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全ての始まり
20. 識人歓迎会 1
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本来の歓迎会……いやこのぐらいの小規模な歓迎会なら皆、私服…もしくはスーツ等で参加するのが普通……だと思うのだが、違った。
何だろう……皆気合が入りすぎているのか何なのか初対面で名前も知らない目の前の私を歓迎しようとしている人々の服装は各々違った。何らかの制服であったりスーツではあるが胸元に何かしらつけていたりしているのが目立っている。
「……」
「どうした?」
大勢の歓迎の声と視線、服装に呆気にとられていると師匠が声をかけてくる。
「いや、どうしたと言われてもなあ……まあおどろいたよ?まあそれ以上に明らかに服装が統一されてないからここに集まっている人がどういう集まりの人なのかと思っただけ」
「……はぁ、だから言ったじゃないか。いつも通りで良いと、なんでわざわざそんなことをする必要があると聞いたのに」
「だって、アリスちゃん可愛いし、将来のオブザーバーだって言ったら我々識人と少なからず関わりがあるから今のうちに各々の職業を分かりやすくした方が良いだろっていう結論に達しました」
友里さんの説明に他の識人の人たちから「そうそう!」という声や同意する声、うなずくものも多数いた。ここまでいろいろ驚いたが、一つだけ賛同できるのは可愛いという言葉だ、うんそれだけは合ってる。
「……最近の歓迎の仕方はよくわからん」
「そりゃそうでしょ!識人の歓迎会……龍さんが出るの何年ぶりよ?いつもは転生してきた識人をここに連れてくるだけで私や転生局の人間に任せっきりなんだから!」
「え?そうなの師匠?」
「そりゃあそうだ、確かにあそこから識人を連れてくるのは俺のオブザーバーとしての仕事ではあるが、そこから先は本来俺の仕事ではない。アリスは今回俺の弟子になったのだから今回だけ特別だ……それよりもだ、アリス」
師匠は私を手招きする、そのまま私はおよそ50名?ぐらいが見守る中仮設で出来た檀上に上る。
「えーと、何すんの?」
「自己紹介」
「え!?でも私名前ぐらいしか覚えてないし趣味とかも一切記憶にないんだけど?」
「そんなことはどうでもいい、誰もお前の趣味なんざ気にしないだろうよ、まあごく少数は気にするだろうが、問題はそこではない」
今更っと私はこの人たちの目には入ってないと言われた気がした、が今はそんなことは気にしない……気にしている場合ではない。
「じゃあなんで自己紹介すんの?」
「必要なのはお前に関する情報じゃない、お前自身の情報……つまりお前の名前と顔だ。転生してからお前に関する情報はこの国に住んでる国民よりも識人の方が情報の入りは早い、が入ってきている情報は「アリス」という名前と龍……俺の弟子になったというくらいだけ。今この時にこの場にいる識人全員にお前の名前と顔を覚えてもらえってことだ」
「なるほどね」
「それと、少々言いずらいがあまり先民の方は信用しない方が良い、別に仲良くするなと言っているわけではない。俺の経験上識人に裏切られたことは無いが先民に騙されたことは何回かあるから……特に政治家等に」
最後の方はよく聞き取れなかったがそれでも師匠が言うのであればそうなのだろう。
「いつまで時間かかってのよ、みんな待ってるけど?」
「おっと失敬、ではアリス自己紹介を」
「ういーす、では」
私は大きく深呼吸すると、少しでも遠くの人にも見えるように背伸びをして叫んだ。
「あ、アリスっていいます!この度、この世界?この星……セアに転生してきました!師匠……龍さんの方からほぼ強制的にっていうかまあ自分でも乗り気でしたが、この度オブザーバーになるべく龍さんの弟子になりました!これからおなっシャース!」
「では乾杯!」
その後が大変だった。テレビやドラマでもパーティー等に新しい人が入ってくると皆こぞって自己紹介をしてくる、自分を売りたい名前を知ってもらいたい等があるだろうがそんな感じだ。
問題はその人々の職種である。
防衛相、総務省……とまあ省の名が付く国の中枢機関の長が付く位の補佐を担当しているもの……ここに居ていいんですか?
後は、いろいろな研究所の所長級の人達だ。
しかし、そんな人たちも私への挨拶と自己紹介を終わるとすぐさま部屋を出ていった。恐らくすぐにでも職場に戻るのだろう……いや、それが普通なのだよあんたがた!国の中枢を担う省やら庁やらのお偉方がこんなところにいるんじゃないよ!
