光が集まっていきレリスに狙いを定める。
「来るぞレリス!」
俺がそう叫んだ瞬間、朱雀の口からビームが放たれるも、レリスは身体を逸らすことで回避した。
ビームが直撃した地面が融解しドロドロに溶けていく。
なんつー威力だよ……こんなの直撃したら跡形も残らないぞ!?
「いたっ……!」
朱雀に向けて走り出そうとしたレリスだったが、左足の痛みでうずくまる。
魔法でフォローしてあげたいところだが、おそらくプロテクションではあのビームは防げないだろうし……どうする!?
こんな時エナがいれば、回復魔法でレリスを動けるようにしてくれるんだが……生憎俺は回復魔法使えないんだよな。
まさかぶつけ本番で試すわけにもいかないし……。
幸いなことに朱雀はあのビームを二連続で放ったせいで、大きく力を消耗したらしく口から煙を吐きつつレリスを見降ろしたまま宙に浮いたままだ。
今のうちに何か手を打ちたいところだが……!
『シューイチよ!待たせた!』
その時、脳内に玄武の声が響いた。
どうやら朱雀と戦ってるうちに10分経ったようだ。
『準備できたのか!?悪いけどこっち今大ピンチだから何かするなら早くしてくれ!』
『そう急くでない……では行くぞ!』
玄武のその声とともに、俺から少し離れたところに光が集まっていく。
「なっなんだぁ!?」
その光はどんどん大きくなっていき、やがて目を開けていられないほどの閃光を発した。
「……ハロー?」
光が収まり、目を開けるとそこにはなんだか久しぶりに見るフリルが立っていた。
「フリル!?」
「フリルちゃん!?」
玄武の言っていた禁じ手とは、まさかフリルをこの場に転移させることだったのか!?
「……なんかシューイチ凄いことになってる」
そう言ったフリルが、黒い炎を身に纏った俺を若干ワクワクした表情で見てくる。
「カッコいいだろ?炎の男シューイチと呼んでくれ?」
「……皆心配してた」
あれぇ!?自分から話振って来たのにスルーするの!?
それはともかく心配させてしまったのは事実だし、慰めようと頭を撫でてあげたいけど今そんなことしたらフリルに炎が燃え移るだろうからグッと我慢だ。
「しかしどうやってここに来たんだ?」
「……亀があの鳥の魔力を逆探知したとかなんとか」
肝心な部分があやふやだった。
その時、フリルの中から光が現れて宙に浮かんでいき、大きく膨れ上がっていくとその光は巨大な亀となり、地響きを立てながら地面に降り立った。
『待たせたすまなかった!よくぞ朱雀を前にここまで耐えた!』
「玄武お前その姿……!?」
いつものミニサイズではなく、俺たちがリンデフランデで戦った時のような巨大なサイズの玄武が俺を見降ろす。
『ここは朱雀とダンジョンの魔力が満ちているのでな?それらを利用すれば我も元の姿に戻ることなど造作もないことだ』
「しかしどうやってここまで来たんだ!?」
『先程フリルが言った通り、朱雀の魔力を探知してきたのだ。我ら神獣は非常時に一同に会することが出来るよう互いの魔力を結び付け道を作り、相手の元へと転移できる能力を持っておる』
「じゃあ、その力を応用してフリルと一緒に?」
『そういうことだ。うまくいく保障はなかったが、朱雀がダンジョンの魔力を取り込んでおったのが幸いした』
なにはともあれ、フリルがいるなら朱雀を鎮めることが出来る!
どうなることかと思っていたけどこれでこの戦いを終わらせる希望が見えてきた!
「フリル!早速で悪いけど頼めるか?」
「……もち、そのために来たし」
「あのシューイチ様、一体何が起こっているのですか?」
急な事態の変化についていけないレリスが困惑しながら俺に聞いてきた。
そういえばレリスをほったらかしにしてしまっていた。
「簡単に説明すると、フリルが来てくれたおかげで俺たちは勝てる見込みが出たってことだ」
「シューイチ様が言っていたフリルちゃんの歌魔法ですか?」
「そういうこと!フリルが歌い終わるまで俺たちはフリルを守らなきゃいけないわけだけど……」
「それならこの程度のケガで足を止めている暇はありませんわね……!」
そう言って痛みをこらえて立ち上がったレリスが、相変わらずこちらを見降ろしている朱雀を睨みつけ一歩踏み出す。
それを見た朱雀の口が大きく開き、再びあのビームを放とうと光が収束していく。
まずい!この密集した状態であのビーム撃たれたらレリスだけはなくフリルも危ない!
