君の想い

向日葵

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#11

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どうぞ、と男の子は部屋の中央に置かれた小さめな気緑色のテーブルに、持っていたコップを置いた。ありがとう、と男性は言って、一口飲む。ひかりも真似するかのように、ジュースを一口飲んだ。
「ご両親は?」
尋ねる男性に、男の子は答える。
「お母さんもお父さんも、今日は休日出勤で、夕方まで帰ってこないんです」
すると、そっか、と男性は呟いた。
「‥じゃぁ、都合がいいね」
言うと男性は着ていたワイシャツの胸ポケットから、一枚の紙を出した。トランプと変わらないほど小さく畳んでいたその紙を、男性はノートほどの大きさまで広げる。ふたりの隣、ひかりは横から紙を覗き込んだ。男性は気緑色のテーブルに置くと、男の子の方へ差し出す。
『契約書』、紙にはそう記述されていた。
男の子は何も言わずに立ち上がると、どこからか印鑑を持ってきた。
「こっそりお母さんの部屋から持ってきておいたんです。絶対、貸してはくれないから」
そう言って男の子は紙に印鑑を軽く押した。
ありがとう、と男性は言ってまた胸ポケットへ紙を畳んでしまった。
「じゃぁ、瞬君」
ふと男性は男の子を見ると言う。
「手を出してくれる?」
瞬君、と呼ばれた男の子は不安げな表情を浮かべた。
「静電気みたいにビリッてしたりしないの?」男の子の問いに男性は小さく笑う。
「よく訊かれるんだ。でも大丈夫。全然痛くも痒くもないから」
男性の言葉に、男の子は眉間に寄せていた緊張を解いた。分かった、そう呟くと、男の子はそっと男性へと両手を差し出す。優しげに笑むと、男性はその手を掴んだ。男性が一瞬目を閉じたか否か。少しだけ男性とひかりを交互に男の子が伺った頃。男性はすぐに手を放した。
『何をしたの?』
思わずひかりは男性に手話を見せた。けれど男性は何も答えなかった。男の子だけが、不審げにひかりを見つめている。
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