すぐに仕事に戻れや……と言いたいところだが、師匠曰く、私は将来オブザーバーとなる人間(まだ弟子なのであくまで暫定だが)だ、そうなれば毎日のように政府の人間と話を交わす時間が増える、そうなると少なくともこちら側の味方……政府に居る識人とは面識があった方が良いという師匠の考えらしい。
最後に来た人たちは、誰がどう見ても職業が丸わかりである。
何故なら、左胸に軍人……日本なら自衛官か……それ関係の人しかつけない階級章やら勲章やらをつけた男性二人に女性一人……私は階級のことは良く分からない、分からないがそれでも格好や風貌が幹部……偉いというのは私でも分かった。
「おや?私たちで最後かな?」
「そうだ、最初に来た奴らはまたこれからこの国のために無駄な会議とやらをしに行くんだろう。残っているのは別に時間に制約はない研究所の人間だな」
「おいおい、そんなことを言うんじゃない。彼らは必死に先民たちの舵取りをしようとしてるじゃないか」
「別にあいつらのことを言ってるんじゃない、あいつらが補佐する者のことを言ってるんだ。400年……大きな戦争が無かったせいか?最近の議員?共は腑抜けているように見える、小さな小競り合いは度々起きているがその都度俺に仲介や講和の依頼が入るんだぞ?何のための政府だ?俺は仕事は本来、この国の歴史をひたすら後世に正確に残すのが仕事のはずだそれなのにその範疇を超えた仕事が……」
「龍」
左胸におびただしい数の勲章やらなにやら付けた男性自衛官の一人が師匠の言葉を遮る。
「なんだ?」
「今日はお前の愚痴を聞く場ではないだろ?お前の弟子になったそこのお嬢さんを俺たちに紹介する場では無いかね?」
「……なら奴らの話をするんじゃない」
「それは失敬」
もう一人の男性自衛官が私に歩み寄る。そして右手を差し出した。
「陸上自衛隊習志野駐屯地所属第一空挺団長兼習志野駐屯地指令、衣笠義彦陸将補。以後よろしく」
――ん?は?お?今なんと?
間違ってなければ今聞こえたのは第一空挺団という言葉…しかもその団長であり駐屯地の司令官?陸将補?ほあ?
「ほほほ!これこれ!お嬢さんが反応に困ってるじゃないか、まったく……すまないねえ」
もう一人の男性自衛官……いや、あんたも大概だと思いますよ?だってそちらの陸将補様よりも胸に一杯ついてるじゃないですか!
「自衛隊統合幕僚長の林徹也です。階級は陸将です」
「……」
何か?もっと上の階級出せば慣れるとでも?
「自衛隊の中の階級では最高の階級です」
……知っとるがな、そんなもん自衛隊の内部事情を知らん一般市民でも知ってるわ。現代人舐めんなよ?インターネットって知ってらっしゃいますか?
「あのさー、一応階級の問題でこういうこと言うのはあれだからオフレコで頼むけどさ、あんたら普段はオフィスワークで現場出てないんだから名前とか階級ぐらいよ?知ってるの。本来旧日本の一般人はそんな階級の人間と接する機会なんてほとんどないんだからさ、考えようぜ二人ともー!ほらこんなに可愛い顔が呆気にとられちゃってるじゃん!」
ほんとに自衛官なのか?と思うほど、長い髪をポニーテールに束ねて制服を着た女性自衛官が私に抱き着てくる……超いい匂いだ。
「……一度死んだから口の利き方はどうでも良いというのか?三穂一佐」
「仕事ではちゃんと敬語使ってるしいいじゃん、識人しかいない完全なプライベートな時だけだよ?さすがに自衛隊といえども軍隊……ならば上下関係は歴然!だからオフレコって言ってんじゃん!」
「だからなあ!一佐!お前は……」
「ふふふ!構わないだろ、団長。確かにこの場には識人しかいない、言ってしまえばこの場は自衛官としてではなく一人の識人……旧日本国民としてここに居るんだ。だから多少の無礼は同じ日本人として会話のモラルが守られるなら良いんじゃないか?どうだ龍、お前もそう思わないか?」
「残念ながら分からん、立場上大抵の人間は俺に頭を下げて敬語を使ってくる。俺が唯一敬語を使うのは天皇家だけだ……だがまあもし仮に陛下と二人きりの時があったとして陛下からため口でと言われたらそうするかもな」
「状況が違うでしょ師匠」
「何故だ?」
