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不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)
18.アランの恋人の結末
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王宮から、公的な告示が為された。
それはヨーク子爵の奪爵の報せであった。
理由は、脱税及び、違法貿易という罪を犯したこととされている。そして、現子爵夫人の実家も罪に問われた。
ヨーク子爵の一家は捕縛、妻の実家である商会も取り潰しとなった。
子爵位は、親戚であっても引き継ぐことを許されず、剥奪となった。
この国では、国民に広く知らせるための告示が発布される。内容はその時々で様々あるが、この告示は、国内の至るところに貼りだされ、国民に広く周知させるものである。
貴族には書面が配布され、『知らなかった』と言わせないよう受け取りの書面の提出も義務付けられている。
しかし内容など詳しいことなどはあまり公にされないため、ヨーク子爵の奪爵についてはかなりの噂話が飛び交った。
事実として、子爵本人と妻、そして妻の父親は投獄されている。
処罰については告示には記載されなかった。
フェリアは、その告示がグリーフィルド邸に届けられた後、父親からその書面を手渡された。
「引っかかっていた家であろう?」
父の言葉に、中身を改める前に、ヨーク家の話なのだと分かってしまった。
「お父様、デイジー様はどうなったのです?」
「さあ。娘がどこまで加担していたのか、それに因るだろうが、少なくとも貴族令嬢ではいられないだろう」
父親が奪爵されたことで、一家は貴族としての身分を失った。当然デイジーも貴族ではなくなった。それを証拠に、数日前からデイジーを学園で見かけなくなった。
あれだけ一緒にいて、『真実、愛してる』と言っていたアランはどう思っているのだろうか。
「フェリア、私に話があるのだろう?」
「お父様……」
「話を聞こう。それに気付いたなら知る時が来たということだ。答えられることはお前に話そう。
何が聞きたい?」
侍女のメリーは、フェリアが信頼する使用人の一人だ。そのメリーが、フェリアの小さな呟きを拾って、父に話を通してくれた。執務の空き時間をいくつか提示されて、フェリアは戸惑った。父とアランについて、そしてアランへのフェリアの想いを、どう話していいのか纏まらなかったからだ。
「先日、メリーにアラン様について調査をお願いしたのです。今までは、何れはアラン様はわたくしの婿になるのだからと気にしていなかった―― いいえ、違うわ、気にしないようにしていたのです」
本当は気になっていたけれど。曲がりなりにも幼い時から決められた自分の伴侶となる男だ。気にならない方がおかしい。少なくともフェリアは彼を伴侶として生涯を共にする覚悟を持って接していたからだ。
「でも、入学して、学園にいるアラン様とそのお相手を初めて見たのです。そう、お父様、初めてでしたの。
それまで、噂では沢山聞いていたけれど、目にしたのは初めて。アラン様は、わたくしと共にいるときには、お相手の影すら感じさせないようにしておられたのに」
学園に入るまで目にしなかったその光景は、フェリアが入学し、アランが好きにしていた空間に入り込んだから遭遇した。最初はそう思っていたのだ。
だが、ここまで、アランと出かけなかったわけではないし、社交界にも二人で参加することはあったのだ。もしアランがフェリアに隠れて女性と付き合っているのであれば、フェリアが入学したと同時に、学園での行動は控えるはずなのだ。
でも、アランはそうしなかった。
「デイジー様とは、もうすでに1年以上の仲であったと聞いております。もし、わたくしに隠すおつもりであれば、こんなに簡単にわたくしに見せるようなこと、アラン様らしくないと思ってしまって」
フェリアの話を目の前の父は黙って聞いている。視線は真っ直ぐにフェリアを捉えている。
「ですので、知りたいと思いましたの。
アラン様、浮名を流しておられるのには、何か理由がおありなのでは?」
「フェリアはどう思ったのだ? 調査結果は読んだのだろう?」
「はい。目を通しましたわ。一言でいえば、難ありの方ばかり。そしてアラン様とお付き合いされた後、何かしら処罰を受けておられる。それを考えると、アラン様がそういう方を選んでいるように見えてしまうのです」
「デイジー嬢とは直接会ったことがあると言ったね。印象はどうだったんだい?」
「およそ貴族令嬢とは思えない方でした。思い込みの強い女性という印象でした」
「アラン君はどうだった?」
父の問いかけに、一瞬フェリアは怯む。それを伝えることが、自惚れと取られかねないからだった。
「…… 演技、なのでは、と思いましたわ」
それは、アランの目が、フェリアを見るときとは違うから。
デイジーに向ける笑顔が、アランが作る『社交向けの笑顔』とさほど変わらないものだったから。
「そうか。
私からお前に言えることは、アラン君がお前の伴侶であることは何があろうと覆らない、ということだ。
そしてそれは、アラン君もちゃんと理解している」
「理解、ですか」
「ああ、そうだ。今の彼の態度は、それを踏まえて弁えているとは言い難い。フェリアはそう思っている。違うか?」
「…… 少し前まではそう思っておりました。でも、婿に入れば、他の女性と恋などできない。だから今この時だけなのだろうと割り切ろうと思っておりました」
「本当は、気分のいいことではなかっただろうな」
