真実の愛は罪か否か

KAORU

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不実な婚約者は【真実の愛】を謳う(※タイトル変更しました)

31.それでも貴女を

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 アランは扉が閉まった音を、頭を下げて聞いた。
 王太子が学園に来たことはアランにとっては想定外であった。今日、あの問題児の公女を国へ帰すための一連の流れは兄に報告していたから、迎えが来ることは分かっていたが、まさかその一団を王太子自らが連れてくるとは思っていなかった。
 王家としての姿勢を彼が自ら示しに来たことに驚いた。今まで、アランは彼の指示で動いてはいたが、直接指示が降りてきていたわけではない。いつも兄を通じて伝えられていたから、王太子と顔を合わせたことはそう多くない。
 それが、彼自身が出てきたことで王家の方向性を強く示され、アランは内心安堵していた。
 

 深く息を吸って、アランは隣に並ぶフェリアへ目を向けた。
 淑女の礼を取ったままのフェリアの背に、そっと手を添えると、アランの手に気付いて、フェリアがアランを見上げた。

 子供の頃、婚約者としてフェリアを紹介された時、この瞳に一瞬で魅了された。まだ小さい子供であったフェリアは、すでにその瞳には意志の強さを持っていた。深い緑のその奥に宿る光は、アランを惹きつけてやまなかった。

 マクドエルの子として生まれたが後継ではないアラン。何れは汚れ仕事を請け負うため、表向き従属爵位を継ぐか商家の一つを任されるか、どちらかだろうとは幼いながらに思っていた。父のきょうだいたちも同じように表向きの仕事をしながら、マクドエルの仕事を請け負っていたからだ。

 それが、グリーフィルドへの婿入り。アランは自分の頭脳に感謝した。学ぶことは嫌いではなかったし、頭を使うのは好きだった。戦闘向きではない体は、それでもそこいらの騎士よりはずっと訓練された手練れであったが、如何せんアラン本人は実力行使があまり好きではなかった。
 フェリアの瞳を見た時、自分の一生は決まったと思った。この瞳が、誇りを失わないように守っていこうと決めた。
 そこからのアランは、只管にグリーフィルドの婿となるための勉強に励んだ。アランの一番の目的は、フェリアの側に立つこと。

「フェリア」

 名を呼べば、フェリアの目が細まって微笑む。

「アラン。聞きたいことはたくさんあるけれど。ここでない方がいいわね?」

 何も知らされないまま、それでも心には疑問を持ったまま。フェリアはここに連れてこられた。公女との話の後、王太子が語った言葉で、状況は理解したと見えるが、アランの気持ちは伝わっていない。
 そして、アランには不安もあった。フェリアは淑女の顔を持っている。アランの前では一人の少女としての顔を見せてくれることも有る。それが、これからへの気持ちなのか、への気持ちなのか。アランには判別がついていなかった。
 共に、侯爵家を背負う者同士。その連帯感は確かにあった。

 だが、アランの心にあるフェリアへの想いは、大きく違うのだ。

「とりあえず、邸まで送ろう。少し馬車の中で話をしよう」

 
 _______________________

「アラン、貴方は、これまで王家のお仕事をしていたの?」

 馬車の中で向かいの席に座るフェリアは、真っ直ぐにアランを見てそう言った。
 その視線には、僅かにだが戸惑いの色が見て取れる。

「そうだね。兄から言われる仕事を、請け負っていたよ」

「それはどんなお仕事か…… わたくしが聞いてもいいことかしら」

「話せる限りは話そう。秘匿されるべきものあるけど、殿下がああ言われたからには、ある程度の情報開示は認められているんだろう」

 アランは何から聞けばよいのかといった顔のフェリアに、ひとつずつ疑問に答えよう、と告げた。
 少し思案した後、フェリアは、こう切り出した。

「ごめんなさい、アラン。少しだけ調べたの。
 アランが相手をしていた女性たちのこと…… みんな何某かの制裁を受けていたわ。貴方は内偵をしていたのね?」

「そうだね。彼女たちから情報を引き出すのが、僕の役目だった。親密な関係になると女性は口が軽くなる。令嬢や夫人の情報を糸口に、家で行われている不正を表沙汰にするのが殿下の目的だった。その入り口までを僕が担当していた。
 調査には関わらない。そこが広まってしまうと、次の標的に警戒されるからね」

「それで、恋多き男を演じていたというの」

「まあ、そうだね。恋仲に見せかけるのが一番早い方法だった。フェリアは、僕の相手の共通点を見つけたんだろう? 気付いてきている貴族は同じようにいたと思う。だから潮時ではあった。
 本当は、フェリアが学園に入学するまでという約束だったんだ。ヨーク子爵が最後の標的だった。まあ、あそこは、子爵家自体より、後妻の商家が問題だったんだけど」

「なら、どうしてデイジー様をわたくしに近づけるようなことをなさったの? いつも通り、わたくしには関わらないようになさればよかったのに」

「フェリアが入学して、それでも上手く事が運んでしまったら、そのままズルズル次の依頼が来そうだったから」

 アランは、わざとにっこりとフェリアに笑って見せた。

 王家の闇を司るマクドエルに生まれた以上、切り離せない責務がある。マクドエルはそのために命を落とすことを厭わない家だ。そう育てられるし、子も多産であればあるほどいいと言われる。淘汰され、使い捨てられていく命。王家の安定した治世のためには、必要な犠牲。
 それでもアランは、手放せないものがあった。唯一、魅入られたフェリアという宝物。

 ―― フェリア、君の側にいるためだったら、僕は何でもする。たとえ汚れていようとも。この手で君に触れることを赦してほしい。

 
 
_______________________

少し更新が出来ていなくてごめんなさい💦
もう少しでこの話が終わりそうなので頑張ります。
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