「それは上級の位からの要望であって、ここの意味は場の空気的にため口が日本人的にも良いでしょって話だし」
「……ならわからん」
「まあそれでも今ここに居るのは時代は少し違えども同じ旧日本で暮らした日本人だ。今だけは階級や仕事柄を気にせずに話をしようということだよ将補……いや義彦君。でも旧日本同様年齢による年功序列は意識しましょう」
林さんの言葉に少し納得したのか衣笠さんはため息を漏らした。
「こいつが普段から敬語を使ってるとでも?」
「そうなのかい?三穂君」
「え?いやいや!さすがに仕事では敬語ですよ、林さん!」
「まったく今日だけだぞ?」
「ういーす!」
――絶対普段からこの口調だな?と確信した私であった。
「そうだ、この馬鹿のために忘れてた」
「馬鹿とはなんだ!?馬鹿とは!」
そういうと衣笠さんは少し大きめの箱を渡してきた。木の箱……簡素な作りだが意外と頑丈そうである、やはりこの世界の日本人にも職人魂というのが教えられているらしい。
持ってみると、少し重量感を感じた。
「えーとこれは?」
「私から君への龍の弟子なった祝い品だ。すまないが大急ぎで見繕ってね、箱に関してはこのような物しか用出来なかった、中身はちゃんとしているはずだ。それにオブザーバーになる君にとっては何かと役に立つときが来るはずだ」
「開けてみても?」
「ああ、構わない」
そういわれて私は、箱を開けた。
「……っ!」
この世界に来たばかりの私はこの世界の日本の法律をまだ良くは知らない、知っているのは高校生未満の子供が魔法を行使してはいけないというくらいだ。だからこの国の銃刀法等が存在するのかも知らない……が、昼間の軽い事件の時に師匠が言っていた「特定の職業以外の銃の携帯」とかいう法律が私にも適用されるのならば十分に私も法律違反になるのではないか?
そう思ってしまうほど、箱の中身は旧日本人なら誰でも分かる代物だった。
拳銃……ハンドガンである。
オートマチック、これなら私でも分かる。旧世界ではさまざまオートマチックハンドガンが存在するが、作る会社によって形が様々だ、特に有名なのはアメリカ軍が使っていた「m1911」や「m92f」「sig p226」あたりだろうか?これらの銃は良く映画でも出てくるので銃をよく知らない人でも見たことあるという人はいるだろう。
だがこの銃もある意味ミリタリー好きからは有名な銃だ。まあ、そのフォルムから好き嫌いが大きく分かれるが。
銃としては初めて主要部以外のほとんどを詳しくは忘れたがポリマーなんちゃらで作られており軽量化と頑丈さを兼ねそろえた銃……と言えばもう分かるだろう……。
グロックだ。
「ちょ!何普通に銃を女の子に渡してんの?普通化粧道具とかじゃないの?銃って……ええ……引くわー」
「私は旧日本人として渡したんじゃない。自衛隊の一人の隊員として将来オブザーバーになる者に渡したのだ。意味を履き違えてもらっては困る」
「ちなみにだが義彦君、これは君の私物か?もし隊のなら困るな、一応自衛隊の銃は隊員個人への貸与……国民の税金によるものだ、弟子になったとはいえまだオブザーバーになったというわけではないからね。君が勝手なことをするとすべてこちらに帰ってくるんだが」
「もちろん私の私物です。龍が弟子を取ったと聞いたので今日この場で渡そうと大急ぎで準備したんですよ……アリスさん気に入らなかったかい?」
衣笠さんが心配そうな顔でこちらを見た。
「そりゃあそうでしょ!まだ若い女の子がいきなり銃を渡されたら反応に困るわ!」
三穂さんはそういうが私は違った。
「いえ……そういうことではないです……これグロックですよね?私の知ってる限りグロックってたくさん種類があるのでどのグロックなあって」
「うっそ……アリスちゃんミリタリーイケる感じ?まさかのミリタリー女子!?うわー!同じだわ!あたしたち仲良くなれるねー!」
引くかと思いきや、同士を見つけたかのように笑顔になり抱き着いてくる……ていうかさっきから三穂私の体をエロくまさぐってくるんだけど……これが百合か?百合ってやつなのかい?教えてよバーニー!ってかちょっと気持ちいい。
