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報告書 1
日報 1
しおりを挟むーー 約半年前 ーー
「ねえっ!あそこ、人が倒れてるわよ!? 」
救人は森の中で倒れているところを、ダンジョン帰りのとあるパーティに発見された。
幸運だったのは、異世界転移した瞬間からそれ程時間が経っていなかった事、それから助けてくれたパーティが善良だった事、彼等のリーダーが優秀な治癒術師だったという事だろう。
こうして運良く救人は救出され、取り敢えず街の教会へと預けられた。
「…………知らない天井だ…… 」
と、お決まり?のセリフと共に目覚めた救人だったが、看病してくれていたらしき女性に声を掛けられた時に、ひどく驚くことになった。
《あ!?目が覚めた?大丈夫ですか?》
「☆!?@#/&\○♪?#%€〒〆$?」
(えっ!? 何語だコレ?英語…じゃないし、聞いた事の無い言葉のはずなのに、何で俺理解出来るんだ!? )
心配そうに救人の顏を覗き込んでくる女性。格好から見て、何かの宗教の人かな?とあたりを付けるが、心配してくれている所為か、非常に顔が近い。
しかも美人!オマケに巨乳!? 北欧系の彫りの深い端整な顔立ちに、立ち上がって中腰の姿勢になっている為、重力に引かれたお美事なモノが、ゆさり、と救人のほぼ目の前で揺れている。
色んなモノに、ムダに動揺する救人だった。
(この状況は……、ワイズマンのド阿呆の所為で、俺は気を失った?で、倒れていたかした所を助けられた…ってトコか? どうしてかは分からないが、こっちが理解出来るんなら、俺の日本語でも通じるかな?)
《ありがと……うっ!?》
「☆\€%……*!? 」
「あら?外国の方かと思ったのに…!? 言葉は分かりますか?」
「あ!?…はい、分かりま…す?えっ!?」
(ちょっと待て!何で俺聞いたことも無い言葉を喋ってるんだっ!? いや、落ち着け!落ち着け~俺! こんな時こそ冷静にだ。リ~ラックス、リ~ラックス、ヘイヘイ!リ~ラックス…… )
「あ、あの…、どうしたんですか?やっぱりまだ具合が!? 」
突然黙り込んだ後、一人でブツブツ言い始めた救人を、心配してシスターが声を掛ける。
「あ!いや!?…すいません、ちょっと混乱してしまって!」
「大丈夫ですか?あなたはこの街の外にある森の中で、大怪我をして倒れていたんだそうです。たまたまダンジョン帰りの冒険者の皆さんに発見されて、ここに運び込まれたんですよ?」
「えっ!? 大怪我!? 」
慌てて自分の身体を確認する救人だったが、傷らしき物はどこにも見当たらず、多少の違和感は感じるものの、痛みは身体のどこからも感じない。
「????!? 」
「あ、安心して下さいね、冒険者の方が一応の治癒魔法を使って下さって、ここに来た時に、私が治癒魔法であなたの怪我は全て癒しましたから。ですが、失った血までは戻っていませんから、もう少し安静にしていて下さい 」
と、ニッコリと優しく微笑むシスターだったが、当の救人はと言えば更に大混乱だった。
(は?ダンジョン?冒険者!? 魔法!!!? なんだそりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?)
