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第七章/認めるようです。
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服装を整えなおしても、すぐに後ろを振り返ることが出来なかった。
どうしても、気恥ずかしい。ずっと自分のなかに閉じこめていた感情も衝動も吐き出した爽快感もあるのだけど、そのぶんだけ、妹の顔を見るのが照れ臭かった。
でも、どのみち俺たちはこれから、同じ家に帰らなきゃいけない。腹を決めて、振り向いた。
「……ごめん。泉澄……まだ、ダメ……」
気配で察したのか、俺に背を向けて地べたに座った泉澄は、申し訳なさそうに言う。
泉澄はどうやら、下腹を汚した淫液の始末に往生してるみたいだった。俺の目をはばかってか、脚を遠慮がちに広げて、こそこそと股間を拭く仕草が、なんだか愛おしい。
「スゴいんだもん。ひとりでしてたときより……いっぱい、ベトベトになっちゃった……」
「――ごめん。抑えが効かなくて……俺も、なんか……いつもより出た気がするし……」
「え?」途端、泉澄は弾かれたように振り向いた。棘のある口調で問いただす。「お兄ちゃん、もしかして……もう、他の女の子と、こういうの……したことあるの……? もしかして、惟花ちゃんともう、そこまで――」
「ない! 惟花ともしてない! じゃなくて……ひとりで、してるときと、比べて……だよ……」
「……そんなに、多かったの?」
「う……ま、まあ……ムラムラしてるときなんか、二回とか、抜くこともあるけど……いつもはだんだん、薄くなるし……」
「……そっか。そうなんだ。
じゃあ……いまは、いつもと何が違ったの?」
「それは……想像じゃなくて、自分の手でもなくて、本物の女の子で……それも、相手が……泉澄だから、だと……思う……」
「女の子が相手なら……こんなにたくさん、出せるの?」
「……いや。たぶん、相手にもよるよ」
「……ふぅん。じゃ……泉澄は、お兄ちゃんにとって……たくさん出ちゃう相手、なんだね……」
「そう……だな」
「……あは。なんだろ……すごく、恥ずかしくて……嬉しい……♡」
一瞬、覗かせた剣幕はどこへやら、泉澄は紅潮した頬を両手で覆って身悶えた。
……きっと、もともとけっこう、性的なことに関心はあったんだろうな。
当たり前だと思う。どれほど真面目な人間でも、本能はある。性や男女の営みに興味を抱くのは、何の不思議もなかった。
ただ泉澄の場合、少し純真すぎたのだろう。だから、少しずつ溜まっていた鬱屈を、人気のない場所での自慰、という行為で発散した。
知識を共有する相手がいないから、自慰なんて決しておかしなことじゃない、という認識がなくて、ひとりで悩んでいたのだろう。たぶんそれが、惟花が“悪いモノに取り憑かれた”というかたちで表現した変化を、泉澄にもたらした。
もし俺の推測が当たっているなら。俺は、改めて身の引き締まる思いがした。
ようやく納得がいくくらいに身体を清めたのか、泉澄はショーツを穿いて、スカートをぽんぽん、とはたく。それから俺を振り向くと、恐る恐る、といった様子で問いかける。
「……それで? お兄ちゃん……その、変な感じ、治まった……?」
「……解らない。けど、三回も出して……さすがに、ちょっと落ち着いた……」
「スゴかったね。泉澄……脚のあいだにまだ、お兄ちゃんがいるみたいだもん……♡」
泉澄は自分のへそのあたりを、愛おしげに撫でさすった。
「泉澄のほうは、どうだ? 悪いものは……消えた、と……思うか?」
同じ質問を返すと、泉澄は唇を尖らせ、上目遣いに俺を睨む。
「……悪いものじゃないもん」
想定してなかった反応に、俺は言葉を詰まらせてしまった。
俺の動揺を察して、泉澄は堅くなった表情を、ふ、と緩める。優しく笑って、ゆるゆると首を横に振った。
「……ごめん。駄目みたい……泉澄、身体も心も……深いところまで、取り憑かれちゃった……かも」
泉澄の細く冷たい手が、俺の手を取って、自分の胸に押し当てる。慎ましやかだけど、まろやかな乳房が衣服の下に息づいていた。掌に響く鼓動は、激しい。
「だから……泉澄、もう……お兄ちゃんじゃないと……きっと、ホントに変になっちゃうかも……」
困ったような笑みを浮かべた。
俺の心を針がちくちくと刺している。許されないことなのは俺も泉澄も重々解っていた。でも、たぶん泉澄の言う通りなんだろう。
なら、俺の返す言葉は決まっていた。
「なら、俺も……かもな。俺も……泉澄以外だと、また……おかしくなるかも知れない……」
「……あ、あは……じゃ、泉澄たち……ずっと、一緒にいなきゃ……だね♡」
「……だな」
見つめ合う。泉澄の瞳の中に俺がいた。きっと泉澄は、俺の目の中に自分を見ている。それがこの上なく幸せなことのように感じた。
「……きょう、お母さん、帰り早いんだよね?」
「ああ……もう帰らないと、心配するな」
「うん……だから、今夜はもう、これだけ」
く、っと細い顎を上げ、泉澄は瞼を閉じる。
俺は小さな肩を両手で引き寄せ、優しく唇を重ねた。
さっきのように激しく舌を絡めたりせず、軽く吸って、離れる。瞼を開けた泉澄は、切なげに溜息をついて、懇願した。
「……我慢するから、お兄ちゃん、お願い……もう一回、だけ……」
苦笑いして、リクエストに応える。
キスしただけでも気持ちいい、なんて話は、信じてなかった。
