”お飾り王妃”の立て籠もり

KAORU

文字の大きさ
2 / 5

1.若き王

しおりを挟む
 クラウス・ベルアート・クラウゼンは、よわい18にして、クラウゼン王国の王となった。
 父である前の王が、病により死したため、まだ引き継ぎも半端なまま即位することになった。

 即位にあたり、長らく婚約者であった筆頭公爵家コールマンの娘、アンジェリカと婚姻した。
 アンジェリカとの婚姻は、前王のたっての悲願であった。

 賢王と呼ばれた父は、病魔に勝てず、まだ若輩のクラウスに王位を移して旅立った。

「必ずアンジェリカ嬢を妻にするんだ。お前に幸を齎すだろう。遺して逝く私を赦してくれ。愛しているよ、クラウス」

 それがクラウスの父の最後の言葉だった。

 妻となったアンジェリカは、コールマン公爵家の長女で、幼き頃より決められた許嫁だった。
 いわば幼馴染。子供の頃からともに国を背負う者として、切磋琢磨してきた仲である。
 決して、甘いだけの関係ではなかった。それでも10年を超える共闘は、二人に確かな絆を齎していると周囲にも思われていた。
 
 しかし、それは喪に服す中での婚姻であったから、一部から当然反対の声が上がった。

 主に反対をしていたのは、伴侶を亡くした王妃の一派だった。
 夫を亡くした妻の心情としては、すぐに慶事とは納得がいかないのは理解できる。しかしクラウス陣営は、この意見にを見て、彼ら反対の声に耳を貸さなかった。
 


 そうして為された婚姻。すでに2年が経過した。
 
 しかし、その2年間、クラウスは忙しかった。

 クラウスは父の言葉通り、王となり、アンジェリカを妻を据えたが、兎に角、国を安定させることに時間を割いた。
 もちろん、王妃となったアンジェリカも同じく。
 二人は、婚約時代から変わらず、互いの役割を正しく理解していたのだ。

 だからクラウスは、疑っていなかった。
 彼女は何時も隣にいるということを。その存在を失うことなど、有り得ないことだと。
 

「……それは、どういうことだ?」

 そんなクラウスだからこそ、その報告に対する返しに驚きの色が含まれたのは致し方ない。
 側近から齎されたのは、妻の拠点である王妃宮が閉ざされたという信じられない一報だったからだ。

「王妃陛下は、門を閉ざされたとのことです。連絡を受け、私が王妃宮へ伺いましたが、立ち入りは許可できぬと」

 クラウスに報告を挙げたのは、側近の一人である。クラウスの執務室には、複数の文官が詰めているがそのうち、最も王妃宮との接点が多い者だった。

「対応したのは誰だった?」

「第2騎士団の師団長の一人でございました。陛下に、これを、と」

 差し出されたのは、一通の書簡。アンジェリカが好んで使う練り香水の香りが鼻を擽る。
 表には、見慣れた妻の字で、クラウスの名が書かれていた。

 クラウスは、封を開けることなく立ち上がった。

「ギルバートを呼べ。私は隣へ下がる。そこに来るようにと伝えてくれ」

 


 

 

 
 

 
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】シュゼットのはなし

ここ
恋愛
子猫(獣人)のシュゼットは王子を守るため、かわりに竜の呪いを受けた。 顔に大きな傷ができてしまう。 当然責任をとって妃のひとりになるはずだったのだが‥。

おにょれ王子め!

こもろう
恋愛
レティジアは公爵令嬢で、王子フリードの婚約者。しかし現在、フリードとの関係はこじれまくっている。 見た目は気が強そうだが実は泣き虫なレティジアは人知れず毎日涙を流し、フリードはなんだかイライラしている。 そんな二人の前に現れるのは……!

イベント無視して勉強ばかりしていたのに、恋愛のフラグが立っていた件について

くじら
恋愛
研究に力を入れるあまり、男性とのお付き合いを放置してきたアロセール。 ドレスもアクセサリーも、学園祭もコンサートも全部スルーしてきたが…。

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

幸せになれると思っていた

里見知美
恋愛
18歳になったら結婚しよう、と約束をしていたのに。 ある事故から目を覚ますと、誰もが私をいないものとして扱った。

お姫様は死に、魔女様は目覚めた

悠十
恋愛
 とある大国に、小さいけれど豊かな国の姫君が側妃として嫁いだ。  しかし、離宮に案内されるも、離宮には侍女も衛兵も居ない。ベルを鳴らしても、人を呼んでも誰も来ず、姫君は長旅の疲れから眠り込んでしまう。  そして、深夜、姫君は目覚め、体の不調を感じた。そのまま気を失い、三度目覚め、三度気を失い、そして…… 「あ、あれ? えっ、なんで私、前の体に戻ってるわけ?」  姫君だった少女は、前世の魔女の体に魂が戻ってきていた。 「えっ、まさか、あのまま死んだ⁉」  魔女は慌てて遠見の水晶を覗き込む。自分の――姫君の体は、嫁いだ大国はいったいどうなっているのか知るために……

駄犬の話

毒島醜女
恋愛
駄犬がいた。 不幸な場所から拾って愛情を与えたのに裏切った畜生が。 もう思い出すことはない二匹の事を、令嬢は語る。 ※かわいそうな過去を持った不幸な人間がみんな善人というわけじゃないし、何でも許されるわけじゃねえぞという話。

処理中です...