アリス 観察者《オブザーバー》の弟子

御魂

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全ての始まり

19. 第三のヒロイン

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 数分後、『おりばんだーの杖』から出た私は清々しい気持ちでいっぱいであった。



 手に入れた杖は斎藤さんからもらったもう一つの贈り物の杖専用のホルスターに入れてある、どうやらこの世界の住人は杖を携帯することが常識らしく常に服や腰のベルトにホルスターをつけて携帯してるらしい。



 しかし私はうずうずしていた。



 ゲームのソフトを買ってもらった子供が早くやりたく家に帰りたそうにするように初めて手に入れた自分専用の杖を使いたくてしょうがなかったのだ。



(……とはいえ師匠からも一人の時に魔法は使うなって言われてるし……早く師匠と合流しますか!)



「あの……やめてください!」



 私が来た道を戻ろうとした時だった、微かではあったが悲鳴……助けを求める声が聞こえた気がした。多分いつもの私なら聞こえてないか、聞こえても気のせいだと無視するがこの時は違う、特別な杖を手に入れて勇者気分になってでもいたのか体が声のする方に歩いて行った。……だが、聞こえた声には少しばかり違和感があった。



(こ……これはラノベ的に……ヒロイン救出のイベント!……でも、今聞こえた声って明らかに同い年というよりはもう少し年が上のような?まあ行けば分かるか)



 私の疑問は、お店のすぐ裏の路地……の一つ目の角を曲がったことで解決した……そう、助けを求める人間は二人いたのだ、正確には親子ではあるが。



 角からのぞき込むと母と娘?であろうか……二人の女性が二人の男性に……囲まれて?いや迫られていた。よく見ると女性の親子?の方は結構美人だった。……念のため。



「あの……私たちに何か御用ですか?お願いします!この子だけは見逃してくれませんか?私になら何をしても構いません!どうか!」



(おいおい……それは逆効果だろい……どう見ても親子一緒に食べられちゃうパターンだよそれ)



「安心しな、用があんのはお母さん、あんたの方だよ」



「え?」



(え?……はああああ!?いやいやいやいや!確かにその人見るからに若そうだけど……でも私と同い年くらいの子供がいるってことは30代後半か40代だよ?もしかしてそっちが趣味か?……まあでも人の趣味にとやかく言うのは失礼だしなあ)



「えっと、私ですか?」



(うんうん、疑問に思うのは無理ないぜお母さん……)



「ちょっと用があってよう、付いてきてもらうぜ?まあ多分二度と娘に会うことは無いだろうけどな。まあこっちも仕事だ、抵抗するならこっちもそれなりのことはすることを覚悟するんだな」



 途端に母親の顔が曇った。静かに娘の方に顔を向ける。



(まあそうなるのも無理はない……か、狙われているのが親なら子供をかばって大人しく身を差し出す可能性はある……か、でもそれよりも……)



 私は男二人の特徴と場所の状況を分析することにした。幸い、四人がいるのは裏路地で道が片方壁になっている……つまり袋小路だ。二人の男は母親を連れていくのに必ず私の方へ歩いてくる必要がある、それまでは時間が稼げる。



(見た感じ……二人とも170~180といったところ見た目も普通だ、人を誘拐するような身なりに見えない……銃……持ってるわけないよね?旧日本じゃそんな簡単に持てないけど……この世界の日本は分からんしなあ。それとも……杖持ってく可能性もあるしな……人を呼ぶには時間が足らなすぎるし、どうしたもんか)



「よし、じゃあ付いて来い」



(ちょ!早い早い!お母さん!決断早すぎ!もう少し粘ってくれや!)



 男たちに連れられて4人がこっちに歩いてくる。



(……ああもうどうにでもなれ!)



 私は意を決して両手を広げ4人が通るであろう道のを塞ぐようにして飛び出す、と同時にホルスターから杖を引き抜き男たちに向けた。



「止まれい!どこに連れていくかは知らんが私が許さんぞ!?さあ二人を開放しなさあい!」



 この空間の時間が止まった気がした。もちろん原因は私だ。



(ふっ!決まった!さすがは主人公。代わりに何か失った気はするけど……この際気にしなーい。ていうかなんか空気おかしくない?)



