無敵の力で異世界無双~ただし全裸~

みなみ

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干渉~有効活用~

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 さてこのくそじじい、どうしてやろうか?
 俺自身もさんざん身体に穴を開けられたし、挙句の果てにスチカまで殺そうとしやがった。
 怒りに任せてすぐに倒してしまうことも可能だが、フリルから奪い取った玄武の力も返してもらわないといけないしな……倒すならやることをすべてやってからだ。

「一応聞いといてやるよ、玄武の力を今すぐフリルに返すなら見逃してやらんこともない」
「ふざけるでない!あの程度の魔法を防いだくらいで粋がるなよ小僧!!」

 交渉は無理っと……まあわかってたけどね。
 そんじゃ直接どうなってるのか聞いてみるしかないか……。

『玄武!聞こえるか!?』
『やっとその状態になったか……おかげでようやく念話ができるな』

 俺の念話に対し、意外なほど素早く返事が帰って来た。
 なんか思ったよりも元気そうだなこいつ。

『お前さん今どうなってんの?』
『意識だけはフリルの中におるが、力の大半をそやつに奪われてしまった状態だ。このままではフリルの意識が戻ったとしても我を顕現させることはできぬな』
『ってことはこのじじいでは玄武を顕現させることは無理だと……』
『付け加えれば、我の本領である結界の力も再生の力を使うことはできぬな』

 思った通り玄武の上辺の魔力だけを強引に奪っただけのようだ。
 偉そうに神獣の力を―――なんて言ってたくせになんともお粗末なことで。

『んでどうしたらいいの?こいつこのまま倒しちゃっても大丈夫?』
『問題ない……と言いたいところだがそれだけでは魔力は戻っては来ぬな』

 やっぱりダメなのか……面倒くさいなぁ。

『だが今のお主の状態なら出来るな……このまま念話を切らさずこやつと戦うことは出来るか?』
『問題ないぞ?そもそも死なないしね』
『なら手間は掛かるが戦いながら我の指示通りに……』

 ……うへー面倒くさいことを要求してくるなぁ。
 まあ普通に倒してもダメな以上やるかしかないんだけどさ。

「スチカ、俺ならもう大丈夫だからテレアたちのところに戻っててくれないか?」
「本当に大丈夫なんか……?」
「何を隠そう、俺全裸になると無敵になるんだ」

 なんだかスチカが俺のことを呆れた目で見てくる。

「こんな時にまで冗談を……まあええわ!任せてええんやな?」
「おう!すぐに終わらせるから待っててくれよ!」

 そう言ってスチカが背を向けて走り出した。
 だが離れていくスチカに手を向けてドレニクが魔法を放とうとする。

「逃がさんぞ!!」
「ちょっと邪魔だから向こう行っててくれない?」

 スチカを守るようにドレニクの目の前に立ちふさがり、ドレニクの胸を少しだけ力を入れて押してやった。

「ぬおおっ!!??」

 それだけでドレニクがすっ飛んでいき、教会の壁に叩きつけられた。
 今すぐにでもぶちのめしてやりたいが、先にやることをやらないといけない。
 俺は魔力を活性化させて『ある物』に干渉させていく。
 ……これは思ったよりも複雑そうだ。それなりに時間が掛かるかもしれない……そもそもこういう作業は俺じゃなくてエナの方が向いてそうだけど、あっちはあっちであの筋肉バカの相手で大変だろうから、今は俺がやるしかないのだ。


「何をしているのか知らぬが、隙だらけだぞ!」

 背中に何かが鋭利な物が当たったような衝撃が走った。
 首だけ向けて見てみると、何やら黒い色の魔力の残滓が見えた。
 まあ大方なにか魔法で俺のことを背中から串刺しにしようとしたんだろうが、今の俺には効かないんだよね。

「なっなぜだ!?貴様!一体どんな魔法を使った!?」
「今作業中だからちょっと黙っててくれないかな?」

 ドニレクに手を向けて魔力を少しだけ放つと、たったそれだけで再びドレニクが吹っ飛んで教会の壁に少しだけめりこんだ。
 集中したいからもうちょっとそのままでいてくれるとありがたいんだけど、めり込んだ壁から抜け出したドレニクがまるで親の仇を前にした憎悪あふれる表情で俺を睨んでくる。
 ……まあどうせ何をしても俺には効かないんだから好きにさせておこうかな?

