〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第8章 炎禍の魔女

第48話

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 あの後、各自一人ひとりが部屋に案内されたのだが、”当然”というか”やっぱり”というか、俺の通された部屋は「キサラギ家の家人専用」の部屋だった。

 キラキラとした貴族趣味の部屋ではなかっただけまだマシかもしれないが、俺の感覚では、ブリーフィングをする為に集合していた「会議室」並みに広い……。何だか物凄く持て余す広さの部屋だ。落ち着くどころか、逆にソワソワしてきてしまう。

 ーーコン、コンッーー

 所在なく部屋にあったソファーに腰掛けていると、ドアをノックする音がする。「どうぞ」と応えれば、入ってきたのはソニア達【蒼い疾風ブルーソニック】の四人だった。

「わ~~ん!ヒロト兄ィ、お部屋が広すぎて落ち着けないよぉ~!? 」
「失礼します、ヒロト兄さん……って!?当然ながら、もっと広いお部屋なんですね…… 」
「何ちゅうデケェ屋敷だよ……?いったい何部屋あるんだっ!? 」
「うわ…っ!? 何だよこの部屋、村にあるアタイ等の実家の一階が丸ごと入りそうだよ!? 」

 最初に飛び込んで来たマーニャが、俺に抱き着きながら訴えてくる。そうか、やっぱりお前等も・・・・落ち着かなかったか……。いや、解るわ~、お互い”小市民”って事だな。頑張って馴れるしかないか……?

 そんなこんなで、せっかく広くて上等な部屋を各自に当てがってもらったものの、根が庶民の俺達では馴れない内はどうにも落ち着かない、という事で、結局俺の部屋に皆んな集まって来てしまった。

 まあ、この後も一緒に出掛ける事だし、五人で雑談でもしてればいいだろう。

「んで、兄貴、この後は王都の「冒険者ギルド本部」に行くんだったっけか? 」
「ああ、今日は王都に着いたばかりだし、セイリアも学院への復学は明日からにするそうだ。セイリアの準備が出来たらレイナルドさ…、レイナルド・・・・・が呼びに来てくれるって言ってたな?」
「兄貴の”本登録”も今日済ますのかい?だったら、アタイ等の【蒼い疾風ブルーソニック】と一緒にパーティを組もうよ!兄貴がリーダーに登録し直してさ!! 」

 ソニアが俺の右腕に抱き着きながら、そんな提案をして来た。
……なるほど、どうせ一緒に行動して鍛えるんだし、それも良いかもしれないな?そういえば、ゲームとかみたいに、パーティを組んだ場合には”経験値”とかはパーティ全員に分配されるんだろうか?今度色々と検証してみよう。

 ちなみに左側は真っ先に飛び付いてきたマーニャが俺の膝に頭を乗せて、ソファーの上で丸くなっている。頭を撫でてやると、気持ち良さそうにゴロゴロ言う様は本当に猫みたいだな?
 アーニャが撫でられているマーニャを羨ましそうに見ているが…、ゴウナム!お前はやめろ!? そんな目で見ててもお前の頭を膝に乗せるとか、絶対やらんからな!?

 そうして五人で暫く騒いでいると、再度ノックの音が響いて、ラーナちゃんが俺達を呼びに来た。どうやらセイリアの支度が整ったようだ。

 部屋を出て、ラーナちゃんに案内されてエントランスに降りると、すでにセイリアとレイナルドが俺達を待っていた。
 身支度を整えたセイリアは、見慣れた旅装から、藍色をした長いスカートにリボンタイの上着に、丈の短いマントの様なものを羽織っていた。

「悪いな、セイリア。待たせちゃったか?」
「いえ、私も今降りてきたところです。ヒロト様こそ、よろしかったのですか? お疲れならもう少し後にしても……? 」
「ああ、いや、いい部屋なんだけど広すぎてちょっと落ち着かなくてさ……、まあ大丈夫だから気にしないでくれ。それより、もしかしてそれ・・って「魔術学院」の制服なのか? 」
「あっ!?はい。どうですか?おかしくありませんか? 」

 少しだけスカートを摘んで、右に左にと体を捻るセイリア。おずおずと上目遣いで似合っているかどうかを尋ねてくるが、元々がハイスペック、ハイレベルな美少女なのだ。似合ってないはずが無い。
 だが、やっぱり俺の目が気になるのだろうか?こうやって聞いてくるところは本当に可愛いと思う。なので、セイリアの期待通りの答えを返そうか?本当に似合ってるし。

「全然おかしくなんて無いさ、すごく似合ってるよ 」
「……っ!? そうですか?ありがとうございます…。えへ……!」

 顔を真っ赤にして照れ照れのセイリア。そんなセイリアを見ていたソニア達は、

「うわ~~っ!? セイリア姉ェ、すっごく可愛い……っ!? 」
「そうですね、クール系美人のセイリア姉さんのこの姿、ギャップも加わってトンデモない破壊力です!? 」
「姉貴よぉ……こりゃ姉御に追いつくなんて無理だと思うぜ? 」
「煩いんだよ、ゴウナム!姐さんが可愛いのは当たり前なんだよ!でも、アタイだって、その…、もうちょい、ちゃーんとすりゃあ、ちょっとは……!?」

 こいつ等本当に仲が良いな?何だか本当に賑やかになったもんだ~、なんて、ほっこりしていたが、レイナルドの一言で四人は凍りつく事になる。

「ああ、良いですね、それ?貴女方もこれからヒロト様の配下として、様々な場に出るでしょう。礼儀作法を覚えて損はありません。ついでです、みっちりと鍛えてあげましょう 」

「「「「……………………っ!? 」」」」

 完全に藪蛇だな?四人は口をパクパクさせて、何とか言い逃れようとしているようだが…、迫力あるレイナルドの微笑みに押し切られて、小さく返事をして黙り込むしかなかったようだ。
 
 そんな四人の様子をセイリアと顔を見合わせて笑いながら外に出ると、大型だが王都に来た時とはまた別の馬車が二台停まっていた。馬も頭に羊の様な捻れたツノはあるものの、それ以外は地球でもよく見かけたシルエットの馬だった 。

「あれ?ライナとサイノじゃないのか?あと、ウッガは来ないのか? 」
「あの子達は”外”を走る時用の子達なんです。あの子達が全力で走れば、低ランクな魔獣程度なら簡単に跳ね飛ばしてしまいますから。ただ、頭は良い子達なんですが、あの身体ですので王都の路を走るには向かないんですよ。それで、ウッガには二頭の世話をしてもらっているのです 」

 と、セイリアが教えてくれた。なるほどな、それでウッガは二頭のケアと。

 馬車のドアを、いつもの革鎧ではなく、レイナルドのような黒服に白手袋に着替えたカークスが開けてくれる。

「どうぞ、ヒロト様 」
「ありがとうカークス。似合ってるじゃ無いか 」
「ありがとうございます。ですがやっぱりこういう服装は落ち着きません。やっぱり秀真の着物が一番ですね 」

 と、苦笑しながら答えるカークス。御者台のスケールも同感らしく、しきりに頷いていた。

「ははっ!まあ、しょうがないさ、じゃあ冒険者ギルド本部まで頼むよ 」

 今回は《空間拡張》してある馬車では無い為、【蒼い疾風】の四人は後続の馬車に分乗する。全員が馬車に乗り込んだところで馬車がゆっくりと動き出す。カッカッカッカッ!と蹄が石畳を蹴る軽快なリズムが心地良く響く。

 冒険者ギルド本部は、旧市街の外縁部、壁に近い方にあるそうだ。元は中心部近くにあったらしいのだが、「新市街」が出来上がった時に移動をしたらしい。
 これは、冒険者という職業のほぼ八割近くが一般層である事、その為ほとんどの冒険者達は「新市街」に住んでいる事から移転されたようだ。
 窓の外を流れる景色を見ながら、ふと気になっていた事をセイリアやレイナルドに聞いてみる。

「そういえば、爺さんとギルド長って仲が悪かったりするのか? 」
「えっ!? いえ……、そんな事は無いと思いますが…? どうしてそんな事を? 」
「いや、秀真の國を発つ時、爺さんが「ギルド長とは旧知の仲」って言った時に、レイナルドやタテワキのオッさんやらが微妙な顔して苦笑いしてたからさ、知り合いは知り合いでも”ケンカ友達”みたいな感じなのかな?ってさ 」
「…プッ!?   ~~~~~~~~っ!? 」

 そう疑問を口にすると、セイリアは小さく吹き出してから口元を押さえて下を向き、肩を震わせ出した。”可笑しくて堪らない”とでもいった感じに。

「ん?何か可笑しい事言ったのか、俺? 」

 見れば、ラーナちゃんまで一生懸命吹き出すのを堪えている感じだ。

「ヒロト様、もうそろそろギルド本部に到着致します。その疑問は、ギルド本部に行けばスグに解けると思いますよ?」

 あっ!片目を瞑った!?無意識かどうかは判らないが、この人が何か企んでいる・・・・・時って、片目を瞑るんだよなぁ……。ニコニコというより”ニヨニヨ”してるし。まあ、そう言うなら乗せられておこう。