「……っち、見られてたのか。……ていうか見た感じ子供のようだが、お前何歳だ?」



「女性に年齢を聞くのはマナー違反だと親に言われなかったの?」



「あ?」



 確かに私は15歳…ギリギリ高校生の年齢だ、この国の法律だと年齢に関係なく高校生か魔法学校に通ってない限り一人での魔法は禁じられている。



 私も識人だが、例外は無く師匠から魔法を使用しないように言われた……が、杖を向けることは言われていない、つまりブラフだ、私が杖を使えると思わせてお引き取り願うのが狙いである。



「どうする?仮にあのガキがステアの学生なら杖の無い俺達には何も出来ない……」



「ばか!黙ってろ!」



(ほほーん、杖は持ってないと……なら部は少しこっちにあるかな)



「しゃあねえ、こんなところで使う気は無かったがやむ無しだ」



 そういうと男は懐から旧日本でも見慣れたものを取り出した、銃だ。



(わあ、まじかー、マジでここ日本に見えて日本じゃないなあ。ていうかなんだろあの銃……形的にオートマチックじゃない……リボルバーだけど名前が分からない。ん?なんで分かるんだ私……旧日本でミリタリーマニアだったのかな、……今はどうでもいいかな。問題は弾丸は魔法でどう防げと?何か呪文でもいるんか?師匠が私の魔法を防いだ時は何も詠唱しなかったけど)



「どうした?魔法を撃ってこないのか?それとも打てない理由があったりしてな」



 相手の男もまだ私を疑っているのだろう、カマをかけてきている……が私も応じる。



「あんたらのために魔素を消費するのはもったいないからさ、ここは諦めて立ち去ってくれるとこっちとしてはありがたいんだよねえ」



 毅然にふるまってはいるが内心嘘がばれないかで心臓が大きく鼓動しているのが自分でも分かるほどだ……が必死に顔には出さないようにする、カマをかけてきているのだから表情もある程度読めると予想したのだ。



「ふーん、まあいい。もしお前がステアの学生だろうが何だろうが撃てば分かることだからな。結界を発動して球を防がなければお前は死ぬんだ、ステアの学生なら結界の張り方ぐらい知ってるだろうしなあ!」



(は?やっぱり詠唱必要なの?やばいそれは確実に死ぬ奴じゃん!結界の張り方なんて知らんわ!あたしゃあこの世界に来てまだ数日だぞ?)



「ふふふ、なるほど。やはりまだステアの学生じゃないな、この程度の嘘で動揺するんだ。顔が引きつってるぜ?」



「……」



 完全にこの心理戦は相手の勝利に終わった。やはり……この世界……魔法のことを知らなすぎによる情報戦の敗北である。



(駄目だ、多分だけど魔法使いとしての最低限の情報も無いからカマの掛け合いもできない……終わった。死んだなこれ)



 そう思っていたのだが、男たちは私の横を通り過ぎようとした。



「え?」



「殺すと思ったか?こんなところで撃ったら銃声でもっと人が来るだろう、お前には少しばかしここで静かに佇んでもらうがな、そうしたら大声でもなんでもすればいい。そうすれば誰か通報してくれるんじゃないか?まあそのころにはもう俺たちの姿はないだろうがな!」



「……」



 何も守れなかった……今の私では人ひとりですら守れないのだ……何が主人公だ。



「いや?その心配はないな。先ほどの馬鹿の大声で俺が来れたんだ十分役目は果たしたよ」



 聞き覚えがある声が後ろから聞こえた。慌てて振り返る……するとそこには何故?といいたいが安心できる顔だ、師匠である。



「し、師匠!?なんでここに?」



「おりばんだーで待っていたのにいつまでたっても出てこない……中に入って話を聞いたらとっくに店を出たというじゃないか、それで外に出たとたんにお前の馬鹿みたいな大声が路地裏から聞こえてくる……行かないわけないだろう?」



「あ?なんだお前?こいつの師匠か何かか?」



「ほう、さすがは統合自治区だな俺のことを知らない人間もいるのか、自己紹介ができることが嬉しいよ。第二日本国、オブザーバーの龍というものだ覚えておきたまえ」



「龍?……ってあの?まずいっすよ!さすがにこの人に逆らうのはちょっと」



「分かってるよ、……っち、まあいいさすがにオブザーバー様の前だ、これ以上の抵抗は無理だな、ここらでお暇するよ」



 そういうと男たちは足早に帰ろうとする。



「待て」



「なんだよ、まだ何か?」



「二人とも持ってる銃を地面に置いていけ、この馬鹿に法律で勝ったんだ。なら指定職業以外の銃携帯も違反であると知ってるんだろ?なら今ここに置いていけば見逃してやる……統警にも黙っててやるよ」