「それは、はい。そんな自分の気持ちにも蓋をしておりました。こちらに来ていただく以上、わたくしもある程度の許容は必要と」
それはヨーク子爵の奪爵の報せであった。
理由は、脱税及び、違法貿易という罪を犯したこととされている。そして、現子爵夫人の実家も罪に問われた。
ヨーク子爵の一家は捕縛、妻の実家である商会も取り潰しとなった。
子爵位は、親戚であっても引き継ぐことを許されず、剥奪となった。
この国では、国民に広く知らせるための告示が発布される。内容はその時々で様々あるが、この告示は、国内の至るところに貼りだされ、国民に広く周知させるものである。
貴族には書面が配布され、『知らなかった』と言わせないよう受け取りの書面の提出も義務付けられている。
しかし内容など詳しいことなどはあまり公にされないため、ヨーク子爵の奪爵についてはかなりの噂話が飛び交った。
事実として、子爵本人と妻、そして妻の父親は投獄されている。
処罰については告示には記載されなかった。
フェリアは、その告示がグリーフィルド邸に届けられた後、父親からその書面を手渡された。
「引っかかっていた家であろう?」
父の言葉に、中身を改める前に、ヨーク家の話なのだと分かってしまった。
「お父様、デイジー様はどうなったのです?」
「さあ。娘がどこまで加担していたのか、それに因るだろうが、少なくとも貴族令嬢ではいられないだろう」
父親が奪爵されたことで、一家は貴族としての身分を失った。当然デイジーも貴族ではなくなった。それを証拠に、数日前からデイジーを学園で見かけなくなった。
あれだけ一緒にいて、『真実、愛してる』と言っていたアランはどう思っているのだろうか。
「フェリア、私に話があるのだろう?」
「お父様……」
「話を聞こう。それに気付いたなら知る時が来たということだ。答えられることはお前に話そう。
何が聞きたい?」
侍女のメリーは、フェリアが信頼する使用人の一人だ。そのメリーが、フェリアの小さな呟きを拾って、父に話を通してくれた。執務の空き時間をいくつか提示されて、フェリアは戸惑った。父とアランについて、そしてアランへのフェリアの想いを、どう話していいのか纏まらなかったからだ。
「先日、メリーにアラン様について調査をお願いしたのです。今までは、何れはアラン様はわたくしの婿になるのだからと気にしていなかった―― いいえ、違うわ、気にしないようにしていたのです」
本当は気になっていたけれど。曲がりなりにも幼い時から決められた自分の伴侶となる男だ。気にならない方がおかしい。少なくともフェリアは彼を伴侶として生涯を共にする覚悟を持って接していたからだ。
「でも、入学して、学園にいるアラン様とそのお相手を初めて見たのです。そう、お父様、初めてでしたの。
それまで、噂では沢山聞いていたけれど、目にしたのは初めて。アラン様は、わたくしと共にいるときには、お相手の影すら感じさせないようにしておられたのに」
学園に入るまで目にしなかったその光景は、フェリアが入学し、アランが好きにしていた空間に入り込んだから遭遇した。最初はそう思っていたのだ。
だが、ここまで、アランと出かけなかったわけではないし、社交界にも二人で参加することはあったのだ。もしアランがフェリアに隠れて女性と付き合っているのであれば、フェリアが入学したと同時に、学園での行動は控えるはずなのだ。
でも、アランはそうしなかった。
「デイジー様とは、もうすでに1年以上の仲であったと聞いております。もし、わたくしに隠すおつもりであれば、こんなに簡単にわたくしに見せるようなこと、アラン様らしくないと思ってしまって」
フェリアの話を目の前の父は黙って聞いている。視線は真っ直ぐにフェリアを捉えている。
「ですので、知りたいと思いましたの。
アラン様、浮名を流しておられるのには、何か理由がおありなのでは?」
「フェリアはどう思ったのだ? 調査結果は読んだのだろう?」
「はい。目を通しましたわ。一言でいえば、難ありの方ばかり。そしてアラン様とお付き合いされた後、何かしら処罰を受けておられる。それを考えると、アラン様がそういう方を選んでいるように見えてしまうのです」
「デイジー嬢とは直接会ったことがあると言ったね。印象はどうだったんだい?」
「およそ貴族令嬢とは思えない方でした。思い込みの強い女性という印象でした」
「アラン君はどうだった?」
父の問いかけに、一瞬フェリアは怯む。それを伝えることが、自惚れと取られかねないからだった。
「…… 演技、なのでは、と思いましたわ」
それは、アランの目が、フェリアを見るときとは違うから。
デイジーに向ける笑顔が、アランが作る『社交向けの笑顔』とさほど変わらないものだったから。
「そうか。
私からお前に言えることは、アラン君がお前の伴侶であることは何があろうと覆らない、ということだ。
そしてそれは、アラン君もちゃんと理解している」
「理解、ですか」
「ああ、そうだ。今の彼の態度は、それを踏まえて弁えているとは言い難い。フェリアはそう思っている。違うか?」
「…… 少し前まではそう思っておりました。でも、婿に入れば、他の女性と恋などできない。だから今この時だけなのだろうと割り切ろうと思っておりました」
「本当は、気分のいいことではなかっただろうな」
「それは、はい。そんな自分の気持ちにも蓋をしておりました。こちらに来ていただく以上、わたくしもある程度の許容は必要と」
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