「そうかならよかった因みにそれはグロック19だ。旧日本でも今の日本でもそうだが警察の一部組織が使っているものだ。それに銃刀法に関しては気にしなくてもいい、これから学校で習うだろうがこの国の銃刀法は少し緩いからね」
――ならよかった……が問題は銃とマガジンはあるのに弾が無いことだ。
「あの衣笠さん……弾がないです」
「さすがに弾までは用意できないよ、銃は私物だが弾は税金での供給品でねそれは渡せない……だが、君の師匠なら余りあるほど持っているはずだ、君の師匠は銃を使うより杖と刀派のようだからな」
――へー、刀も現役ですかい。
「確かに銃は魔法で目標を狙うより正確で標的に早く当たるが、弾が有限だ。俺の場合魔素が無限なんでね零距離まで近づいて大量の魔法で押しつぶせば良い。幸い俺は死なない」
――これぞ脳筋。
「まったくだからいつも脳筋だの言われるんだぞ?」
「知った事か」
「ん?すまんな、私はそろそろ時間のようだ。いやー、久々に龍が歓迎会出てる姿を見てよかったし新しい識人に会えてよかった、アリス君これからも自衛隊をよろしく頼むよ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うん、礼儀正しいのはいいことだ」
「林さん門まで送ります」
「いや?構わんよ?それにアリス君は君の送った銃に興味津々じゃないか、日本人と言えど銃は知ってるが撃ち方構え方、それに当て方は知らんだろう、教えてあげなさい」
「……分かりました」
「それと龍」
林さんは師匠に顔を向ける。
「ん?なんだ?」
「私は君に送ってもらいたいんだが……」
「なんでだ?めんどくさい……同じ隊員に……」
「分かるじゃろ?」
林さんは目で師匠に何かを訴えた、その内容を理解したのか軽くため息をこぼすと静かに頷いた。
「分かったよ、アリス、ちょっと行ってくる。それと三穂、アリスに変な事するんじゃないぞ」
「あ、はい……え三穂さん?」
「しないよ!あたしは龍さん一筋だし!」
今初めて知った驚愕の事実だった……でも三穂さんに触られると結構気持ちいいんだけどなあ。
そんなことを考えているとオブザーバーと統合幕僚長は食堂(歓迎会会場)を出ていった。
何だろう……皆気合が入りすぎているのか何なのか初対面で名前も知らない目の前の私を歓迎しようとしている人々の服装は各々違った。何らかの制服であったりスーツではあるが胸元に何かしらつけていたりしているのが目立っている。
「……」
「どうした?」
大勢の歓迎の声と視線、服装に呆気にとられていると師匠が声をかけてくる。
「いや、どうしたと言われてもなあ……まあおどろいたよ?まあそれ以上に明らかに服装が統一されてないからここに集まっている人がどういう集まりの人なのかと思っただけ」
「……はぁ、だから言ったじゃないか。いつも通りで良いと、なんでわざわざそんなことをする必要があると聞いたのに」
「だって、アリスちゃん可愛いし、将来のオブザーバーだって言ったら我々識人と少なからず関わりがあるから今のうちに各々の職業を分かりやすくした方が良いだろっていう結論に達しました」
友里さんの説明に他の識人の人たちから「そうそう!」という声や同意する声、うなずくものも多数いた。ここまでいろいろ驚いたが、一つだけ賛同できるのは可愛いという言葉だ、うんそれだけは合ってる。
「……最近の歓迎の仕方はよくわからん」
「そりゃそうでしょ!識人の歓迎会……龍さんが出るの何年ぶりよ?いつもは転生してきた識人をここに連れてくるだけで私や転生局の人間に任せっきりなんだから!」
「え?そうなの師匠?」
「そりゃあそうだ、確かにあそこから識人を連れてくるのは俺のオブザーバーとしての仕事ではあるが、そこから先は本来俺の仕事ではない。アリスは今回俺の弟子になったのだから今回だけ特別だ……それよりもだ、アリス」
師匠は私を手招きする、そのまま私はおよそ50名?ぐらいが見守る中仮設で出来た檀上に上る。
「えーと、何すんの?」
「自己紹介」
「え!?でも私名前ぐらいしか覚えてないし趣味とかも一切記憶にないんだけど?」
「そんなことはどうでもいい、誰もお前の趣味なんざ気にしないだろうよ、まあごく少数は気にするだろうが、問題はそこではない」
