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【2020/05 教育】
《第2週 月曜日 夜 リプレイ》②
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「すみません、本業がありますので」
契約を結んだのは20年以上も前の事だ。
当時おれは学部生で、ギリギリ未成年ではない歳だった。
年齢を誤魔化して風俗でバイトしてたら呼ばれた先で、カタギじゃない男にプレイもなしに話を持ちかけられ、後日高級ホテルに呼び出された。
そこでめちゃくちゃに扱われた挙句、事情を吐かされ、その場で月額契約することになり、店を飛んだ。
今も月に数度は相手になり、相手をしない月でも最低でも保証額の25万円を受け取っている。
当初、あくまでも事情があってカネが要るから仕事でやっていることだとして、本気になられても困る、その場合は下りるとおれは宣言していた。
おれは、この男だったらプレイ中の事故で死ぬ可能性があると踏んでこの話に乗ったのだ。
もしそんな死に方をしても職業柄跡形もなく処分することくらい朝飯前だろうと思うから乗ったのだ。
仮に死なずに成人したとしても、そのまま院に進むだろうし、その後研究室に残っても大した給料は出ない、定期収入があるに越したことはないだろうと考えていたためでもあった。
征谷は当初、おれに本気になっていた訳ではなく、自らの性癖に付き合えそうな若者を妻から充てがわれていたがソイツが逃げたため、新たに探させた性奴隷的な見方だった。
しかしおれがどんな欲求やプレイにも抵抗せず応じ、受け容れるものだから、年々プレイ内容は軟化し、征谷のおれに対する執着は増幅した。
実績がつき、仕事が軌道に乗り、教える側に立ち、役職や肩書が増え、年々忙しくなり呼び出しに応えられる時間が減っていくにも拘わらず、まるで我が子にするように細々と気遣うメールを寄越す。
もう金銭的な麺は心配ないし、死なせてくれないならそろそろ切るしかないのだが、それは困ると夫婦しておれを手放そうとしない。
征谷がいっそ離婚するから一緒になってくれとでも言ってくれたら言質をとって「契約違反だから降りる」と切ることができるのだが、そうなればおそらくはビジネスで結婚したと断言する征谷の妻と争うことになるし、そうなったとき一番法的に立場が弱いのはおれだ。
なんて、そんなこと世に知れたら廃業して飼われるしかなくなる。
完全な膠着状態になっている。
「ユカちゃん、玲さんをお風呂へ。服は夜のうちに整えておいてあげて、多分ここからそのまま仕事行くはずだから」
ハウスキーパーに案内されて脱衣所へ向かう。
「奥様、玲さんもういらっしゃらないのかしらって仰ってたんですよ、旦那様も元気がなくて可哀想でしたよ」
厚手の大判のバスタオルとフランネルのローブを手渡すと、安堵した表情で笑った。
「はは、まさか。おれから辞めるっていう選択肢はないですよ。ユカさんだってそうでしょ」
ユカはおれが出入りする前から住み込んでいるハウスキーパーだ。多分少し歳下だが、女性に歳を訊くのも失礼なので正確に幾つなのかは知らない。何故ここにいるのかもわからない。
いつだったか訊いたら「わたしは奥様に助けていただいた身です」とだけ答えていた。
久しぶりに観たバスルームはリフォームされて、最新型の肩口からも湯が流れる浴槽に変わって、テレビのサイズも大きくなり、サブスクリプションで映画も見れるようになっており、Bluetoothスピーカーもついていた。
スピーカーをスマートフォンとペアリングして、ダウンロードしていた音楽を小さく流す。
今夜はどう扱われるんだろう。
二週間シカトしてた上、今月はこれ一回で25万円ということになってしまう。
流石に、それ相当の仕事を求めてくるだろうか。
これまでの仕打ちを思い返すと、腹の奥が疼いた。
契約を結んだのは20年以上も前の事だ。
当時おれは学部生で、ギリギリ未成年ではない歳だった。
年齢を誤魔化して風俗でバイトしてたら呼ばれた先で、カタギじゃない男にプレイもなしに話を持ちかけられ、後日高級ホテルに呼び出された。
そこでめちゃくちゃに扱われた挙句、事情を吐かされ、その場で月額契約することになり、店を飛んだ。
今も月に数度は相手になり、相手をしない月でも最低でも保証額の25万円を受け取っている。
当初、あくまでも事情があってカネが要るから仕事でやっていることだとして、本気になられても困る、その場合は下りるとおれは宣言していた。
おれは、この男だったらプレイ中の事故で死ぬ可能性があると踏んでこの話に乗ったのだ。
もしそんな死に方をしても職業柄跡形もなく処分することくらい朝飯前だろうと思うから乗ったのだ。
仮に死なずに成人したとしても、そのまま院に進むだろうし、その後研究室に残っても大した給料は出ない、定期収入があるに越したことはないだろうと考えていたためでもあった。
征谷は当初、おれに本気になっていた訳ではなく、自らの性癖に付き合えそうな若者を妻から充てがわれていたがソイツが逃げたため、新たに探させた性奴隷的な見方だった。
しかしおれがどんな欲求やプレイにも抵抗せず応じ、受け容れるものだから、年々プレイ内容は軟化し、征谷のおれに対する執着は増幅した。
実績がつき、仕事が軌道に乗り、教える側に立ち、役職や肩書が増え、年々忙しくなり呼び出しに応えられる時間が減っていくにも拘わらず、まるで我が子にするように細々と気遣うメールを寄越す。
もう金銭的な麺は心配ないし、死なせてくれないならそろそろ切るしかないのだが、それは困ると夫婦しておれを手放そうとしない。
征谷がいっそ離婚するから一緒になってくれとでも言ってくれたら言質をとって「契約違反だから降りる」と切ることができるのだが、そうなればおそらくはビジネスで結婚したと断言する征谷の妻と争うことになるし、そうなったとき一番法的に立場が弱いのはおれだ。
なんて、そんなこと世に知れたら廃業して飼われるしかなくなる。
完全な膠着状態になっている。
「ユカちゃん、玲さんをお風呂へ。服は夜のうちに整えておいてあげて、多分ここからそのまま仕事行くはずだから」
ハウスキーパーに案内されて脱衣所へ向かう。
「奥様、玲さんもういらっしゃらないのかしらって仰ってたんですよ、旦那様も元気がなくて可哀想でしたよ」
厚手の大判のバスタオルとフランネルのローブを手渡すと、安堵した表情で笑った。
「はは、まさか。おれから辞めるっていう選択肢はないですよ。ユカさんだってそうでしょ」
ユカはおれが出入りする前から住み込んでいるハウスキーパーだ。多分少し歳下だが、女性に歳を訊くのも失礼なので正確に幾つなのかは知らない。何故ここにいるのかもわからない。
いつだったか訊いたら「わたしは奥様に助けていただいた身です」とだけ答えていた。
久しぶりに観たバスルームはリフォームされて、最新型の肩口からも湯が流れる浴槽に変わって、テレビのサイズも大きくなり、サブスクリプションで映画も見れるようになっており、Bluetoothスピーカーもついていた。
スピーカーをスマートフォンとペアリングして、ダウンロードしていた音楽を小さく流す。
今夜はどう扱われるんだろう。
二週間シカトしてた上、今月はこれ一回で25万円ということになってしまう。
流石に、それ相当の仕事を求めてくるだろうか。
これまでの仕打ちを思い返すと、腹の奥が疼いた。
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