〜転移サイボーグの異世界冒険譚〜(旧題 機械仕掛けの異世界漫遊記) VSファンタジー!

五輪茂

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第17章 強制レベルアップ祭り in 魔の森

第121話

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「よぉーし、全員集合だ! 少し早いが今夜はここで野営を張る。各分隊準備に入れ!」

『『『『『…イ、イエス、サーー!』』』』』
 
 
 早朝、デイジマの村を出発してほぼ丸一日、鬱蒼とした森を抜けて、いきなり開けた場所へと辿り着いた処で、俺はそう騎士団に対して指示を出す。騎士団の面々は”疲労困憊”といった様子ではあるが、俺の通りに返事を返して来る。

 ま、疲れた様子も無理は無いだろう。今日は朝からいよいよ『ダークエルフの森』へと分け入った。
 さすがに走ってはいないものの、見通しの効かない森の中、しかも初めての森だ。【宮殿近衛騎士団テンプルナイツ】の連中の多くは今までこうした森の中での演習の経験はあまり無かったらしく、出発前の俺の言葉を真に受けて、必要以上に周囲を警戒していた。

 〈全身鎧フルプレートアーマー〉の重装備に加えて、全身の各所に重りウェイトを取り付けられた状態。それでいて”いつそこの繁みから魔獣が飛び出して来るか分からない”という極度の緊張状態が長時間続いたのだ。警戒する事自体は悪い事ではないが、必要以上の緊張は精神的にも肉体的にも少なくない負担をかけてしまう。その所為で余計に疲労度が増してしまったんだろう。

 実際は俺の〈気配察知〉やアイの〈索敵サーチ〉がある為、そこまでビクビクする必要は無い。レベルが上がった事で、【プテラゴン】を倒した後よりも、更に軽く十倍程度は探れる範囲が広がったのだ。

 だが、騎士団は〈気配察知〉等の”探索系”の能力は高くないらしい。
 そもそも騎士とは”戦闘職”、戦うのがお仕事だ。

 この世界イオニディアはゲームの様に職業ジョブが存在し、それに沿った能力に特化して行く。〈気配察知〉や〈索敵〉等が得意なのは所謂”盗賊シーフ”系の職業なのだ。ダンジョンなどで先行し、罠の位置を発見したり強敵を事前に回避したりと大活躍するという。ダンジョンの探索ではこの盗賊……何だか普通の”盗賊団”と混同してややこしいな!? 以下”シーフ”と呼ぼう。シーフが居るかいないかで全然成果が違って来るらしい。
 他にも森の中で獲物を獲る”猟師ハンター”という職業が得意らしいが…………。

 当たり前だよな? 斥候や偵察はとても重要だ。こうした見通しの効かない場所では特にだろう。
 もし繁みの向こうに巧妙に擬装した伏兵が潜んでいたら? 〈指向性対人地雷クレイモア〉の様なトラップが仕掛けてあったら? この世界にはまだ”火薬”は存在していなかった。しかし、魔法や魔道具は存在している。実際ダンジョンには《爆発》系のトラップが存在するらしいし、地雷によく似た効果を発揮する魔道具だってあるかもしれない。
 それ以前に、ドラゴン程の超絶的な威力は無くても、炎や氷のブレスを吐いたり、魔法を使って来る魔獣がいるんだ、例え周辺警戒を密にしていようと、偵察もしないまま一塊りになって行動するなど、全滅させて下さいと言っているようなもんだ。

 よって、今回は感覚に優れ、もともと森の中を生活の場としていた【蒼豹族】であるソニア達を一人ずつ補助に付け、各分隊毎で偵察部隊を編成し交代で偵察任務を課した。

 聞けば、これまでは偵察は偵察、直接の戦闘部隊は戦闘部隊と、完全に分けられて運用されていたそうだ。
 それでは急を要した作戦行動などでは絶対に足が遅くなる。今後は、こうした作戦行動の際には、騎士や魔法使い等の戦闘部隊だけでなく、シーフやハンターを中心とした”偵察部隊”を必ず随行させ、偵察と進軍がワンセットで行える様に陛下に進言しておこう。

