無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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飛行~関西弁の少女~

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 レリス関連のあれこれが一応の解決を見てから、一週間が経過した。
 このことについてはまだ皆には公表しておらず、二人だけの秘密ということになっているが、事情を知っているエナとシエルには軽く報告だけはしておいた。
 テレアとフリルには、折を見て報告するつもりではあるが、それがいつになるのかはまだ不明である。
 それはそれとして、最近はそれにばかり目が行ってしまいがちだったが俺たちには一年以内にこの世界の四神獣を鎮めなければならないという役目がある。
 一年は結構長い気もするが、朱雀のように何かしらの手を使い封印を解いてるパターンも存在しているので、決して悠長に構えてはいられないのだ。
 もちろんこの一週間の間に神獣の行方について色々調べまわったりもしたが、これが中々有力な情報が見つからない。
 軽く事情を説明して、ヤクトさんやリンデフランデのギルマスのクエスさんの二人にも調べてもらってはいるが、未だ発見には至ってないのだ。
 肝心の玄武と朱雀もまだ本調子ではないらしく、残りの神獣の気配を感じることができないとのこと。
 ……まあつまるところ、俺はたちは今ちょっとしたお手上げ状態なのである。

 そんな日々を過ごす最中、俺たちの拠点にとある人物が訪ねて来ることで状況は一変することになる。



「アーデンハイツに行くつもりなのか?」
「はい、この国で手をこまねいていても仕方ないですし、別の国に行けば有力な情報が見つかるかもしれないんで」

 拠点にやってきたルカーナさんにお茶を振舞いながら、前々から行くつもりだったアーデンハイツのことを話す。
 ちなみにこの人、割と頻繁に様子を見に来たと言いながら家に来るんだけど、もしかして暇なんじゃなかろうか?

「ルカーナさんならどんな国なのか知ってるんじゃないかなと」
「そうだな……あの国は一言で言うなら商人の国だな」

 レリスの実家であるエレニカ財閥の本拠地らしいからな、多分そういう方面が盛んな国なんだろうとは思ってはいた。

「商人を志すならアーデンハイツに行っていろはを学べと言われているくらいだ」
「なるほどなるほど」
「……というか俺じゃなくて、レリスに聞けばいいんじゃないのか?あいつエレニカ財閥の人間なんだろう?」

 あっ、やっぱりルカーナさんはそのことに気が付いていたのね。

「それはごもっともなんですけど、ちょっと大っぴらに聞けない事情がありまして……」

 レリスはあまり実家のことについては話したがらないんだよね。
 聞いてほしくない雰囲気を出す時もあるからこちらも中々踏み込めないのだ。

「まあいい……それとここ五年ほどであの国は機械に関する技術については、他の追従を許さないほどの先進国になったな」
「この国でもちょくちょく機械関連の物を見かけますけど、そのほとんどがアーデンハイツ製ですもんね」
「五年前は全くそうでもなかったはずなんだがな……突如として機械関連の技術が発展しだしたんだ」
「スチカ=リコレット……ですか?」
「ああ。五年前にいきなり現れて機械技術の発展に大きく貢献し、今なお最先端で手腕を振るっているそうだ」

 スチカ=リコレットか……俺も持っているまるっきり携帯電話な見た目の通信機を作ったのも彼女だというし、一度会ってみたいと思ってるんだよね。
 予想では俺のいた世界となんらかの関りがあると睨んでいる。でなければこんな携帯電話みたいな見た目の物を作れるはずがない。

「最近では空を飛ぶ機械を作っているらしいな」
「飛行機ですか?」
「ひこう……き?まあ名称は知らんが、それが完成すれば国間の行き来も楽になるだろうな」

 たしかに電車すらないこの世界において空を飛ぶ飛行機を作り出したら、かなりの革命だよな。
 大体この世界は国間の移動に時間が掛かりすぎるんだよね。
 実際マグリドからエルサイムなんて電車でもあれば一日で辿りつけそうな距離だしな。
 まあ電車を運行しようと思ったら線路とか引くために色々と準備をしなければならないだろうから、そう簡単な話ではないんだろうけど。

