〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第10章 英雄王の末裔達

第62話

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「なんだ…っ!? いったいどういう状況なんだ、コレは!?」

 レイナルドに連れられて行った執務室の中には、まるで予想もしていなかった、なんとも言えない光景が待っていたのだった……。




 セイリアと別れ魔術学院を後にした俺達は、この都市の中心にあるグランベルク城へとやって来た。
 遠くから見ても美しく大きな建築物だということは見て取れていたが、実際に間近に来てみるとその巨大さに圧倒される。しかも、ただ大きなだけでは無く、地球のローマにあるような歴史的建造物のように、精緻な彫刻や装飾が為されていて、非常に壮麗な美しい城である。
 
 工作機械も重機も無いこの世界で、よくもこれだけの巨大建造物を建てれたものだと感心するが、考えてみればこちらは魔法の存在するトンデモ世界、同じ様な文明レベルであるなら、逆に魔法等を使わず、知恵と技術だけでイタリアの「サン・ピエトロ大聖堂」やフランスの「モンサンミッシェル」などを建ててしまった中世地球人の方が、意外とすごいのかもしれない。

 跳ね橋を渡り、城の正門に辿り着くと、昨日のように手続きの為にレイナルドが馬車から降りて行き、昨日見た守衛の門番達よりも数段凝った意匠の鎧を着込んだ門番達へと、身分証と何やら書類らしきものを提示する。
 すると、さっきまでより更に姿勢を正した門番が、レイナルドに向かって敬礼を返している。どうやら問題無く城の中に入れるようだが、身分証を提示したのはレイナルドのみ、馬車の中に居る俺達は誰一人として身分を証明していない。
 おまけにレイナルドが”英雄”のひとりだと知っているらしく、やたらと興奮した感じで握手まで求めている始末だ。
 俺も嘗ては公安という治安維持組織に所属していたひとりとして、もし俺達がテロリストだったりしたらどうするのか?とか、”王様”という国のトップが居る政治の中枢部の警備担当者がアレでセキュリティは大丈夫なのか!? と色々問い詰めたくなってくるが、そこはそれ、まあ、面倒が無くていいか!と、ここは納得しておこう。

 ソニア達と共に馬車を降り、レイナルド先導の元、城内を進んで行く。
 こうしてみると、レイナルドが本当に”英雄”のひとりなんだと実感出来る。なぜなら、侍女や使用人ならともかく、いかにも”お偉いさん”らしき人達が執事服にも関わらず、レイナルドに対して必ず「貴人への礼」をしてからすれ違っていくのだ。
 反対に俺達には非常に胡散臭げな視線を向けていくのだが…。

 場違い感もあるんだろう、ソニア達は非常に居心地が悪そうにしているが、まあ、さっきの魔術学院での視線の嵐に比べたら、多少の奇異の目に晒されようと、どうと言う事もない。

 そのまま”勝手知ったる”という感じで進んで行くレイナルドの後をついて行く。暫くすると、また重厚な感じの扉が付いた部屋へと 案内されたのだが、部屋の扉が開いたままになっている。
 おまけに部屋の中からは、女性がを叱りつけているような声まで聞こえてくるんだが…?

「ここなのかレイナルド、”ある御方”とやらが居るのは?何だか取り込み中みたいなんだが……?」
「はい、この時間ですと、間違いなくこちらで執務中のはずですし、ですのでお気になさらず 」

 ニコニコと笑顔のまま、事も無げに言うレイナルド。いやいやいや、絶対おかしいだろ、コレ!? 最近、頓に感じるようになった「嫌な予感センサー」が、また警鐘を打ち鳴らしている気がしてならない。だってレイナルドがやたらとだし!片目瞑ってるしっ!?

 絶対に碌な事にならないのは、予感を通り越して最早している。思わず「回れ右」をして、このまま帰りたくて仕方ない。だが、”会わずに帰る”訳にはいかないし、レイナルドに促されるまま部屋の中に入れば、予想の斜め上どころか、垂直に突き破るくらいの光景が広がっていたのだった…。


「…………………………よし!帰ろう、レイナルド! 」

 部屋に入って見れば、厳つい男三人が並んで正座して縮こまり、その前に朱色ので肩をトントンさせながら、仁王立ちするドレスの女性がひとり。

 …………うん、訳がわからない…。

「いけませんよ、ヒロト様。そろそろなさって下さい 」
「いや、そうは言うけどさ、なんだよコレ!? 明らかにでの光景じゃ無いんだけど……!? 」
ですよ、今暫くお待ち下さい 」