 それはさておき ーーーー 、

 疲労を顔に滲ませながらも、周辺警戒と設営に別れて野営の準備を始める騎士団。だが、そこに俺すら思ってもいなかったが訪れたのだった。

「何じゃヒロト、こんな場所で野営なんぞ始めよって。”里”には入らぬのか? 」

 突如として野営地のど真ん中に現れた(ように見えた)”来客”に、困惑し、アワアワと焦る騎士団員達。

「な、何だっ、あのはっ! いきなり現れたぞ!? 」
「警戒班はどこを見ていたんだ!」
「て、敵襲っ!……なの…か? 」

 そんな騎士団の様子など一顧だにせず、悠々と歩いて来た”来客の少年”は、俺の前まで来てニヤリと笑う。

「き、貴様等、頭が高い、控えろ! 控えんかっ!! その御方は……っ!? 」

 突然の侵入者に騒つく騎士達に対して、来客の正体を知る騎士団長が、場を収めようと必死になって騎士達に声をかけて回る。

 もうお判りだろう、”来客”とは【黒き武神】こと先代辺境伯……と言うのは表の顔で、その実”永遠の悪戯小僧”、『ジェイーネ・ラル・キサラギ』その人だった。
 そして森の中で開けたこの場所は、爺さんの言葉からも察しられたかもしれないが、巧妙に結界で隠され目視する事は出来ないが、ダークエルフの隠れ里『秀真の國』の南側、【朱門】の前に広がる場所だったりする。

 ただし、その面積は二ヶ月程前に初めて俺が訪れた時の十倍程に広がっている。理由は言うまでも無いだろうが、〈大襲来〉の時の南側の戦場になったからだ。あの時はとにかく防衛戦、全周囲から攻め込まれる事が一番不味い事だった為、《岩槍壁ロックランスウォール》で魔獣達の群れを分断、誘導して南側の【朱門】と北側の【黒門】前に集める他は無かったのだが、その時の《広域破壊魔法》などの上級魔法の雨あられで、一夜が明けてみれば一面が焼け野原になっていた。
 だが、ここいら一帯は『秀真の國』の中に在る【精霊樹】の影響か、大地や緑の精霊の力が強いのだろう、もう既に焼け焦げた地面が見える場所は何処にも無く、一面には植物が生い茂っていた。

 ちなみに『秀真の國』の中に入らず野営を張ったのは、”隠れ里”にいきなり面識の無い大人数を入れる訳にはいかなかったから……と、ただ単に騎士団に楽をさせるつもりが無かったからだ。

「こっちこそ「何だ?」だよ、。わざわざ”出迎え”に来てくれたのか?」
「まあの?ゼルも来ておると言うし、”臣下”としては一応出迎えねばならぬじゃろ? ふははははははははっ!」

 いつもと同じように呵々大笑と笑う爺さんだったが、突然現れた何故か”爺い言葉”の見目麗しい謎の美少年の正体が、かつて祖国を救った大英雄だと知った騎士達は、大慌てで一斉に片膝を付いて貴人への礼の姿勢を取る。

「大変御無沙汰致しております【黒き武神】様、【宮殿近衛騎士団】団長バレルに御座います。先程は部下達が大変な失礼を ………… 」
「ああ、良いよい、今はただの隠居爺いじゃ、それに無駄に警戒させてしまったのは儂の方じゃ、詫びならば逆に儂の方がお主等にせねばならぬくらいじゃ、すまんかったの 」
「い、いえ、その様なことは……っ!? 」

 面識が無かった為とはいえ、英雄にして上級貴族に対して礼を失した騎士団員達の無礼な態度を詫びるバレル騎士団長へ、逆に爺さんの方から詫びを返すと、バレル騎士団長はタラタラと冷や汗を流しながら凄まじく恐縮した様子である。

 でもな~、これは仕方ないだろう。
 この世界にはまだビデオや写真の様な物は普及しておらず、それに類する魔道具も在るにはあるが非常に高価で一般庶民に手が届く物じゃない。
 するとどうなるか? お伽話で聞いたり、物語の本(※爺さん達は庶民の間でも英雄ヒーローなので、各英雄関連書籍は数百冊存在する!)で読んだり、吟遊詩人の弾き語りなどで歌われる英雄の姿が、各々の理想に沿った形で心の中で形作られて行く。

 おかげで近年出版された本の挿絵を見ると、ダークエルフである事は広く知られている為美形である事は変わらないが、長身で引き締まった体躯は逞しく、外見はの英雄として描かれているそうな。また、王都の劇場などの演目でも大人気シリーズではあるが、演じる俳優はやはり美形で長身の成人男性ばかり。

 爺さん達が〈大戦乱〉で活躍した話はもう六百年も昔の話、爺さんにしてみれば昔話かもしれないが、エルフ族に比べれば短い寿命しか持たない人間種にとっては、普通に”お伽話”のレベルだ。おまけに騎士団なんて物に所属している奴等だ、きっと子供の頃から英雄に憧れて、繰り返し【黒き武神】の英雄譚を聞いて育って来た者ばかりの筈だ。