「どういうわけか貴様に攻撃は通じないようだな……だが!」

 ドレニクが魔力を活性化させると、俺ではなく後方にいるテレアたちに向けてなにやら魔法を使おうとする。
 なるほど……俺を狙っても無駄だから後ろのいるテレアたちをってことか。
 悪いけど、それこそやらせない。

「フル・グラン・プロテクション!」
「アンチ・ぷろてく……バカな!?妨害できぬ!?何なんだこのでたらめな魔力量は!?」

 テレアたちの周りを、分厚い魔法の防御壁が覆いつくす。
 なんか邪魔しようとしてきたけど気にせず強引に魔法を唱えると、ドレニクの表情が再び驚愕で彩られる。
 神獣相手だったら対魔法特攻効果でどんなに強固な魔力結界を張っても無駄だけど、こいつ神獣じゃないから問題ないだろ。
 現に結界を破壊しようとなんか魔法を撃ちこんでるけどびくともしてないし。

「なんやこれ……どうなっとるんや……?」
「やっぱり裸になったお兄ちゃんは凄いなぁ」
「裸になったって……もしかしてシュウの言ってたことほんとのことなんか?」
「なんだかわからぬが、凄いのじゃ!」

 俺の張った結界の中でテレアたちがのんびりと談笑している。
 もう少し緊張感持ってほしいところだけど、どうせもうすぐこの戦いも終わるしわざわざやめさせることもないな。
 そんな俺たちとは対照的に、ドレニクの顔に段々と焦りが見え始めてくる。

「ば……バカな……神獣の力を得たこのわしの力が……」
「一ついいこと教えてやるよ?お前さんが奪ったっていい気になってる玄武の力だけどな?あれ肝心な部分を何一つ奪えてないからな?」
「なん……だと……?」

 とはいえ玄武曰く、それが出来るだけでも人間としては大したものらしい。
 神獣の力を使って何を企んでるのかは……まあさっきドレニク本人がカルマ復活に近づいたーみたいなこと言ってたから、そっち方面で活用するつもりなんだろうがそうはさせない。

「そんなはずはない!!わしの作った神獣の力に干渉する魔法陣は完璧だ!!」

 顔を真っ赤にしつつ口角泡を飛ばしながらドレニクが激高する。
 自分の開発した魔法陣に絶対な自身があるみたいで、大変結構なことだが……。

「んじゃ悪いけどそのご自慢の魔法陣は、俺が有効に活用させてもらうな?」
「何を……!?」

 俺がそう宣言するのと、フリルから玄武の力を吸い取っていた魔法陣の色が変わり光を発するのは同時だった。
 しかも魔法陣はその規模を拡大していき、瞬くまにこのフロア全体にまで広がった。

「うわっ!?なんですかこれ!?」
「床全体に魔法陣……?もしやシューイチ様の?」

 突然床全体に広がった魔法陣を目にエナとレリスが目を丸くするも、俺の仕業だとわかると急に納得した表情に変わった。
 だがエナたちと対峙しているゴルマに限ってはそうはいかない。

「なんだ!?力が抜けて……!?おいドレニクじいさん!どうなってんだ!?」
「わっわからぬ……!なんということだ……神獣の力が抜け出ていく……!」

 玄武の魔力によって一回り大きく変貌してたゴルマとドレニクの身体が、みるみるうちに元の大きさに戻っていく。
 テレアに倒されて仰向けに倒れているコランズからも同様に玄武の力が抜け出ているようだ。
 ぶっつけ本番だったから不安だったけど、どうやらうまくいったみたいだな!

