1 / 22
全ての始まり
1. 天《そら》より舞い降りし者
しおりを挟む
“運命”という言葉がある。意味合いによっては歩んできた人生に対しての表現方法だったり、あるいはこれから先の未来に対しての決まった進路の名称だったりなどの言い方があるが、それでも俺はこの“運命”とやらはあんまり信用しない人間である。
自分の人生は自分で決めるものだと思っているし、仮にこれから先の人生がこの“運命”とやらで決まっていようが変えられる自信があるからだ(しかし人生が必ずしも自分の力だけで決められるものではないとも十分理解はしている)。
しかし、あの時だけは“運命”をあまり信用しない俺でも何か心の奥で感じるものがあったのは確かだ。
転の儀場【てんのぎじょう】、名称についてはここ数年から数十年、いや数百年ぐらい昔からころころ変わっているのでよく覚えていないが、ほとんど俺しか来ないのでどうでもいい。
儀式が行われる場所だというのも理解してはいるが、殺風景すぎて溜息が出てしまう。昔からの掟だというのもわかっているが、恐らくもう数百年前の原風景が残っているのはこの転の儀場がある魔杖の森【まじょうのもり】だけではないだろうか?それほどまでに木々や緑で生い茂っている。
ふと、愛用している懐中時計を手に取り時間を確かめた。
「……遅いな、珍しい」
いつもならもう儀式による現象が起こるはずなのに、このときばかりは数分ほど遅れていた。
(日付は間違えてないよな? 今日は無し? 今までそんなことは一度も無いはずなんだが、それとも俺の時計が狂ったか? いや、二日ほど前にちゃんと時刻合わせはしたぞ? もし狂ったとしても数分程度だろ?じゃあなんでだ?)
今までに無かったことが起き、少し焦り始めた時だった。俺の焦りを何者かが悟ったのかは分からないが、少しずつ転の儀場の中心、もうかすれて読めない魔法陣に向かって風が吹き始めた。
(ふう、どうやら。俺の時計が少しだけずれてたのか。なら説明がつく。しかしなあ、結構愛用してんだぜ? もう替え時かあ……ん?)
儀式の遅れをこの時計と認識しようとした時、俺はいつもとは違う空気を感じた。何故なら一目瞭然、普段の儀式よりも風が強いからである。
「おいおい! いつもより風が強くありませんかね!? おかしいだろ!? いつもこんな風でしたっけ? 何が起きるんですか!? ちょっと俺怖くなってきたよ!?」
違和感を感じた俺は得体のしれない恐怖により少し言葉数が多くなってきた。しかし、次の瞬間である、風は無風になり魔法陣の遥上空にこれまたいつもとは桁違いに輝く光の球体が現れたのである。
しかしそれは輝き方はいつもより桁違いだが、物は同じ花の蕾だった。
「……ふふふ、ははは! もう訳分かんねえや! もうどうにでもなりやがれ!」
俺は色々と考えるのをやめた。
蕾はゆっくりと降下し、魔法陣の中心に降りるとゆっくりとその花びらを開こうとする。
「……あ、やっべえ! 布! 布! 普段と違うからすっかり忘れてた!」
俺は急いでカバンから大きめの布を取り出した。
蕾がゆっくりと開きだし、最後には大きな一輪の菊の花を見事に咲かせた。その中心には黒髪の少女が生まれたままの姿で膝を丸めて安らかに眠っていた。
しかしそれを見た俺はあっけにとられてしまった。
「……え? あんなに普段と違う前振りがあったのにこれだけ? この女の子だけ? いつもと風も光り方も違うのにこれだけ? おかしくない? ほかの特典? みたいなやつがちいさいとかか?」
少女が寝ているそばをよく見ても、残念ながら何もなかった。
(前に来たやつが言ってたガチャだっけか? あれだといつもと演出が違うとレア? なやつが出てくるって言ってたんだがなあ。じゃあ、この子がそのレアキャラ? ってやつなの?)