でも、ほんの少しだけ唇を吸う触れあいが、痺れるくらいに心地好い。
遅くなる、と解ってるのに、名残惜しくて、俺と泉澄はなんども、なんども唇を重ね合った。
どうしても、気恥ずかしい。ずっと自分のなかに閉じこめていた感情も衝動も吐き出した爽快感もあるのだけど、そのぶんだけ、妹の顔を見るのが照れ臭かった。
でも、どのみち俺たちはこれから、同じ家に帰らなきゃいけない。腹を決めて、振り向いた。
「……ごめん。泉澄……まだ、ダメ……」
気配で察したのか、俺に背を向けて地べたに座った泉澄は、申し訳なさそうに言う。
泉澄はどうやら、下腹を汚した淫液の始末に往生してるみたいだった。俺の目をはばかってか、脚を遠慮がちに広げて、こそこそと股間を拭く仕草が、なんだか愛おしい。
「スゴいんだもん。ひとりでしてたときより……いっぱい、ベトベトになっちゃった……」
「――ごめん。抑えが効かなくて……俺も、なんか……いつもより出た気がするし……」
「え?」途端、泉澄は弾かれたように振り向いた。棘のある口調で問いただす。「お兄ちゃん、もしかして……もう、他の女の子と、こういうの……したことあるの……? もしかして、惟花ちゃんともう、そこまで――」
「ない! 惟花ともしてない! じゃなくて……ひとりで、してるときと、比べて……だよ……」
「……そんなに、多かったの?」
「う……ま、まあ……ムラムラしてるときなんか、二回とか、抜くこともあるけど……いつもはだんだん、薄くなるし……」
「……そっか。そうなんだ。
じゃあ……いまは、いつもと何が違ったの?」
「それは……想像じゃなくて、自分の手でもなくて、本物の女の子で……それも、相手が……泉澄だから、だと……思う……」
「女の子が相手なら……こんなにたくさん、出せるの?」
「……いや。たぶん、相手にもよるよ」
「……ふぅん。じゃ……泉澄は、お兄ちゃんにとって……たくさん出ちゃう相手、なんだね……」
「そう……だな」
「……あは。なんだろ……すごく、恥ずかしくて……嬉しい……♡」
一瞬、覗かせた剣幕はどこへやら、泉澄は紅潮した頬を両手で覆って身悶えた。
……きっと、もともとけっこう、性的なことに関心はあったんだろうな。
当たり前だと思う。どれほど真面目な人間でも、本能はある。性や男女の営みに興味を抱くのは、何の不思議もなかった。
ただ泉澄の場合、少し純真すぎたのだろう。だから、少しずつ溜まっていた鬱屈を、人気のない場所での自慰、という行為で発散した。
知識を共有する相手がいないから、自慰なんて決しておかしなことじゃない、という認識がなくて、ひとりで悩んでいたのだろう。たぶんそれが、惟花が“悪いモノに取り憑かれた”というかたちで表現した変化を、泉澄にもたらした。
もし俺の推測が当たっているなら。俺は、改めて身の引き締まる思いがした。
ようやく納得がいくくらいに身体を清めたのか、泉澄はショーツを穿いて、スカートをぽんぽん、とはたく。それから俺を振り向くと、恐る恐る、といった様子で問いかける。
「……それで? お兄ちゃん……その、変な感じ、治まった……?」
「……解らない。けど、三回も出して……さすがに、ちょっと落ち着いた……」
「スゴかったね。泉澄……脚のあいだにまだ、お兄ちゃんがいるみたいだもん……♡」
泉澄は自分のへそのあたりを、愛おしげに撫でさすった。
「泉澄のほうは、どうだ? 悪いものは……消えた、と……思うか?」
同じ質問を返すと、泉澄は唇を尖らせ、上目遣いに俺を睨む。
「……悪いものじゃないもん」
想定してなかった反応に、俺は言葉を詰まらせてしまった。
俺の動揺を察して、泉澄は堅くなった表情を、ふ、と緩める。優しく笑って、ゆるゆると首を横に振った。
「……ごめん。駄目みたい……泉澄、身体も心も……深いところまで、取り憑かれちゃった……かも」
泉澄の細く冷たい手が、俺の手を取って、自分の胸に押し当てる。慎ましやかだけど、まろやかな乳房が衣服の下に息づいていた。掌に響く鼓動は、激しい。
「だから……泉澄、もう……お兄ちゃんじゃないと……きっと、ホントに変になっちゃうかも……」
困ったような笑みを浮かべた。
俺の心を針がちくちくと刺している。許されないことなのは俺も泉澄も重々解っていた。でも、たぶん泉澄の言う通りなんだろう。
なら、俺の返す言葉は決まっていた。
「なら、俺も……かもな。俺も……泉澄以外だと、また……おかしくなるかも知れない……」
「……あ、あは……じゃ、泉澄たち……ずっと、一緒にいなきゃ……だね♡」
「……だな」
見つめ合う。泉澄の瞳の中に俺がいた。きっと泉澄は、俺の目の中に自分を見ている。それがこの上なく幸せなことのように感じた。
「……きょう、お母さん、帰り早いんだよね?」
「ああ……もう帰らないと、心配するな」
「うん……だから、今夜はもう、これだけ」
く、っと細い顎を上げ、泉澄は瞼を閉じる。
俺は小さな肩を両手で引き寄せ、優しく唇を重ねた。
さっきのように激しく舌を絡めたりせず、軽く吸って、離れる。瞼を開けた泉澄は、切なげに溜息をついて、懇願した。
「……我慢するから、お兄ちゃん、お願い……もう一回、だけ……」
苦笑いして、リクエストに応える。
キスしただけでも気持ちいい、なんて話は、信じてなかった。
でも、ほんの少しだけ唇を吸う触れあいが、痺れるくらいに心地好い。
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