森の中で大怪我をして倒れていたという事は、モンスターか野盗にでも襲われたのだろう。きっと怖い思いをしたに違いない。と、混乱している救人の様子を見て、一人痛ましげな視線を送るシスター。
全くの勘違いではあるのだが、今はまだゆっくりと休ませてあげるのが一番ね!と、一人で納得して、ベッドの上で頭を抱える救人に、シーツを掛け直して部屋から そっと出て行くシスター。
正にシスターに相応しく慈愛溢れる人物の様だが、なかなか思い込みの激しい性格らしい。
余りの混乱に、シスターが退室した事にも気付かず、ベッドの上でシーツに包まったまま頭を抱える救人。
だが、彼も超常の力を持った怪人、魔人等と、長年闘い続けた”正義の味方”、それ程の時間もかからず、彼の鋼の精神は落ち着きを取り戻した。
(ふ~~~~っ! つい取り乱しちゃったけど、まあ、『生きてるだけで丸儲け』か? ワイズマンのクソバカの所為で、もしかしたら本当に時空の狭間に跳ばされてたかもしれないんだし、例え元の世界じゃないにしても、こうして助かっただけ良しとしなきゃだよな……? しっかし、マンガじゃあるまいし、”異世界”なんて、これからどうするかだよなぁ… 」
まるでマンガのようだ、と”正義の味方”である自分の存在を完全に棚に上げて、やれやれと溜め息を吐く救人。
とはいえ此処はもはや地球では無い。ツッコミを入れてくれる知り合いすらいないのだから、救人が途方に暮れてしまうのも無理は無いかもしれない。
翌日、看病をしてくれたシスターに朝食をご馳走になりながら、これからの事を相談してみる救人。
「そうですか……、キュウトさんは、このユラシアル大陸の方では無い、という事ですね? 元いた場所で事故に遭い、気がついたらこの教会だったと?」
「そうなんです。お陰で混乱してしまって、ここが何処なのか、自分が元居た場所が何処にあるのか?それすら全然判らないんです……… 」
「何かの魔術的なトラップだったんでしょうか?それとも何らかの魔力暴走?……いずれにしても困りましたね… 」
さすがに「異世界から来ました~!」とは言えず、いくつか考えた結果、”突然目の前で爆発が起き、気がついたらここだった”という理由を選んだ。
(記憶喪失…とかだと、後々メンドそうだし、夜中にこっそりと見て回った町の様子だと、文明レベルは地球の中世くらいだろう。オマケにモンスターまでいるみたいだし、まだまだ世界地図なんて無いだろう )
「原因は分からないです。俺の故郷、『ニホン』に帰りたいとは思いますが、ユラシアル大陸なんて聞いた事もありませんでしたし、俺の国には、シスターみたいな綺麗な人はいませんでした。と、いう事は、海を越えた遥か遠くの何処かに俺の故郷はあるという事で、帰り着くことは……… 」
「……ほぼ、不可能だと思います。海にも様々なモンスターが居て、沖へ行く程、巨大になっていくそうです。お隣のアフィーリア大陸や、ブランシェス王国のあるブランデン島なら私も知っていますが、『ニホン』と言う国は聞いた事もありません……… 」
もう帰れない……。そんな救人の身の上を思い、表情を曇らせるシスター…。見れば、その美しい瞳は涙で潤んでいた。
「あああっ!? なかっ、泣かないで下さい!俺は大丈夫ですから!友人くらいは居ましたが、家族とかはもう居ませんでしたしから!」
「ですが…… 」
優しい人だな、と救人は思う。だからニッコリと笑い、全身で心配無いところを見せる。
「大丈夫ですよ。ですが、身の証を立てる物も、生活費の稼ぎ方もよく分からないので、何かいい方法を知りませんか?」
「そうですね………?それでしたら、取り敢えず”冒険者”の登録をしたらどうでしょう? 」
「冒険者ですか?俺のいたニホンにはいなかったんですよね…。誰でもなれるものなんですか?」
「はい、大丈夫ですよ。冒険者と言っても、危ない仕事ばかりじゃありませんし、発行される「冒険者カード」は、どこの町でも使える身分証にもなりますし 」
(その辺は、前に読んだ話とかと一緒なんだな…? よし、どっちにしろよく分からないんだし、身分証だけでも助かるな。良し、取り敢えず冒険者になろう!)
異世界転移してしまった戸惑いはまだあるものの、救人の中には悲壮さなど一切無い。今も、レンタルDVDショップの会員証を作る程度のノリである。
「分かりました。じゃあ、まず冒険者になってみます。何処に行けば冒険者に登録出来ますか?」
「あっ!それでしたら、私も一緒に”冒険者ギルド”まで行きましょう!道も分からないでしょうし 」
迷惑をかけることに気は引けたものの、全く道が分からないのもまた事実。救人は素直に礼を言い、二人は冒険者ギルドへと向かうのだった。
ーーちなみに………、
(「キュウトさん、何も知らない上に、こんなに可愛くてか弱そうなんだもん、悪い冒険者に絡まれでもしたら大変だわ! それに…、私の事を「綺麗な人」って! きゃ~~~~~~っ!! お姉さんの私が、しっかり守ってあげなくちゃ!! 」)
シスターが同行を申し出たのは、こんな思いからだったりする。
やはりどうも少し………いや、かなり思い込みの激しい女性のようである。
しかし、この彼女のお節介が、この後”冒険者ギルド”で、余計な騒ぎを起こしてしまう事を、この時まだ二人は知る由も無いのだった………。
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