 まったく”何処吹く風”のレイナルド。するとその時、正座している三人の中のひとりが、俺達に気付いて大声をあげた。

「あぁっ!?  テメェ、何しに来やがった!! 」

 ん?俺を知っているのか?俺の方にはまったく憶えはないが、三人の内、一番若い青年…いや、まだ少年か?
 服装からするに、どうやら魔術学院に通っているようだが、俺を知っているという事は、あの時間にはもう学院に居た事になるはずだが、授業はどうしたんだ? などと考えていたら、

 ーーボグンッ!! ーー

 ドレスの女性が、持っていた”木刀らしきモノ”で、その少年の頭を殴りつけたぁ!? しかも今の、人の頭からは音だったぞ!?

「アタシが話してる時に、良い度胸だな、アァン!?誰が動いていいっつった!シメんぞゴラっ!」
「……レイラ様、お客様をお連れしましたので、そろそろよろしいですか?」

「…っ!? あ、あらっ!レイおじ様!? これはお見苦しい所を……っ!? 」
「おぉっ!? レイの叔父貴!待ってたぜ!! 」

 レイナルドが声をかけた途端、恐縮する女性と、”渡りに船”とばかりに喜色満面の正座をしていた壮年の男性。もうひとりの青年は、なぜか俺の方を不機嫌そうに睨んでいる。

 あとひとり、皆んな平気な顔でスルーしているが、床でビクン!ビクン!と危険な感じで痙攣してるけど大丈夫なのか!?

「陛下、先代様の書状にて事のは既に御存知かと思いますが、王都への帰還の御挨拶も含めて、改めて御報告に上がりました。そして、こちらが陛下がのヒロト・クーガ様です 」
「おお!良く来てくれたな!俺が国王のジオンだ。歓迎するぜ、ヒロト!」
「まあ…!? では、この方が【龍蟲殺し】!? 申し遅れました、妃のレイラです。宜しくお願い致しますね 」

 床で痙攣する少年をきれいにスルーして何事も無かったかのように会話を始める一同。…ってか、やっぱりこの髭のおっさんが「国王」で、いまだ木刀を握りしめてるのが「王妃」様と…。というと、残り二人は王子様ってトコか?

 国王と王子様は正座したままだし、王妃様はお上品に取り繕っているけど、相変わらず木刀持ったままだし……、はぁ…、相変わらず、何て”ブレない”残念設定、また面倒くさい相手なんだろうなぁ……。

「お初にお目にかかり、光栄に存じます。「ヒロト・クーガ」と申します。宜しくお願い致します 」

 それでも、この人達は「現国王」と「王妃」、この国における最高権力者だ。向こうが如何であろうと、俺も今では一応爺さんの身内扱い、礼を失してはいけないだろう。

「よし、ンじゃあ、とりあえず叔父貴のから聞くか。……レイラ、いいか?」
「……仕方ありませんね、特別ですよ? 次の時は…分かってますよね?」
「わ、分かった!気をつける!」

 さすがに国王をはマズイと思ったのか、説教を終了させるレイラ王妃。
 しかし、最後の”恐い笑顔”の念押しに、またもや ビクッ!っとなる国王陛下。実に力関係のよく分かる構図だな?

 
 改めて、執務室内の応接用のソファーへと移動すると、タイミング良く侍女さんが俺達の前へと紅茶のカップを並べていく。
 ちなみにソファーに座っているのは、ジオン国王、レイラ王妃、茶髪の王子様、そして俺だ。ソニア達は一応は俺の従者扱い、レイナルドはあくまで執事ポジションを貫くらしく、揃って俺が座るソファーの後ろに立ったままだ。ただ、ソニア達【蒼い疾風ブルー ソニック】はガチガチに表情を強張らせて、対してレイナルドはいつもの柔らかい笑顔で、だが。

「さて、仕切り直しだな?レイの叔父貴、報告を聞かせてくれ 」
「はい、陛下。過日、我々は……… 」

 レイナルドは、俺達が出逢う事になった『セイリア拉致未遂事件』から、里内から出た裏切り者が逃走の際に使用した《邪釣餌イビルベイト》による秀真の國への魔獣の「大襲来」そして予想外であった巨獣【黒殻龍蟲ドラゴ ブラックビートル】の急襲について、順を追って報告していった。
 レイナルドが報告を終えた時、室内には途轍も無い程の魔力波動が渦巻いていた。その感情の色は”怒り”。
 その余りの凄まじさに、後ろで立つソニア達が身を竦ませ、真っ青になっているのが分かる。しかも、怖いのだ、顔が、眼が。王族全員の。

 最初こそフレンドリーでにこやかな表情をしていたものの、レイナルドからの一連の報告を聞いている内にその表情は一変、視線だけで魔獣を射殺せる程に険しく、鋭くなっていった。

「武神の叔父貴の手紙は読んじゃあいたが…、聞けば聞くほどになるな……」
「セイリアの事だけでものに、《邪釣餌》までなんてねぇ? 随分舐めたマネしてくれるじゃないか…!? 」
「おい、親父。俺ァこんな話し初めて聞いたぞ?どういう事だ!? セイリアを拉致るとかよぉ!! 」
「セイリアを拉致だとぉっ!? 」

 あっ!? もう一人が復活した!? 実は痙攣が止んで、急にピクリともしなくなっていたので、内心心配していたのだが、大丈夫だったようだ。

「どういう事だよ、親父!俺らは聞いてねぇぞ、そんな事っ!? 」
「落ち着け、そんな風だから黙ってたんだよ、聞いたらお前らはどうした?」
「決まってンだろうが!ブッ殺すっ!! 逆に、何をチンタラしてやがんだ親父よぉ!こんだけコケにされて、腹が立たねぇのかよ!!」

 激しく国王へと詰め寄る王子達。しかし、ジオン国王は更に怒りの魔力波動を高めて王子達を睨みつけた。

「おう、コラ。ふざけてんじゃねぇぞ? 人がブチ切れそうになってるのを堪えてンのに、勝手ほざいてんじゃねぇぞ? 」

 怒鳴っている訳では無い。だが、だからこそ腹の底から怒り狂っている国王の本気の魔力波動に、王子達二人は息を呑み、後退る。

「ヒギンズはな、クソガキだけじゃねぇ、親父の方も「違法奴隷」の闇ブローカーと連んでる疑いがあんだよ。今、ウチと叔父貴のトコの【影疾かげばしり】で一網打尽にしてやる為に動いてんだ。テメェ等ガキの感情だけで勝手される訳にゃいかねぇんだ、分かるか?分かったら黙ってろ!! 」
「…………っ!? 」

 ギリッっと悔しげに歯を鳴らして黙り込む王子達二人。今の話を聞くに、たかが子爵のバカ息子がどうやってあんな裏稼業の傭兵達に伝手があったのかと思えば、どうやらその親父である子爵の繋がりのようだ。どうも親子二代で腐っているらしい。

「まあ…、我慢したお陰で充分裏は取れたがな? 張り付かせてるヤツからの報告によれば、クソガキと裏切り者はヒギンズの自領にバックレて逃げ込んでやがる。…今夜、俺ァ部隊を動かしてヒギンズの屋敷を急襲する。叔父貴等には探り出してもらった傭兵崩れ共の残党や、奴隷商人共のアジトの方を頼みたい。それでいいか?」
「ありがとうございます。はい、問題ありません。いくら腐っていようと貴族は貴族。正式な手順を踏んだ上で陛下に動いて頂くのが筋でございましょう。その他の連中のアジトは、【影疾】が既に固めておりますので、後は陛下の御命令を待つばかりになっております 」
「頼んだぜ叔父貴。クククッ…!長かったぜぇ……、見てろよあのクソボケ共、生まれてきた事を死ぬほど後悔させてやンぜ!! それにしても…、ヒロトが通りがかったのは、マジで僥倖だったみてえだな?ありがとうよ、俺からも改めて礼を言うぜ 」
「本当に……。ヒロト殿がいなければ、今頃セイリアがどうなっていたか…!? 想像しただけで反吐が出ます!ありがとう、ヒロト殿 。心から感謝しますわ」
「いえ、運が良かっただけです 」

「謙遜しなくていいぜ?そこのガキ共はともかく、お前の実力がトンデモねぇのは、こうしてるだけでも良く分かるしな?」
「本当に……。ジェイのおじ様がセイリアの許婚に選んだのが良く分かりますね 」

「「セイリアの許婚だとぉっ!? 」」

 気の弱い者なら、それだけで気を失いそうな程の獰猛な笑顔を浮かべ、魔力波動を渦巻かせていた国王夫妻。愚か者達の急襲についての話から一転、突然俺に対して話の水を向けてきたのだが、レイラ王妃の「セイリアの許婚」発言に、王子達二人が驚愕の叫びを上げる。

「どっ、ど、どういう事だよお袋!? そんな話聞いてねぇぞ!? 」

「…あン?お袋…?」

「申し訳ありません!お母様!! 」

 再びギロリとした視線を向けられて、即座に詫びを入れる王子達。さっきから”ヤンキー漫才”かコントのようで、ちっとも話が進まない……。

「どうしたもこうしたも、”そう言う事”だよ。武神の叔父貴が、このヒロトをセイリアの許婚に選んだ。それだけの話だ。別にお前らに話さなきゃならねぇ訳でもねぇだろうが?」
「……っ!? ……あ、ある!訳ならあるぞ! 」
「はぁ…!? 何だそりゃ?どういう訳だか言ってみろ?」

「く…っ!? そ、それは…、そう、俺たちがセイリアの『お兄ちゃん』だからだーーっ!!!! 」


「「……………………………………プッ!? ぎゃはははははははははははははははははははははははは~~っ!?!?!?  」」

 ーー 国王夫妻、大爆笑。ーー

「わっ、笑わなくたっていいだろうが! 」
「ククッ!そ、そう言えば、お前ら、セイリアと初めて会ったガキの頃に、”決闘”とかしてやがったな?…ぶはっ! 」
「そうだったね?…うぷぷ!『どっちがセイリアをにするか?』ってね!………ぷすーーっ!」
「そうそう!んで、その後で”王族はエルフ族等、長命種との婚姻は禁止”って聞いた時の顏っていったら!」

 酷でぇ……。王子様二人の”黒歴史”を容赦なく笑い倒す国王夫妻。うわぁ……、二人共、真っ赤になってプルプルしてるよ…。何だかもう、涙目になってるし………!?

「なあ、レイナルド。”王族はエルフ族等、長命種との婚姻禁止”って、何でダメなんだ?」
「嘗てのジーク王が定めた王家のしきたりのひとつなのですが、『政治には常に”新しい風”を入れなければならない。国のトップがいつまでも同じままでは政治にが出て、組織が硬化する元になる』と言って、一人の国王の在位期間を長くさせない為の処置なのですよ」

 なるほどな、人には必ず得手不得手も向き不向きもある。エルフ族等の長命種の血が混ざれば、何百年も在位期間が長くなったりして、不得意な分野が長期間お座なりになってしまう危険性も出て来る。
 ”秀真の國”など、元々がエルフ族のコミュニティならば問題無いだろうが、国の大多数を占めるのはヒト族だ。普通であれば一代の国王の統治は約三十年前後だろう。そんな中で一人の王様が長く居座ることは、無用の弊害を国家にもたらす事になりかねない為に、予めそんなしきたりを残したんだろうな?

「う、う、う、ウルせぇ、ウルせぇ!! 俺達のことはいいんだよ!認めねぇ!俺達ァ認めねぇぞ、こんな奴がセイリアの許婚なんてヨォ!」

 あまりの羞恥プレイに、とうとう耐え切れなくなったのか、顏を真っ赤にしたまま王子が叫ぶ。

「ぷっ!ククク…、「認めねぇ」って、どうするつもりだ?オメェ等が何を言っても武神の叔父貴が決定した事なんだぜ?」
「俺達と勝負しろ!テメェみたいな奴にセイリアは任せちゃおけねえ!!  」
「ああ、そうだ!俺達が買ったらテメェから婚約破棄しやがれ!なら、武神の爺ちゃんも文句ねぇだろう!! 」

 俺に向かって ズビシッっと指を指して、一方的に勝負と要求を突き付けてくる王子様達。さっきの話から察するに、”お兄ちゃん”と言いながら、本当はセイリアの事が好きなんだろうとは思うが、さて、どうしたもんかな?

「正気か、お前等?こいつはひとりで万を越す〈ランクA~B〉の魔獣を殲滅して、そのまま伝説の巨獣を仕留めた男だぞ?」
「ンなもん、フカシに決まってンじゃねーか!爺ちゃんのいつもの悪ふざけだろ!」
「……ダメだ、ジオン。コイツ等マジで言ってるよ…… 」

 王子達の主張に、大笑いから一転して渋い顔になる国王夫妻。まあ、どちらの気持ちも分かる。
 別に勝負を受けるのはいいんだが、問題はやるか?なんだよなぁ…、仮にも王子様なんだし。とてもそうは見えないが…。

 そんな風に悩んでいると、意外にも口を開いたのはレイナルドだった。


「分かりました。ザイン様、ゼルド様。その条件で勝負をお受け致しましょう。……ですが、こちらからも条件があります。それでよろしければ、勝負をお受けして構いません 」


 レイナルドが提案した条件とは、皆を驚かせるモノだった……………。






 ………俺”以外が”だが…………………。
 
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