「……さてと、俺はそろそろ帰る。テレアによろしく言っておいてくれ」
「わかりましたルカーナおじさん」
「死にたいのか?」
「冗談ですから、本気で殺す目にならないでくださいよ」
「……まあそれはともかく、機会があればお前とは手合わせしてみたいと思っているがな」
「それはマジで勘弁してください」

 レリスでも手も足も出ない相手に俺が勝てるはずがない。
 10秒で瞬殺される自信があるぞ俺は。
 帰っていくルカーナさんを見送った俺は、通信機を手にしもう一台の通信機の番号を呼び出しプッシュした。

『もしもしお兄ちゃん?』
「ようテレア!そっちはどう?」
『うん、依頼はもう終わってこれからギルドに報告に行くところだよ』
「マジで!?早くないか?」
『だってお兄ちゃん以外のみんながいるんだもん、あっという間だったよ』

 たしか今日はかなり強めの魔物の討伐依頼だったはずだが……まあ俺を除いた四人で挑んでるんだからそりゃ早いだろうな。
 テレアも勿論のこと、レリスなんか元々強かったのに今じゃ朱雀の加護を受けたおかげで強さに拍車がかかったし。
 おまけにエナとフリルのサポートがあるんだから、向かうところ敵なし状態だ。いくら強めの魔物でもあの四人が相手では手も足もでないだろうな。

『もうすぐ帰るから、待っててねお兄ちゃん』
「最後まで気を抜かないようにな?それじゃあ」

 そう言って通話を終えた俺は、庭へと赴く。
 そこには庭の手入れをしているシエルがいて、俺が来たことに気が付いたのか、こちらを振り返った。

「おーっす、やっとるかね?」
「暇そうですね宗一さん」
「暇じゃないよ、さっきまでルカーナさんの相手してたし」

 ルカーナさんの相手をするのは俺という暗黙の了解がなぜか出来上がっている。
 見た感じ気難しい感じの人だし、話しかけてもそっけない態度しか取らないから、必然的に俺にお鉢が回ってくるんだよなぁ……。
 ああ見えてあの人結構話しやすいんだけど、性格で損してるよな。

「今は暇なんですよね?なら家事を手伝ってください」
「前から思ってたんだけどさ、この家を一人で掃除とかするのしんどいんじゃない?」
「うわー!給仕係に指名した本人がそういうこと言うんですかー!?」

 厳密に言うと給仕係に指名したのはフリルなんだけどね。

「いや、だから人を増やそうかと思うんだけどって話」
「私以外の給仕係を雇うんですか?」
「人手があったほうがシエルだって楽できるだろ?」

 一人くらいならお給金を払えるくらいの蓄えはあるんだよね。
 リンデフランデでもらった報酬金は俺たち全員の家具を揃えたくらいではびくともしない額なのだ。 
 それ以外ではあのお金にほとんど手を付けてないし、どうせなら新たに人を雇うのもありだと思うんだよね。

「後輩が出来るのはいいですね……ぜひお願いしたいところですね」
「そんじゃ今度求人でも出しておくか」
「それはそれとして、暇なら家事を手伝ってくださいよ」

 ちっ……話を逸らせなかったか。
 どうやって逃げようかと策略を脳内で張り巡らそうとした瞬間、空に何かが飛んでいるのが目に入った。
 なんだろう、鳥かな?それにしてはなんか生き物らしさを感じないな……?

「宗一さん聞いてますか!?」
「いや、なんか飛んでるだよ……ほらあれ」
「どうせ鳥で……あれ?違いますね?」

 俺がその飛んでいる物体を指さすと、シエルもそれに釣られて空を見上げてその飛んでいる物体を確認したようだ。
 ……っていうかアレ、こっちに向かって来てないか?

「なんかこっちに向かって飛んできてる気がするんですけど?」
「シエルもそう思った?実は俺もなんだよね?」

 俺たちがそんなことを話してる間にも、その謎の飛行物体はどんどんこの家に向かって近づいてきて、最終的には俺たちの真上までやって来て、そのまま空中で停止した。
 下から見てわかったが、これ飛行機じゃないのか?

