海と聖女とサムライと

clown

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第4章 王都へ

第47話 ヤマタノオロチ

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宿屋に戻ると、ムサシ達はすでに、戻ってきていた。

【よし、飯を食べながら作戦会議だ。】

町の大衆食堂に行き席に着く。

店のおすすめをいくつか頼む。

【ああ、後、おすすめの地酒を頼む。】

私が、まさか飲むのか?とムサシを睨みつける。

【これは、戦の前の儀式だ。マリアとマリーナも飲め。サキは少しだけだ。】

程なくして、酒と料理が運ばれて来た。

【よし、先ずは、乾杯だ。】

ムサシは、酒が入った杯をかざす。

【スサノオノミコトの加護と、マリアの敵討ちに、乾杯。】

「乾杯」。(乾杯)。『カンパイ』。

次の日、私達は、シュセン近くの浜辺に来ていた。

何処から持ってきたのか?浜辺には、積み上げられた酒樽がある。

ムサシは、波打ち際に酒樽を並べていく。

そして、酒樽のフタを開けていく。

次に、並べた酒樽のいくつかを海に向けて倒した。

【昨日、ギルドで聞いたんだが、この辺りでもたまに、酒樽運んでいると行方不明者になるらしい。】

【よし、みんな、街道脇に隠れるぞ。】

私達は、浜辺から離れ、街道を挟んだ反対側に身を隠す。

【いいかい、奴が現れても、直ぐには手を出すなよ。残った酒樽が空になる迄待つんだ。まあ、後は根比べだ。のんびり待とう。】

ムサシはそう言うと、昼寝を始めた。

緊張した時間が静かに流れていく。

マリーナは、ウトウトしている。

じっとしているのが、苦手なサキがやけにおとなしいと思ったら、ムサシの横で寝ている。

「うふふ。」

本当に親子のようだ。

こいつらは、緊張とは無縁の様だ。

やがて日が落ち夜になった。

幸い今夜は満月なので、月明かりで明るいはずだが今は、月が雲に隠れて良く見えない。

そして、真夜中頃、浜辺からバシャバシャと音がした。

よく見ると、海面を黒く大きな何かが酒樽の方に近付いてくる。

いつの間にか、ムサシは、サキやマリーナを起こしている。

私達は、身を屈めて、酒樽を見つめる。

黒い何かが波打ち際で、樽の蓋を開け頭を突っ込んでいる様だ。

その時、月を隠していた雲が途切れ、辺りが月に照らされた。

そこには、8匹の巨大なヘビが酒樽に頭を突っ込んでいた。

いや、頭は8つあるが胴体は、ひとつで尻尾が8つに分かれている。

そして、酒樽から離れた所まで、ゴクゴクと酒を飲む音が、聞こえてくる。

やがて、酒を飲む音が小さくなり、ヘビ達は、酒樽に頭を突っ込んだまま、イビキをかきはじめた。

ムサシが、皆に合図を送ると、皆で静かに近づいていく。

酒樽の前まで来た所で、ムサシが居合い抜きで酒樽毎真っ二つに切り裂いた。

ムサシの攻撃に少し遅れて、私、サキ、マリーナは、それぞれに頭が突っ込まれた酒樽をを攻撃した。

私は、火炎魔法を放つ、炎が酒樽の酒に引火して激しく燃えている。

マリーナは、捨て身の突撃で、酒樽毎、頭を串刺しにした。

サキは、剣を抜き、酒樽を何度も刺していた。

一気に4つの頭を攻撃された大蛇は、雄叫びを上げて、暴れ出した。

そして、残った3つの頭は、酒樽から頭を出して、私、マリーナ、サキに襲い掛かって来た。

頭は、大きく口を開けて、私に噛みつこうと突っ込んでくる。

私は、後ろに後ずさろうとしたが、砂に足を取られて、転んでしまった。

私は、もうだめだと目を閉じる。

しかし、私には何も、起きない。

ゆっくりと目を開けると、眼の前にはムサシの背中があった。

【悪かったな。てっきり俺を狙うと考えていたんだが、俺より、マリアの方が美味しそうに見えた様だ。】

ムサシの前には、縦横に斬られた頭が横たわっていた。

マリーナとサキは、襲い掛かって来た頭をそれぞれに始末していた。

こうして、ヤマタノオロチとの死闘は終わった。
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