 きっと彼等の中ではそうした情報を元に構築された、”いかにも”な姿をした英雄【黒き武神】を各自が思い描いていただろう。それが実際に本物に会ってみれば、全く正反対の小柄な線の細い美少年。この大陸で成人と認められる十六歳にも達していない様なその容貌では、とてもではないが初見で爺さんと【黒き武神】を繋げて考えれる者などなかなか居はしないだろう。

「そのように畏まられては儂も心苦しいのでな、皆立って楽にしてくれぬか? ほれ、野営の準備もあるのであろう?」
「本人がこう言ってるんだ、さっさと準備に戻れ。それとも……、野営はやめて”徹夜行軍”でもするか?」

『『『『『…ノっ!? ノー、サァーーーーーーーーーッッ!! 野営準備に戻りますっ!!!! 』』』』』

 ニヤリと嗤ってそう言ってやると、全員が真っ青になって立ち上がり、そう復唱すると大慌てで持ち場へと散り散りに駆け戻って行った。

「ヒロト……、今のは流石に非道くないか……?」
「いーんだよ、今の俺は”鬼教官”だからな。……ゼルド!お前はちょっとこっちに来い!」

 野営の為の天幕テントを設置する班に居たゼルドが、周りの騎士達に頭を下げて断りを入れてから、急いでこちらに走って来た。

「イエス、サー! お呼びですか教官!」

 俺達の前で止まり、キチンと踵を揃え、略式の敬礼をして答えるゼルド。その姿を見た爺さんは……。

「………………ヒロトよ、さっきから気になっておったんじゃが、お主はどんだけ厳しく訓練させておるんじゃ? ゼルドがこれ程とは、儂ゃ少々心配になって来たんじゃが……?」
「ん?それ程でもないぞ?ちょっとばかりエリート意識で高々としていた鼻っ柱をヘシ折って、自分達の持ってる技術も自信も何の役にも立たないと、身も心も追い込んでやってるだけさ、まだまだだけどな~? 」
「それのどこが”序の口”じゃっ!? 連中今までの人生を全否定されておるではないかっ!? 」
「ああ、い~~い感じに”目が死んで”来たな!うん、予定通りだ!」
「大丈夫か!? 本っ当~に!大丈夫かっ!? 」
「はっはっは!心配すんな爺さん、ドン底から這い上がってこその人生だ 」
「いや、今は人生哲学の話なんぞしておらんじゃろうが!? 大丈夫かジオン、此奴こやつに任して!? 」
「大丈~夫っ!泥舟に乗ったつもりで任せろっ!」
「それ絶対沈むじゃろうっ!? 」

 おお!? 珍しい、ボケとツッコミの攻守交代。いつもは悪戯を仕掛ける側の爺さんがあまりに焦るのが面白くて、ついついボケ倒しちまったぜ。

「……あの、教官?」
「ああっ!? すまんゼルド、忘れてたわ。爺さんに挨拶しとけ、久し振りなんだろ?」

 漫才を始めてしまった俺と爺さんに、呼ばれて来たはいいが放置されっ放しになっていたゼルドが遠慮気味に声をかけて来た。すまんなゼルド、だって爺さんの反応があまりにも激レアだったんでな。

「久し振りじゃな、ゼルド。息災で何より……と言いたい所じゃが……、自ら望んだ事とはいえ、大変なコトになっておるようじゃの…………?」
「………………………………はい…… 」

 ノアの《空間転移》で、ジオン陛下やレイラ王妃とかとは王都の秀真屋敷で会っていた爺さんだったが、ゼルドとは本当に久し振りらしい。
 身内同士、積もる話もあるだろうから、爺さんの相手はゼルドに任せ、野営の準備をしている騎士団の様子でも見て回ってくるか?

「……!……!…!! 」
「……!? …………!」
「…!!!!!? 」

 ……何やらゼルドと爺さんが話し込んでいるようだが、わざわざ聴覚を上げて盗み聞きする事じゃ無いだろう。そういえば、ラーナちゃんやキムチェ、シイラに指導役を買って出てくれた婆さんは、先に《空間転移》で『秀真の國』に来て訓練を始めているはずだな? 少し顔を見に行って来るかな?

 そんな事を考えながら、一通り騎士団員達の様子を見て回り、爺さんとゼルドの所へ戻ってきた俺だったが、さっき調子に乗った”罰”が当たったのだろうか? 満面の笑みをした爺さんが、またトンデモない事を言い放ったのだ。


「良し!ではヒロトよ、そういう事じゃから、模擬戦死合いを致すぞっ!! 」


 ちょっと待ていっ!いったい何がどうしてそうなったーーーーーーっ!!!?








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