〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第26章 邂逅、帝国の聖女

第234話

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 扉を開けたその奥に待ち受けていた光景、それはバカップル共のイチャついてる姿だった。


「こ、恋人ぉっ⁉︎ ちょっ、待っ!ザインっ⁉︎ 」
「は?え?クーガ殿、しょ、正気か、とは?」

 真っ赤な顔のまま俺の言葉の意味を聞き返してくるザイン。体を起こしてベッドの枕元に上体を預けた姿勢ではあるが、その姿は包帯に包まれて如何にも痛々しい。
 
 あまりにショッキングな光景だった為に気が付かなかった俺だが、そこであるに気付く。それは………。

「………おいザイン王子、お前………っ!」
「あ、ああ……、気にしないでくれ。これも己の未熟さ故のこと。命を落とした仲間達のことを思えばこれしきの事……… 」

 ベッドの上で自嘲気味に笑みを浮かべるザイン王子。その包帯に包まれた右腕は、本来なら肘のあるはずの部分から少し上の場所でスッパリと失くなっていたのだった………。



「あの時、私達はこの街から北にある、「マルックフィールド」という森に調査に来ていたの……… 」

 場所をリビングへと移し、クレアさんが淹れ直してくれたお茶のカップを両手で持ちながら、トーレスは当時の事を語り始めた。

 マルックフィールドには、その森の固有種である【綱鱗皮松】と呼ばれる非常に珍しい樹木が存在しているらしい。その特徴は読んで字の如く、樹の表面にある樹皮が鋼鉄のように硬く、それが松の木の特有の表面に相まって、まるで鋼鉄の鱗が覆っているような見た目からそう名が付いたのだそうだ。
 また、"綱鱗皮"の名は伊達ではなく、その強度は鋼鉄以上。〈斬撃〉や〈打撃〉の《強化魔法》を付与した斧を何本も使用して、やっと一本切り倒せるかどうかというほど硬い樹だそうなのだが、そんな硬い樹皮を好んで食べる生き物が存在する。

 それが下位竜の一種で名を『アイアンケラトプス』、別名はそのままズバリ"綱鱗角竜"というそうだ。
 その姿形は一言で言えば"やたらと巨大なトリケラトプス"といったところだろうか。下位竜、とは言っても前述した通りその食性は草食であり、こちらから危害さえ加えなければアイアンケラトプスから攻撃してくることはほぼ無いという、非常に温厚な性格をしているそうなのだが、そこはそれ。一度ひとたび怒らせればその巨大で頑強な身体で執拗な突進攻撃をしてくるのだそうだ。

 その破壊力は凄まじく、巨大な岩塊すら事も無げに粉砕し、辺り一帯を薙ぎ倒すのだとか。まあ、いくら草食でおとなしい性格とは言ってもやはり"腐っても竜種"ということだな。

 さて、なぜ長々とアイアンケラトプスなどという下位竜の話をしたのか?それがどうトーレス達の"調査"と関係してくるのか?これが実は関係あるのだ。

 覚えているだろうか?トーレス達は、いったい調査する為にロードベルク王国を離れ、遥々この帝国にまで来ていたのか?という事を。
 そもそもこの一連の事件は、数ヶ月前にここマルックフィールドを活動の場としている冒険者達が、複数のアイアンケラトプスのを発見した事に端を発しているからなのだ。

 下位竜と言えど、アイアンケラトプスはその硬い鱗や甲殻によって、下位竜と呼ばれるモノのなかでもダントツの防御力を誇っている為、凡そ通常の武器では擦り傷すら負わせるのは難しいのだという。更にはそこに巨獣にも匹敵するほどの巨体であることも相まって、例えもし依頼があったとしても、討伐するのは相当に困難を極めるという高難易度物件なのだとか。
 そこで彼等は、いつもは他の依頼を受けつつ、偶に落ちているアイアンケラトプスの鱗や角、甲殻の欠片を採取していたのだが、その日の森はいつもと違う只ならぬ雰囲気に包まれていた。

 アイアンケラトプスの鱗は希少素材。僅かでも見つかればいい稼ぎになる為、何となく胸騒ぎに襲われながらも、森の奥、【綱鱗皮松】の群生地に向かった彼等が見たものは異様な光景だった。
 そこに見たものとは、十数体にも及ぶアイアンケラトプスの死骸。しかも鋼鉄よりも硬いはずの鱗や甲殻を持つアイアンケラトプスが甲殻を断ち割られ、身体のあちこちを切り裂かれた凄惨極まる死体ばかりであったのだ。

 彼等とて冒険者。依頼によっては巨躯の魔獣の討伐に挑む事だってある。そんな彼等だからこそ、このにいち早く気付いた。
 それは、『いったいを以ってすれば、これ程の巨大な竜種をに斬り裂く事が出来るのか?』という事だった。
 通常、当然だが剣にしろ刀にしろ、その刃渡り以上に斬り裂くことなど出来はしない。しかしこの世界には魔法があり、斬撃に魔力波動を乗せることで切れ味のほかにその刃の長さを伸長することは確かに可能だ。
 だがそれとても極度の集中と膨大な魔力を消費せねばならず、とてもではないがアイアンケラトプスのような巨大かつ強固な防御力を誇る獲物を何匹も狩ることなど出来はしない。おまけに相手はおとなしいとはいえ竜種。一体二体ならば倒す事も出来るかもしれないが、アイアンケラトプスは他の草食の獣と同じく群れる習性を持っている。そんな群れに襲い掛かろうものなら最初の数体を手にかけた時点で群れの他の個体に気付かれて、怒り狂った他の個体からの一斉攻撃に曝されて返り討ちにあってしまうだろう。
 それを何体も、しかも中には首を一撃で落とされている死体すらも見受けられた。

 そんな惨状に冒険者達が顔を蒼褪めさせていたその時だった。

 ーーー「ギャピイイイイイイイイイ…ッ‼︎ 」ーーー

 突如として魂消るようなアイアンケラトプスの凄まじい悲鳴が森に響き渡り、身を竦ませながらも冒険者達が声のした方向を見た時にを見た ーーーー 。


「………と、いうのが"事のあらまし"だったんだ 」
「なるほどな、それが『人型の巨獣』、か 」
「うん。冒険者達の視界の先、赤黒い甲殻を持ったが、林の向こうから虫のような翅を広げて飛び立ったらしいんだけど、それがどう見ても人のような四肢をしていたって 」

 それを目撃した冒険者達は、明らかに自分達には手に負えない事案として慌てて街まで撤退し、冒険者ギルドが領主の許可のもと調査に乗り出した、と。

「で、試食会の時に言っていた"出張''ってのが、今回の調査だったって訳か 」
「そう。事が事だけにね、ヒロト君達にも秘密にしなけりゃいけなかったんだ。当然、目撃した冒険者達にも口止めがされて、バカが被害を出さないよう冒険者ギルドも緘口令を出した。森の方も強力な巨獣が出現した事にして、完全に封鎖もしたんだ 」
「なるほどなぁ……… 」

 そうして調査にやって来たトーレス達は、運良く……いや、か?くだんの『人型の巨獣』と遭遇、交戦の末、調査隊は壊滅した。といったところか。

「恐ろしい相手だったよ……。護衛の冒険者達の技も、魔法も、何もかも通じなかった。力仕事と、念の為に連れて行ったゴーレム術者達のゴーレムも、素早い動きとパワーにまるで歯が立たなかった………。私はね、ヒロト君、今、心底恐ろしいんだ。ただでさえ恐ろしい巨獣に知能………、ううん、奴は冷静な判断力と、武器を使うまで備えていた。あんな奴がもしもまだ他に複数いるとすれば…、この世界は終わる!終わってしまう!【黒い魔獣】なんて問題にならない。アイツこそ何とかしなきゃ…っ‼︎ 」

 トーレスは攻撃魔法こそは得意ではないが、《結界》や《隠蔽》の魔法に長けているそうで、その力で生き残りの調査隊メンバーを何とか逃がすことが出来たらしいが、やはり相当なショックだったのだろう。
 いつものお気楽な雰囲気など何処にもなく、両手で自分の体を抱きしめるようにして震えるトーレス。そんなトーレスを労わるように、ザインはそっとその肩に手を置いた。

「大丈夫。貴女は今度こそ俺が守ってみせる。親父にも帰国次第この件を報告すれば、必ず対応策も見つかるさ…!」
「ザーたん………!」

 ウルウルと瞳を潤ませて、ニッコリと微笑むザインを見上げるトーレス………。

「ありがとう、あの時ザーたんが身を挺して守ってくれたから、今、私はこうしていられる。でも、その所為でザーたんは腕を…… 」
「何度も言うが、気にしないでくれ。コレは俺が未熟だった所為だ。それを言ったらだって生命を削ってまで俺たちを助けてくれたじゃないか!俺が無事だったのは全部トーリィのお陰だよ!」
「ううん、そんな事ないもん!」
「トーリィ………!」
「ザーたん……!」

 俺達の目の前で、目をウルウルキラキラさせながら身を寄せ合い、手を取り合って見つめ合うトーレスとザイン。

 ………ウザい。何だこのバカップルは…。よくイチャコラしているカップルを見て、"砂を吐く"だの"胸焼けがする"だの言う表現があるが、コイツらはひたすらウザい。まだお互いの報告の最中だというのに、隙あらばイチャコラしようとしやがって。 

 ………俺とセイリアはこんな風じゃないよな?ないよな…っ?

「あ~~、一応フォローするとですね、確かにトーレスは頑張ったんですよ?枯渇した魔力を補う為に、自身の生命力まで削って皆んなを救ったんです 」

 思わず眉を顰めてジト目になってしまった俺に、クレアさんが苦笑しながらトーレスのフォローを入れてくる。
 ふむふむ、ザインは己の腕を犠牲にしてトーレスを守り、そんなザイン達をトーレスは自身の生命力を使ってまで守った。んで、も手伝ってイチャコラバカップルの出来上がり…と。
 いや、まあそれはいい。それはいいんだが……?

「けどザイン、前に王城に行った時に聞いたが、確か王族はエルフ族なんかの長命種とは"婚姻禁止"なんじゃなかったか?」

 そう、初めてグランベルク城を訪れた時、実は子供の頃からセイリアに惚れてたコイツらにセイリアの事で絡まれたんだよな。その時に、おっさん国王から聞いたんだ。ひとりの王があまりに長すぎる間在世すると、国政に悪い影響が出かねないから、エルフ族なんかの長命種族との子が生まれない為の決まりだったはずだ。

「ああ、そのことなんだが……。俺は帰国次第親父に廃嫡を申し出て、ロードベルク王家から出奔するつもりだ 」
「ブ…ッ‼︎ ちょっと待て、お前"王太子"だろうがっ⁉︎ 」
「いや、まだし、このように腕を失くすような愚物では国民にも申し訳が立たん。その点、ゼルドならば俺などより遥かに良い王となってくれるだろう。そして何より……、今の俺には全てを引き換えにしても守っていかねばならない女性ひとがいるから……!」

「ザーたん、そこまで私のことを……っ⁉︎ 」
「当たり前じゃないかトーリィ 」
「ザーたん……!」
「トーリィ……!」

 あ~あ~、また始めやがったよこのバカップル。何が「ザーたん!」「トーリィ!」だっての。もう周りなんてお構い無し。キャッキャウフフと完全に自分達だけの世界に入り込んじまった。もう勝手にしてくれ…。

 しかし、そうなるとを引いたのはゼルドの奴か……。ま、いっか~~!俺が口出しすることでも無いし。

『い、いいんですかマスター⁉︎ ゼルドさんとか怒るんじゃないですかっ?』
『そりゃ怒るだろうな~。でも、こっから先は俺が口出しする事でもないし、ジオンのおっさんも次男坊だったそうだし、何とかなるだろ。………たぶん 』
『ゼルドさん……、お気の毒に……… 』

 けど、そうなると大変なのはメイガネーノだな。おっさんもレイラ王妃にも気に入られてるみたいだし、このまま行くと将来は……。なんてアイと呑気に会話していたところで、唐突にトーレスが俺に話し掛けて来た。  

「あっ!ヒロト君、そう言えばゴメンよ、はもう果たせないんだ。どうか許して欲しい 」
「はぁ?約束?何かしたか?」
「ほら、したじゃないか。君を研究させてくれたら私を好きにしていいって。どうかあの事は無かったことにして欲しい。本当にゴメンよ 」

 
 心底すまなそうな顔で俺に謝ってくるトーレスだが。だが…っ!

「ちょっと待てえぇぇぇぇっ‼︎ 誰がいつそんな約束したぁぁぁぁぁっ‼︎ 誤解を招くようなデタラメ言ってんじゃねぇっ!」

 そう、その話は、以前王都の冒険者ギルドで冒険者登録した時に、俺の魔力量に驚いたトーレスが、俺を引き換えの条件として言い出したものだ。
 そんな条件など飲めるはずもないし、そもそもロリで変態など願い下げだっ‼︎

「なっ‼︎ ほ、本当なのかトーリィ⁉︎ まさか君は既にヒロト殿と……⁉︎ 」
「勝手にショック受けてんじゃねぇ!何もねぇよっ‼︎ 」
「やだ、ザーたん!ヒロト君とは何でもないわ!それに、ね?私が………ゴニョゴニョ…だったことは、ザーたんが一番良く知ってる…でしょ?イヤん、もうっ!」

 真っ赤になって頬を押さえ、クネクネとソファーの上で身をくねらせるトーレス。

 ………………………‼︎‼︎‼︎⁉︎⁇

 なん………だ…とっ⁉︎ まさかコイツら………⁉︎

「お……… 」
「お?」

「おまわりさぁぁぁぁぁんっ‼︎ コイツです!ここに幼女を性欲の対象にする変態が!変態がっ‼︎ 」

「な…っ⁉︎ ち、違います!誤解なんですっ‼︎ そうじゃないんだああああああああああああっ‼︎ 」


 ………ふうっ、こんなところまで来て王子様のとんだ性癖を知っちまったぜ……。

『あれ?そもそもトーレスさんて六百歳超えてませんでした?って言うか、『人型の巨獣』の話はいいんですかマスター………⁉︎ 』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 いつもお読み下さりありがとうございます。

 年始のドタバタが片付いたと思ったら、がっつりインフルエンザを食らってしまいました。
 歳を食ってからの三十九度超えはキツかった…っ⁉︎

 皆様もお体にはくれぐれもお気を付け下さい。




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