海と聖女とサムライと

clown

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第4章 王都へ

第46話 酒処シュセン

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ムサシは、ヤマタノオロチと言う大蛇がこの海の何処かに、潜んでいると言った。

つまり、私の両親を襲った仇がこの海にいる。

【上手くいくかどうか、わからないが、やって見るか?】

「でも、この広い海をどうやって探すの?」

【探しはしないさ。誘い出すんだ。今日はもう遅い。もう寝よう。今夜は俺が夜番をするから、安心して寝てていいぜ。】

【ただ馬車と馬は、浜辺から離れた場所でな。】

翌朝、私が目覚めるとムサシは、焚き火の前であぐらをかいて、眠りこけていた。

まあ、寝ずの番は、してくれた様だ。

「ムサシ、起きて。で、これからどうすればいいの?」

【ああ、はあー、寝ちまったか?】

【先ずは、シュセンに向かうぞ。】

私達は、シュセンに向け出発した、順調に行けば昼過ぎには着くだろう。

シュセンは、人口2000人の規模の普通の町で、海からは少し離れた山の麓に位置している。

しかしこの世界で、シュセンの町を知らない者は居ない。

それは、シュセンが酒処と呼ばれているからだ。

シュセンには、200もの造り酒屋があり、様々な酒が製造されているのだ。

シュセンの町に近づくと、ほのかに懐かしい匂いが漂って来た。

シュセンの町に着いた私達は、宿屋に入った。

夕食までは、まだ時間があるので、それまでは自由時間となった。

ムサシ、サキ、マリーナは、冒険者ギルドに行くと言って出かけていった。

どうやら、気を利かせて、私を独りに、してくれるらしい。

私は、独りで神殿に挨拶に向かう。

シュセンの神殿は、昔と変わらない佇まいだ。

昔、お世話になった神官長に挨拶を終え、隣接する孤児院へと足を運んだ。

中から元気一杯な子供達の声が聞こえてくる。

私は、昔お世話になった院長に挨拶をした。

院長は、涙を流して、私との再会を喜んでくれた。

神殿から、宿屋に戻るとムサシ達はまだ戻っていない。

私は、再び独りで出かけていった。

幼い頃の記憶を頼りに町の中をさまよう。

そして、なんとなく見覚えのある場所に出た。

多分この辺りに、両親の店があった気がする。

今は、空き地となっている場所の片隅に一本の大きな木が”そびえ立つ。

私は、大木に近づき、そっと触れてみた。

すると、幼い頃の記憶が鮮明に蘇って来た。

幼い頃、この木に登り降りでなくなり、両親を呼んでくれ降ろしてもらったこと、木の周りで鬼ごっこをしたこと。

いつしか、私の頬には涙が流れていた。
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