今更っと私はこの人たちの目には入ってないと言われた気がした、が今はそんなことは気にしない……気にしている場合ではない。
「じゃあなんで自己紹介すんの?」
「必要なのはお前に関する情報じゃない、お前自身の情報……つまりお前の名前と顔だ。転生してからお前に関する情報はこの国に住んでる国民よりも識人の方が情報の入りは早い、が入ってきている情報は「アリス」という名前と龍……俺の弟子になったというくらいだけ。今この時にこの場にいる識人全員にお前の名前と顔を覚えてもらえってことだ」
「なるほどね」
「それと、少々言いずらいがあまり先民の方は信用しない方が良い、別に仲良くするなと言っているわけではない。俺の経験上識人に裏切られたことは無いが先民に騙されたことは何回かあるから……特に政治家等に」
最後の方はよく聞き取れなかったがそれでも師匠が言うのであればそうなのだろう。
「いつまで時間かかってのよ、みんな待ってるけど?」
「おっと失敬、ではアリス自己紹介を」
「ういーす、では」
私は大きく深呼吸すると、少しでも遠くの人にも見えるように背伸びをして叫んだ。
「あ、アリスっていいます!この度、この世界?この星……セアに転生してきました!師匠……龍さんの方からほぼ強制的にっていうかまあ自分でも乗り気でしたが、この度オブザーバーになるべく龍さんの弟子になりました!これからおなっシャース!」
「では乾杯!」
その後が大変だった。テレビやドラマでもパーティー等に新しい人が入ってくると皆こぞって自己紹介をしてくる、自分を売りたい名前を知ってもらいたい等があるだろうがそんな感じだ。
問題はその人々の職種である。
防衛相、総務省……とまあ省の名が付く国の中枢機関の長が付く位の補佐を担当しているもの……ここに居ていいんですか?
後は、いろいろな研究所の所長級の人達だ。
しかし、そんな人たちも私への挨拶と自己紹介を終わるとすぐさま部屋を出ていった。恐らくすぐにでも職場に戻るのだろう……いや、それが普通なのだよあんたがた!国の中枢を担う省やら庁やらのお偉方がこんなところにいるんじゃないよ!
すぐに仕事に戻れや……と言いたいところだが、師匠曰く、私は将来オブザーバーとなる人間(まだ弟子なのであくまで暫定だが)だ、そうなれば毎日のように政府の人間と話を交わす時間が増える、そうなると少なくともこちら側の味方……政府に居る識人とは面識があった方が良いという師匠の考えらしい。
最後に来た人たちは、誰がどう見ても職業が丸わかりである。
何故なら、左胸に軍人……日本なら自衛官か……それ関係の人しかつけない階級章やら勲章やらをつけた男性二人に女性一人……私は階級のことは良く分からない、分からないがそれでも格好や風貌が幹部……偉いというのは私でも分かった。
「おや?私たちで最後かな?」
「そうだ、最初に来た奴らはまたこれからこの国のために無駄な会議とやらをしに行くんだろう。残っているのは別に時間に制約はない研究所の人間だな」
「おいおい、そんなことを言うんじゃない。彼らは必死に先民たちの舵取りをしようとしてるじゃないか」
「別にあいつらのことを言ってるんじゃない、あいつらが補佐する者のことを言ってるんだ。400年……大きな戦争が無かったせいか?最近の議員?共は腑抜けているように見える、小さな小競り合いは度々起きているがその都度俺に仲介や講和の依頼が入るんだぞ?何のための政府だ?俺は仕事は本来、この国の歴史をひたすら後世に正確に残すのが仕事のはずだそれなのにその範疇を超えた仕事が……」
「龍」
左胸におびただしい数の勲章やらなにやら付けた男性自衛官の一人が師匠の言葉を遮る。
「なんだ?」
「今日はお前の愚痴を聞く場ではないだろ?お前の弟子になったそこのお嬢さんを俺たちに紹介する場では無いかね?」
「……なら奴らの話をするんじゃない」
「それは失敬」
もう一人の男性自衛官が私に歩み寄る。そして右手を差し出した。
「陸上自衛隊習志野駐屯地所属第一空挺団長兼習志野駐屯地指令、衣笠義彦陸将補。以後よろしく」
――ん?は?お?今なんと?
間違ってなければ今聞こえたのは第一空挺団という言葉…しかもその団長であり駐屯地の司令官?陸将補?ほあ?
