妹は、悪いモノに取り憑かれたようです。

仙道佳帆

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第六章/耐えられないようです。

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「ぶふぅ?! んぶっ、ぷふ、ぷぉっ……」
 さすがのゆいも、口腔内で精を放たれて、目を白黒させている。
 少しのけ反るような仕草をしたが、それでも惟花は辛抱した。俺の男根が脈打つたび、更に注ぎ込まれる精液を、口の中に溜めている。
 ひどく気が咎めたけれど、いちど溢れた衝動は、放出しきるまで収まらない。肉棒の脈動が鈍り、尿道から残滓が滲む程度になるまで、惟花は俺の逸物を咥え続けた。
「……ぷ、んっ……むぅ……」
 射精が治まって、ようやく惟花が顔を離す。どうやら口の中に精液を蓄えてしまったみたいで、唇をきゅっ、と結び、苦々しげに眉をひそめていた。
「お、おい、早く吐き出せって……あ、そっか、ティッシュ……ええと……」
 慌てる俺を、惟花は手を振り制する。そして、自分の胸許に掌を添えると、
「んぐ……ん、んく……んぐっ、えふ、んっ……ぅぅ……」
 細い喉を幾度か蠢かし、やがて唇をひらいて、苦しげに喘いだ。
「え……惟花、お前……まさか、飲んだの?!」
「……ぅあい」
 ゲップをこらえた結果みたいな、ものすごい声で頷く。
「殿方はっ……おなごに、自らの精を、飲まれると……およろこびだと、聞いたことが……ありました故……」
「そういうのも確かに聞くけど、俺にはそういう趣味ないぞ……」
「そればかり、ではなくっ……んぷ、こんなところで、吐き出したら……掃除が面倒ですし、室内に、性の臭いが広がってしまいますゆえ……」
 けっこう現実的な理由だった。
「……がくどのは、なにゆえ斯様に心苦しげな顔をなさるのです?」
「いや……だってそりゃあ、女友達に……あんなの、飲ますなんて……」
「くどいようですが、愚生はあくまで友人として、岳どのの助けになろうとしたのです。……まあ、精飲まで試みたのは、好奇心からでありましたが」
「好奇心かい」
 ちょっと拍子抜けする。
 惟花は、そんな俺の顔を、興味津々の眼差しで覗き込んできた。
「しかし、そう言われてもなお、岳どのの罪悪感は消えぬようで。あ、ごまかしても無駄ですぞ? いったい何年の付き合いとお思いか?」
 に、っと悪戯っぽく微笑む。本当に心の中を見透かされているみたいで、俺は目を背けた。
「罪悪感を覚えるのは、愚生への気遣いではないのです、岳どの。ご自身の本心と――岳どのが、まことに想われているお方への配慮ゆえです」
「俺の……本心って、何だよ……」
「ご自分の胸に問われませ」惟花の掌が、俺の胸許に添えられる。「まことに岳どのがお求めになっているのがどなたなのか。如何様になされば、岳どのが楽になることが出来るのか――」
 ――俺が、いちばん想ってるのは誰なのか。
 こいつの口車に乗せられちゃいけない、と警戒しているのに、俺は誘われるように、自分の胸に訊ねてしまう。
「……どなたか、脳裏に浮かびましたかな?」
 浮かんでは、いた。でも、惟花に教えたくはなかった。いや、惟花だけではなく、誰にも言いたくない。
「恐らく、そのお方こそが、岳どのの堪えられない昂りを、慰めていただける唯一のお方。
 ご想像召され。そのお方の手が、斯様に――」
「――っ?!」
 電流のような刺激に、思わず飛び上がる。
「……おや、もう既にふたたびお勃ちになられていたようで」
「あ……い、いや、これは……だって、お前が――」
「確かに、示唆したのは愚生です。しかし……この結果は、岳どのがご自分の胸に問われたが故、でしょう?」