 やがて馬車は見るからに”冒険者”と分かる者達が多く行き交う通りに入り、四階建ての大きな建物の前で停車する。馬車から降りて見上げれば、デイジマや他の街でも見た『盾に交差した剣とブーツ』の紋章が、看板では無く、建物正面の石壁に精緻なレリーフでデカデカと掲げられていた。

「デカい建物だなぁ…… 」
「さすがに”ギルド本部”の建物ですからね、ではヒロト様、中へと参りましょう 」

 ギルド本部内は既に昼を少し回った時間にも関わらず、結構混雑していた。
 しかし、広い。受付カウンターには受付嬢が十人以上も居るし、壁一面に依頼書が貼ってある。ホールには受付待ち用のベンチが幾つも並び、何だかまるでまだ地球に居た時に行った都庁とかお役所の受付の様だ。

 俺達がホールに入り、中の様子を見回していると、ギルド職員の制服を着たヒト族の女性が近づいて来た。

「冒険者ギルドへようこそ。本日はどの様な御用件でしょうか?何かご依頼ですか? 」
「ありがとうございます。ですが、依頼に参ったのではありません。私共は最高ギルド長に御用件があって参りました。お取り次ぎ願えますでしょうか? 」

 いつもなら、冒険者ギルドになんて来たら「何かテンプレな展開があるかもしれない!?」なんて考えないでも無いが、今回に限ってはそれは無い。
 何故ならここは”王都”だからだ。この都市で執事服を着た従者を連れている者は十中八九「貴族」か「大商人」である。そんな相手に絡めば、厄介な事になるのは目に見えている為、余程のバカか何かを企んででもいない限り、絡んで来る様な者などそうそう居ない筈だからだ。
 
 この職員の女性もそう思ったからこそわざわざ・・・・カウンターから出て出迎えに来たのだろう。
 しかし、「最高ギルド長に取り次いで欲しい」とのレイナルドの言葉に女性は怪訝そうな表情を一瞬だけ浮かべ、窺うようにして重ねて尋ねてきた。

「最高ギルド長は大変御予定が立て込んでおります。アポイントはお有りでしょうか?」
「はい。先日、当家の者よりお手紙をお届けさせて頂いた際に、最高ギルド長”セイレン”様より、「何時でも良い」とのご返事を頂いております。申し遅れました、わたくしはキサラギ辺境伯御令嬢、セイリア様専属執事のレイナルドと申します。セイレン様には、そう仰って頂ければ通じると思いますので、お伝え願えますでしょうか? 」
「へ、辺境伯様!? 失礼致しました!只今確認を取って参りますので、もうしばらくお待ち下さい 」

 一礼後、慌てて奥へと走り去る職員の女性。

「どうやらまだ新人の職員だったようですね?やれやれ、他の職員達も意地の悪い事をしますね 」

 まあ、爺さんと最高ギルド長の「セイレン」さんとやらが”旧知の仲”なら、レイナルド自身も、もう何度かはここを訪れているだろうし、こんな「イケメンダークエルフ執事」など、一度見たらそうそう忘れはしないだろうしな?
 いつも通り見回さないで見回せば・・・・・・・・・・、小さくクスクスと笑っている職員が何人もいるのが見えた。

 この世界は悪戯好きが多いんだろうかね? そんな事を考えていると、先ほどの職員の女性が慌てて戻って来た。

「お、お待たせして、も、申し訳ありま…せん。さ、最高…ギルド長が、お部屋で、お待ちしております…ので、ご、ご案内、致しま…致します 」

 余程慌てて戻って来たのか、荒い息を整えながら、最高ギルド長の返答を何とか報告する女性。

 あ~ぁ、せっかくセットしてあったであろう髪が崩れちゃってるよ…、かわいそうに……。

「ありがとうございます。それでは、セイリアお嬢様、ヒロト様、参りましょう 」

 最高ギルド長の執務室は、本部の最上階にあるようだ。職員の女性に案内され階段を上がり、毛足の長い絨毯のひかれた長い廊下を進んでいくと、重厚な造りに、精緻な彫刻で例の冒険者ギルドの紋章が施された大きな扉が現れた。

 ギルド職員の女性はそのままドアをノックして、中で待っているであろう人物へと声をかける。

「セイレン様、お客様をお連れ致しました 」
「分かった。入れ 」

 中から響いて来たのは予想していたものとは大きく違い、妙齢の女性らしき美しい声だった…………!?












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