「通報しない保証がないじゃねーか」



「安心しろ、通報すんのも色々めんどくさいんだよ。いろいろ書類書かされるわ何時間も拘束されるわ今日に限っては時間がないんだ、特別サービスってやつだ」



「……っち」



 男二人は持っていた銃を地面に置くと走って逃げていった。



「大丈夫か?」



「えっと……は」



「お前じゃない」



 師匠は親子に歩み寄る。



「あーはい、ですよねー。わかってた分かってた」



「えっと、龍さまですよね?本当にありがとうございました!君もありがとうね!」



「いいえいいえ」



「うーん、様と呼ばないでくれ。いろんな人間に言っているのだがさんで良い……そちらの子は?」



「あ、はい!香織と言います。明日からステアに通うんです。そのために少しはこの街を知った方が良いと思いまして街を散策してたんですけど……」



「あなたは杖を持っていなかったのか?あなたなら輩どもを蹴散らせたと思うが」



「すみません、うっかり今日だけ杖を忘れてしまったんです」



「そうかそれは災難だったな……香織くん」



「……はい」



「実はこの馬鹿も明日からステアに通う識人なんだ。それもつい先日この世界にやってきたんでね。この世界のことに疎すぎる、同じ一年どうし仲良くしてくれると助かる。オブザーバーとしての命令ではなくこいつの師匠……一人の保護者としてのお願いだ」



「……」



 人見知りなのか、言葉こそ発しなかったが肯定の意味なのだろう軽くうなずいた。



「ありがとう。さあお母さんもう行くといい、君たちも明日があるんだからいろいろ忙しいはずだ」



「分かりました。本当にありがとうござました」



 親子は礼をすると大通りへ出る道を歩いて行った。



「よし、次はお前だな」



 師匠が私の方を見る。



「えーと」



「……」



「すんませんでした」



「なぜ謝る」



「え?だって魔法を使うなって言ってたじゃん」



「確かに言ったな。だが、お前は魔法を使ったか?」



「いや、杖を出して向けただけ」



「そうだ、それに関しては何も問題はない。それにお前は端から魔法を使わないように相手に嘘をついて最後まで魔法を撃とうとしなかったじゃないか。まああの場面なら例え撃ったとしても俺が正当防衛として何とかするが……まあ今回はよくやった」



 初めて師匠に褒められた、少しだけ顔が緩む。



「師匠って褒めてくれるんですね」



「はあ?当たり前だろう?弟子が良い行動や勇気ある行動したら褒める。逆に馬鹿な行動したら叱って何がいけないかを教える……それも師匠の役目だろ?」



 何故だろう、先ほどまで良いことを言っていた気がしたのだが、この言葉だけはどうも中身が感じられない。というより誰かから聞いた言葉をそのまま口に出しただけのように感じる。



「師匠」



「なんだ?」



「それ、友里さんから言われました?」



 師匠の目線が急に泳ぎ始めた。



「……どうしてそう思う?」



 私は何も言わずに、じーっと師匠の顔を覗き込む。



「……ああそうだよ!友里に言われたんだよ!そもそも400年前にオブザーバーになってから一度も弟子なんか取った事なかったんだ!育て方なんて知るわけないだろう!?」



「師匠の前のオブザーバーとか見本にしないんですか?」



「別に見本にしていいけど、お前1週間も持たないと思うぞ?」



「何故です?」



「いきなり杖だけ持たせて森の中に放置、しかも魔法の一つも知らない状態でだ。それでとりあえず1週間生き延びてこいって言うやつだぞ?やる?」



(スパルタって言う言葉が可愛く見えてくるなおい!)



「遠慮しておきます。ていうか師匠はどうやって生き延びたんですか?」



「魔素は無限だったし、一週間ひたすら魔素球だけ使ってた」



(わーお、馬鹿見てえ)



 ここで私は一つの疑問が浮上した。



「あれ?ていうか師匠、さっきの話だと途中から見てたんですか?ずいぶん状況説明が細かいですけど」



「ああ見てたよ、っていうかお前の声で気づいた?違うな、オリバンダーから出会た後付近の人間にお前に似た少女を見なかったかと聞いたんだそしたら裏路地に行ったと言った人間がいてな、行ってみるとちょうどお前が杖を出して男たちに対峙してるじゃねえかと。まあ即助けに行こうとしたが、お前が杖を出していたからなどうするかと思って観察した。怒るなよ?何かあればすぐに行く準備はしてたんだ。ただ、あの制約された状況でお前が俺無しでどうするかを見てみたかっただけだからな。お前はあの制約下では満点とも言えるよ…だから怒るなよ?」



