17 / 36
夜間飛行
しおりを挟む
その夜、思わぬ来客があった。
「グフン!」
聞きなれた声に目覚めると、窓の外に大きな影があった。
「フォリン?」
窓を開けると彼は首を私に向けてくる。うんと手を伸ばしてさすると、一気に縮んだ。闇に馴染む姿が懐かしい。大型犬くらいの大きさになったフォリンは、カーペットに座り込んだ。
「グルッふ」
「置いて行ってごめんね」
喉の奥から絞り出すようにフォリンは鳴いた。
「これからはここにいていいよ」
「グおん!」
エメラルドの目が煌めく。優しくなでていると、突然ドアがノックされた。
「僕だけど」
その声にフォリンは強く反応した。そのまま優雅に扉の方へと飛んでいく。ゆっくりドアを開けた主に彼はダイブした。
「う、うわぁ?!」
信じられないものを見たというように彼はフォリンを抱えていた。私は慌ててフォリンを呼び戻す。しゅんとしている姿を見て彼は、
「見た目は怖いけど、可愛いな」
と笑った。なんだがフォリンも嬉しそう……。じゃなくて!
「黒竜のフォリンです」
後付けで紹介をしておく。
「僕が見た茶竜よりもずっと小さいな」
「本当はもっと大きいんです」
「え? そうなの?」
曖昧に笑って誤魔化そうとするが、彼は興味を持ってしまったようだ。
「人が乗れるくらい?」
「え、まぁ」
「乗ってみたい」
飛ぶのが好きなフォリンは硬いしっぽをぶんぶん振った。
「……昼間はだめですよ。目立っちゃうから」
乗り気な二人に水を差すが、もう効かなかった。
「じゃあ、今からだな」
フォリンはすぐに窓から出ようとする。
「わかりました。少しだけですよ」
しぶしぶ窓を開けるとフォリンは私たちを乗せて夜空を駆け上った。風を味方にして安定したところで、彼は突然口を開いた。
「思い出したよ。全部」
「え?」
「ナタリア、遅くなってすまなかった」
「エデンさん?」
彼の背中にそっと触れる。振り返った彼は泣き出しそうな顔をしていた。
「君のことが好きだ」
深い森の香りが私たちを包む。
「私もエデンさんが好きです」
フォリンは飛ぶのに夢中で静かだ。
「あの日の帰り道、僕は馬で近道を選んだんだ」
すぐに指輪をくれた日だとわかった。
「その途中、急に馬が暴走して僕は振り落とされた」
「あんなに穏やかな馬なのに?」
彼が連れていた馬は年を重ねた馴染み深い子なはずだ。
「僕も驚いて、うまく受け身が取れなかった」
「それで、どうなったんですか」
エデンさんは何故だか言うのを躊躇っていた。
「その後、地鳴りのような音が響いて、あの茶竜が現れたんだ」
彼は夜空の旅の中、私に詳細を語ってくれた。茶竜は苔色の混じった手の長い凶暴な生き物だったということ。すぐに剣を抜いて茶竜の顔に刺したもののむしろ怒らせただけだったことや、その上に跨っていた黒マントの男の存在。茶竜の爪が目の前に来たタイミングで誰かに助けられた事実。その後山小屋に連れて行ってもらったが、水を口にした途端意識が遠のいたという。
窓から私の部屋に戻ると、心地よい眠気に襲われる。彼がすべて思い出してくれた安心感や、新たな謎の登場で頭がパンクしてしまいそうだった。ぐるぐると頭が回る中、彼におやすみを告げると早速ベッドに入ったのだった。
「グフン!」
聞きなれた声に目覚めると、窓の外に大きな影があった。
「フォリン?」
窓を開けると彼は首を私に向けてくる。うんと手を伸ばしてさすると、一気に縮んだ。闇に馴染む姿が懐かしい。大型犬くらいの大きさになったフォリンは、カーペットに座り込んだ。
「グルッふ」
「置いて行ってごめんね」
喉の奥から絞り出すようにフォリンは鳴いた。
「これからはここにいていいよ」
「グおん!」
エメラルドの目が煌めく。優しくなでていると、突然ドアがノックされた。
「僕だけど」
その声にフォリンは強く反応した。そのまま優雅に扉の方へと飛んでいく。ゆっくりドアを開けた主に彼はダイブした。
「う、うわぁ?!」
信じられないものを見たというように彼はフォリンを抱えていた。私は慌ててフォリンを呼び戻す。しゅんとしている姿を見て彼は、
「見た目は怖いけど、可愛いな」
と笑った。なんだがフォリンも嬉しそう……。じゃなくて!