「ほほほ!これこれ!お嬢さんが反応に困ってるじゃないか、まったく……すまないねえ」
もう一人の男性自衛官……いや、あんたも大概だと思いますよ?だってそちらの陸将補様よりも胸に一杯ついてるじゃないですか!
「自衛隊統合幕僚長の林徹也です。階級は陸将です」
「……」
何か?もっと上の階級出せば慣れるとでも?
「自衛隊の中の階級では最高の階級です」
……知っとるがな、そんなもん自衛隊の内部事情を知らん一般市民でも知ってるわ。現代人舐めんなよ?インターネットって知ってらっしゃいますか?
「あのさー、一応階級の問題でこういうこと言うのはあれだからオフレコで頼むけどさ、あんたら普段はオフィスワークで現場出てないんだから名前とか階級ぐらいよ?知ってるの。本来旧日本の一般人はそんな階級の人間と接する機会なんてほとんどないんだからさ、考えようぜ二人ともー!ほらこんなに可愛い顔が呆気にとられちゃってるじゃん!」
ほんとに自衛官なのか?と思うほど、長い髪をポニーテールに束ねて制服を着た女性自衛官が私に抱き着てくる……超いい匂いだ。
「……一度死んだから口の利き方はどうでも良いというのか?三穂一佐」
「仕事ではちゃんと敬語使ってるしいいじゃん、識人しかいない完全なプライベートな時だけだよ?さすがに自衛隊といえども軍隊……ならば上下関係は歴然!だからオフレコって言ってんじゃん!」
「だからなあ!一佐!お前は……」
「ふふふ!構わないだろ、団長。確かにこの場には識人しかいない、言ってしまえばこの場は自衛官としてではなく一人の識人……旧日本国民としてここに居るんだ。だから多少の無礼は同じ日本人として会話のモラルが守られるなら良いんじゃないか?どうだ龍、お前もそう思わないか?」
「残念ながら分からん、立場上大抵の人間は俺に頭を下げて敬語を使ってくる。俺が唯一敬語を使うのは天皇家だけだ……だがまあもし仮に陛下と二人きりの時があったとして陛下からため口でと言われたらそうするかもな」
「状況が違うでしょ師匠」
「何故だ?」
「それは上級の位からの要望であって、ここの意味は場の空気的にため口が日本人的にも良いでしょって話だし」
「……ならわからん」
「まあそれでも今ここに居るのは時代は少し違えども同じ旧日本で暮らした日本人だ。今だけは階級や仕事柄を気にせずに話をしようということだよ将補……いや義彦君。でも旧日本同様年齢による年功序列は意識しましょう」
林さんの言葉に少し納得したのか衣笠さんはため息を漏らした。
「こいつが普段から敬語を使ってるとでも?」
「そうなのかい?三穂君」
「え?いやいや!さすがに仕事では敬語ですよ、林さん!」
「まったく今日だけだぞ?」
「ういーす!」
――絶対普段からこの口調だな?と確信した私であった。
「そうだ、この馬鹿のために忘れてた」
「馬鹿とはなんだ!?馬鹿とは!」
そういうと衣笠さんは少し大きめの箱を渡してきた。木の箱……簡素な作りだが意外と頑丈そうである、やはりこの世界の日本人にも職人魂というのが教えられているらしい。
持ってみると、少し重量感を感じた。
「えーとこれは?」
「私から君への龍の弟子なった祝い品だ。すまないが大急ぎで見繕ってね、箱に関してはこのような物しか用出来なかった、中身はちゃんとしているはずだ。それにオブザーバーになる君にとっては何かと役に立つときが来るはずだ」
「開けてみても?」
「ああ、構わない」
そういわれて私は、箱を開けた。
「……っ!」
この世界に来たばかりの私はこの世界の日本の法律をまだ良くは知らない、知っているのは高校生未満の子供が魔法を行使してはいけないというくらいだ。だからこの国の銃刀法等が存在するのかも知らない……が、昼間の軽い事件の時に師匠が言っていた「特定の職業以外の銃の携帯」とかいう法律が私にも適用されるのならば十分に私も法律違反になるのではないか?