 私が握りこぶしを作っているのを知って必死に私を落ち着かせようとしてくる。



「これもオブザーバーとして必要な素質だから?」



「……。それを言ったらお前が相手の男としゃべる時点でテストが始まるな、だが今のお前には必要ない、まずお前に必要なのは前提として魔法を覚えて使いこなすこと、そして状況によって魔法を使い分けることだ。交渉術は今のお前にはまだ早い」



「オブザーバーに交渉術が必要だと?」



「過去何度俺が日本と他国が戦争するのを交渉で食い止めたとおもってるんだ。もう三桁行くんじゃないか?それに日本と国境が接する国同士の戦争も穏便に解決したのも俺だぞ?これで交渉術がいらないとでも?」



「それって外交官とか外務省の人たちがやるんじゃないの?」



「元の世界だとそうかもしれんが、この世界だと何故か400年生きてる俺に全部回ってくるんだよ。俺が話せば何とかなると思ってる連中が多すぎる。ていうか俺が行くような場面て大抵が日本の外交官や首相陣が交渉に失敗してるから俺が最終的に何とかしないともれなく戦争なんだよ」



(元の世界もこの世界も日本の政治家っていうのは本当になんだかなあ)



「そろそろ行くぞ、この後も用事があるんだ」





 私と師匠は買った荷物を車に積み込み菊生寮に戻る帰路についていた。



「ほれ」



「へ?」



 運転中の師匠が私に何かを渡す。



「なんですこれ?」



「開ければ分かる」



 丁寧にパッケージングされた箱は誰か大切な人に贈り物をするもののように整っていた。開けるのがもったいないぐらいに。



 だがもらったのは私だ、どのように開けようが私の勝手だ。とはいうが丁寧に外装を取っていく。



 そして、箱を開けた。



「……!これって……」



「欲しかったろ?とりあえず似てるの探したんだ」



(うっひょう!懐中時計じゃん!しかも超綺麗!師匠とおそろいだ!微妙に違うけど!)



 箱に入っていたのは、まだ新しい金色に輝く懐中電灯だった。確かに師匠のとは装飾が微妙に違うが大きさも見た目も師匠と類似する。



「あの時も言ったが、俺のは天皇陛下から頂いた一点ものだ、まったく同じものをくれと言われても無理だからな、何とか似ているのを探したんだこれで良いだろ?……って聞いてるのか?」



 私はまじまじと時計を眺めた。確かに師匠の使っている時計とは違うが同じ懐中時計なのだしかも見た目もデザインも結構似てる、喜ばない理由はない。弟子は師匠と同じもの欲するとは言うが意味が分かった気がする。やっと師匠の…オブザーバーに一歩近づいた気がするから。



「えへ、へへへへ」



「気味が悪いぞアリスさん」





「おえええ」



 菊生寮に着いた私は車から降りた早々盛大に吐いた、何って?胃の中ものを。



「そりゃあお前寮に着くまでずっと時計眺めてたらそうなるわ。はよ寮に入るぞ」



「ちょっと待って今急に動かされたら、うっぷ!おええええええ!」



「まったく、寮の敷地内じゃなくて良かったな。洗うのが面倒だ」



 そういうと杖を取り出し、水を出すと側溝を洗っていく。



(わあ杖超便利!なんて言ってる場合じゃねえ、今度は胃液がああああ!)



「アリス手出せ」



「おえ?らんれ?」



「その口の中の状態で寮入る気か?それは俺が許さん、このまま両手に水やるからうがいしろ、ついでに手洗っとけ」



「ならお言葉に甘えて」



 私は水が出ている杖を持ち傾けるとそのまま口に水を放り込んだ。



「は?ちょっ!アリス?アリスさん?何してんだ!?俺は両手を」



 師匠が戸惑って杖を移動させようとするが今度は私の右手がそれを許さない、数回口をゆすぎ、両手を洗うと立ち上がった。



「ふう!すっきり!」



「すっきり!じゃねえよ!俺両手でって言ったよな!なのに杖から直にいったなお前!もう少し女性らしくしたらどうだ!?」



 確かに師匠の言うことにも一理ある…しかしだ!よくあるだろう、部活で運動していた女子が蛇口に首を傾けて水飲むやつ、あれがやりたかった以上!