「黒竜のフォリンです」
後付けで紹介をしておく。
「僕が見た茶竜よりもずっと小さいな」
「本当はもっと大きいんです」
「え? そうなの?」
曖昧に笑って誤魔化そうとするが、彼は興味を持ってしまったようだ。
「人が乗れるくらい?」
「え、まぁ」
「乗ってみたい」
飛ぶのが好きなフォリンは硬いしっぽをぶんぶん振った。
「……昼間はだめですよ。目立っちゃうから」
乗り気な二人に水を差すが、もう効かなかった。
「じゃあ、今からだな」
フォリンはすぐに窓から出ようとする。
「わかりました。少しだけですよ」
しぶしぶ窓を開けるとフォリンは私たちを乗せて夜空を駆け上った。風を味方にして安定したところで、彼は突然口を開いた。
「思い出したよ。全部」
「え?」
「ナタリア、遅くなってすまなかった」
「エデンさん?」
彼の背中にそっと触れる。振り返った彼は泣き出しそうな顔をしていた。
「君のことが好きだ」
深い森の香りが私たちを包む。
「私もエデンさんが好きです」
フォリンは飛ぶのに夢中で静かだ。
「あの日の帰り道、僕は馬で近道を選んだんだ」
すぐに指輪をくれた日だとわかった。
「その途中、急に馬が暴走して僕は振り落とされた」
「あんなに穏やかな馬なのに?」
彼が連れていた馬は年を重ねた馴染み深い子なはずだ。
「僕も驚いて、うまく受け身が取れなかった」
「それで、どうなったんですか」
エデンさんは何故だか言うのを躊躇っていた。
「その後、地鳴りのような音が響いて、あの茶竜が現れたんだ」
彼は夜空の旅の中、私に詳細を語ってくれた。茶竜は苔色の混じった手の長い凶暴な生き物だったということ。すぐに剣を抜いて茶竜の顔に刺したもののむしろ怒らせただけだったことや、その上に跨っていた黒マントの男の存在。茶竜の爪が目の前に来たタイミングで誰かに助けられた事実。その後山小屋に連れて行ってもらったが、水を口にした途端意識が遠のいたという。
窓から私の部屋に戻ると、心地よい眠気に襲われる。彼がすべて思い出してくれた安心感や、新たな謎の登場で頭がパンクしてしまいそうだった。ぐるぐると頭が回る中、彼におやすみを告げると早速ベッドに入ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
お姫様は死に、魔女様は目覚めた
悠十
恋愛
とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。
しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。
そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして……
「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」
姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。
「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」
魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
根暗令嬢の華麗なる転身
しろねこ。
恋愛
「来なきゃよかったな」
ミューズは茶会が嫌いだった。
茶会デビューを果たしたものの、人から不細工と言われたショックから笑顔になれず、しまいには根暗令嬢と陰で呼ばれるようになった。
公爵家の次女に産まれ、キレイな母と実直な父、優しい姉に囲まれ幸せに暮らしていた。
何不自由なく、暮らしていた。
家族からも愛されて育った。
それを壊したのは悪意ある言葉。
「あんな不細工な令嬢見たことない」
それなのに今回の茶会だけは断れなかった。
父から絶対に参加してほしいという言われた茶会は特別で、第一王子と第二王子が来るものだ。
婚約者選びのものとして。
国王直々の声掛けに娘思いの父も断れず…
応援して頂けると嬉しいです(*´ω`*)
ハピエン大好き、完全自己満、ご都合主義の作者による作品です。
同名主人公にてアナザーワールド的に別な作品も書いています。
立場や環境が違えども、幸せになって欲しいという思いで作品を書いています。
一部リンクしてるところもあり、他作品を見て頂ければよりキャラへの理解が深まって楽しいかと思います。
描写的なものに不安があるため、お気をつけ下さい。
ゆるりとお楽しみください。
こちら小説家になろうさん、カクヨムさんにも投稿させてもらっています。
王女様は聖女様?おてんば姫の大冒険~ペットのドラゴンが迷子なので冒険者になって探しに行きます!~
しましまにゃんこ
ファンタジー
アリシア王国の第3王女ティアラ姫には誰にも言えない秘密があった。
それは自分が全属性の魔力を持ち、最強のチート能力を持っていた「建国の賢者アリシア」の生まれ変わりであること!
8才の誕生日を境に前世の記憶を取り戻したものの、500年後に転生したことを知って慌てる。なぜなら死の直前、パートナーのドラゴンに必ず生まれ変わって会いにいくと約束したから。
どこにいてもきっとわかる!と豪語したものの、肝心のドラゴンの気配を感じることができない。全属性の魔力は受け継いだものの、かつての力に比べて圧倒的に弱くなっていたのだ!
「500年……長い。いや、でも、ドラゴンだし。きっと生きてる、よね?待ってて。約束通りきっと会いにいくから!」
かつての力を取り戻しつつ、チートな魔法で大活躍!愛する家族と優しい婚約者候補、可愛い獣人たちに囲まれた穏やかで平和な日々。
しかし、かつての母国が各国に向けて宣戦布告したことにより、少しずつ世界の平和が脅かされていく。
「今度こそ、私が世界を救って見せる!」
失われたドラゴンと世界の破滅を防ぐため、ティアラ姫の冒険の旅が今、始まる!
剣と魔法が織りなすファンタジーの世界で、アリシア王国第3王女として生まれ変わったかつての賢者が巻き起こす、愛と成長と冒険の物語です。
イケメン王子たちとの甘い恋の行方もお見逃しなく。
小説家になろう、カクヨムさま他サイトでも投稿しています。
白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします
鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。
だが彼女は泣かなかった。
なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。
教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。
それは逃避ではない。
男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。
やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。
王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。
一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。
これは、愛を巡る物語ではない。
「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。
白は弱さではない。
白は、均衡を保つ力。
白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる