君の想い

向日葵

文字の大きさ
12 / 15

#12

しおりを挟む
玄関口、男性は「ジュースありがとう」
と男の子に言った。すると男の子はどこか不安げに男性に尋ねた。
「両親に連絡したりしないよね?」
男性はまた笑う。
「大丈夫、約束は守るよ」
約束、とひかりは一人出ない声で訊ねた。けれど男性が答えることはない。外に出ようとした時だった。男の子が「おじさん!」と呼んだ。男性が振り向くと、男の子は何か小さな包みを男性に差し出した。ひかりは二人を見て首を傾げた。手の内に収まる大きさの紙包み。
「あの人にあげて」
男の子はそう言った。

それから男性が向かったのは、男の子の家から二つ隣の家だった。男性は胸ポケットから小さな紙を取り出すと、確かめるようにしてインターホンを押す。やがて出てきたのはひかりと同世代の女性だった。
「香織さんですか?」
男性は尋ねた。えぇ、と答える女性に、男性はつづけた。
「ちょっとお話があるんですが」
「何ですか?」
少し嫌そうな顔をして女性は尋ねた。
「出てきていただけると・・・」
男性がそう言うと、女性は家の中を気にしたものの、しぶしぶドア口から出てくる。
「一体何ですか?」
女性が改めて尋ねると、男性は言った。
「瞬君という男の子をご存知ですか?じつはあなたのことを気にしてましてね」
すると女性は何かを気にするように腕をさすり始めた。
「預かりものをしていまして、お渡しに来たんです」
男性が言うと、女性は不審げな顔を向けた。
「すみませんが、ちょっと私と手をつないでもらえませんか」
女性は、は、と眉を寄せる。
「繋いでいただくだけでいいですから」
男性がほほ笑むので、女性はひかりと男性を交互に見た。ひかりは女性に向かって頷く。女性は分からないという顔をしながらもやがて右手を差し出した。男性はその手をつかむ。そして、「君も手を出して」とひかりにも言った。え、と今度はひかりが訊いた。男性は言う。
「早く」
言われてひかりもおずおずと右手を差し出した。
手をつないだ刹那、海に流れ落ちるような力を感じて驚いて、ひかりは男性を見た。しかし、目の前にいたのは男性ではなく、先ほど会った瞬君という男の子だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

私が……王太子……のはずだったのに??

#Daki-Makura
ファンタジー
最愛と朝を迎えたら……城下が騒がしい……?? 一体……何が起きているのか……??

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...