 惟花の指が、いつの間にか硬さを半ば恢復していた俺の肉棒を、そ、っと撫でた。
 けれど、それだけ。惟花は俺の陰茎から手を離して、諭すように言った。
「でもこれは……愚生が抜いてさしあげても、きっとまた辛くなるだけでございましょう。
 どうすれば治まるか……どうすれば、すべてが丸く収まるか……それは岳どのと、岳どのの心に浮かんだお方のあいだで決めていただくことです。
 まずは、ご自分でお考え召されよ……♡」
 目を細めた惟花の表情が、菩薩のようにも、小悪魔のようにも見える。
「……惟花、ひとつだけ……訊いていいか?」
「愚生がお答えできることならば、何なりと」
「お前……本っ当に、いったい何を考えてるの?」
「世界人類の幸せを」
「いや真面目に答えろって」
「失敬な、愚生は大真面目でございます」心外な、と言わんばかりに目を見張ってみせた。「むろん、愚生如きの力は限られておりますゆえ、手の届く範囲で、皆様の幸せに貢献できるよう努める次第――」
「……お前の思い通りになったって、それが本人の幸せとは限らないだろ」
「左様。しかし、岳どのについては、確信を抱いております故」
 自信満々の物云いに、もう俺は呆れるほかない。
 少し冷静さを取り戻したせいか、剥き出しのままの性器がひんやりとしてきた。少し拭いてから隠そう、と思い、改めてティッシュを探そうと腰を上げかけたところで、惟花に制される。
「岳どの。とりあえず、その傑物を仕舞って、服装を整えてくだされ」
「え? 仕舞う前に、拭きたいんだけど――」
 今度は口の前に指を立てて、発言も止められた。
 渋々服を直す俺をよそに、惟花は腰を低くし、忍び足でドアに近づく。そおお、っと引手に指をかけると、一気に開いて、廊下に踏み出した。
「ひきゃっ……?!」
 ドアが開くなり小さな悲鳴が響く。バタバタと、忙しない足音が廊下を走り去っていくのが聞こえた。
「惟花、いま……誰か、いたのか?」
 ようやく身繕いを終えた俺が恐る恐る訊ねる。
「……愚生としたことが、とんだ失態を犯したやも知れませぬ。いま、廊下を走り去っていかれた後ろ姿」そちらのほうを指差し、一拍溜めて、重々しく告げた。「恐らく、ずみどのです」
 俺は場所もわきまえず、ドアまで走る。廊下に視線を巡らせたが、それらしき人影は見当たらなかった。
「惟花っ……泉澄、どっちに行った?!」
「廊下のどっちに行ったか、を考えるより、どこに身を落ち着けようとするか、を考えるほうが確実ですぞ、岳どの」
 こっちが苛立つほどの悠長な口振りで、惟花は俺を諭す。
「恐らく、第三者と接したいとは思われぬはずです。さすればご自宅か、確実にひとりきりになれる場所でしょう。
 岳どの。今ならば恐らく、心当たりがおありでは?」
 化学反応のように、頭の中にひとつの光景が像を結んだ。いちいち誘導されてるのが癪に障るけれど、惟花の示唆は正しい、と俺も思う。
 すぐさま保健室を飛び出――そうとして、たたらを踏んだ。振り向いて、惟花に釘を刺す。
「惟花。頼むから……お前は来るなよ?」
 きょとん、と眼を丸くして、惟花は小首を傾げた。「来ては困られることでも?」
「っ……お、お前の想像してる意味じゃないぞ?! これはっ……お、俺たちの問題だからな?!」
「……愚生の想像してる意味、がピンと来ませんが、承知致した。愚生、そこまで野暮ではありませぬ」
 勘づいてる。ぜったい、勘づいてる。
 悔しいやら恥ずかしいやら、複雑な感情で頭も胸も熱くなったけれど、惟花に構っている余裕はない。風変わりな幼馴染みを一瞬睨みつけてから、俺は保健室を出た。



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