黒竜使いの少女ナタリア

杏栞しえる

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茶竜、現る

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 暗い城内に立ち竦んでいると、近くで地鳴りが聞こえた。地面が小刻みに揺れている。フォリンもガタガタと震え始めた。
「フォリン! ナタリアとエデン様を連れて外に出なさい」
 祖母が叫んだ瞬間。城の壁に大きな穴が開いた。フォリンはすぐに大きくなり、私たちを背中に乗せる。外の明りで見えたのは、大きな茶竜の顔だった。侵入してきたそれに乗っているのは黒いマントの男。
「お兄ちゃん……」
 私は肩を揺すられてはっとした。
「大丈夫か?」
 後ろに乗っているエデンさんは私の瞳を見ていた。フォリンはいつも以上に速く飛び、暗い城の廊下を進む。茶竜は建物を破壊しながら追跡してきていた。壁にいくつもの絵画が見えては流れていく。人の気配がまるでしない、と思った。お母さんは本当にここにいるのだろうか。後方の茶竜は建物内を思いのままに飛行していた。やがて廊下の突き当りまで私たちは追い詰められてしまう。フォリンの首に手を伸ばし、かろうじて私たちを乗せられるくらいにまで体を縮めると、窓を破って外へ出た。彼はすぐに大きく翼を広げる。続けて茶竜は建物の壁ごと外に飛び出した。振り返ると同時に壊れた壁の下に人らしきものが見え、息をのんだ。とはいえ、目の前まで茶竜の爪は迫ってきている。
「フォリン」
 私の声に少し首を持ち上げる。
「あの湖まで行って」
「グおん!」
 今までで一番速く飛んだ。エデンさんと私は必死にしがみつく。上空へ行くと茶竜も男もついてきているのが見えた。私は湖を下に確認するとエデンさんを振り返った。
「エデンさん。お願いしたいことがあるの」
 彼は何も言わずにうなずく。
「地下から城へ戻って、城の地下にいる人たちを助けてほしいの」
「君を一人になんて出来ないよ」
 彼が承諾してくれるはずもなかった。けれど……
「さっき崩れた壁の下に人が見えたの。いざ全員助けるってなったら、向こうの方が人手が足りなくなるでしょう?」
 昔、意外と頑固なところがあると彼に言われた。ここで発揮しなくてどうする。私の勘は意外と当たるのだから。
「わかった」
 エデンさんは、苦々しい顔をしてうなずいた。
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