『朱雀よ、我が来た以上もはや貴様の攻撃は通用しないものと思え』
玄武がそう宣言すると、俺たちの周りにドーム状のバリアが張られた。
そのバリアが張られると同時に朱雀の口からビームが発射されたが、バリアを貫通することが出来ずに消えていった。
「クエエェェェ―――!!!」
ビームを防がれた朱雀が、なにやら悔しそうに鳴いた。
こいつもしかして意識があるんじゃないだろうな?
それにしても守りにおいて真価を発揮すると言ってた玄武の言葉は嘘じゃなかったんだな……まさか朱雀の攻撃を難なく防いでしまうとは。
『少女よ、足を怪我しているようだな?どれ……』
当然レリスの左足が光に包まれていき、ビームが掠って赤く腫れあがっていた部分が見る見るうちに治療されていく。
自身の再生も難なくこなすんだ、誰かの怪我を治して再生させるのもお手の物なのかもしれないな。
「足の痛みが……凄いですわ!」
『これで心置きなく動けるはずだ。守りは我に任せ、お主は存分に朱雀に攻め入るがいい』
「感謝いたしますわ!」
玄武に感謝を述べたレリスが風を纏い、朱雀に向けて弾丸のように跳んで行った。
このチャンスを逃す手はない!
「フリル!」
「……任せて」
フリルが目を閉じて意識を集中し始めると、フリルの身体が輝き始める。
玄武を鎮めるときと同じだ、恐らくフリルの歌魔法が発動したと見ていいだろう。
こうなれば後は時間の問題だ!
「クエエェェェ―――!!!」
そのフリルを止めようと朱雀がこちらに向けて飛んでくるが、そこへレリスが立ちふさがる。
「絶対に行かせませんわ!!」
魔法剣で攻撃力を強化したレリスの剣が、朱雀の顔面を斬りつけた。
「キエエエェェェ!!!」
まるで断末魔のような甲高い声で朱雀が鳴きならがらレリスから距離を取り、例のビームを放つが……。
『無駄だ』
レリスの前方に分厚い透明な壁が現れ、朱雀の必殺ビームを防いだ。
その隙を見逃さず、レリスが風のフィールドを巧みに操り空中を自由自在に飛び回りながら、まるでフリルの歌に合わせるように、躍るような軽やかさで朱雀を切り刻んでいく。
レリスの動きがいつもと段違いだ……これもフリルの歌魔法による強化の賜物だな。
「はああー!!」
朱雀の真後ろに回り込んだレリスが風のフィールド蹴り、弾丸のように跳んでいきその勢いと共に朱雀の背中に剣を突き刺した。
「グゲエエエエ――――――――――――!!!!!」
相当の威力だったらしく、朱雀は先程よりもひと際大きな悲鳴を上げる。
しかしそれだけでは止まらず、背中に剣を突き刺したままレリスは朱雀と共に勢いよく飛んでいき、そのままダンジョンの壁に張り付けるように激突した。
つーか歌魔法で強化されているとはいえレリススゲーな……あの朱雀を力で完全に抑えこんでる。
「あなたには様々なことを思い知らされ……そして教えられましたがそれも終わりです!」
朱雀から剣を引き抜いたレリスが、足元に作り出した風のフィールドに乗りながら、剣にありったけの魔力を込めていく。
レリスの剣にはめ込まれた二つの宝玉がその魔力を受けて眩いばかりの光を放ち、そして―――
「これで終わりですわ!!」
文字通りレリスの全身全霊を込めた一撃が朱雀の背中に炸裂した。
「クックエエェェ……!」
その攻撃を受けた朱雀が力を失い地面へと落ちていく。
それと同時にフリルの鎮めの唄が終わりを告げ、落下していく朱雀の身体が光に包まれ、赤黒く禍々しかった外見が鮮やかな赤へと変貌を遂げていく。
