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ココアの温度
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翌週、彼はおそるおそる「たにぐち文庫」のドアを押した。
ユイの姿が見えたとき、胸が一瞬だけきゅっとなったけれど、
彼女の横にあった空席が、彼を受け入れてくれるような気がして、静かに腰を下ろした。
その日は、あえて何も言わなかった。
代わりに、ユイが帰ろうとしたとき、レジでひとつだけココアを買った。
そっと差し出した紙カップに、彼は短く言った。
「甘めにしておきました。あの日の分も」
ユイはびっくりした顔をして、それから微笑んだ。
「ありがとう。…ぬるめ?」
「ちょっとだけ」
ふたりは目を合わせた。それはごく短い、でも確かな視線だった。
やわらかい湯気の向こうに、前よりほんのすこし近い距離があった。
ユイの姿が見えたとき、胸が一瞬だけきゅっとなったけれど、
彼女の横にあった空席が、彼を受け入れてくれるような気がして、静かに腰を下ろした。
その日は、あえて何も言わなかった。
代わりに、ユイが帰ろうとしたとき、レジでひとつだけココアを買った。
そっと差し出した紙カップに、彼は短く言った。
「甘めにしておきました。あの日の分も」
ユイはびっくりした顔をして、それから微笑んだ。
「ありがとう。…ぬるめ?」
「ちょっとだけ」
ふたりは目を合わせた。それはごく短い、でも確かな視線だった。
やわらかい湯気の向こうに、前よりほんのすこし近い距離があった。
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