「……なんか降りるから少し離れてくれって言ってますね」
「え?聞こえるの!?」
「まあ力を封印されているとはいえ一応神様見習いですからこのくらいのことは」

 まあどいてくれと言われているならどこうじゃないか。
 庭の隅へと非難した俺たちは、念のためにとフル・プロテクションを唱え万一の事態に備える。
 何が出てきてもいいように、戦える準備だけはしておかないとな。
 そうこうしているうちに、飛行機はホバリングしながらゆっくりと高度を落としていき、庭へと着陸した。
 こうしてみると大きさ的にはそんなでもなく、この庭に収まる程度には小型な飛行機だ。
 ていうかさっきは気にしなかったけど、なんでヘリでもないのにホバリングできるんだ?
 この飛行機の構造的にホバリングできるとは思えないんだけど……まあそこは魔法で強引に何とかしてるんだと思い強引に納得した。

「いやー着いた着いた!長距離飛行は初めてやったけど何の問題もなかったな!さすがうちやで!」

 操縦席からヘルメットとゴーグルをつけた少女らしき人物が顔を出して、開口一番に歓喜の声を上げた。

「もう空の旅は終わりかえ?」
「目的地に着いたからな!アーデンハイツからずっと飛んできたからさすがのうちもバテバテや!」
「しかしこの飛行機とやらは凄いのじゃ!エルサイムまでこんなに早く来れるなんて!」

 どうやらもう一人乗っているようだが、同じくヘルメットとゴーグルをつけているため顔がわからない。
 声からして二人とも女の子なのはわかるんだけどね。

「えっと……君たちは……?」

 どうやらいきなり襲い掛かってくることもなさそうなので、俺はバリヤーを解いて未だに飛行機の操縦席に座って駄弁っている二人に声を掛ける。
 先頭の座席に座っていた女の子が俺に気が付き、ゴーグル越しとはいえ目が合った。

「……お前……!?」

 その少女がなにやら驚愕した表情で操縦席から飛び降りると、華麗に着地して俺の元に勢いよく走り寄って来た。
 そのまま目の前までやって来て、頭突きされるんじゃないかって勢いで俺の顔面に顔を近づけて……って近い近い!!

「やっぱりそうや……エルサイムのこの場所におるって話聞いて、半信半疑で来てみたけどほんまやったんやな……!」
「えっと……もしかして俺に会いに来たのか?」
「あっそうか、この格好じゃわからんよな……ちょい待っててな!」

 そう言って慌てた様子でヘルメットとゴーグルを外していく目の前の少女。
 さっきから気になってるけど、この子が喋ってるの関西弁だよな?
 まさかこの異世界に置いてこの関西弁を再び聞くことが出来るとは……ん?再び?
 俺がなにやら心に引っかかりを感じていると、その少女はヘルメットとゴーグルを外し終え、満面の笑顔を見せた。

「ひっさしぶりやなシュウ!うちのこと覚えとるやろ!?」

 オレンジ色の髪に三角形のヘアピンをつけ、長い髪を後ろで三つ編みにして縛ったその少女が、俺にそう言ってきた。

「え?ごめん、誰!?」
「はあぁー!?」

 ありえないと言った感じの驚愕した表情でその少女が俺を見てくる。
 いや本当に誰だかわからないから、そんな顔されても困るんだけど……。
 でもその「シュウ」という呼ばれ方には、どことなく心当たりがある。

「うちや!うち!心臓に悪い冗談はやめーや!!」
「いやほんとに誰!?」
「う……嘘やろ……?」

 なにやらこの世の終わりみたいな顔で一歩、また一歩とその少女が後ずさりがっくりと膝をついた。
 なんだか可哀そうになって来たけど、本当に知らないからどうしようもない。
 何か声を掛けた方がいいかと思い、一歩踏み出したところでその少女が勢いよく立ち上がった。
 そして―――

「うちはスチカ=リコレットや!ほんまにうちのこと覚えてないんか!?シュウ!!」

 俺がぜひとも会ってみたいと思っていたその名を、その少女が名乗った。
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