険しかったその表情も、憑き物が落ちたかのように穏やかな物へと変わり、やがて地面へと落ち力なく横たわる。
そばに着地したレリスが朱雀の顔へと歩いて行き、しゃがんで両膝をつきながら朱雀の顔に優しく手を添えた。
「……わかっておりますわ、そういう約束でしたものね」
レリスのその言葉と共に朱雀が大きな光の玉になり、レリスの周りをしばらくクルクルと飛んだあと、その胸の中へと吸い込まれていった。
辺りが静寂に包まれる中、レリスがそっと立ち上がりこちらへ身体を向ける。
そしていつものあの上品な微笑みを浮かべて……。
「終わりましたわ、シューイチ様」
静かに勝利宣言をしたのだった。
しかしこの炎、熱くはないんだけど鬱陶しいことこの上ないな。
朱雀が向かってくるレリスを近づけまいと、無数の氷の弾丸を打ち出す。
その全てをレリスはかわし、時に剣で叩き落しながら、ようやく朱雀の懐に潜り込んだ。
「せいっ!!」
レリスの振り下ろした剣が、朱雀の腹を切り裂いた。
「クエエェェェ!!??」
朱雀から苦悶の鳴き声が響き渡るも、そんなものお構いなしにとレリスの剣が二度三度と朱雀の腹に傷をつけていく。
倒すには至らないが、十分なダメージは与えられているみたいだ。
恐らく玄武ほどの防御力はないのかもしれないな。
たまらずに朱雀がレリスを引き離そうと高く飛翔するも、足元に風のフィールドを生成したレリスがそれを蹴ることで同じように高く飛翔することで朱雀の後をぴったりとついていく。
「あら?逃げられると思って?」
「ク……クエエェェェ―――!!!」
朱雀がひと際大きく鳴いた途端魔力が膨れ上がり、朱雀を中心に突風が発生した。
先ほど俺が黒炎を防ぐために使ったエア・バーストの強化版みたいな感じだ。
さすがに突然のことでそれを防ぐことが出来ず、レリスが吹き飛ばされていく。
さらに朱雀は吹き飛んでいくレリスに狙いを定めて口を大きく開くと、なにやら口の中に光が収束していく……あれヤバいんじゃないのか!?
「レリス!何かやってくるぞ!!」
「わかっておりますわ!」
その瞬間、朱雀の口からレリスに向けて炎を一点集中させた熱線が放たれた。
かっけえ!ビームかよ!?
……って感動してる場合じゃない!!
「いつっ!!?」
身体を捻りかわそうとしたレリスの左足を熱線が掠ったらしく、レリスの表情が苦痛にゆがむ。
何とか地面に着地し追撃を警戒してレリスが朱雀を見上げるが、肝心の朱雀は口元から煙を吐き出しつつ宙に浮かんだままレリスを見降ろしたままだ。
どうやら連射はできないみたいだな……さながら朱雀の必殺攻撃と言ったところか?
「レリス大丈夫か!?」
「左足に掠りましたが、何とか動けますわ」
そう言ったレリスの額に脂汗が滲んでいるのを見るに、掠っただけでも相当なダメージだったのが伺える。
これがもし直撃してたら……考えたくもないな。
しかしあんな隠し玉を持っていたとは……やはり神獣は一筋縄ではいかない相手だ。
そんなことを思っていると再び朱雀の口に光が集まっていきレリスに狙いを定める。
「来るぞレリス!」
俺がそう叫んだ瞬間、朱雀の口からビームが放たれるも、レリスは身体を逸らすことで回避した。
ビームが直撃した地面が融解しドロドロに溶けていく。
なんつー威力だよ……こんなの直撃したら跡形も残らないぞ!?
「いたっ……!」
朱雀に向けて走り出そうとしたレリスだったが、左足の痛みでうずくまる。
魔法でフォローしてあげたいところだが、おそらくプロテクションではあのビームは防げないだろうし……どうする!?
こんな時エナがいれば、回復魔法でレリスを動けるようにしてくれるんだが……生憎俺は回復魔法使えないんだよな。
まさかぶつけ本番で試すわけにもいかないし……。
幸いなことに朱雀はあのビームを二連続で放ったせいで、大きく力を消耗したらしく口から煙を吐きつつレリスを見降ろしたまま宙に浮いたままだ。
今のうちに何か手を打ちたいところだが……!
『シューイチよ!待たせた!』
その時、脳内に玄武の声が響いた。
どうやら朱雀と戦ってるうちに10分経ったようだ。
『準備できたのか!?悪いけどこっち今大ピンチだから何かするなら早くしてくれ!』
『そう急くでない……では行くぞ!』
玄武のその声とともに、俺から少し離れたところに光が集まっていく。
「なっなんだぁ!?」
その光はどんどん大きくなっていき、やがて目を開けていられないほどの閃光を発した。
「……ハロー?」
光が収まり、目を開けるとそこにはなんだか久しぶりに見るフリルが立っていた。
「フリル!?」
「フリルちゃん!?」
玄武の言っていた禁じ手とは、まさかフリルをこの場に転移させることだったのか!?
「……なんかシューイチ凄いことになってる」
そう言ったフリルが、黒い炎を身に纏った俺を若干ワクワクした表情で見てくる。
「カッコいいだろ?炎の男シューイチと呼んでくれ?」
「……皆心配してた」
あれぇ!?自分から話振って来たのにスルーするの!?
それはともかく心配させてしまったのは事実だし、慰めようと頭を撫でてあげたいけど今そんなことしたらフリルに炎が燃え移るだろうからグッと我慢だ。
「しかしどうやってここに来たんだ?」
「……亀があの鳥の魔力を逆探知したとかなんとか」
肝心な部分があやふやだった。
その時、フリルの中から光が現れて宙に浮かんでいき、大きく膨れ上がっていくとその光は巨大な亀となり、地響きを立てながら地面に降り立った。
『待たせたすまなかった!よくぞ朱雀を前にここまで耐えた!』
「玄武お前その姿……!?」
いつものミニサイズではなく、俺たちがリンデフランデで戦った時のような巨大なサイズの玄武が俺を見降ろす。
『ここは朱雀とダンジョンの魔力が満ちているのでな?それらを利用すれば我も元の姿に戻ることなど造作もないことだ』
「しかしどうやってここまで来たんだ!?」
『先程フリルが言った通り、朱雀の魔力を探知してきたのだ。我ら神獣は非常時に一同に会することが出来るよう互いの魔力を結び付け道を作り、相手の元へと転移できる能力を持っておる』
「じゃあ、その力を応用してフリルと一緒に?」
『そういうことだ。うまくいく保障はなかったが、朱雀がダンジョンの魔力を取り込んでおったのが幸いした』
なにはともあれ、フリルがいるなら朱雀を鎮めることが出来る!
どうなることかと思っていたけどこれでこの戦いを終わらせる希望が見えてきた!
「フリル!早速で悪いけど頼めるか?」
「……もち、そのために来たし」
「あのシューイチ様、一体何が起こっているのですか?」
急な事態の変化についていけないレリスが困惑しながら俺に聞いてきた。
そういえばレリスをほったらかしにしてしまっていた。
「簡単に説明すると、フリルが来てくれたおかげで俺たちは勝てる見込みが出たってことだ」
「シューイチ様が言っていたフリルちゃんの歌魔法ですか?」
「そういうこと!フリルが歌い終わるまで俺たちはフリルを守らなきゃいけないわけだけど……」
「それならこの程度のケガで足を止めている暇はありませんわね……!」
そう言って痛みをこらえて立ち上がったレリスが、相変わらずこちらを見降ろしている朱雀を睨みつけ一歩踏み出す。
それを見た朱雀の口が大きく開き、再びあのビームを放とうと光が収束していく。
まずい!この密集した状態であのビーム撃たれたらレリスだけはなくフリルも危ない!
