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巻1*5人の美人殺し屋たち
Mission.3 恋の爆発を起こせ!
しおりを挟むカメリアは不服そうに
後部席で俺の膝を枕に寝転がるミズヒメを見る。
「なんっで、あんたが
任務に同行してんのよ!」
「出来るだけ長い時間
一緒にいたいって思うのは普通じゃない?
私、マゼンダの婚約者なんだから。」
メイドは相変わらず無気力に運転をする。
カメリアはパソコンを見ながら
少しだけ首を傾げた。
「カメリア、どうした。」
「今日の依頼って確か、
裏組織の壊滅って言われてたわよね?
ビルで会合が行われるから
そこに乗り込んで殺せ、って。」
カメリアが見せてきたパソコンを見ると
俺たちが制圧を予定していたビルが
地図上から消えていた。
ミズヒメは体を起こして
拳銃に装填する。
「カメちゃん、最後に地図を確認したのはいつ?」
「今朝よ。
その時はあったはずなのに。」
「もう4時間も前じゃん。
本当、詰めが甘いね。
そのパソコン、対象にハッキングされてる可能性があるよ。」
ミズヒメの言葉にカメリアは鼻で笑い
ツヤツヤしたロングヘアーを肩から手で払った。
「私がハッキング?
絶対ありえない。舐めないで。」
俺は小さなナイフを
カメリアのパソコンに向かって投げる。
液晶は割れ、画面が黒くなった。
呆然とするカメリアの手から
ミズヒメはパソコンを奪い取り、
思い切り窓から投げ捨てた。
「ちょっと!何するのよ?!」
「マゼンダ、バディへの教育がなってないね。
カメちゃん、この世界に『絶対』はない。
少しでも可能性があるのなら
リスクは取らない方を優先する。
今まで自信過剰だった奴が
生き残った戦いを私は見たことがないよ」
メイドは無関心そうに
車内の音楽のボリュームを上げた。
ベートーベンの第九の明るいメロディーラインが
鼓膜を響かせる。
「だからって捨てることないじゃない!」
「追跡されてたら居場所もバレる。
うちのパソコンは壊せばデータは自動削除される仕組みだ。
今のはミズヒメの判断が正しい。
カメリア、替えのPCがあるだろ。」
拗ねたようにため息をつき、
カメリアは車のダッシュボードから
新しいノートPCを取り出す。
メイドは3階建の古びた建物の前に車を停めた。
「本日のミッションに与えられたお時間は
20分となっております。」
俺たちは時計のタイマーを押して車を出た。
車が発進する。
ビルに入ろうとするカメリアを引っ張り
俺とミズヒメは建物を背に
俺はAK-15、ミズヒメはグロック17を構え
そのまま走る。
「なんでよ。建物に乗り込むんじゃ、」
カメリアが喋ろうとした瞬間。
ビルが後ろで爆発した。
ミズヒメが左に発砲すると人の気配がする。
俺もそちらに銃口を向けると
金髪をポニーテールにした
迷彩服のつなぎを着た女が
手榴弾を左手、
ピッチを右手に笑顔で立ち上がった。
「引き金を引こうとしたら
そこに仕掛けた爆弾のスイッチを押す。」
カメリアはその場にしゃがみ込み、
頭を抱えている。
ミズヒメは銃口を向けたまま
引き金に指をかけた。
その瞬間、
俺たちの少し後ろで何かが爆発する。
「言ったよな?
