〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第14章 冒険者な日々 1

第86話

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「お前等、ゲンノの昔ばなしを聞いてどう思った?」

 カーフを飲みながら、ソニア達へと質問してみる。

「はいはーーい! お父さんの病気も治って、ゲンノが幸せになって良かったと思いました!」
「鉈一本で竜に立ち向かうなんて、スゲー勇気があるよな!」

 マーニャ、ゴウナムだ。うん、小学生の国語の感想じゃ無いんだからな?

「そこじゃ無い。ゲンノが泉で竜と出逢った場面だ 」
「竜に認められて、お酒をもらえた場面ですよね、ヒロト兄さん 」
「そうだ、アーニャ。ゲンノはどうして竜に認められたんだ?」
「それは…、竜にお父さんのことを………? 話してっ!? 」

 に気付いて絶句するアーニャ。次第に悪くなっていく顔色を見て、ソニアが慌ててアーニャへと尋ねる。

「ど、どうしたんだい、アーニャ!? 顔が真っ青だよ!? 」
「ソニア姉さん、竜はゲンノとのよ?」
「ああ、そうだね?ん…それが何か…って、!? 」

 アーニャが気付いたものにやっと思い至ったのか、ソニアの顔もだんだんと青くなっていく。

「なんだ姉貴?竜と話をするのが何か問題なのか?良い竜じゃねえか 」
「そーそー!お酒だけじゃなくて、鱗までくれるなんて気前がいいよね!」

 相変わらず小学生思考のゴウナムとマーニャ。こいつ等自分で言ってるくせに、まだ気付いてないな?
 二人のどこまでも”お気楽”発言に、ゴンッ!とゴウナムの頭にソニアが拳骨を落とす。

「痛いってえぇぇぇぇっ!何すんだよ姉貴!! 」
「こぉの、お馬鹿!まだ気付いてないのかい!?」
「だから何がだよ!」

 はぁ……まだ気付いてないのか、ゴウナムとマーニャは。仕方ない、教えてやるか。

「ゴウナム、マーニャ、伝説の竜はゲンノと会話してるよな?俺は【プテラゴン】とかの下位竜に出会でくわした事はあるんだが、”竜種”ってのはのか?」

「「あ…………っ!? 」」

「やっと気付いたか。勿論これは伝説、お伽話だ。話が脚色されてるかもしれん…が、もしゲンノの話の竜が”スイ竜”だとしたら、その正体は……?」
「〈上位竜〉………!? 」
「ああ、その可能性は高い。だが、そうなるとレベルも装備も、今のお前等では全く相手にもならんだろう。俺は………何とも言えないかな?」

 俺は…どうなんだろうな? まあ、やってみなけりゃ分からんか。

「それにな、”毒の霧”とやらもどうなんだろうなぁ、ってな?」

 アイテムボックスからを取り出して、暫し手の上で弄んでから、おもむろに皮を剥く。

「ヒロト兄ィ、それ、あのでしょ? いくら毒が効かなくても、食べない方がいいよ?お腹壊しちゃうよ?」

 心配そうにこちらを見ているマーニャにニヤリと笑い、剥ぎ取った手の中のグレプルの一房を、俺は無造作に口の中へと放り込んだ………。



 ー 翌朝 ーー 

 まだ、朝の早い村の農家すら目覚めていない早朝、薄っすらと空が白み始めた頃に、俺達は装備を整えて家を出た。
 村長から聞いたくだんの泉の場所は、ここからそんなには離れていないが、ともすれば相手は〈上位竜〉だ。”毒の霧”等、分からない事だらけであるため、周辺調査を念入りに行ってから行動に移る為に、出来るだけ早く動く事にしたのだ。
 
 ちなみにライナとサイノは、一五〇センチほどの高さで細めの〈岩槍壁ロックランスウォール〉に囲まれた簡易の牧場に放してある。
 馬車に繋ぎっぱなしにはしておけないし、仮に手綱を結んで置くだけでも賢い二匹が暴れたりはしないだろうが、今のこの村の冒険者に対する意識はあまり良くはないので、腹癒せにでも二匹に悪戯されないように、ベリヌ村長に許可を取って、宿となった家の横に魔法で仮の牧場を作って放しておいたのだ。
 ライナとサイノに新しい餌と水を出してやり、甘えて頭を擦り付けて来る二匹の頭を暫く撫でてやってから、一夜の宿だった家を後にする。