「いいですか師匠?私の口はゲロまみれなんですよ?それを両手の水でゆすごうとしたら私の両手も汚れるじゃないですか!あれが一番の得策ですよ!あ!ついでにここで師匠も手洗ったらどうです?保護者がいれば魔法使ってもいいんですよね?なら私も今なら使っていいですよね?」



「はあ、分かったよ。だがちょっと待て車を車庫に入れる」



 師匠は車に戻ると、車を車庫に入れた。戻ってきた師匠は水場のところに行き、両手を差し出す。



「師匠……ここ水場ですよね?蛇口なくない?」



「杖から水出るし水道代の無駄だから作ってない」



(へー、やっぱ杖あると便利だねえ!)



「ほれ、自分の杖でやってみろ、魔法使いといての第一歩だ」



「言われなくても!」



 私は今日もらった杖をホルスターから取り出す。瞬間、師匠の顔が驚きの表情になるが次第に安心したかのような表情になる。



「そうか、やはり選ばれたか。良かった、俺の考えは間違ってなかったな」



「何言ってんの?」



「なんでもない、さっさと水を出しな」



「へいへ……、あ」



「なんだ?」



「師匠……呪文知らないわ」



「……ネローイだ」



「オッケー!ネローイ《水よ流れよ》」



 呪文を唱えると、杖の先から水が蛇口を開けたかのように流れてくる。



(……うひょおおおお!魔法使ってるよ私!自分の杖で!ちゃんと魔法使えてるよ!ひゃあ!感動ものだー!スマホがあったら写メ取りてえ!)



「おい、アリス」



「なんです?」



「もう洗ったから止めろ」



「ういー、……ん?」



「今度はなんだ?」



「えーと、どうやって止めるんすか?魔素球は一回出したら終わりだけど、この場合の止め方が分かりません」



「杖を軽く振る、杖への魔素を流れないようイメージする、それかシマギローノと唱えろ」



 とりあえず、私は杖を軽く振ってみた。するとピタリと杖から水が流れなくなっていた。



「おお!すげえ!」





 私たちは、そのまま寮の中に入る。すると師匠が今日買った荷物を渡してきた。



「取り合えず今日買った教科書はこのかばんに入ってるな。それと中に明日着る入学式用の制服も入ってる、普段学校で着るものはもう学校の寮に届いてるはずだ。明日の入学式は今日買った制服で行くことになるが寸法が少し合わないだろうから、部屋に帰ったら一回着てみるといい、何か問題があれば友里に言え直してくれる。それと制服の確認が終わったらすぐに食堂に来い。もちろん手ぶらでだ、食堂の場所は覚えてるな?いろいろな書類を書いた場所だ」



「あ、はい」



(いきなり多く言われても分からん!まあとにかく荷物を部屋に置く、制服に袖を通してみる、すぐに食堂に行く……かな?)



 私はとりあえず荷物を部屋に置きに行こうとした。



「あ、すまん忘れてた。食堂に入るときはノックするんだ、理由は聞くな」



 というと師匠は食堂の方に行ってしまった。





「ほう……これはなかなか」



 部屋に戻った私は早速制服を着てみた。確かにちょっと大きい気がするが、許容範囲だ。あとで友里さんに直してもらえばいい。



「さて行きますか」



 制服を脱ぎ、普段着になった私は食堂に向かった。……が菊生寮に僅か一泊した私だったが食堂までの道のり、何か違和感を感じた。



 そしてそれは食堂の入り口の扉で一番の違和感だった。



(うーん、おかしい。何かおかしい、昨日も今日の朝も感じなかった多くの人の気配を感じる。師匠が先に食堂に行った理由は?それに寮に着いてから一度も師匠ラブの友里さんを見かけていない……もしかして二人とも食堂にいる?なら私を先に部屋に向かわせた理由は?なんかのサプライズ?たった二人で?もういいやこの扉を開ければ謎は解けるな)



 私は扉を3回ノックした。



「ん?おう早いな、入っていいぞ」



 私はゆっくり扉を開ける…訳はない!思いっきり扉を開けた。



「うりゃあ!」



 パーン!パーン!パーン!



 次に聞こえたのは旧世界で誰でも耳にしたことある、クラッカーの音だった。



 そして、そこにいたのはいろいろな年の人、いろいろな職業の服を着た人たちだった。ざっと数えて50人はいるだろうか。



 また、目に入った大きな垂れ幕に書かれていたのは



『ようこそアリス!ようこそセアへ!』



 だった。



(あーなるほどそういうことね。こりゃあ一本取られた)



「「「ようこそ第二の地球『セア』へ!ようこそ第二日本国へ」」」

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