『魔法陣を通して我に力が戻ってくる……例を言うぞシューイチよ!』
『とりあえずこれで大丈夫なんだよな?』
『まあ多少は漏れもあるだろうが、ほぼ全快したといってもよい』

 漏れがあるのが多少気になるけど、これでようやくあのじじいをぶちのめす準備が整ったわけだ。
 ちなみ俺がやっていたのは、ドレニクの作ったという神獣の力を吸い取るという魔法陣に干渉し、強引に内容を書き換えることだった。
 書き換えた内容は勿論対象の玄武の力を吸い取り、元あるべきところへと返還すること。
 一から魔法陣を構築していたら如何に全裸状態の俺と言えど10分以上はかかるということだったので、残されていたものを有効に活用したというわけだ。 

「くそっ!分身を保てない……!」

 玄武の力を失ったことで、エナとレリスを圧倒していたゴルマの分身体が消えていった。
 こうなってしまえば、いくら消耗してるとはいえもはやエナとレリスの敵じゃないな。

「エナ!レリス!そっちは任せても大丈夫か!?」
「勿論ですよ!」
「こうなった以上、わたくしたちの勝利はゆるぎませんわ」
「てめえら!調子に乗ってんじゃねーぞ!!」

 ゴルマが激高しつつ、相変わらず馬鹿正直に真正面からエナとレリスに向かって突撃していく。
 うん、あの調子なら任せても問題ないな。

「許さん……許さんぞ貴様!!!」

 鬼のような形相でドレニクが俺を睨みつける。
 恐らく魔法陣を逆に利用されるなんて思ってなかったんだろうなぁ……せめて魔法陣をあらかじめ消しておけばまだもう少しなんとかなったかもしれないのにな。
 ていうか許さないのは俺の台詞だからな?

「許さなかったらどうするんだよ?玄武の力を使ってても俺に手も足も出なかったのに、今のお前さんの状態で俺に勝てる算段でもあんの?」

 実際に手も足も出てなかったのは全裸になる前の俺なんだけど、今そこはスルーの方向で。

「なめるなぁ!!!」

 ドレニクの魔力が膨れ上がり、何やら俺に魔法を掛けてきた。
 何だこの黒いもや?纏わりついてきて鬱陶しいな。

「禁呪の即死魔法だ……それは直接本人にかかる魔法……盾を張って防ぐことは出来ぬぞ!!」
「へー?ふーん?そー?」

 黒いもやを纏いながら、俺はずんずんとドレニクに向かって歩いて行く。

「なっなぜだぁ!?なぜ死なぬ!?ならもっと魔力の出力を上げて……!」
「だから効かないんだってば……いい加減学習しようぜ?」

 まあ理解したくない気持ちはよくわかるけどね?
 ありったけの魔力を注ぎ込んでいるのか、俺を殺そうと黒いもやの動きが活発になった。
 いい加減鬱陶しいことこの上ないので、先程魔法陣に干渉する際に感覚を掴んだ魔力に干渉する技術を試してみることにする。
 ……この魔法自体は物凄く単純なんだな。まあ実際はこの魔法を掛けられた瞬間に死ぬだろうからこんな呑気に干渉してる暇なんてないんだろうが。
 魔法に干渉して、その魔力を散らしてやると同時に俺に纏わりついていた黒いもやが霧散していく。

「そっ……そんな……」

 目の前の光景が信じられないのか、もう何度目かの驚愕の表情でドレニクが茫然としてしまった。
 そんなドレニクの目の前までたどり着いた俺は、以前リドアードに使った「どんな攻撃でも必ず一撃は耐える」魔法を掛けると同時に、右手で握りこぶしを作り力を溜めながらゆっくりと後ろに引いていく。

「ひっ!?」
「えーっと……パーフェクト・バインド?」

 恐怖のあまり逃げようとしたので、ゴルマが使っていた拘束魔法を使いドレニクの動きを強制的に止める。

「身体が動かな……やっやめろおおぉ!!!」

 ドレニクの表情が恐怖に彩られたのをしっかりと確認してから、俺は力任せにその顔面に向けて拳をぶち込んだ!
 そのまま教会の壁をぶち破り、ドレニクが外へと吹っ飛んで行った。
 まああの魔法のおかげで死にはしないだろう。

「ぐふっ……!」

 それと同時にゴルマが地面に倒れる音が響いてきた。
 どうやら向こうも無事に終わったみたいだな。

「お疲れさん二人とも!」
「シューイチさんこそお疲れ様です」
「中々に危ない戦いでしたわ」

 なんか二人とも真っすぐ俺を見てくれない。
 なんで?と思ったが自分が全裸になっていることをすっかり忘れていた。
 ティアから服を返してもらって急いで着替えないとな。
 
 俺は少し気恥ずかしい気分を押し殺しながら、ティアの元へと歩いて行った。
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