『アイ、逐次大気中の成分の分析を頼む。俺のそれほど問題は無いと思うが、何しろ魔法がある世界だ。俺達の常識の化学反応なんて事もあるかもしれないからな?』
『イエス、マイマスター、お任せ下さい! ”スキャン”と、マスターの呼気に含まれる成分を常時モニターしていきますので、何か異常があれば直ぐにお知らせします 』
『ああ、頼んだぜアイ 』

 まだ村人も起きていない早朝だけあって、村を守る防壁の門は閉じたままだったが、この付近には元々強力な魔獣がいない為か、防壁の高さは約二メートルほどしか無い。俺は勿論、獣人族であるソニア達なら全く問題無い。一気に乗り越えて村の外へと出る。

「ヒロト兄さん、勝手に出て来てしまいましたが大丈夫でしょうか?」
「だよな、昨日の村の連中の様子から見て、”逃げた”なんて思われたら癪だよな」
「大丈夫だろ?馬車は残したまんまだし、一応、家の扉にの旨の貼り紙はしてきたしな」

 ヨウロウ村の防壁を乗り越えて、”毒の霧”の広がる方向の森の中へと分け入る。
 普通、魔獣達は夜行性の物が多いため、夜間門を閉じた街や村のすぐ側まで出没したりするんだが、強い魔獣がいない、どころか、比較的弱い魔獣や獣ですら俺の〈気配察知〉やアイの〈索敵サーチ〉にも反応が無い。恐らくだが、皆”スイ竜”の気配に怖気付いて逃げてしまったんだろう。
 まだ暗い森の中だというのに、特に魔獣等からの襲撃を受ける事も無く、一時間も経たない内に”毒の霧”の広がる地点まで辿り着いてしまった。

「これが”毒の霧”か………!? 」

 段々と明るくなって来た森の中に、突如としてある地点からその向こうを隠すように、濃密な霧が立ち塞がっていた。いや…?実際にんだろう。つまりこれは……、

「〈結界〉だな 」
『〈結界〉ですね 』

 目の前の、真っ白いカーテンどころか、壁の様にすら見える霧から、強い魔力波動を感じる。だが、この匂いは…?
 アイに霧の成分チェックを頼もうと考えていたその時、突然強い風が吹き、風に押された霧に一瞬で周りを取り囲まれてしまった!?

「しまった!? ソニア!皆んな!大丈夫か!? 」

 クソッ!油断した!? 俺とした事が、早朝の山特有の、麓へと流れる風の事を忘れていた!慌てて振り向き、ソニア達の無事を確認すると…?

「らいじょうぶ~らよ、兄貴ぃ~~!」
「わははははははー!朝から良~い気分らなー!」
「あれれ~~?ヒロト兄しゃんが三人もいましゅうぅぅぅぅ!?」
「キャハハハハハハハハハハハッ! 」

 後ろを振り向いたそこには、真っ赤な顔をして座り込み、やたらご機嫌な様子の四人が居た。何と無くだが、危険度は低いと思っていた。思っていたが、やはりこれは……。

『アイ、”毒の霧”の成分分析は?』
『終了しています。マスターの予想通り、およそその成分の九〇%が、魔力をふんだんに含んだ純度の高いですね~ 』
『やっぱりか、じゃああの四人は 』
『状態異常名〈酔っぱらい〉ですね~!クスクスッ!』

 はあ………、一瞬焦って損した気分だ。
 おかしいな?とは思っていたんだ。昨日村長から許可を取って”毒の霧”に侵されてしまったという赤いグレプルを採取した時に、その成分をチェックしようとアイにスキャンしてもらってみれば、結果は”毒”など一切検出されなかったからだ。
 マーニャが”食べない方がいい”と、止めていたにも関わらず、敢えて食べてしまったのも、予め害は無いと分かっていたのと、経口摂取によって、より詳しく成分をチェックする為だった。

『さて、このままじゃマズいし、取り敢えずソニア達の状態異常を回復………うっ!?』
『マスター! 強力な魔力波動を伴う敵性反応が高速で接近中!……来ますっ!! 』

 ヤバい、ヤバい!ヤバいっ!? まさか近付いて来るなんてっ!? 予想外もいいところだぞ!?