俺は一抹の不安と疑問に駆られながらとりあえず裸で寝ている少女に布をかけようと思い、少女に近づく。すると少女は寝返りをして横から仰向けの状態になった。
その時である、俺の目には少女の胸元のほくろに目が行った。医者ではないがこういう職業柄人間の裸に対して何も感じることはないと自負する俺だったが、この時だけは違った。
別に変な感情が湧き出たわけではない。普通に一般的な感情、名称化するのであればそう【懐かしい】である。
しかし、胸元にほくろがある人間なんて珍しくとも何ともない。普通の人間であればほくろなんて体を探せばいくらでもあるだろう。だが、この時だけは何故か懐かしいと共に安堵感と安心感がこみあげてきたのである。
とりあえず少女に布をかぶせ背中を向き、この脳裏によぎった感情の正体を探ろうとした。しかし、それをしようとしたのも束の間である。
「うーん、ん?」
(あ、起きたか。まあ仕方がない、後にするか)
俺は振り向き、起きたばかりで目を擦っている少女に向かって笑顔を向けて手を差し出しこう言った
「おはよう、起きれるかい? 初めまして、俺は龍【りゅう】だよろしく。君の名前は?」
少女は目をぱっちりとあけると、俺の顔、服装、自分の状態を確認した。しかも何度も、頭でちゃんと理解しようとして。
そして少女は満面の笑みで微笑みかけると俺の予想とはまた違ったものを返してきた。
自分の人生は自分で決めるものだと思っているし、仮にこれから先の人生がこの“運命”とやらで決まっていようが変えられる自信があるからだ(しかし人生が必ずしも自分の力だけで決められるものではないとも十分理解はしている)。
しかし、あの時だけは“運命”をあまり信用しない俺でも何か心の奥で感じるものがあったのは確かだ。
転の儀場【てんのぎじょう】、名称についてはここ数年から数十年、いや数百年ぐらい昔からころころ変わっているのでよく覚えていないが、ほとんど俺しか来ないのでどうでもいい。
儀式が行われる場所だというのも理解してはいるが、殺風景すぎて溜息が出てしまう。昔からの掟だというのもわかっているが、恐らくもう数百年前の原風景が残っているのはこの転の儀場がある魔杖の森【まじょうのもり】だけではないだろうか?それほどまでに木々や緑で生い茂っている。
ふと、愛用している懐中時計を手に取り時間を確かめた。
「……遅いな、珍しい」
いつもならもう儀式による現象が起こるはずなのに、このときばかりは数分ほど遅れていた。
(日付は間違えてないよな? 今日は無し? 今までそんなことは一度も無いはずなんだが、それとも俺の時計が狂ったか? いや、二日ほど前にちゃんと時刻合わせはしたぞ? もし狂ったとしても数分程度だろ?じゃあなんでだ?)
今までに無かったことが起き、少し焦り始めた時だった。俺の焦りを何者かが悟ったのかは分からないが、少しずつ転の儀場の中心、もうかすれて読めない魔法陣に向かって風が吹き始めた。
(ふう、どうやら。俺の時計が少しだけずれてたのか。なら説明がつく。しかしなあ、結構愛用してんだぜ? もう替え時かあ……ん?)
儀式の遅れをこの時計と認識しようとした時、俺はいつもとは違う空気を感じた。何故なら一目瞭然、普段の儀式よりも風が強いからである。
「おいおい! いつもより風が強くありませんかね!? おかしいだろ!? いつもこんな風でしたっけ? 何が起きるんですか!? ちょっと俺怖くなってきたよ!?」
違和感を感じた俺は得体のしれない恐怖により少し言葉数が多くなってきた。しかし、次の瞬間である、風は無風になり魔法陣の遥上空にこれまたいつもとは桁違いに輝く光の球体が現れたのである。
しかしそれは輝き方はいつもより桁違いだが、物は同じ花の蕾だった。
「……ふふふ、ははは! もう訳分かんねえや! もうどうにでもなりやがれ!」
俺は色々と考えるのをやめた。
蕾はゆっくりと降下し、魔法陣の中心に降りるとゆっくりとその花びらを開こうとする。
「……あ、やっべえ! 布! 布! 普段と違うからすっかり忘れてた!」
俺は急いでカバンから大きめの布を取り出した。
蕾がゆっくりと開きだし、最後には大きな一輪の菊の花を見事に咲かせた。その中心には黒髪の少女が生まれたままの姿で膝を丸めて安らかに眠っていた。
しかしそれを見た俺はあっけにとられてしまった。
「……え? あんなに普段と違う前振りがあったのにこれだけ? この女の子だけ? いつもと風も光り方も違うのにこれだけ? おかしくない? ほかの特典? みたいなやつがちいさいとかか?」
少女が寝ているそばをよく見ても、残念ながら何もなかった。
(前に来たやつが言ってたガチャだっけか? あれだといつもと演出が違うとレア? なやつが出てくるって言ってたんだがなあ。じゃあ、この子がそのレアキャラ? ってやつなの?)
俺は一抹の不安と疑問に駆られながらとりあえず裸で寝ている少女に布をかけようと思い、少女に近づく。すると少女は寝返りをして横から仰向けの状態になった。
その時である、俺の目には少女の胸元のほくろに目が行った。医者ではないがこういう職業柄人間の裸に対して何も感じることはないと自負する俺だったが、この時だけは違った。
別に変な感情が湧き出たわけではない。普通に一般的な感情、名称化するのであればそう【懐かしい】である。
しかし、胸元にほくろがある人間なんて珍しくとも何ともない。普通の人間であればほくろなんて体を探せばいくらでもあるだろう。だが、この時だけは何故か懐かしいと共に安堵感と安心感がこみあげてきたのである。
とりあえず少女に布をかぶせ背中を向き、この脳裏によぎった感情の正体を探ろうとした。しかし、それをしようとしたのも束の間である。
「うーん、ん?」
(あ、起きたか。まあ仕方がない、後にするか)
俺は振り向き、起きたばかりで目を擦っている少女に向かって笑顔を向けて手を差し出しこう言った
「おはよう、起きれるかい? 初めまして、俺は龍【りゅう】だよろしく。君の名前は?」
少女は目をぱっちりとあけると、俺の顔、服装、自分の状態を確認した。しかも何度も、頭でちゃんと理解しようとして。
そして少女は満面の笑みで微笑みかけると俺の予想とはまた違ったものを返してきた。
0
あなたにおすすめの小説
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる