君の想い

向日葵

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#14

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「こんな…こんな熊」
女性の半ば恨めし気な声に、男の子は何か言いたげで。でも、実際に何かを言うことはなかった。
「こんなのじゃ、私の人生は変わらないの、いくら好きなものをくれたって」
男の子が何も言えずにいて。ひかりは思わず、女性に何かを言おうとした。しかし、男性がそれを止める。
「ちょっと待って」
男性は小さな声で言った。
「でも…」
男の子がようやく何かを言おうとした。
男性は男の子を見て、ひかりも追うように見た。
「でも、僕にもできることが何かあると思うんです」
相変わらずイラついた様子の女性に、男性は女性が持っている熊のキーホルダーを掴んだ。
「お分かりですか?」
男性はそう言います。ひかりはきょとんとして女性と同じように男性を見た。男性は熊のぬいぐるみをもごもごと触る。すると、むいぐるみの端に切れ目ができて、中から何か黒いものが出てきたのだ。
ひかりが目を丸くしていると、男性は女性に言った。
「これ、中身が防犯ブザーなんです」
そう言って男性がぬいぐるみを押すと、途端にけたたましい音が響いた。女性は一瞬耳を塞いで、それから男性と男の子を見て、瞬く。
「僕が…」
男の子が勇気を出すようにして女性に言った。
「僕が助けてあげるから」
女性は男の子を見た。
「僕が助けに行ってあげるから」
男の子は、まっすぐな目で女性を見つめる。女性は投げやりな目つきで男の子を見ていたが、やがて歯を食いしばるようにして頭を振った。あぁ、と叫んだかと思えば、女性はその場に座り込む。ガクッと折れて、女性は男性が手放した熊のぬいぐるみを握りしめた。それからはぁ、と息を吐くと、何かを捨てるように話した。
「前はね、優しかったのよ、凄く。家事も手伝ってくれて。一緒に笑って。ホントに楽しかったの。」
女性は手の中で、ぬいぐるみをねじる。
「だけど、いつの間にか…どこでどうなったのか、彼、私に当たるようになって」
もう、女性は何も見てはいないようだった。
「どうしてなのかなぁ…何で…何で…」
女性の定まらない視線を、男の子は黙って見ている。そうして女性は何もお言わなくなった。男の子も黙っていて。その流れを一掃したのは、男性だった。
「香織さん、瞬君。いい方法が一つだけあるのですが…」



男性とひかりは、女性の家の前に来ていた。玄関のドアを開ける前、ノブを掴んだまま、男性はひかりに言った。
「旦那さんがもし何かするようでしたら、私のことは放っておいていいですから、構わずここから逃げてください。いいですね?」
ひかりが、おぼつかなく頷くと、男性はノブをひねった。
開けた途端、聞こえたのは男の声だった。
カオリ、そう呼ぶ声が聞こえる。
「旦那さんですか?失礼します」
男性がそう大声で言うと、急に静かな空気が流れ、バタバタと音が聞こえた。
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