 ーーGYUOAAAAAAAAAAAN!! ーー

 霧を吹き飛ばし、突如として目の前に、強烈な魔力波動を漲らせたが、蝙蝠によく似た形の大きな翼をバサリと大きく羽ばたかせ、全てを吹き飛ばす勢いで、凄まじい咆哮を上げる。

『くっ!? アイ!ソニア達の周りに《風・土属性魔法》で防壁と結界!あと、直ぐに脱出出来る様に《状態異常回復コンディショングリーン》!!』
『イエス、マイマスター!! 』

 アイに指示を出しながら、自分自身も慌てて【玖珂流魔闘術・奥義】を発動し、魔力を身に纏い、意識を塗り替えていく。

「我が〈結界〉に無断で足を踏み入れた無作法者は貴様等か!全く次から次へと………、朝焼けを肴に気分良く飲んでいたものを、よくも台無しにしてくれたなぁっ!! 」

 その大きな口の牙の間から、”霧のブレス”を揺蕩せて、”スイ竜”が忌々しげに俺を睨みつけてくる。いかんな…今日は大分の様だ。

「非礼は詫びる!アンタが”スイ竜”か!?」
「ほう……? 我が咆哮を受けて、全く動じんどころか問いを返すとは、なかなかの胆力だ!貴様の度胸に免じ名乗ってやろう! そうとも!我が名は『ヴォトカ』!数多在る竜族の中で、最も美しく、誇りある我等が盟主【蒼麟水竜王】様が属にして、〈上位竜〉の末席に名を連ねたる我こそは、【狂酔碧麟】『酔竜ドランクドラゴンのヴォトカ』よ!非力なる小さき者よ、見知り置け!! あーっはっはっはっはぁっ!! 」

 ーーやっぱりかっ!? 

 大仰な名乗りを上げて見得を切る”酔竜ヴォトカ”を見上げながら、内心で舌打ちをする。
 こいつは、想定していた最も不味い相手〈上位竜〉だ。
 人語を解し、人間以上の知能を有する。通常の魔法に加え、強力無比なる《竜魔法ドラゴン ロア》という竜族特有の特殊魔法まで使い熟す。
 その上、身体能力もブレス攻撃も〈中位竜〉までとは段違いの威力を誇る隔絶した存在。

 ノアに聞いた話では、〈最上位竜〉ともなれば、神の力の地上における代行者たる各属性の最上級精霊【大精霊】とほぼ同等の力を持っているらしい。そこまでは行かずとも、〈上位竜〉もノア達〈上級精霊〉と同レベルの力を有している、と言う説明だった。
 
 それほどまでに強力な相手が…だ、よりにもよって………、

「あーっはっはっはぁ!しかも、我の《狂酔式夢幻酔結界》に囚われたにも関わらず、まるで平然としておるではないか!さてはぁ、貴様、結構だなっ!? だぁーっはっはっはぁ! 」

『完璧にるな……… 』
『完全にですね……… 』

 ただの酔っ払いでも充分に厄介だというのに、その酔っ払いが〈上位竜〉…よりにもよって〈上位竜〉…。これ何の罰ゲーム?ってな状態だ。
 さっきまで不機嫌だったはずのヴォトカは、大見得を切って名乗りを上げた事で気分が良くなったのか、今は上機嫌で大笑いだ。

「どーだ、この翡翠の如き我が碧麟は!短命なヒト族でありながら、美しき我が碧麟を拝めるとは、お前は運が良いぞ!だぁーーはっはっはっ!………ぶわっはぁっ!! 」

 ーー”霧のブレス”…っ!?  

 ではない。ただの吐息、ただし、想像してみてくれ?目の前の巨大な竜の口から吐かれためちゃくちゃ吐息が、自分目掛けて吹き付けてくる様を………っ!?

『アイ、もしかしなくても先に退却した冒険者達の報告にあったブレスって………? 』
『ええ、たぶん間違い無く”超酒臭い息これ”でしょう………。ただし、高濃度の魔素とアルコールを含んでますので……… 』
『つまりアレか?冒険者達の状態異常や大爆発ってのは……? 』
『……はい。極度のと、場に充満したアルコールに引火した所為でしょう 』

『……んな、な!なんじゃそりゃあ~~~~~~っ!? 』

 経験ある人もいるだろう、こちらはシラフだというのに、異常にテンションの高い酔っ払いに無理矢理付き合わされて相手をする時の、あの面倒臭ささをっ!? 
 この時、強敵とは分かっていても、”愛読書”などで憧れた本当の意味での”竜”という存在との初めての邂逅を、この酔っ払いに色々とぶち壊しにされた気分だった俺のイライラは、遂に限界を突破してしまった。

『アイ!《風属性》で霧の結界を吹き飛ばせっ!あとあのバカ竜を《状態異常回復コンディショングリーン》で正気に戻せっ!』
『イ、イエス、マイマスター…っ!? 』

 クックックッ! 見ぃ~てぇ~ろ~よ~、このアホうめが! 酒の飲み方も知らないマナーの悪い酔っ払いは、この俺がと!躾けてやるぜえぇぇぇぇぇぇっ!!



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