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報告書 2
日報 19
しおりを挟む「異世界……です、か?」
よく分かっていないのか、キョトンとした顔で救人の顔を見返すシスティーナ。
ここは教会の食堂。
あれから変身を解いた救人達は、駆け付けた警備隊に後始末を任せ、大慌てで傷付いたミーナを治療院へと運び込んで治療を頼んでから、教会へと帰って来たのだ。
〈次空震〉による"湧き"によって、モンスター達が街中に溢れた事によって、初級の治癒魔法が使える教会の者は皆、出払っていて誰もおらず、『ちょうどいい』とばかりに救人は自分の本当の身の上をシスティーナに説明したのだった。
これはキルバインの「ヒーローには、その正体を知る協力者のヒロインが居る』という言葉に従った訳ではないが、変に怪しまれるよりは正直に話してしまった方が良い。と救人も考えたからだった。
ただ、話を切り出すまでは非常に気不味かった。何しろ絶対に正体がバレていないと思っていたのに、システィーナには完全にバレていたのだから、恥ずかしい事この上ない。
なぜ?そう思ったそこのアナタ、ちょっと考えてみてほしい。
顔を隠してハッチャケちゃってた自分の行動や言動が、すべてアナタだと家族や友人にバレていたとしたら?
その行動のハッチャケっぷりによって恥ずかしさの度合いは変わるのだろうが、救人が演じていたのは"正義の味方の変身ヒーロー"である。
アナタは友人知人の前で、素顔のままでヒーローを熱演出来るだろうか?
いくら顔を隠していようが、正体がバレているならばそれは素顔と同じ。
残念ながら、救人はそこに羞恥心を感じないような鋼鉄のハートの持ち主ではなかった。
最初から知られている事が分かっているならまだいい。だが、知らないと思っていて思いっ切り見栄を切り、カッコイイポーズまで決めちゃったのだから、これは恥ずかしい。すっごく恥ずかしい!メチャクチャ恥ずかしい‼︎ 空前絶後に恥ずか………‼︎
「だから五月蝿いっての‼︎ 」
「キャ…ッ! ど、どうしたんですかキュウトさん…⁉︎ 」
「あっ!ああ、いや、ナンデモアリマセン…… 」
ーーほらほら、ナレーションにツッコミを入れるよりも説明、説明!
「くっそー、覚えてろよ………。あー、うん。よく分からないかもしれないけど、俺は"こことは別の世界"で産まれて育ったんだ 」
「不思議なお話しですが、あんな力は初めて見ました。ですから、私はキュウトさんのお話しを信じます。キュウトさんの居た世界では、皆さんああして"変身"なさるんですか?」
「いや、俺が特別なんだ。俺の家系は代々あの力、【魔装鎧】の力を使って、世の中を乱そうとする奴等と戦い、陰ながら平和を守る『正義の味方』だったんだよ。だからあの力は特別。俺にしか使えないんだ 」
「そうなんですか⁉︎ 『正義の味方』、陰ながら平和を守るなんて、素晴らしいご職業ですね!」
「えっ⁉︎ あ、いや、その職業って訳では…、その……… 」
システィーナの弾けるようなその笑顔と、尊敬の念に溢れたキラキラとした視線から背けるように視線を逸らす救人。ゴニョゴニョと言葉も尻すぼみになっていく。
ーーそう、『正義の味方』は職業ではないっ‼︎
もしも『正義の味方』が職業ならば、24時間365日の年中無休、それが例え夜中であろうと「お呼びとあらば即参上!」と出勤しなければならないブラック企業も真っ青な仕事になってしまう。
しかも残業休日手当などの各種手当も無し、超過労働手当も無し。怪我をしようと労災すら使えないのだ。
なので『正義の味方』といえば、基本的に無職なのである!
だが、生きている以上はどうしたって食べていかねばならず、当然お金がかかる。
ならば天草家はどうやって日々の糧を得ていたのか?
実は……、天草家はあくせく働かなくて済むほどの相当な資産家なのだ。
そもそも天草家の成り立ちは千年前、平安時代まで遡る。初代であるキルバインと天草響子が異世界より降り立ち、人々を悩ませる魑魅魍魎を退治するために、時の退魔組織【陰陽寮】に所属した所から始まる。
その後朝廷から幕府へと権力機構は数々変わったが、天草家は時の政府に協力して、陰から日本の平和を守ってきた。
そして、その過程で報酬、または褒賞として得た宝や土地を数多く所持しているのだ。
明治維新以降は政府に仕えることはなく、報酬、褒賞の類いによる収入は無くなったが、今までに得た土地を使っての賃貸マンションや駐車場の経営などで、黙っていてもお金が入って来るのようになっている。
果ては過去から現在に至るまでに助けた権力者や財閥などから、是非にと請われて資金援助まで受けている為、一般家庭を装ってはいるが月々の収入はそこ等のセレブなど目ではない程だったりする。
ただ、救人が小さい頃に学校などで「お父さんのお仕事は?」と聞かれた時に「お父さんはお仕事してません!」と答えさせる訳にもいかず、一応、名前ばかりの"自営業"を名乗ってはいたのだが。
無職であるのに収入はガッポリ。普通なら誰もが羨む状況なのだが、これが『正義の味方』の実態となると非常に聞こえが悪いのは何故だろう?
救人がシスティーナの汚れを知らない無垢な瞳に耐え切れず目を背けてしまったのはそんな理由だったりする。
「で、まあ、何故こんな話をしたかと言うと、今後もああいった事件があった時には変身して人助けをしようと思ってるんで、システィーナさんには周りに俺のが正体がバレないように協力して欲しいんだ。……いいかな? 」
「素晴らしいです!この世界でもキュウトさんは『正義の味方』をなさるおつもりなんですね!まるでお伽話の勇者様のようです…! ああ、女神様、素晴らしい方を遣わして下さってありがとうございます!」
ーー いやいやシスティーナさん?その少年は確かに勇者の血筋ですが、半分は魔王様なんですよ?(笑)
「だ~~か~~ら~~っ!五月蝿いっての~~~~~~~~っ‼︎ 」
ーー ツッコミもいいけど救人君?バーサーク・ボアの討伐証明部位は切り取ったのかな?
「あああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!忘れてたぁ~~~~~~っ⁉︎ 」
ーー あ~~あ。(笑)
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