次はオマエごと吹っ飛ばす。」
「あんた、リーリアか」
しばらくするとカメリアが立ち上がった。
パラパラと得意げに電線を持ち上げると
女は口笛を吹いて、携帯をしまう。
「私の爆弾を解除するとは。
お手並み拝見した甲斐があったぜ。」
俺がミズヒメにアイコンタクトすると
ミズヒメは舌打ちしてから銃を下げた。
「悪いな、ミズヒメ。
自己紹介もさせずに
嫁候補を殺されるのは気分が悪い」
俺の言葉を聞いて
女は手榴弾をしまって、俺に近づいてきた。
建物から出てきた人影を
ミズヒメが背負っていたアサルトライフルで
的確に命中させる。
近づくと、女の身長は175くらいありそうで
俺よりやや小さい程度だ。
俺のことを見ると、
面白そうに鼻で笑う。
「リーリアと言ったな。
たしかに嫁候補の中に名前があった。
爆破の腕は認めるが
今日のミッションは20分。
時間は遅過ぎるのはもちろんダメだが、
早すぎてもいけない。
ジャストに終わらせるのがプロだ。」
俺の言葉にリーリアは
悪びれる様子もなく
機械を取り出しスイッチを押す。
潜入予定だった建物が静かに
綺麗に崩れた。
「悪いね。せっかちが短所なんだ。
派手なのが好きなのは長所さ。」
建物が崩れる手前あたりに車が停まる。
乗り込んだ俺を見ると
メイドは音楽をつけていった。
「マゼンダ様、20分のミッションを
12分で解決されました。
タイムルール違反5回目となり、ペナルティ始動となります。」
ベートーベンの第九を聞いて
リーリアは楽しそうに体を揺らした。
俺は深くため息をつき、
カメリアが申し訳なさそうにする。
「マゼンダ、ごめんなさい。
今日以外の4回は私がモタモタしたからよね」
「じゃあ代わりにペナルティ受けてくれよ」
「それは嫌。」
乗り込んだリーリアのカバンには
ジャラジャラと手榴弾やコードが入っていて
ミズヒメがこめかみに銃口を突きつける。
「自己紹介終わったから殺していい?」
「ミズヒメ様、恐れ入りますが
車内での銃の使用はご遠慮ください。
リーリア様も、車内では極力、
爆発するものは広げないようお願いします。
私は皆様と違って
命に重みがあるので。」
音楽が脳を揺らす。
リーリアは俺に右手を差し出して、
握手すると肩を抱いてハグした。
「お前がマゼンダか。
想像していたよりは色男だったな。
私はリーリア。
昔は、ある国の爆弾処理班にいた。」
「なんだ、元は国の手先か。
私と同じだな。」
ミズヒメが笑って声をかけるが
リーリアは無視して俺の肩を組む。
そして、黒革の手袋を外すと
左手の小指から手首までに大きな火傷があった。
「所属していたチームが任務に失敗して
その失敗の責任を押し付けられ、
私はテロリストとみなされた。
そして本物のテロリストになった。」
リーリアは手袋を付け直す。
メイドは音楽のボリュームを少し下げる。
「リーリア様の所属していたテロ組織は
以前ライム様とアッシュ様が受けた依頼主です。
お二人はご存知ないかもしれませんが。」
メイドの言葉にカメリアは
顔を青くして俺を見つめる。
俺が眉間に皺を寄せると
震える指をリーリアに向けた。
「まさかあの、焼け野原爆発組織じゃないわよね…?
ライムがペナルティ5を受けた…」
「なんだ、ピンクの姉ちゃん、知ってるのか。
派手で良い爆破だったろ?
私は他のミッションで現場にはいられなかったが
部下の話を聞く限り、お祭りだったようじゃないか。」
その話は聞いたことがある。
同僚のライムが
もう二度と絡みたくないと言っていた現場だ。
「リーリアは爆破が好きなのか。」
俺の言葉にリーリアは
口の端だけ動かして笑う。
「好きだよ。
全部をぶち壊せるからね」
女の価値観を否定しない。
極力受け入れる。
「俺も壊れるのを見るのは好きだ」
それが、このゲームのルールだ。
「それにしても
モーンガータのセキュリティはつまらなかったな。
簡単にハッキングできたから、
事前に地図からビルを消しといたぜ」
カメリアは悔しそうに拳を握る。
ミズヒメが大きな声で笑って
リーリアの首を絞めたのを
俺はゆっくり止めた。
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