そう思ってしまうほど、箱の中身は旧日本人なら誰でも分かる代物だった。
拳銃……ハンドガンである。
オートマチック、これなら私でも分かる。旧世界ではさまざまオートマチックハンドガンが存在するが、作る会社によって形が様々だ、特に有名なのはアメリカ軍が使っていた「m1911」や「m92f」「sig p226」あたりだろうか?これらの銃は良く映画でも出てくるので銃をよく知らない人でも見たことあるという人はいるだろう。
だがこの銃もある意味ミリタリー好きからは有名な銃だ。まあ、そのフォルムから好き嫌いが大きく分かれるが。
銃としては初めて主要部以外のほとんどを詳しくは忘れたがポリマーなんちゃらで作られており軽量化と頑丈さを兼ねそろえた銃……と言えばもう分かるだろう……。
グロックだ。
「ちょ!何普通に銃を女の子に渡してんの?普通化粧道具とかじゃないの?銃って……ええ……引くわー」
「私は旧日本人として渡したんじゃない。自衛隊の一人の隊員として将来オブザーバーになる者に渡したのだ。意味を履き違えてもらっては困る」
「ちなみにだが義彦君、これは君の私物か?もし隊のなら困るな、一応自衛隊の銃は隊員個人への貸与……国民の税金によるものだ、弟子になったとはいえまだオブザーバーになったというわけではないからね。君が勝手なことをするとすべてこちらに帰ってくるんだが」
「もちろん私の私物です。龍が弟子を取ったと聞いたので今日この場で渡そうと大急ぎで準備したんですよ……アリスさん気に入らなかったかい?」
衣笠さんが心配そうな顔でこちらを見た。
「そりゃあそうでしょ!まだ若い女の子がいきなり銃を渡されたら反応に困るわ!」
三穂さんはそういうが私は違った。
「いえ……そういうことではないです……これグロックですよね?私の知ってる限りグロックってたくさん種類があるのでどのグロックなあって」
「うっそ……アリスちゃんミリタリーイケる感じ?まさかのミリタリー女子!?うわー!同じだわ!あたしたち仲良くなれるねー!」
引くかと思いきや、同士を見つけたかのように笑顔になり抱き着いてくる……ていうかさっきから三穂私の体をエロくまさぐってくるんだけど……これが百合か?百合ってやつなのかい?教えてよバーニー!ってかちょっと気持ちいい。
「そうかならよかった因みにそれはグロック19だ。旧日本でも今の日本でもそうだが警察の一部組織が使っているものだ。それに銃刀法に関しては気にしなくてもいい、これから学校で習うだろうがこの国の銃刀法は少し緩いからね」
――ならよかった……が問題は銃とマガジンはあるのに弾が無いことだ。
「あの衣笠さん……弾がないです」
「さすがに弾までは用意できないよ、銃は私物だが弾は税金での供給品でねそれは渡せない……だが、君の師匠なら余りあるほど持っているはずだ、君の師匠は銃を使うより杖と刀派のようだからな」
――へー、刀も現役ですかい。
「確かに銃は魔法で目標を狙うより正確で標的に早く当たるが、弾が有限だ。俺の場合魔素が無限なんでね零距離まで近づいて大量の魔法で押しつぶせば良い。幸い俺は死なない」
――これぞ脳筋。
「まったくだからいつも脳筋だの言われるんだぞ?」
「知った事か」
「ん?すまんな、私はそろそろ時間のようだ。いやー、久々に龍が歓迎会出てる姿を見てよかったし新しい識人に会えてよかった、アリス君これからも自衛隊をよろしく頼むよ」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「うん、礼儀正しいのはいいことだ」
「林さん門まで送ります」
「いや?構わんよ?それにアリス君は君の送った銃に興味津々じゃないか、日本人と言えど銃は知ってるが撃ち方構え方、それに当て方は知らんだろう、教えてあげなさい」
「……分かりました」
「それと龍」
林さんは師匠に顔を向ける。
「ん?なんだ?」
「私は君に送ってもらいたいんだが……」
「なんでだ?めんどくさい……同じ隊員に……」
「分かるじゃろ?」
林さんは目で師匠に何かを訴えた、その内容を理解したのか軽くため息をこぼすと静かに頷いた。
「分かったよ、アリス、ちょっと行ってくる。それと三穂、アリスに変な事するんじゃないぞ」
「あ、はい……え三穂さん?」
「しないよ!あたしは龍さん一筋だし!」
今初めて知った驚愕の事実だった……でも三穂さんに触られると結構気持ちいいんだけどなあ。
そんなことを考えているとオブザーバーと統合幕僚長は食堂(歓迎会会場)を出ていった。
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