『朱雀よ、我が来た以上もはや貴様の攻撃は通用しないものと思え』
玄武がそう宣言すると、俺たちの周りにドーム状のバリアが張られた。
そのバリアが張られると同時に朱雀の口からビームが発射されたが、バリアを貫通することが出来ずに消えていった。
「クエエェェェ―――!!!」
ビームを防がれた朱雀が、なにやら悔しそうに鳴いた。
こいつもしかして意識があるんじゃないだろうな?
それにしても守りにおいて真価を発揮すると言ってた玄武の言葉は嘘じゃなかったんだな……まさか朱雀の攻撃を難なく防いでしまうとは。
『少女よ、足を怪我しているようだな?どれ……』
当然レリスの左足が光に包まれていき、ビームが掠って赤く腫れあがっていた部分が見る見るうちに治療されていく。
自身の再生も難なくこなすんだ、誰かの怪我を治して再生させるのもお手の物なのかもしれないな。
「足の痛みが……凄いですわ!」
『これで心置きなく動けるはずだ。守りは我に任せ、お主は存分に朱雀に攻め入るがいい』
「感謝いたしますわ!」
玄武に感謝を述べたレリスが風を纏い、朱雀に向けて弾丸のように跳んで行った。
このチャンスを逃す手はない!
「フリル!」
「……任せて」
フリルが目を閉じて意識を集中し始めると、フリルの身体が輝き始める。
玄武を鎮めるときと同じだ、恐らくフリルの歌魔法が発動したと見ていいだろう。
こうなれば後は時間の問題だ!
「クエエェェェ―――!!!」
そのフリルを止めようと朱雀がこちらに向けて飛んでくるが、そこへレリスが立ちふさがる。
「絶対に行かせませんわ!!」
魔法剣で攻撃力を強化したレリスの剣が、朱雀の顔面を斬りつけた。
「キエエエェェェ!!!」
まるで断末魔のような甲高い声で朱雀が鳴きならがらレリスから距離を取り、例のビームを放つが……。
『無駄だ』
レリスの前方に分厚い透明な壁が現れ、朱雀の必殺ビームを防いだ。
その隙を見逃さず、レリスが風のフィールドを巧みに操り空中を自由自在に飛び回りながら、まるでフリルの歌に合わせるように、躍るような軽やかさで朱雀を切り刻んでいく。
レリスの動きがいつもと段違いだ……これもフリルの歌魔法による強化の賜物だな。
「はああー!!」
朱雀の真後ろに回り込んだレリスが風のフィールド蹴り、弾丸のように跳んでいきその勢いと共に朱雀の背中に剣を突き刺した。
「グゲエエエエ――――――――――――!!!!!」
相当の威力だったらしく、朱雀は先程よりもひと際大きな悲鳴を上げる。
しかしそれだけでは止まらず、背中に剣を突き刺したままレリスは朱雀と共に勢いよく飛んでいき、そのままダンジョンの壁に張り付けるように激突した。
つーか歌魔法で強化されているとはいえレリススゲーな……あの朱雀を力で完全に抑えこんでる。
「あなたには様々なことを思い知らされ……そして教えられましたがそれも終わりです!」
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レリスの剣にはめ込まれた二つの宝玉がその魔力を受けて眩いばかりの光を放ち、そして―――
「これで終わりですわ!!」
文字通りレリスの全身全霊を込めた一撃が朱雀の背中に炸裂した。
「クックエエェェ……!」
その攻撃を受けた朱雀が力を失い地面へと落ちていく。
それと同時にフリルの鎮めの唄が終わりを告げ、落下していく朱雀の身体が光に包まれ、赤黒く禍々しかった外見が鮮やかな赤へと変貌を遂げていく。
険しかったその表情も、憑き物が落ちたかのように穏やかな物へと変わり、やがて地面へと落ち力なく横たわる。
そばに着地したレリスが朱雀の顔へと歩いて行き、しゃがんで両膝をつきながら朱雀の顔に優しく手を添えた。
「……わかっておりますわ、そういう約束でしたものね」
レリスのその言葉と共に朱雀が大きな光の玉になり、レリスの周りをしばらくクルクルと飛んだあと、その胸の中へと吸い込まれていった。
辺りが静寂に包まれる中、レリスがそっと立ち上がりこちらへ身体を向ける。
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